あらすじ
満州事変から、真珠湾攻撃へ―― 日本を亡国に導いた6つの分岐点
2017年の終戦の日、昭和史研究のスペシャリスト3人が集結して話題を呼んだNHKラジオ番組「太平洋戦争への道」。本書は、その貴重な鼎談に、保阪正康氏の解説と図版・写真を加えた「日米開戦80年企画」として刊行するものです。1931年の満州事変から1941年の真珠湾攻撃へと至るその過程には、見逃せない6つの分岐点があったと3人は口をそろえます。各氏の視点と語り口が絶妙に交差しながら、昭和日本の闇へと迫る展開は、歴史好きの方にはもちろん、一般の方にも重層的な歴史理解を促すに違いありません。私たちは歴史から何を学ぶべきなのか。昭和日本が犯した「最大の失敗」から、令和日本が進むべき道を提言します。
〈内容〉
序 章 太平洋戦争とは何か
第一章 関東軍の暴走 1931 満州事変 - 1932 満州国建国
第二章 国際協調の放棄 1931 リットン報告書 - 1933 国際連盟脱退
第三章 言論・思想の統制 1932 五・一五事件 - 1936 二・二六事件
第四章 中国侵攻の拡大 1937 盧溝橋事件 - 1938 国家総動員法制定
第五章 三国同盟の締結 1939 第二次世界大戦勃発 - 1940 日独伊三国同盟
第六章 日米交渉の失敗 1941 野村・ハル会談 - 真珠湾攻撃
戦争までの歩みから、私たちが学ぶべき教訓
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
3人の世代が異なる歴史学者の先人がとても分かりやすく、なぜアジア太平洋戦争はおこったのか?なぜ?無謀とも言える戦争に突き進んでしまったのか?そんな戦前から開戦に至る史実を知見を交わして浮き上がらせる。あの世界大戦を概要を学ぶ上でも入門書として最適な一冊。新書とは思えない重みがある。
Posted by ブクログ
■関東軍の暴走
■国際協調の放棄
■言論・思想の統制
■中国侵攻の拡大
■三国同盟の締結
■日米交渉の失敗
この10年間をこのように分けていくとこんなに解りやすかったとは、という思い。結局国民には事実を伝えることなく、自分達の立場を曲げられないことを前提に「仕方ない」という言い訳でアメリカとの戦争に突っ込んでいった日本。Sunk Cost や他人、上官、天皇の立場を忖度して判断、決断した、責任を取らない、取りたくない、という傾向は何十年も前から培われたものだった。そう思うと、変えるのにはまだまだ時間が掛かりそうだ。誰かに決めてもらう癖、習慣を変えないとこの国はまた低迷するだろう。この変化も外圧に頼るのだろうか?
Posted by ブクログ
最後に半藤氏が諭すように言われている通り、我々は学び続けないといけない。令和になって戦争を知らない世代だけになり、いつか来た道をまた歩きだしてる気がしている。威勢だけは良いが、覚悟の全く無い人たちが政治を動かし、戦前と同じくらい社会の不平等も拡大してきた。なんとも不気味である。
ただこの本を読んでアメリカ人もいい加減学んだ方が良いとつくづく思った。先日ホーチミン市の戦争記念館に行ってきたが、彼らがベトナムでしたことは東京大空襲や広島長崎と全く同じ。それもそのはず、カーティス・ルメイが空軍参謀総長だったことをそこで初めて知った。ルメイのような明らかな戦争犯罪人を重用し続ける構図は、盧溝橋での牟田口やノモンハンでの辻の責任を有耶無耶にし、インパールやガダルカナルの惨劇を招いた旧日本軍と変わるところはない。
Posted by ブクログ
半藤一利さん、加藤陽子さん、そして編者の保坂正康さんによる対話形式で進む、1931年の満州事変から1941年の日米開戦までの、特に日本がとった行動とその背景について説明してくれる。
軍部を中心とした思い込み、慢心、根拠のない自信、精神論。今までおぼろげながら認識していた昭和史を再認識させてくれた。
折しもロシアによるウクライナ侵攻が進められ、おとしどころが見えない状態だ。一端戦争になれば、終結が難しくなることが現代でも読み取れる。
