【感想・ネタバレ】戦争の近現代史 日本人は戦いをやめられるのかのレビュー

あらすじ

世界がウクライナ戦争で大きく揺らぎ始めている。再び戦争の時代に戻りそうな端境期にある今だからこそ、歴史から多くを学ぶべきだと主張する著者は、これまで軍指導者や兵士など延べ四千人に取材し、戦争と日本について五十年近く問い続けてきた。なぜ近代日本は戦争に突き進んだのか? 戦争を回避する手段はなかったのか? 明治・大正と昭和の戦争の違いとは? それらを改めて検証する過程で新たに見えてきたのが、これまでの「戦争論」を見直す必要性である。本書では、日本近現代の戦争の歴史から、次代の日本のあるべき姿を提言する。

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Posted by ブクログ

 本書は、2022年1月から12月まで「保阪正康が語る昭和史の謎」の講座を再編集し、大幅に加筆修正した作品である。よって、ロシアのウクライナ侵略の視点は含まれるが、ガザの問題は、含まれていない点を留意した上で、読み進める必要がある。とはいえ、世界がウクライナ戦争で大きく揺らぎ、長期化していく中で、「核抑止力下の平和論」の危機を指摘する。
 明治からアジア太平洋戦争を「近代史」とし、日本の敗戦以降を「現代史」とした上で、明治以降、戊辰戦争や西南戦争などの内戦を経て、欧米列強に負けまいとした侵略戦争と植民地支配に加わった日中戦争、日露戦争、第1次世界大戦、アジア太平洋戦争・第2次世界大戦の74年間を俯瞰的に総括する。一方で、1945年の敗戦から78年もの期間、憲法9条の精神に基づき戦争に加わらず、1人の戦死者も出していない日本を振り返る。戦争論を論じる場合、「クラウゼブィッツの『戦争論』」が引用されるが、日本の近現代の戦争の歴史から、次代の日本のあるべき姿を提言する。優勝劣敗の新自由主義の下では住みやすい社会にならない、社会が正常に機能するためには社会主義的な富の分配、セーフティーネットの拡充を図り得る社会へと提言する。根底には、日本国民が戦争体験を継承する上で、一部の富裕層が突出する社会から国民全体が経済的に安定する社会基盤が必要である事を指摘する。戦争の教訓から社会のあり方を提言する著者の見識に経緯を表したい。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

主観や感情ではなく、客観的な事実に基づき歴史を検証し、戦争を防ぐための理論・思想を築かなければならないという著者の思いが伝わってきた。

実際に国内外の多くの戦争体験者から直接話を聞き事実を収集してきた著者の言葉には説得力がある。

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

 日本は近現代において幾度となく戦争に踏み込んだ。日清・日露戦争は国力誇示の戦いであり、満州事変は軍部の独走、大東亜戦争は国を滅ぼす道だった。なぜ日本は戦争を選び続けたのか。その背景には国際情勢の圧力と天皇制を中心とする国家体制があった。
 敗戦後の日本は戦争放棄を掲げ80年にわたり戦火を交えていない。これは戦争の清算がなされた結果なのか、充てがわれた憲法9条によってか、それとも偶然の産物か。戦後天皇制は象徴へと変わり戦争を主導するものではなくなった。
 戦争の記憶は薄れつつある。歴史を振り返り戦争を避ける知恵を学ぶことこそが今の日本に求められているのではないか。

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2025年02月14日

Posted by ブクログ

保坂正康氏の戦争論。
戦争論とは戦闘での勝ち負けではなく、いかに戦争を避けるのかを考えることが重要。

台湾有事を今の視点だけで見てはいけない、共産党と国民党との争いの原因を日本の軍国主義が生み出し、それを無責任に放置した結果が今だという論理で矛先が日本に向かう可能性があるとの指摘は鋭い。

ウクライナ戦争で核抑止力による平和という戦後の時代は終わり、21世紀型の新しい平和の論理が求められている。
軍事費増強や核武装を叫ぶことは、先の大戦で払った犠牲の反省の上に立ったものとは言えない。

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2025年01月18日

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