小田雅久仁のレビュー一覧
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壮大なファンタジー!
最初は、読みにくくかつとっつきにくい、クドイ関西弁の語り口調もだんだん慣れてきて、読み終える頃には、
もう終わってしまうのか、と名残惜しい気持ちにさせられる。
圧倒的な描写力で、目の前に様々なシーンが流れていく、とても素敵なお話だった。
ファンタジーなのに、戦争の残酷さ、けして繰り返されてはならない事故のこと、戦前戦後の日本に起こったこと、その深い悲しみと虚無感を感じずにはいられなかった。
人は亡くなるとどこに行って何をしているんだろう、って誰もがきっと一度は考えて悩むことに、
素敵な答えを返してくれる、心が温かくなる素敵な作品。 -
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読み始めは、何というか…これは奇書の類であろうと思ったものだ。
しかし読み進めるほどに、胸の中に何とも言えぬ安らぎが広がってゆくのが不思議だった。
雄の本と雌の本が睦みあって本を生む…などという奇天烈な設定なのに、このファンタジーが内包するとんでもなく長い歳月と愛すべき読書家たちの見た夢…あるいは見ることになる未来へと続く途方もない必然の蓄積の中で、その奇天烈さを見失わされてしまう。確かにあるのだな、そういうことは。いつの間にか腑に落ちてしまっている。
何にせよ、なぜかはわからぬし、私だけの感じなのかもしれないが、このファンタジーからは得体の知れない穏やかな幸せの空気が漏れだして、私を包 -
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短編の残月記は、月昂のことより、下條による独裁国家のリアルさと気持ち悪さがすごい印象的だった。やっぱり独裁政治は、一部の人を人扱いしないことで、支配者側が自尊心とか欲を満たす仕組みになって、特に理由もなく支配者側から転落してしまって、そうしたら尊厳も誇りも全部失って救いもなくなっちゃうんだと思った。その辛さを詩とか木彫とか芸術に反映させて優れた作品が出たとしても、それは全然喜ばしいものではなく負の遺産的なものになっちゃうし、更にそれを糧として乗り越えようみたいに無関係の人が芸術として享受するのは傲慢だなあとも思った。(まあ糧とするしかないんだけど)
下條に対する便器のような白い歯っていう表現が -
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ネタバレなんだろう。
とても不思議な魅力のある小説です。
完全にSFなのに、月の持つ不思議な力に魅せられてしまう。ある日突然月の表裏が変わって自分が自分でなくなってしまう日が本当に来るような、そんな気分になるし、読後数日そんなありもしないことをふと月を見ると考えてしまって怖くなる。
短編2編と中編1編で構成されており、中編の残月記に関してはもはや完全にSFであるが、何故か惹き込まれる。どこかにこんな世界があるかもしれないと思わされる。
それほどまでに、月の持つ不気味で不思議ななにかがあると私たちは知っている。
新月には出産が多い。
満月が近づくと月経が起こる。
月にまつわる不思議な迷信のようなものを聞 -
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月が関係するSFファンタジー短編中編集
短編2つに表題作の中編1つ
・そして月がふりかえる
研究者として不遇の人生を歩みながも、やっと社会的にも認められてきた主人公
家族とのささやかな幸せな生活を送る中、日常的に行くファミレスで見上げた月が裏返ったのと同時に、家族が入れ替わった世界になってしまう
妻や子供の姿形は同じで、自分の歩んだ人生も同じなのに、別人がその地位に収まり、自分はまた別の冴えない人生を送っている事になっている世界
ファミレスを出てから、彼が何をしようとしているのが疑問だったけど
なるほど、話しをしたかったのか
気持ちはわかるが、その結果は悲しくも……
著者は、希望を持て -
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タイトルに惹かれて、手に取ってみた。
「明月記」と言えば藤原定家だが「残月記」とは。
「そして月がふりかえる」「月景石」の中短編と、
表題の「残月記」三篇の一作。
全てが月をテーマに、物語が描かれている。
一番好みだったのは「月景石」か。
