森鴎外のレビュー一覧
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森鷗外の文章は堅苦しい印象があり敬遠していたが、やはり読みづらかった。時折知らない言葉が出てきて、本の後ろに付属している注釈を使いながら読んだ。
ただ、山椒大夫と高瀬舟は内容を大体知っていることもあり、すんなりと読むことができた。この2作で特に印象に残ったのは、物語や題材よりも森鷗外の美しい日本語であった。多彩で的確な言葉遣いとテンポの良い文章は、ときに場面の情景を、ときに人物の寂しさや切なさを、頭の中にくっきりと浮かび上がらせた。同じ話を現代の作家が書いても出せないであろう味が、この2作品にはにじみ出ている気がした。
どちらの話も僕は涙なしでは読めない。
短いのであらゆる人に読んでほしい -
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ネタバレ表題作2作のほかでは「カズイスチカ」が印象に残った。
語り手である医師(花房学士)は、先輩医師である自分の父親(翁)を観察して以下のように述べる。
「翁は病人を見ている間は、全幅の精神を以て病人を見ている。そしてその病人が軽かろうが、重かろうが、鼻風だろうが必死の病だろうが、同じ態度でこれに対している。盆栽をもてあそんで(当コメント者注:実際に使用されている漢字に変換できず)いる時もその通りである。茶を啜っている時もその通りである。」(P.34)
「そのうち、熊沢番山(当コメント者注:番は実際の漢字に変換できず)の書いたものを読んでいると、志を得て天下国家を事とするのも道を行うのであるが、平 -
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ネタバレ【総評】
殉死について書かれた物語が2つ収録されており、日本における殉死文化の変遷を調べるきっかけになった本(時代ごとに意味が変わってることや意外と15世紀に禁止令が出てることを知れた)
また、森鴎外が年齢設定のミスを複数していることを斎藤茂吉が解説で述べており、森鷗外のような人でミスるなら、自分が色々とミスしても当然だよな、と自己肯定感が上がった
【興津弥五右衛門 】
命より誇りを大事する傾向が強い武士文化の時代に生まれなくてよかったなと思う。からかい一つが命取りになるなんて、俺は命がいくつあっても足りない
【阿部一族】
阿部一族よりも彼らに仕える部下がなぜ、討ち死にがほぼ確定する中 -
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ネタバレ[山椒大夫感想]
この物語は私が文学に求めている人間の本質の姿には深く迫らず、家族愛がメインで書かれていたので、あまり私にはしっくり来なかった。
人買いに買われ、その生活は非常に私の同情の念を引き起こした。弟や姉もいつかこの生活を脱したいと言う共通認識があったと見え、脱走に至ったのだと思う。姉が犠牲になるために、入水自殺したのは、一緒に脱走する仲間としてやってきた弟にとっては耐え難いものであったと思う。その犠牲を無駄にしまいと、弟が出世を果たし、最終的には生き別れた母に会った。だが、その感動の再会も母が老いぼれており、再会の中にも一抹の寂寞な感じがあった。
私も私のために身を粉にしてくれた -
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寒山拾得の言い伝え
寒山拾得の言い伝えを森鴎外が手短にまとめて書いている。同じ題名の芥川龍之介の短文にも登場する世捨て人 瘋狂の僧 寒山と拾得。この作品 鴎外の短文でも、どこが面白いのか 偉大なのか 真価はわからない。ただもったいぶった高官との対比が際立っている。