あらすじ
昭和陸軍はなぜ多くの錯誤を犯したのか。国家を滅亡の危機に陥れ、自らを解体に追い込み、国民に過酷な運命を強いた昭和陸軍とはどのような組織だったのか。500人余りの関係者の証言からその解明を試みた著者畢生の大作を復刊。著者の昭和史研究の原点にして頂点!
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Posted by ブクログ
昭和陸軍がなぜあのような戦争を招いてしまったのかを、著者が大量の資料や太平洋戦争時に従軍した人のインタビューをもとに纏めたのが本書である。冒頭で著者は昭和陸軍の特徴として、成績至上主義、親ドイツ、反英米、人間に対しての洞察力の欠如をあげている。これらをふまえて、上巻では明治時代における建軍の歴史と昭和時代に起きた張作霖爆殺事件、満州事変から山本五十六戦死の歴史を紐解いていく。本書を読んでいくと、昭和時代の陸軍の指導者は一部を除いて、理性や論理を重んじるのではなく、そのときの雰囲気、空気に任せて決断を下していたことがわかる。また同じ陸軍でも内部で派閥抗争が盛んであったことや、多くの高級将校たちは下の立場の者を慮ることなく消耗品同然の扱いをする一方で、責任逃れすることが多く、事実を隠蔽するときもあった。このように当時の陸軍の組織構造、病理を知ることで、今後このような過ちを犯さないために何をすべきかを本書から学べる。