小田雅久仁のレビュー一覧
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短編の残月記は、月昂のことより、下條による独裁国家のリアルさと気持ち悪さがすごい印象的だった。やっぱり独裁政治は、一部の人を人扱いしないことで、支配者側が自尊心とか欲を満たす仕組みになって、特に理由もなく支配者側から転落してしまって、そうしたら尊厳も誇りも全部失って救いもなくなっちゃうんだと思った。その辛さを詩とか木彫とか芸術に反映させて優れた作品が出たとしても、それは全然喜ばしいものではなく負の遺産的なものになっちゃうし、更にそれを糧として乗り越えようみたいに無関係の人が芸術として享受するのは傲慢だなあとも思った。(まあ糧とするしかないんだけど)
下條に対する便器のような白い歯っていう表現が好きすぎて笑った。あと、愛してるということは愛し続けるということで闘士であり月昂である自分が口にできる言葉ではないって考えてた後、昆冥期で死に行くときに愛してるって伝えたところがめっちゃよかった。 -
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ネタバレなんだろう。
とても不思議な魅力のある小説です。
完全にSFなのに、月の持つ不思議な力に魅せられてしまう。ある日突然月の表裏が変わって自分が自分でなくなってしまう日が本当に来るような、そんな気分になるし、読後数日そんなありもしないことをふと月を見ると考えてしまって怖くなる。
短編2編と中編1編で構成されており、中編の残月記に関してはもはや完全にSFであるが、何故か惹き込まれる。どこかにこんな世界があるかもしれないと思わされる。
それほどまでに、月の持つ不気味で不思議ななにかがあると私たちは知っている。
新月には出産が多い。
満月が近づくと月経が起こる。
月にまつわる不思議な迷信のようなものを聞いたことがあるのも、月が何かしら不思議な力を持っており、それに一度でも魅せられたらもう、その世界にハマってしまうのかもしれない。
不思議な世界に飛び込める静かで不思議な体験でした。
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月が関係するSFファンタジー短編中編集
短編2つに表題作の中編1つ
・そして月がふりかえる
研究者として不遇の人生を歩みながも、やっと社会的にも認められてきた主人公
家族とのささやかな幸せな生活を送る中、日常的に行くファミレスで見上げた月が裏返ったのと同時に、家族が入れ替わった世界になってしまう
妻や子供の姿形は同じで、自分の歩んだ人生も同じなのに、別人がその地位に収まり、自分はまた別の冴えない人生を送っている事になっている世界
ファミレスを出てから、彼が何をしようとしているのが疑問だったけど
なるほど、話しをしたかったのか
気持ちはわかるが、その結果は悲しくも……
著者は、希望を持てるラストにしたという事で、最後の展開は長大な物語の導入にも思える
でも、ここで終わりなのだな
彼は元の世界に戻る事ができたのか、またはこの世界で同じような人と何かをしたのか
どっちでしょうね?
・若い叔母が遺した、月の風景が表面に浮かぶ石
月景石を枕の下に入れて眠ると月に行けるという
しかし、悪夢のためお薦めはしないとの事
月景石を枕の下に入れて眠ると、月の世界に生きる別人としての夢を見る
そして、目覚めると、最近付き合い始めた斎藤と同棲する部屋の隣に住む家族の女子中学生が元からいない事になっていた
月の世界の行く末と、こちらの世界の改変についてのお話
河原の何でも無い石を拾う叔母
世間の認知としては低いけど、「水石」という文化が昔からある
自然石の模様を何かに見立てて、台座や箱なども専用で作るとかね
なので、叔母が「風景石」と名付ける行為はそんなに不思議ではない
あと、ヤスリで磨くとものすごくピカピカになったりするけど、人の手が加わってない方がいいという人も多いので、そこはもう完全に好みの問題ですね
それはそうと、月の世界の方
イシダキと呼ばれる種族(?)
叔母が悪夢と言っていた理由はそこなのだろうな
結果、こちらの世界でも若くして亡くなることになった
もしかして、叔母が月の世界に行くことになったので、今の世界も既に改変された世界という可能性があるな
・残月記
独裁者に支配された近未来の日本
人々を恐怖させている感染症・月昂病
月の満ち欠けに応じて精神の躁鬱が連動し、昏冥期には3%程度の人が亡くなってしまう
逆に、明月期には身体能力の向上があり、また攻撃性や性欲の発露が問題視されている
また、精神的な高揚もが見られ、創作活動で名を成した人もいる
感染が発覚した場合は、療養院に送られ、世間とは隔絶した状態で一生を過ごすことになる
主人公の宇野冬芽は、本来ならば療養院に送られるところ
格闘技好きの独裁者の意向で開催されている、月昂者達による剣闘士として命を賭けて戦う事になる
彼は何の為に戦ったのか?
