【感想・ネタバレ】残月記のレビュー

あらすじ

月昂と呼ばれる感染症が広がり、人々を不安に陥れている近未来の日本。一党独裁政権が支配する社会で、感染した青年、冬芽は独裁者の歪んだ願望により、命を賭した闘いを強いられる。生き延びるため、愛を教えてくれた女のため、冬芽は挑み続ける(表題作)。「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力と卓越した筆力が構築した、かつて見たことのない物語世界。本屋大賞ノミネート、吉川英治文学新人賞&日本SF大賞W受賞という史上初の快挙を成し遂げた真の傑作。

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Posted by ブクログ

こんなに引き込まれたのは久しぶり、というくらい世界にのめり込めた。3作の中編集だが、どれも月をテーマにしており一貫性のある一冊。純文学ぽさがあるけれどもSF的に楽しめた。
個人的には3編目の表題作よりも、2編目のイシダキの話が面白かった。この世界観で長編書けるだろと思ったし、もっと読みたかった。
1編目は読み始めて普通の私小説というか家族小説的になるかと思いきやまさかの別人入れ替わりのホラー小説で虚をつかれ、イシダキの話は設定の奇抜さと大胆な場面転換にドキドキし、最後の残月記はディストピア小説としてもやり過ぎだろと感じてしまったが、十分に主人公に感情移入できた。
本当にオリジナリティのある良い物語だった。

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2025年05月16日

Posted by ブクログ

表題作の「残月記」が、あまりにも素晴らしすぎた。個人的に好きな舞城王太郎に匹敵する程の、深い愛の物語だった。

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2025年05月03日

Posted by ブクログ

このジャンルの小説は初めてでしたが、第一話が何となく中途半端のような感じを受けた。しかしながら第三話を読み終えた時にこの構成にした作者の意図が分かるような気がした。よくぞここまでと思うような想像力、非現実的ではあるけれども一つひとつの描写に圧倒的な力がこもった表現で読み終えたあともずっと余韻が残る作品でした。

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2024年12月20日

Posted by ブクログ

【残月記はぜひ最後まで粘って読んでほしい】
読み応えがすごい。同じ1ページでもそこらの小説の3ページ分くらいの手応えがある。それは文が難解だとか文字量が多いとかそういうことではなく、読み逃してはいけない、美しい心情や情景描写がそう感じさせるものです。

共通して、「いつか見た、一生忘れられない異世界の夢」と表現したい世界観。
一度読んだらその異質で幻想的な情景が記憶に残り続けると思います。
最初の2作はさくっと読めます。面白い。
3作目の残月記、、これは、最後まで読めたらこの3作の中で最も美しく、そして泣ける作品だとわかるのですが。
いかんせん説明パートが長すぎて、何度も寝落ちしました。そこだけ耐えてほしい、耐える価値があると、共有しておきます。

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2024年11月30日

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〈そのいかにも明月記らしい根拠のない楽観は、冬芽にも手に取るように理解できた。それがなければ闘士はとうていアリーナには出てゆけないし、勲婦も飢え昂ぶる闘士のもとに赴くことはできないだろう。第二養成所に皮肉な言葉が伝わっている。人びとが無謀と呼ぶものを、月昂者は希望と呼ぶ、と。〉

 一党独裁政権が敷かれ、警察国家化が進む日本。感染症〈月昂〉が猛威をふるう中で、総理大臣の下条拓は、月昂感染者を隔離する法律を制定する。表題作はそんなディストピアな世界で、月昂者の宇野冬芽は下条が歪んだ欲望を満たすために建てた救国党が内々に開催する闘技会の剣闘士として、望まぬ闘いに身を投じていく。そんな中で冬芽はひとりの女性と出会い……というのが、表題作の導入で、作られた世界の中で、ひとりの男の想いが、新たな世界を創っていく。とても美しい恋愛小説だと思いました。

 三つの中篇サイズの物語が、それぞれ独立して並んでいるのですが、どれも『月』という点、そして現実と幻想がシームレスになっている点、で共通していて、とても不思議な魅力にあふれていました。文章も濃密で、長編、二、三冊くらい読んだかのようなずっしり感がありました。