日常から夢へ、日常から月の世界へと飛び、SFであるがファンタジー色も強い。
「そして月は……」この作品も日常から急速に月の変化によって引き剥がされ、ラストは急展開で終わる。
最も長い表題作の「残月記」が、やはり一番精緻に書かれているとは思った。ディストピアSF小説とも、ファンタジーとも、恋愛小説とも読め、読後感もすっきり。
ただ、ウィルスとして感染す -
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ネタバレ月をめぐる、3篇の物語。
日本SF大賞受賞作ではありますが、鴨のイメージは「幻想譚」です。それも、かなり重く、冷たく、じっとりと濡れた味わいの作品ばかりです。
結末らしきものがあるのは、表題作である中編「残月記」のみ。他の2篇は、救いようのない状況でスパッと物語の幕が閉ざされます。はっきりした結末を求める方には、全力で「読まない方が良い」とお勧めします(汗)
要するに、ひたすら暗い作風なわけですが、暗さゆえに、いやむしろ暗いからこそ滲み出る、独特の美学が全作品を貫いています。
どの作品にも共通している構成は、「現実」と「もう一つの世界」の二重構造になっていること。これが例えばディックであれば -
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ネタバレ本屋さんで流し読みして、あまりにも素敵な文章に惹かれて購入させてもらいました。
三篇全て読みましたが、作家さんってすごい……
そんな今更なことを痛感させられた作品となりました。
迫害される感染者の悲劇のストーリーか、ディストピアを舞台にした熱い戦いの物語が展開されると思いきや。
最後はやり過ぎなくらい壮大でロマンチック、月世界の中心で愛を叫ぶという意外な結末。
読んでると恥ずかしくなる恋愛小説を読んだ時のあの現象。
それを体感するとは全く思っていなかったので、とても不意を突かれた。
表題作の<残月記>は特に、作者の尋常でない想像(創造)力と洗練された表現力をひたすらにぶちまけられるような作 -
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「月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3編が入っている。
いずれも主人公がとんでもない苦難に遭うディストピア小説で、後ろに行くほどに悲惨さが増していく。
ディストピアという事で生命が脅かされる極限状態が出てくるが、そこでは世間一般での価値観でなく、自らのうちから湧き上がる本能(生と性)や愛・尊厳といった事柄と向き合うことになる。
終始、暗い話が続くが色々あるけど安楽な現実社会から、もしこのようなディストピアに落とされたら自分ならどうなるだろうとは夢想する。
明日、死ぬかもしれない、どうにか生きたいと思う縁を考えさせられる小説だった。
特に残月記は架空の疫病を下地としながら見事に世 -
Posted by ブクログ
小田雅久仁『残月記』双葉文庫。
初読み作家と思ったら、『本にだって雄と雌があります』の作者だった。当時、評判の高かった『本にだって雄と雌があります』は自分の肌には合わなかったので、この『残月記』を読むのには些か抵抗を感じる。
吉川英治文学新人賞と日本SF大賞のW受賞で、月をモチーフにした短編集のようだ。『そして月がふりかえる』『月景石』『残月記』の3編が収録されている。
いずれの短編も日常を遥かに超越した非日常的な世界が描かれる。通常のSF小説では有り得ないような文学的な表現が現実味を感じさせる不思議な短編SF小説だった。
『そして月がふりかえる』。一種のパラレルワールドSF短編。文 -
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全部は読んでいない。GENESISが雑誌になって、ノリの良さが前面に出た感じ。これもまた良いな。
ゲラゲラ笑った青崎有吾さんのメカくらりは別枠として、高山羽根子さん、笹原千波さん、の作品が特に好きだった。
■笹原千波『手のなかに花なんて』
肉体を捨てて情報人格として生きることを選べる世界。花と料理と。
■柞刈湯葉『記憶人シィーの最後の記憶』
あれ、なんかいまいちだった。
■宮西建礼『冬にあらがう』
いつもの宮西さんの、高校生が静かに世界を救うモノなのだが、AIが絡んできた。私いまいちまだ人工知能なるもののすごさがわかってなくて。やっぱ人間その程度のことも考えるのやめちゃだめじゃない?検索 -