小田雅久仁のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1.登場人物
「食書」の主人公……黒木。売れない小説家。ショッピングモールで本を食べる女性と遭遇する。
「耳もぐり」の主人公……中原。私立大学に勤める非常勤講師。
「喪色記」の主人公……彼。滅びの夢を見る元会社員。
「柔らかなところへ帰る」の主人公……彼。飲料メーカーに勤める生真面目で奥手な男。
「農場」の主人公……輝生。宿なしの若者。28歳。
「髪禍」の主人公……サヤカ。切られた髪を嫌悪する女性。33歳。容姿は悪くないが、自らを「壊れかけの人生を生きていた」という。
「裸婦と裸夫」の主人公……圭介。あがり症。うだつのあがらない三十男。
2.物語の始まり
食書……離婚により現在、一人暮らしを -
Posted by ブクログ
「月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3編が入っている。
いずれも主人公がとんでもない苦難に遭うディストピア小説で、後ろに行くほどに悲惨さが増していく。
ディストピアという事で生命が脅かされる極限状態が出てくるが、そこでは世間一般での価値観でなく、自らのうちから湧き上がる本能(生と性)や愛・尊厳といった事柄と向き合うことになる。
終始、暗い話が続くが色々あるけど安楽な現実社会から、もしこのようなディストピアに落とされたら自分ならどうなるだろうとは夢想する。
明日、死ぬかもしれない、どうにか生きたいと思う縁を考えさせられる小説だった。
特に残月記は架空の疫病を下地としながら見事に世 -
Posted by ブクログ
小田雅久仁『残月記』双葉文庫。
初読み作家と思ったら、『本にだって雄と雌があります』の作者だった。当時、評判の高かった『本にだって雄と雌があります』は自分の肌には合わなかったので、この『残月記』を読むのには些か抵抗を感じる。
吉川英治文学新人賞と日本SF大賞のW受賞で、月をモチーフにした短編集のようだ。『そして月がふりかえる』『月景石』『残月記』の3編が収録されている。
いずれの短編も日常を遥かに超越した非日常的な世界が描かれる。通常のSF小説では有り得ないような文学的な表現が現実味を感じさせる不思議な短編SF小説だった。
『そして月がふりかえる』。一種のパラレルワールドSF短編。文 -
Posted by ブクログ
全部は読んでいない。GENESISが雑誌になって、ノリの良さが前面に出た感じ。これもまた良いな。
ゲラゲラ笑った青崎有吾さんのメカくらりは別枠として、高山羽根子さん、笹原千波さん、の作品が特に好きだった。
■笹原千波『手のなかに花なんて』
肉体を捨てて情報人格として生きることを選べる世界。花と料理と。
■柞刈湯葉『記憶人シィーの最後の記憶』
あれ、なんかいまいちだった。
■宮西建礼『冬にあらがう』
いつもの宮西さんの、高校生が静かに世界を救うモノなのだが、AIが絡んできた。私いまいちまだ人工知能なるもののすごさがわかってなくて。やっぱ人間その程度のことも考えるのやめちゃだめじゃない?検索 -
-
Posted by ブクログ
「本にだって雄と雌があります」(小田 雅久仁)を読んだ。
半分くらいまでは最後まで読むべきかどうか迷いながらの読書であったため、ずいぶん時間がかかってしまった。
『はっきり言ってあまり好みじゃないな。 はしゃぎっぷりが痛々しく上滑りしていると思うのだよ。 「残月記」は面白かったし「禍」も面白そうなんだけどなぁ。 どうしようかなぁ。』
が、しかし、半分過ぎたあたりから急に物語が動き出す。
『これは本当の本好きが読むべき物語なのではなかろうか。 混乱がほどけていく過程が心地よいのだ。 小田 雅久仁さんにしてやられたなぁ』
と、感想が変わっていく。
最後に気になった一行を引く。 『否、き -
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレこれは…なんと言ったらいいのだろう。
たぶんタイトルを見てなんらかの物語を想像したとしても、多分違っています。
本に雄と雌があって、増殖していく話ではあるけれど、それがメインじゃないんだな。
語り手の祖父・與次郎が繰り広げる怒涛の大阪弁。
嘘か真かやっぱりデタラメか!?
最後まで読めば、本好きの人だったらうっとりするか涙をこぼすかはわからないけど、きっと心を動かされるはず。
でもだけど、前半部分が冗漫なのが、もう辛い。
必要なのはわかる。
後半の感動の種は、ダジャレと駄法螺と繰り返しの中にしっかりと埋め込まれているのだから。
でも、辛いんだなあ、読んでいて。
次回はぜひ、テンポとリズムの