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2024年11月17日

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ネタバレ

月をめぐる、3篇の物語。
日本SF大賞受賞作ではありますが、鴨のイメージは「幻想譚」です。それも、かなり重く、冷たく、じっとりと濡れた味わいの作品ばかりです。
結末らしきものがあるのは、表題作である中編「残月記」のみ。他の2篇は、救いようのない状況でスパッと物語の幕が閉ざされます。はっきりした結末を求める方には、全力で「読まない方が良い」とお勧めします(汗)

要するに、ひたすら暗い作風なわけですが、暗さゆえに、いやむしろ暗いからこそ滲み出る、独特の美学が全作品を貫いています。
どの作品にも共通している構成は、「現実」と「もう一つの世界」の二重構造になっていること。これが例えばディックであれば、現実と虚構が入り混じっていく様を描き出すことでストーリー展開を次の次元に引き上げる/引き下げる効果を生み出すのですが、小田作品においては、二つの世界は基本的に交わることはありません。お互いに多少の干渉はしつつも、どちらの世界も取り残されたままに終わります。この、一抹の希望もないまま結末で放り出される登場人物たちが最後に描く、不思議な諦観。鴨はここに、上手く言えないのですが「後ろ向きの美しさ」を感じます。ある意味、東洋的な価値観なんですかねー。
小田作品が翻訳されて欧米のSFファンの手に渡ったら、どのような評価をされるのか、聞いてみたいです。

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2025年04月13日

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ネタバレ

本屋さんで流し読みして、あまりにも素敵な文章に惹かれて購入させてもらいました。
三篇全て読みましたが、作家さんってすごい……
そんな今更なことを痛感させられた作品となりました。

迫害される感染者の悲劇のストーリーか、ディストピアを舞台にした熱い戦いの物語が展開されると思いきや。
最後はやり過ぎなくらい壮大でロマンチック、月世界の中心で愛を叫ぶという意外な結末。
読んでると恥ずかしくなる恋愛小説を読んだ時のあの現象。
それを体感するとは全く思っていなかったので、とても不意を突かれた。

表題作の<残月記>は特に、作者の尋常でない想像(創造)力と洗練された表現力をひたすらにぶちまけられるような作品。
ファンタジー色の強い作品は、設定の押し付けで辟易することが多々あるのですが、それすら感じさせないような迫力で圧倒されました。
私は特に残月の木彫りの像に、全てが収束していく様子が、読んでいて気持ちよかったです。

非常に濃い世界観を壮麗な文章で味わいたい。
そういった人にはきっと良い作品になると思います。

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2025年03月04日

Posted by ブクログ

月を題材にしたSF小説3篇。
自分の人生を乗っ取られた男。
月の世界でイシダキとなる女。
そして月の病に翻弄される男の話。
文章の一文一文に手がかけられていて、読むのは遅くなりましたが非常に味わい深い作品となりました。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

「月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3編が入っている。
いずれも主人公がとんでもない苦難に遭うディストピア小説で、後ろに行くほどに悲惨さが増していく。

ディストピアという事で生命が脅かされる極限状態が出てくるが、そこでは世間一般での価値観でなく、自らのうちから湧き上がる本能(生と性)や愛・尊厳といった事柄と向き合うことになる。

終始、暗い話が続くが色々あるけど安楽な現実社会から、もしこのようなディストピアに落とされたら自分ならどうなるだろうとは夢想する。
明日、死ぬかもしれない、どうにか生きたいと思う縁を考えさせられる小説だった。

特に残月記は架空の疫病を下地としながら見事に世界観が作り上げられている。

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2024年12月29日

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小田雅久仁『残月記』双葉文庫。

初読み作家と思ったら、『本にだって雄と雌があります』の作者だった。当時、評判の高かった『本にだって雄と雌があります』は自分の肌には合わなかったので、この『残月記』を読むのには些か抵抗を感じる。

吉川英治文学新人賞と日本SF大賞のW受賞で、月をモチーフにした短編集のようだ。『そして月がふりかえる』『月景石』『残月記』の3編が収録されている。

いずれの短編も日常を遥かに超越した非日常的な世界が描かれる。通常のSF小説では有り得ないような文学的な表現が現実味を感じさせる不思議な短編SF小説だった。


『そして月がふりかえる』。一種のパラレルワールドSF短編。文章が極めて文学的で少しもSFぽくない。子供の頃、当たり前のことに恐れ慄いていたことが、大人になり、現実となる恐ろしさ。

