森鴎外のレビュー一覧
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いやはや、これは。
はぁぁあ。
なんとも。
いいっ!
カーソン・マッカラーズの「結婚式のメンバー」のあとがきで、「たけくらべ」を思い出した。だなんて村上さんが書いてたもんだから、気になって気になって文庫をペラペラとめくってみたんですが、原文はもとより、口語訳でさえなんだかちんぷんかんぷんと思ってたところ、池澤夏樹編の日本文学全集で、川上未映子が訳してるって聞いて、そりゃぁ好きだわきっとと思い、このかわいいピンクの全集を手にしました。
それがほんとに私にしっくりピッタリ!だって川上未映子の「乳と卵」も、「先端で、さすはさされるわ…」も面白いねと思ってたから、そりゃもう楽しめたし、好きだったし -
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表題2作が読みたくて。どちらも短い作品ながら深く考えさせられるテーマを背負っています。多くを語っていないぶん読み手によって様々な捉え方や考え方ができるので、読後に他の方の意見を聞いてみたくなりました。
数年後に再読したらその時々で異なる登場人物に心を寄せている気がします。
好きとは違う、心の奥に根付くような名作。
『山椒大夫』
私の父は「『山椒大夫』=『安寿と厨子王』じゃないか!」と読後に膝を打っていたので、世代によっては後者のタイトルの方が童話などで馴染み深いのかもしれません。
人買いによって悲運を辿る幼い子供たち――現代の日本では考えにくい描写が多々あります。しかし姉と弟、早々に離れ離れ -
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表題、山椒大夫も高瀬舟も、とても有名な話。
高瀬舟は、確か学生の頃に教科書か何かで読んだ気がする。
けれど、どちらも、こんなに短い話だったろうか。
記憶にある限りでは、もっと長かったような気がしたのだけれど。
読み終えた時にはそう思ったのだけれど、少し間があいて、また読み直してみたら、同じ印象を抱く。
こんなに、短い話だったろうか。
言葉を尽くして説明されているわけではなく、むしろ読者に判断をゆだねるかのように完結に記された部分も多いのに、なぜか、心には長く残る。
いつか、どこかで、「本当にそれで伝わるなら、言葉など一言で事足りる」というような話を聞いた記憶があるが(夏目先生だったろうか?)、 -
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渋い。
渋すぎます。
表紙の装丁が素敵な角川文庫版。(手ぬぐい屋「かまわぬ」とのコラボシリーズは、大好きです)
この1冊、面白かった。
レベル高い。さすが、森鴎外さん。有名なだけのことは、アルんですねえ。
「山椒大夫」
「じいさんばあさん」
「最後の一句」
「高瀬舟」
「魚玄機」
「寒山拾得」
「興津弥五右エ門の遺書」
「阿部一族」
「佐橋甚五郎」
というのが収録作品。
好みで言うと、「魚玄機」「興津弥五右エ門の遺書」あたりはそんなにでもなかったです。
「高瀬舟」も、安楽死の問題など有名ですが、改めて再読してみて、他ほど小説としての衝撃はなかったような。
●「山椒大夫」
安寿と厨子王 -
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ネタバレこの本を読んで、自分の人生を重ね合わせてしまった。
森鴎外の舞姫。なんとなく前から読んでみたいと思っていてようやく読むことができた。
原文が文語体で、かつ場所は異国の事について書かれており、
あまり理解することができなかったのだが、
ウェブに出ている現代語訳を読んでみると、なるほど、すばらしいと感じた。
主人公はいわゆる天才であり、幼いころから学問には非凡な才能を持っていた。
でもそれが本当に彼を幸福にしていたかというと、そうではなかったようだ。
運よく、洋行という機会を手に入れて彼は自分の人生を変える出来事に出合った。
愛を取るか、地位・名誉を取るか、これは昔からの難題だ。
どんなに人 -
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ネタバレ国語の授業で舞姫を初めて読んだときには、豊太郎は何てひどい男なのだろうくらいにしか思いませんでした。
それから数年経って読みかえしてみたら、豊太郎の苦悩や弱さが他人事とは思えなくて、はたしてどれだけの人が彼を責められるだろうかと考えてしまいました。
120年以上前のベルリンが舞台の小説ですが、彼の「エリスとの愛」と「栄達を求める心」との間の葛藤は、現代にも通じる部分が多くあると思います。
うたかたの記・文づかひ・ふた夜といった他の収録作品も、舞姫同様に浪漫味あふれる素敵な作品です。文体のせいで敷居が高く感じるかもしれませんが、ぜひ手にとって読んでみてください。 -
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まさに表題作の山椒大夫と高瀬舟の二篇が良かった。二篇共に昔話のような馴染みやすさがあったからだ。他の話は私には、たまに難解なモノもある。
山椒大夫は、安寿と厨子王と言った方が馴染み深い。世間知らずとは言え、人買いに攫われ、不幸に見舞われる母と姉弟。離ればなれになり、自分よりも弟の生を重んじる姉の自己犠牲。安寿の最後を暗示させる文章が心に焼き付いて離れない。
また、高瀬舟は弟を苦しみから楽にさせてやりたいと思う究極の兄の行動。それだけではなく、罪人と護送する同心の生活観、価値観の対比も深い。
家族を思う気持ちは今も昔も変わらない。大事なモノのために私には何ができるのだろう、と問い直しをしている。