小田雅久仁のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
新進気鋭の作家様によるSF中短編書き下ろしプラス創元SF短編賞受賞作アンソロジー
自分の裡に形成される「SF固定概念」を毎回アップデートしてくれる最先端を走るシリーズ
ティプトリーを読み涙していた頃、このような未来型が到来すると露ほども予測せず、また今後どのような作品が紡がれてゆくのか、想像するだけで萌えます
読みごたえあります!
『未明のシンビオシス』
南海トラフ大規模地殻変動が発生、列島の姿すら変わってしまった日本
荒廃した世界で生き延びる主人公たちの微かな希望を描いた近未来SF
『いつか明ける夜を』
光のない闇の世界が、夜と昼に別たれた
言い伝えの神馬と少女は、世界の救世主にな -
Posted by ブクログ
壮大なファンタジー!
最初は、読みにくくかつとっつきにくい、クドイ関西弁の語り口調もだんだん慣れてきて、読み終える頃には、
もう終わってしまうのか、と名残惜しい気持ちにさせられる。
圧倒的な描写力で、目の前に様々なシーンが流れていく、とても素敵なお話だった。
ファンタジーなのに、戦争の残酷さ、けして繰り返されてはならない事故のこと、戦前戦後の日本に起こったこと、その深い悲しみと虚無感を感じずにはいられなかった。
人は亡くなるとどこに行って何をしているんだろう、って誰もがきっと一度は考えて悩むことに、
素敵な答えを返してくれる、心が温かくなる素敵な作品。 -
Posted by ブクログ
読み始めは、何というか…これは奇書の類であろうと思ったものだ。
しかし読み進めるほどに、胸の中に何とも言えぬ安らぎが広がってゆくのが不思議だった。
雄の本と雌の本が睦みあって本を生む…などという奇天烈な設定なのに、このファンタジーが内包するとんでもなく長い歳月と愛すべき読書家たちの見た夢…あるいは見ることになる未来へと続く途方もない必然の蓄積の中で、その奇天烈さを見失わされてしまう。確かにあるのだな、そういうことは。いつの間にか腑に落ちてしまっている。
何にせよ、なぜかはわからぬし、私だけの感じなのかもしれないが、このファンタジーからは得体の知れない穏やかな幸せの空気が漏れだして、私を包 -
Posted by ブクログ
何と薄気味の悪い話を書くのがお上手な作家さんなんだろう(笑)
ホラーとは少し違う.どちらかというと,日本の怪談にSFファンタジーを混ぜたような世界観.
なんだけど,まぁ……何と気持ちの悪いことか!
ファンタジーは苦手だし,SFもあまり読まない.
怪談もホラーも,好きなジャンルとは言いがたい.
それなのに,読んじゃうんだよなぁ.これが.
何が気持ち悪いかというと,完全な虚構だと分かっていながら,どうしても現実との地続きを感じてしまう展開の巧みさだ.
「うわっ,気持ちワルっ!」と,生理的に反応してしまう.
そして,それがたまらなくなってしまう.
収められた短編はどれも -
Posted by ブクログ
ネタバレ月をめぐる、3篇の物語。
日本SF大賞受賞作ではありますが、鴨のイメージは「幻想譚」です。それも、かなり重く、冷たく、じっとりと濡れた味わいの作品ばかりです。
結末らしきものがあるのは、表題作である中編「残月記」のみ。他の2篇は、救いようのない状況でスパッと物語の幕が閉ざされます。はっきりした結末を求める方には、全力で「読まない方が良い」とお勧めします(汗)
要するに、ひたすら暗い作風なわけですが、暗さゆえに、いやむしろ暗いからこそ滲み出る、独特の美学が全作品を貫いています。
どの作品にも共通している構成は、「現実」と「もう一つの世界」の二重構造になっていること。これが例えばディックであれば -
Posted by ブクログ
ネタバレ本屋さんで流し読みして、あまりにも素敵な文章に惹かれて購入させてもらいました。
三篇全て読みましたが、作家さんってすごい……
そんな今更なことを痛感させられた作品となりました。
迫害される感染者の悲劇のストーリーか、ディストピアを舞台にした熱い戦いの物語が展開されると思いきや。
最後はやり過ぎなくらい壮大でロマンチック、月世界の中心で愛を叫ぶという意外な結末。
読んでると恥ずかしくなる恋愛小説を読んだ時のあの現象。
それを体感するとは全く思っていなかったので、とても不意を突かれた。
表題作の<残月記>は特に、作者の尋常でない想像(創造)力と洗練された表現力をひたすらにぶちまけられるような作