『月景石』。平穏な日常が次第に違う世界と交錯していく。2つの世界を繋ぐ不思議な石。平穏な日常と思われていたのは……

『残月記』。表題作。『月昂』と呼ばれる感染症が広がり、人々を不安に陥れている近未来の日本では、一人の独裁者による一党独裁政権が支配が行なわれていた。そんな社会で感染者である青年の宇野冬芽は独裁者の歪んだ願望により、剣闘士として命を賭した闘いを強いられる。生き延びるため、愛を教えてくれた女のため、冬芽は挑み続けるが……

本体価格850円
★★★★

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2024年11月23日

Posted by ブクログ

月にまつわる話が3作。めっちゃ濃密度が濃いです。3つの物語が繋がってるわけではなくそれぞれが独立しています。世界観がどれもちょっと違ってくるので、話に慣れるのに時間がかかるが、慣れてしまえば面白い。強いていうなら少し中盤の展開スピードが遅くなったように感じられたかな。
だけど、ストーリー的には好きな人はいると思うストーリーなので、ぜひ気になった方には読んでほしい作品です。

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2024年11月20日

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作者の頭の中の世界が、勢いのある文章で流し込まれてくる感覚。
電車の中で読むことが多かったのですが、世界観が強すぎて頭がおかしくなりそうになったり……
それも含めて楽しかったです。脳内に余裕があるときにぜひ、小田ワールドに浸ってみては?

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2025年11月09日

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とても重苦しく冷えた世界観がひろがっていた。ありえない奇妙なできごとが起こっているが、自分の身にも起こるのではないかと変な感覚に襲われた。
とてももやもやする作品。ハッピーエンドであるとはっきりと言えない。物語自体に起伏があり激情もあるが、淡々と静かに進んでいく。静かな世界だからこそ日常のすぐ隣に広がっているような感じがした。

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2025年08月01日

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2025.05.03

話題の本のようなので購入してみた。
短編が3作で、最初の話はよくわからなかった。

表題作の残月記は3作の中でもダントツに面白くて一気に読み終わってしまった。
「禍」は表紙が気持ち悪過ぎて挫折したけど、もう一度挑戦してみようかなと思えた。

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2025年05月05日

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「そして月がふりかえる」「月景石」「残月記」の3作が収められている。
「残月記」は世界観がよく出来ていると思う。

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2025年03月01日

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うーん。。
いまいちハマり切れなかった

1番初めの物語をもっと読みたかったのでここで終わり?!と消化不良状態になった

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2025年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これが希望の物語か?救いのない物語だとしか受け止められなかった。SFとしての描写の迫力はあったが、愛は虚無だったな。手塚治虫「火の鳥」鳳凰編のオマージュのようであった。

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2025年01月29日

Posted by ブクログ

3編の月にまつわる短編小説。
SFやファンタジーの小説をあまり読むことがなかったので不思議な世界観で面白かった。
小田さんの小説は初めてだったけど、登場人物達の何気ない言葉の掛け合いがとても素敵だと感じた。
特に「そして月がふりかえる」のファミリーの会話が素敵で、しかしそのストーリーとのギャップにびっくりする。

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2025年01月07日

Posted by ブクログ

初めて食べる料理のような感覚
美味しかったのか
美味しくなかったのか
説明も判断も難しいが
お腹いっぱいになった

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2024年12月23日

Posted by ブクログ

月に関連する幻想的な3つの異なる話なのだけれど,3つの話を掲載順に読むと単独で読んだときには味わえなかった不思議な印象を与える,そんな小説.

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2024年12月13日

Posted by ブクログ

あまり得意なジャンルでは無いが話題作との事で

とにかく世界観に圧倒されました
ストーリー、構成、人物描写等々…凄い
読み続けて正解でした

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2024年12月12日

Posted by ブクログ

表題作の「残月記」だけ読んだ。いろいろと怖すぎ。特に日本が一党(一人)独裁の政治体制になってることに震撼する。

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2024年12月08日

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