小田雅久仁のレビュー一覧
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ネタバレ月をめぐる、3篇の物語。
日本SF大賞受賞作ではありますが、鴨のイメージは「幻想譚」です。それも、かなり重く、冷たく、じっとりと濡れた味わいの作品ばかりです。
結末らしきものがあるのは、表題作である中編「残月記」のみ。他の2篇は、救いようのない状況でスパッと物語の幕が閉ざされます。はっきりした結末を求める方には、全力で「読まない方が良い」とお勧めします(汗)
要するに、ひたすら暗い作風なわけですが、暗さゆえに、いやむしろ暗いからこそ滲み出る、独特の美学が全作品を貫いています。
どの作品にも共通している構成は、「現実」と「もう一つの世界」の二重構造になっていること。これが例えばディックであれば -
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ネタバレ本屋さんで流し読みして、あまりにも素敵な文章に惹かれて購入させてもらいました。
三篇全て読みましたが、作家さんってすごい……
そんな今更なことを痛感させられた作品となりました。
迫害される感染者の悲劇のストーリーか、ディストピアを舞台にした熱い戦いの物語が展開されると思いきや。
最後はやり過ぎなくらい壮大でロマンチック、月世界の中心で愛を叫ぶという意外な結末。
読んでると恥ずかしくなる恋愛小説を読んだ時のあの現象。
それを体感するとは全く思っていなかったので、とても不意を突かれた。
表題作の<残月記>は特に、作者の尋常でない想像(創造)力と洗練された表現力をひたすらにぶちまけられるような作 -
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1.登場人物
「食書」の主人公……黒木。売れない小説家。ショッピングモールで本を食べる女性と遭遇する。
「耳もぐり」の主人公……中原。私立大学に勤める非常勤講師。
「喪色記」の主人公……彼。滅びの夢を見る元会社員。
「柔らかなところへ帰る」の主人公……彼。飲料メーカーに勤める生真面目で奥手な男。
「農場」の主人公……輝生。宿なしの若者。28歳。
「髪禍」の主人公……サヤカ。切られた髪を嫌悪する女性。33歳。容姿は悪くないが、自らを「壊れかけの人生を生きていた」という。
「裸婦と裸夫」の主人公……圭介。あがり症。うだつのあがらない三十男。
2.物語の始まり
食書……離婚により現在、一人暮らしを -
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「月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3編が入っている。
いずれも主人公がとんでもない苦難に遭うディストピア小説で、後ろに行くほどに悲惨さが増していく。
ディストピアという事で生命が脅かされる極限状態が出てくるが、そこでは世間一般での価値観でなく、自らのうちから湧き上がる本能(生と性)や愛・尊厳といった事柄と向き合うことになる。
終始、暗い話が続くが色々あるけど安楽な現実社会から、もしこのようなディストピアに落とされたら自分ならどうなるだろうとは夢想する。
明日、死ぬかもしれない、どうにか生きたいと思う縁を考えさせられる小説だった。
特に残月記は架空の疫病を下地としながら見事に世 -
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小田雅久仁『残月記』双葉文庫。
初読み作家と思ったら、『本にだって雄と雌があります』の作者だった。当時、評判の高かった『本にだって雄と雌があります』は自分の肌には合わなかったので、この『残月記』を読むのには些か抵抗を感じる。
吉川英治文学新人賞と日本SF大賞のW受賞で、月をモチーフにした短編集のようだ。『そして月がふりかえる』『月景石』『残月記』の3編が収録されている。
いずれの短編も日常を遥かに超越した非日常的な世界が描かれる。通常のSF小説では有り得ないような文学的な表現が現実味を感じさせる不思議な短編SF小説だった。
『そして月がふりかえる』。一種のパラレルワールドSF短編。文 -
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全部は読んでいない。GENESISが雑誌になって、ノリの良さが前面に出た感じ。これもまた良いな。
ゲラゲラ笑った青崎有吾さんのメカくらりは別枠として、高山羽根子さん、笹原千波さん、の作品が特に好きだった。
■笹原千波『手のなかに花なんて』
肉体を捨てて情報人格として生きることを選べる世界。花と料理と。
■柞刈湯葉『記憶人シィーの最後の記憶』
あれ、なんかいまいちだった。
■宮西建礼『冬にあらがう』
いつもの宮西さんの、高校生が静かに世界を救うモノなのだが、AIが絡んできた。私いまいちまだ人工知能なるもののすごさがわかってなくて。やっぱ人間その程度のことも考えるのやめちゃだめじゃない?検索 -
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「本にだって雄と雌があります」(小田 雅久仁)を読んだ。
半分くらいまでは最後まで読むべきかどうか迷いながらの読書であったため、ずいぶん時間がかかってしまった。
『はっきり言ってあまり好みじゃないな。 はしゃぎっぷりが痛々しく上滑りしていると思うのだよ。 「残月記」は面白かったし「禍」も面白そうなんだけどなぁ。 どうしようかなぁ。』
が、しかし、半分過ぎたあたりから急に物語が動き出す。
『これは本当の本好きが読むべき物語なのではなかろうか。 混乱がほどけていく過程が心地よいのだ。 小田 雅久仁さんにしてやられたなぁ』
と、感想が変わっていく。
最後に気になった一行を引く。 『否、き -
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