そして、彼の人生の最期とは
特定の病気の隔離政策と療養所の描写は、ハンセン病を思わせる
他にも、優生保護法に基づいて、許されない処置を行ってきた歴史があるので、まったくの絵空事には思えないリアリティを感じる
独裁体制の成立にしても、独裁者は民主主義から生まれる側面もあったりするので、荒唐無稽なストーリーではない
結局、どの話も理由や原因の説明がされないところが消化不良
この辺の世界観の説明がされているかが気になってしまう私はSF設定やファンタジーの適性がそんなに高くないのだろうなぁ
それにしても、3つの話に関連性はない、のか?
一応、「月の裏側世界」という共通点があるような気はする
それぞれの世界は同じでなくとも、こちらの世界が瞬時にして変わってしまうように、月の世界も改変されているものの、元は共通の世界だったりしないだろうか?
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ダークファンタジー×愛×ディストピア。全編「月」をモチーフにした、超弩級エンターテインメント!
計り知れぬ想像力が構築した三つの異世界。
「そして月がふりかえる」
不遇な半生を送ってきた男がようやく手にした、家族というささやかな幸福。
だが赤い満月のかかったある夜、男は突如として現実からはじき出される。
「月景石」
早逝した叔母の形見である、月の風景が表面に浮かぶ石。生前、叔母は言った。石を枕の下に入れて眠ると月に行ける。
でも、ものすごく「悪い夢」を見る、と。
「残月記」
近未来の日本、人々を震撼させている感染症・月昂に冒された若者。
カリスマ暴君の歪んだ願望に運命を翻弄されながら、抗い続けてゆく。愛する女のために。
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タイトルに惹かれて、手に取ってみた。
「明月記」と言えば藤原定家だが「残月記」とは。
「そして月がふりかえる」「月景石」の中短編と、
表題の「残月記」三篇の一作。
全てが月をテーマに、物語が描かれている。
一番好みだったのは「月景石」か。
日常から夢へ、日常から月の世界へと飛び、SFであるがファンタジー色も強い。
「そして月は……」この作品も日常から急速に月の変化によって引き剥がされ、ラストは急展開で終わる。
最も長い表題作の「残月記」が、やはり一番精緻に書かれているとは思った。ディストピアSF小説とも、ファンタジーとも、恋愛小説とも読め、読後感もすっきり。
ただ、ウィルスとして感染するはずの疫病の感染対策の扱いが、少し雑に感じた。既存の歴史上のとある病気と似た隔離政策を思い、私の中で少し持て余す感じを覚えた。
それでも、全て読み終わると、著者の想像力の凄まじさを感じた。月からここまで生み出すとは。月に関する小ネタやエピソードが大量に詰め込まれている。
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ネタバレ月をめぐる、3篇の物語。
日本SF大賞受賞作ではありますが、鴨のイメージは「幻想譚」です。それも、かなり重く、冷たく、じっとりと濡れた味わいの作品ばかりです。
結末らしきものがあるのは、表題作である中編「残月記」のみ。他の2篇は、救いようのない状況でスパッと物語の幕が閉ざされます。はっきりした結末を求める方には、全力で「読まない方が良い」とお勧めします(汗)
要するに、ひたすら暗い作風なわけですが、暗さゆえに、いやむしろ暗いからこそ滲み出る、独特の美学が全作品を貫いています。
どの作品にも共通している構成は、「現実」と「もう一つの世界」の二重構造になっていること。これが例えばディックであれば、現実と虚構が入り混じっていく様を描き出すことでストーリー展開を次の次元に引き上げる/引き下げる効果を生み出すのですが、小田作品においては、二つの世界は基本的に交わることはありません。お互いに多少の干渉はしつつも、どちらの世界も取り残されたままに終わります。この、一抹の希望もないまま結末で放り出される登場人物たちが最後に描く、不思議な諦観。鴨はここに、上手く言えないのですが「後ろ向きの美しさ」を感じます。ある意味、東洋的な価値観なんですかねー。
小田作品が翻訳されて欧米のSFファンの手に渡ったら、どのような評価をされるのか、聞いてみたいです。 -
