雁(新潮文庫)

雁(新潮文庫)

小説・文芸
539円 (税込)

2pt

貧窮のうちに無邪気に育ったお玉は、結婚に失敗して自殺をはかるが果さず、高利貸しの末造に望まれてその妾になる。女中と二人暮しのお玉は大学生の岡田を知り、しだいに思慕の情をつのらせるが、偶然の重なりから二人は結ばれずに終る……。極めて市井的な一女性の自我の目ざめとその挫折を岡田の友人である「僕」の回想形式をとり、一種のくすんだ哀愁味の中に描く名作である。(解説・竹盛天雄)

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    雁(新潮文庫)
  • タイトルID
    :
    2134210
  • 電子版発売日
    :
    2026年01月09日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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雁(新潮文庫) のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    158P

    森鴎外の雁って150頁ぐらいでそんなに短いはずなのに、なんか短くは感じないよね。高瀬舟も超短編だけど、短いけど内容が異常に詰まってるから短いとは感じないんだよね。芥川龍之介も短編しか出さないけど濃密だから、そっちのタイプだと思う。

    「 僕は人附合いの余り好くない性であったから、学校の構内で好く逢う人にでも、用事がなくては話をしない。同じ下宿屋にいる学生なんぞには、帽を脱いで礼をするようなことも少かった。それが岡田と少し心安くなったのは、古本屋が媒をしたのである。僕の散歩に歩く道筋は、岡田のように極まってはいなかったが、脚が達者で縦横に本郷から下谷[* 45]、神田[* 46]を掛けて歩いて、古本屋があれば足を止めて見る。そう云う時に、度々岡田と店先で落ち合う。「好く古本屋で出くわすじゃないか」と云うような事を、どっちからか言い出したのが、親しげに物を言った始である。」

    —『雁(新潮文庫)』森鴎外著


    「女はどんな正直な女でも、その時心に持っている事を隠して、外の事を言うのを、男程苦にしはしない。そしてそう云う場合に詞数の多くなるのは、女としては余程正直なのだと云っても好いかも知れない。」

    —『雁(新潮文庫)』森鴎外著

    「うん。己は随分人に馬鹿にせられ通しに馬鹿にせられて、世の中を渡ったものだ。だがな、人を騙すよりは、人に騙されている方が、気が安い。なんの商売をしても、人に不義理をしないように、恩になった人を大事にするようにしていなくてはならないぜ」

    —『雁(新潮文庫)』森鴎外著

    「お玉は父親を幸福にしようと云う目的以外に、何の目的も有していなかったので、無理に堅い父親を口説き落すようにして人の妾になった。そしてそれを堕落せられるだけ堕落するのだと見て、その利他的行為の中に一種の安心を求めていた。しかしその檀那と頼んだ人が、人もあろうに高利貸であったと知った時は、余りの事に途方に暮れた。そこでどうも自分一人で胸のうやもやを排し去ることが出来なくなって、その心持を父親に打ち明けて、一しょに苦み悶えて貰おうと思った。そうは思ったものの、池の端の父親を尋ねてその平穏な生活を目のあたり見ては、どうも老人の手にしている杯の裡に、一滴の毒を注ぐに忍びない。よしやせつない思をしても、その思を我胸一つに畳んで置こうと決心した。そしてこの決心と同時に、これまで人にたよることしか知らなかったお玉が、始て独立したような心持になった。」

    —『雁(新潮文庫)』森鴎外著

    「それからお玉が末造を遇することは愈厚くなって、お玉の心は愈末造に疎くなった。そして末造に世話になっているのが難有くもなく、自分が末造の為向けてくれる事を恩に被ないでも、それを末造に対して気の毒がるには及ばぬように感ずる。それと同時に又なんの躾をも受けていない芸なしの自分ではあるが、その自分が末造の持物になって果てるのは惜しいように思う。とうとう往来を通る学生を見ていて、あの中に若し頼もしい人がいて、自分を今の境界から救ってくれるようにはなるまいかとまで考えた。そしてそう云う想像に耽る自分を、忽然[* 226]意識した時、はっと驚いたのである。──────────────── この時お玉と顔を識り合ったのが岡田であった。お玉のためには岡田も只窓の外を通る学生の一人に過ぎない。しかし際立って立派な紅顔の美少年でありながら、己惚らしい、気障な態度がないのにお玉は気が附いて、何とはなしに懐かしい人柄だと思い初めた。それから毎日窓から外を見ているにも、又あの人が通りはしないかと待つようになった。」

    —『雁(新潮文庫)』森鴎外著

    「久しい間、文壇に対して沈黙していた森鷗外は、日露戦争後の新しい文学状況のなかで返り咲きのうごきをみせ、なかんずく、一九〇九(明治四二)年雑誌「スバル」が創刊されるや、石川 木や木下杢太郎、北原白秋、吉井勇らの新世代に伍して旺盛な創作活動を再開した。「豊熟の時代」(杢太郎)の幕明けである。世は自然主義の全盛期であるが、彼は、「小説というものは何をどんな風に書いても好いものだ」(『追儺』)という立場にたち、自由で実験的な作品をつぎつぎにかいた。『半日』『追儺』『杯』『木精』などの短篇小説、『ヰタ・セクスアリス』『金毘羅』などの中篇とみられる作品、『仮面』『静』の戯曲などがそれである。このようなめざましい文学追求をへて、つぎに長篇小説への挑戦が日程にのぼるのは当然のことであろう。『青年』(「スバル」一九一〇 =明治四三・三 ~一九一一 =明治四四・八)は、その野心的意欲をありありと伝える作品である。鷗外は当時の画期的な芸術運動である自由劇場旗上げ興行(有楽座での『ジョン・ガブリエル・ボルクマン』〈鷗外訳〉)なども作中にとりこんで小説展開の綾をつくり、文学志望の主人公小泉純一が孤独のなかで当代文壇の傾向とは別の「伝説」を小説としてかこうと決意するまでを追求し、描きだした。しかし、当初の予定を描ききれないでまとまりをつけた点があり、「一応これで終とする」という、歯切のよくない擱筆になった。」