ただ、お粗末ながら当時民主主義国であり、第一次世界大戦の教訓からつくられた、国際連盟の常任理事国5ヵ国の一翼を担っていた日本ですら、戦争への道を選んでいったのだ。総括や反省が苦手な日本の指導者は、ここから何を学ばなくてはならないのか。
それを考えるのは、政治家に任せるのでは不十分で、我々の責務だろう。
「戦争というのは、暗い顔とか、わかり切った顔で近づいてくるのではない」
戦争の決断をする政治的、軍事的な上層部には、総合的にものを考え、できるだけ戦争を避けるべきだという、当たり前のことを考えてもらわなくてはならない。彼らの判断、命令一つで、その時代に生きた人たちが亡くなるわけなので、政治指導者も軍事指導者も、その重みを考えてもらわなくてはならない。そして、それを考えることができる指導者を育てなければならない。そういう軍事指導者を持てないとするならば、それはその国の不幸としか言いようない。
戦争を始める前にいくらでもリターンすることはできた、引き返せる局面はあったと思うが、彼らは不勉強だからできなかった。
今の日本人も同じように不勉強。もしかしたら、今のほうがもっと不勉強かもしれない。若い人にはとくに勉強してほしい。
という3人のことばが印象的だった。
Posted by ブクログ
近現代日本史の碩学、三人(半藤一利、保阪正康、加藤陽子)による鼎談。元は2017年8月15日にNHラジオで放送された番組に加筆されたもの。日中戦争については、現在のロシアによるウクライナ侵攻と重ね合わせて読むこともできる。
万民必読の書といえるかも。
Posted by ブクログ
太平洋戦争に関しては日本史の授業で習ったぶりで、大体の流れや事件の名前など表面的なものしか理解できていなかったことがわかった。日本以外の視点を持つことができて改めてメディアの影響の強さを実感した。
Posted by ブクログ
半藤さんさんと保坂さん、加藤先生の鼎談ラジオ番組を保坂さんが章ごとにまとめを入れて編集した一冊。あれこれ読んでも結局よくわからん感じのこの時代の流れ、会話形式だし保坂さんがまとめてくれているのですっきり入ってくるのが◎。教科書にはこの事件の結果こうなった、しか書いてないけど、なぜそうなったのかがわからないといかんよね。
研究し尽くした人がたどり着くのは現代に対する警鐘。歴史を学ぶことは今を学ぶことだ、という恩師の言葉をあらためて胸に刻もう。
Posted by ブクログ
なぜ日本は戦端を開いてしまったのか。比較的簡潔に、丁寧に知ることができる良書です。日本人なら一読すべきだと思います。
本書では、中国との開戦以前から米英との開戦までを時期を章ごとに分けて議論し、章末に保阪氏による解説が記載されている。冷静な分析で議論をリードしていく加藤氏と、熱くも丁寧に語る半藤氏・保阪氏の対談はとてもバランスが良く、読みやすかった。三者の話を読んでいる(聞いている)と、「なぜ日本は戦争という道を選んでしまったのか」という理由が、朧げながらも全体像を掴めたような気がする。
【梗概】
"軍部・マスメディアの罪と大衆の不勉強"
日本が米英との開戦を迎えるまで、国内の世論はまさに熱狂に近いもののように思えた。陸軍とりわけ関東軍の暴走とも呼べる中国への侵略行為は、どの視点から見ても肯んずることはできない。軍部は自らの領地(と称する満州国)への中国側の侵略したとして、日中戦争ではなく支那事変と呼称する。これは戦争ではなく自衛なのだ、とすることで天皇の承認を得ずとも戦線を拡大していった。帝国主義による領土・権益拡大を推し進める為に、軍部は自らを正当化し、マスメディアにその正当性を国民へ煽るよう圧力をかける。それによって二・二六事件や五・一五事件のように反戦勢力をテロリズムによって消沈させることもでき、自国民を守るはずの軍部がテロ集団と伍してもおかしくない状態が生まれた。軍部からの情報の統制・歪曲によって世論は戦争へ熱狂していく。常識ある国のトップ(天皇を含む)は軍部の圧力に屈してしまった。軍部には、軍教育による勝つまで戦えという考え方が蔓延り、政治的な知識を持ち合わせない。そうした人間らが国策に意見をし、トップらはそれを飲み込むしかないという権力構造がポイント・オブ・ノー・リターンまで運ばせてしまった。