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ネタバレ本屋さんで流し読みして、あまりにも素敵な文章に惹かれて購入させてもらいました。
三篇全て読みましたが、作家さんってすごい……
そんな今更なことを痛感させられた作品となりました。
迫害される感染者の悲劇のストーリーか、ディストピアを舞台にした熱い戦いの物語が展開されると思いきや。
最後はやり過ぎなくらい壮大でロマンチック、月世界の中心で愛を叫ぶという意外な結末。
読んでると恥ずかしくなる恋愛小説を読んだ時のあの現象。
それを体感するとは全く思っていなかったので、とても不意を突かれた。
表題作の<残月記>は特に、作者の尋常でない想像(創造)力と洗練された表現力をひたすらにぶちまけられるような作品。
ファンタジー色の強い作品は、設定の押し付けで辟易することが多々あるのですが、それすら感じさせないような迫力で圧倒されました。
私は特に残月の木彫りの像に、全てが収束していく様子が、読んでいて気持ちよかったです。
非常に濃い世界観を壮麗な文章で味わいたい。
そういった人にはきっと良い作品になると思います。 -
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「月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3編が入っている。
いずれも主人公がとんでもない苦難に遭うディストピア小説で、後ろに行くほどに悲惨さが増していく。
ディストピアという事で生命が脅かされる極限状態が出てくるが、そこでは世間一般での価値観でなく、自らのうちから湧き上がる本能(生と性)や愛・尊厳といった事柄と向き合うことになる。
終始、暗い話が続くが色々あるけど安楽な現実社会から、もしこのようなディストピアに落とされたら自分ならどうなるだろうとは夢想する。
明日、死ぬかもしれない、どうにか生きたいと思う縁を考えさせられる小説だった。
特に残月記は架空の疫病を下地としながら見事に世界観が作り上げられている。 -
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全部は読んでいない。GENESISが雑誌になって、ノリの良さが前面に出た感じ。これもまた良いな。
ゲラゲラ笑った青崎有吾さんのメカくらりは別枠として、高山羽根子さん、笹原千波さん、の作品が特に好きだった。
■笹原千波『手のなかに花なんて』
肉体を捨てて情報人格として生きることを選べる世界。花と料理と。
■柞刈湯葉『記憶人シィーの最後の記憶』
あれ、なんかいまいちだった。
■宮西建礼『冬にあらがう』
いつもの宮西さんの、高校生が静かに世界を救うモノなのだが、AIが絡んできた。私いまいちまだ人工知能なるもののすごさがわかってなくて。やっぱ人間その程度のことも考えるのやめちゃだめじゃない?検索エンジンと電卓だけでじゅうぶんだよと、思う今日。
■熊倉献『空中楼閣』(まんが)
ラストかっけー。
■高山羽根子『その場所の名前を』
ラスト直前シーン起こったことの解釈がまだできていないが、気になる要素たくさん(場所当てゲーム、これまたAIなど)。
■宮澤伊織『ときときチャンネル#6【登録者数完全破壊してみた】』
数学?理論?
■アイ・ジアン『英語をください』
言語を単語単位で取引できるようになった近未来。初めて見たアイデア。
■青崎有吾『くらり vs メカくらり』
遊び過ぎ!東京創元社IZAMファン多過ぎ!(面白かった)
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「本にだって雄と雌があります」(小田 雅久仁)を読んだ。
半分くらいまでは最後まで読むべきかどうか迷いながらの読書であったため、ずいぶん時間がかかってしまった。
『はっきり言ってあまり好みじゃないな。 はしゃぎっぷりが痛々しく上滑りしていると思うのだよ。 「残月記」は面白かったし「禍」も面白そうなんだけどなぁ。 どうしようかなぁ。』
が、しかし、半分過ぎたあたりから急に物語が動き出す。
『これは本当の本好きが読むべき物語なのではなかろうか。 混乱がほどけていく過程が心地よいのだ。 小田 雅久仁さんにしてやられたなぁ』
と、感想が変わっていく。
最後に気になった一行を引く。 『否、きっと書物とは全て祈りなのであろう。』(本文より)