    —『雁(新潮文庫)』森鴎外著

    0
    2026年04月13日

    Posted by ブクログ

    高利貸しの妾となったお玉は自由のない囲われた生活の中で時折見かける大学生岡田に魅かれる。いつも一礼して通り過ぎていく岡田に思いを募らせるが…。所詮生きる世界の違う男女の虚しい結末。想いだけでは超えられない人間の真理を無情に描き出す名作。

    0
    2026年03月10日

    Posted by ブクログ

    まだ子供の頃に「よろめきドラマ」なる言葉があって大人が使っていた記憶がある。
    今ならば「不倫物」というような意味だろう。
    森鴎外という文豪の作品に果たして「よろめき物」というジャンルを当てはめて良いものかと
    思いながらもその思いは拭えず読み進んだ。
    男親の暮らしのために大学の寄宿舎の小使い上がりの高利貸し末造の囲い者になったお玉が大学生の岡田に想いを寄せ、なんとかその想いを伝えたいと焦る。
    これだけを取り出せば「よろめきドラマ」としても成り立ちそうな気配。

    その気配を打ち消すのはやはり岡田の放った石で命を奪われた一羽の雁の出現だろう。
    あれは何を意味するのか。

    0
    2022年06月23日

    Posted by ブクログ

    主人公のお玉の自我の目覚めと落胆が見事に描かれていたが、末造の妻の嫉妬にもだえる姿の描写も見事だった。

    0
    2018年01月06日

    Posted by ブクログ

    身分や境遇の違いによって、惹かれ合いながらもすれ違ってしまう男女の姿が印象的でした。大きな出来事が次々と起こる作品ではないけれど、恋心や孤独、人生のやるせなさが静かに描かれていて切ないです。淡々とした物語の中に人間の感情が感じられ、読み終わった後に余韻が残る1冊。

    0
    2026年09月23日

    Posted by ブクログ

    哀切なすれ違いの話

    伝える事すら出来ないで終わるのか
    父の為に妾になったのに高利貸しだったとか「生娘でいた時より美しくはなっても、醜くはなっていない」とかなんとも言えない哀愁があるよなぁ…うまいなぁ

    0
    2026年04月09日

    Posted by ブクログ

    100年くらい前に書かれたお話
    上野辺りが舞台なので現在と当時とでは
    ずいぶん面変わりしてるだろうな
    と思いつつ読む

    前半の話と後半の話
    合わせてひとつの話となるのが
    からくり細工のようで
    深みも出て面白かった

    呆気ない終わりのようだけど
    ちょうど良いキレ感と
    微妙な余韻が残る感じが
    さすが森鷗外だなと思った

    0
    2025年02月13日

    Posted by ブクログ

    瑞々しさと少々癖のある文章で描かれた、ミニマルな不条理

    思えば登場人物全員が、
    運命に翻弄されていたり、知らず知らずのうちに欺かれていたりする。

    主役2人は尊い恋心を持ちながらも、
    その熱は何かを果たすことなく、
    石を投げられた雁のように儚く消えてしまう。
    しかし、それが故、人生の残酷さと無常の美しさがこの物語にはある。

    「ぼく」の視点で、2人から聞いた話を語っているという構造により、「曖昧さ」があって、それがノスタルジーさに繋がっている。

    記憶を未正確なまま手繰り寄せることによって、「今ここの感情」と「過去の映像」が美しく再構築され、独特の浮遊感がある、あのノスタルジックという感情が沸いてくるのだ。

    0
    2023年08月18日

    Posted by ブクログ

    ラストの玉の表情の描写が印象的。高利貸しの妾として、蔑まれる中、恋心を抱く岡田に一声掛けたいだけなのに、それすら、できずに終わる。
    この物語の周辺、岡田が歩いたあたりを周ってみようかと思う。

    0
    2022年02月27日

    Posted by ブクログ

    昭和54年2月10日 62刷 再読

    明治13年の出来事として、明治44年から書かれた鴎外中編小説。

    母親を早く亡くした世間知らずな美しい女性“お玉”は、生活の困窮から、高利貸の妾となる。騙された思いもあり、自身の運命から逃避したいと考えてみるも、年老いた父・無学な自分を考え、その生活を受け入れていた。そんな折、図らずも顔見知りとなった医大生に心惹かれ始める。
    「鯖の味噌煮」と「石にあたった雁」という偶然の出来事が、二人の関係を始まる前に終わらせてしまう。という哀愁漂う儚い恋愛物語。

    幾たびかすれ違う二人の淡い恋心が切なく、決して成就しないだろうと思っていたけど、まさか、不忍池の雁に石投げて死んだのを鍋にする為こっそり持ち帰る為に、会える最後のチャンスが潰れてしまうとは。。。

    女性の仕事が少なかった時代、誰かを頼るしかなく、自我より運に左右されていたんでしょうね。


    0
    2022年01月17日

雁(新潮文庫) の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    雁(新潮文庫)
  • タイトルID
    :
    2134210
  • 電子版発売日
    :
    2026年01月09日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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