中島らものレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
アルコール依存の克明な記録。
ここまで細かく書くのか、と正直少しうんざりした。
それでも読み進めたのは、単なる闘病記では終わらないものがあったから。
病院でお世話になった先生、出会った個性豊かな入院患者たちとの交流の様子は、流石、らも氏のユーモアで生き生きと描かれている。
作中で語られる『シェーン』
ひとりで去って行くヒーローを「カッコいい」と言い切りながら、同時に「ずるい」とも言う。
去る者は物語を終わらせられる。でも残る側は、生き続けなければならない。その視点に、らも氏の死生観を感じた。
中に出てくる「階段から落ちる」「頭を打つ」という何気ない言葉。作品だけを読んでいれば気にも留めなかったかもしれない。でも、らも氏の最期を知っているから、それは不吉に響いた。ただの読後のざわめきなのだが。
ずるさも弱さも抱えたまま、書かれた小説。
読み終えて、やはり晴れやかにはならない。
「すべての酒飲みにささげるアル中小説」
心して読んでほしい。
-
Posted by ブクログ
エンタメの傑作として名高い「ガダラの豚」シリーズ、ついに完結。
読後の感想を一言で言うなら、完全にガダラロスである。
毎日嬉々として、少しずつ、でも可能な限り時間を割いて読んでいた物語が終わってしまった。
これを書いている今は、ただただ寂しくてしょうがない。
3巻でまず驚かされたのは、そのスピード感だ。
名作スプラッター映画『13日の金曜日 PART8/ジェイソンN.Y.へ』になぞらえるなら、本作の最終章もいわば「バキリ、東京へ」という趣向。
ただし、ジェイソンがクリスタルレイクから船でニューヨークへ向かう2部構成なのに対し、本書の怪僧バキリは開始早々すでに半年も前から大生部教授と同じ東京に到着している。
この時点で、物語はすでにフルスロットル。
志村うしろー!!!状態だ。
最終章と聞けば、荒俣宏『帝都物語』よろしく、これまで登場してきた濃厚なキャラクターたちとバキリの超能力バトルを期待しながら読み進めるわけだが、物語の進行は私の予想とは少し違っていた。
しかし、2巻をはるかに上回る死者数、スケールアップした超能力、ハチャメチャな展開の連続にもかかわらず、物語は見事に東京での大団円へと収束していく。
急な設定変更なども感じつつ、なるほど、そう繋げるのかと唸らされた。
最終巻については「ご都合主義」と感じる人がいても不思議ではない。
だって、これは娯楽小説なのだから!
そして娯楽小説として、これ以上ない仕事をしている。
読み終えた瞬間に、ここまでのカタルシスと寂寥感を同時に味わわせてくれる作品は、そう多くない。
本当に、出会えてよかった一作だ。
面白かったです。どうもありがとう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレケニアから逃げ帰った大生部たちを追い、バキリが日本へとやってくる。
全ての因縁に決着がつく、シリーズ最終巻です。
舞台が日本に戻ったことで、秋山やミラクルをはじめ、1巻から登場してきた主要キャラクターたちが総出演する構成となっており、シリーズの集大成としての手応えをしっかり感じさせてくれます。
本物の超能力が登場したことで、宗教物としてのジャンルがやや変質した印象は否めません。
しかし、未知の力に対して心理学やトリック、専門知識で対抗していくという「アカデミックとエンタメを結びつけたサスペンス」の魅力は健在です。
何より、癖の強いキャラクターたちによる人間ドラマが最後まで濃密に描かれており、読み応えのある一冊でした。
今作で最も胸を打つのは、やはり清川ですね。
「かつては本物の超能力者だったペテン師」という設定が魅力的で、彼が力を取り戻す場面では思わず胸が躍りました。
それだけに、直後に無残な最期を迎える展開は衝撃的で、強い喪失感を覚えました。
彼が失敗した「エレベーターのワイヤー昇り」を終盤に大生部が成し遂げるシーンがとても良かったです。
清川が果たせなかった志織の救出を、大生部が引き継いだような展開に、思わず泣きそうになりました。
今回はスラッシャー的な要素が強く、宗教ものとしての色合いはやや薄まった印象です。
シリーズを通して描かれてきた「奇跡と詐欺」「毒と薬」といった二項対立は、今作では「砦と槌」という、よりシンプルで暴力的な構図へと収斂していきます。
まず安全圏を確保し、次に外敵を排除する。宗教や神を、信仰ではなく「力」として捉え直した物語、とも読めるのかもしれません。
馬飼が語る「テレビとは、安全圏から他人の死を眺めるための装置だ」という言葉が非常に印象的でした。
この視点はバキリの生き方とも通じており、おそらく本作における宗教観や暴力観の核心に触れる部分なのだと思うのですが…。
ただ、正直なところ、今作では何を伝えたいのかが掴みきれなかった面もありました。
それでも、シリーズ全体を通して積み上げてきたテーマとキャラクターの行き着く先として、この混沌とした最終巻は強く印象に残ります。
濃いキャラクター達による人間ドラマとして十分に楽しめました。 -
Posted by ブクログ
ものすごく久しぶりに中島らもを読んだ。おもしろいな。200ページちょっとで、語りのような感じなので、すぐに読める。
全体を通して笑いに溢れ、またどこなくセンチメンタルな趣のある本だった。
タイトルの「アマニタ・パンセリナ」は、テングタケのこと。毒キノコだ。
本書は、著者の体験した各種ドラッグの記録エッセイである。睡眠薬、シャブ、阿片、幻覚サボテン、ガマの油、大麻、抗うつ剤、アルコール……。凄まじい。ここまでの遍歴を持ち、かつ毒物に関する古今の本を読んできた著者だからこそ、「シャブは愚劣なドラッグ」と断言する言葉には納得感がある。
本書は、雑誌の連載をもとにしたもののようだ。最終回は「アルコール」である。上記の中では一見大丈夫そうなアルコールだが、やはり著者のような大酒飲みは話が違う。断酒までの総量を考えると、幅5メートル×長さ7メートル×深さ1メートルのプール一杯分くらいだという。もうよく分からないが、そりゃあかんわというところである。
また、山崎幹夫氏による解説も、なんだか素朴でよかった。以下に引用して終わる。
『アマニタ・パンセリナ』にはらもさんの人生観が横溢しているし、この本を読むと、らもさんの本を何から何まで読んでみたくなる。この本は、まさにらもさんの不思議な世界そのものである。