Posted by ブクログ
最近よく、政府のコロナ対策が「太平洋戦争の時の作戦と同じで、その教訓を活かしていない」とか言われているので、ちょっと興味を持って本屋さんで目に付いた本を選んだ感じです。
2017年の終戦の日のラジオ対談を書籍化。2017年というのは、盧溝橋事件が起きた年から80年になる節目ということもあったのでしょう。1931年の満州事変から1941年の真珠湾攻撃に至るまでの、太平洋戦争突入前の10年間をいくつかのターニングポイントごとに、原因や判断や起因するもの、そして結果と検証していくのですが、ラジオ番組らしくわかりやすく読めます。
コロナ対策がどこか戦争の時の対応と似ているというのは、戦略がないなど、いろいろあるのだろうけど、この本では戦争突入前の時代なので、個人的に感じたことは、「相手がある事なのに自分の都合がいい結果になることを想定して(信じ切って?)決定を下している点」は、確かに似ているかもしれません。
GoToにしても五輪にしても、実施の判断ではなく、やる事の理由付けが先に来てしまっている、その判断や決定のプロセスは、楽観主義というよりご都合主義みたいでもあり、次第に感染者が増えていき(次第にアメリカとの関係が悪くなっていき)そのあとの対策を狭めてしまっている感じを受けました。
って感想を書いていたら菅総理辞任のニュースが入ってきた。
Posted by ブクログ
<目次>
序章 太平洋戦争とは何か
第1章 関東軍の暴走~1931満州事変から1932満州建国まで
第2章 国際協調の放棄~1931リットン報告書から1933国際連盟脱退まで
第3章 言論・思想の統制~1932五・一五事件から1936二・二六事件まで
第4章 中国侵攻の拡大~1937盧溝橋事件から1938国家総動員法制定まで
第5章 三国同盟の締結~1939第二次世界大戦勃発から1940日独伊三国同盟まで
第6章 日米交渉の失敗~1941野村・ハル会談から真珠湾攻撃まで
第7章 戦争までの歩みから、私たちが学ぶべき教訓
<内容>
ノンフィクション作家の保坂正康を中心に、作家の半藤一利と東大教授加藤陽子が鼎談をしつつ、日本のアジア・太平洋戦争に突入するまでを分析し、第7章(本当はこの章立てはない)で「学ぶべき教訓」を三者がまとめた。もともとは、NHKラジオの番組の書籍化。今年2月に半藤さんは亡くなったが、この戦争前後は彼の著書が多く、保坂さん、加藤さんも専門家なので、専門書ほど深掘りしていないが、わかりやすい分析となっている。
Posted by ブクログ
日本が無謀な太平洋戦争へと進むに至った重要な6つの局面について昭和研究のスペシャリスト3人が語る。
安定感がありすぎる3人なので、熱い議論が交わされるというより、これまでも3名が論じてきた考え方をそれぞれが改めてコンパクトに語っている感じです。何か新しい発見があるというわけではないですが、ポイントを整理するという意味ではいい本だと思います。
また、各章に挿入された保阪さんの論考は鋭く、読ませます。
そして、最後の半藤さんの現代の日本人に向けたメッセージは、我々がしっかり受け止めなければならないと思います。
Posted by ブクログ
敗戦記念日がまた近付いてきたこともあってか、ふと手に取った。お三方(特に加藤さんと半藤さん)の著作はこれまでにちょくちょく読んでいるので、おさらいという感じで読んだ。
当時の色々な人の色々な思惑と事実とを照合すると、「対米戦を回避する術はあった筈」とやっぱり思ってしまう。
リットン報告書やハル・ノートに対する、冷静さを欠いた威勢がいいだけの感情的な煽りは、発行部数を伸ばすのにはよかっただろうが、亡国ぎりぎりまで民族を追い込んだ、という面では、マスコミの罪はとてつもなく大きいと思う。
また、五・一五事件のあと、実行者の助命嘆願書が百万を超える数集まり、裁判でも実行者が自身の信じる主義主張を延々と語ることを許され、かつそれが美談として報道され、暗殺された犬養毅首相が悪役化されるなど、言語道断だ。
テロリストを美化することは、断じて許容しては行けない。