森鴎外のレビュー一覧
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昭和54年2月15日 52刷 再読
時代は明治後期、作家志望の青年小泉純一が、上京して東京の友人、作家らに関わりながら、成長していく青春小説。
装丁の絵が同じで感動。というか、三四郎より青年の読者の方が少ないのでしょうか。
初めて読んだ当時、夏目漱石の「三四郎」に影響を受けて書いた事は知らなかった。続けて読むと、確かに似ています。青年の小泉君の方が、話の流れから美形でちょっと裕福でモテてしまう事はわかりました。
青春日記の様相なので、凄く面白いとはいかないですが、当時の青年の歳上女性への恋心、歳上女性に振り回される様子など、「三四郎」とセットで当時の青春を知る文化遺産だと思います。
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Posted by ブクログ
ネタバレ2021/07/04
感想)庄兵衛の心の動きが自分と同じだった。喜助の境遇に同情し、判決に疑問を覚えるも、自分の力ではどうにもできないのを悟り、聞くだけ聞いてそのまま送り出すところ。喜助に対して何となく罪悪感を覚えた。
残す'庄兵衛はただ漠然と、人の一生というような事を思ってみた。人は身に病があると、この病がなかったらと思う。その日その日の食がないと、食ってゆかれたらと思う。万一の時に備えるたくわえがないと、少しでもたくわえがあったらと思う。たくわえがあっても、またそのたくわえがもっと多かったらと思う。かくのごとくに先から先へと考えてみれば、人はどこまで行って踏み止まることができるものやらわからない。それを今目の前で踏み止まって見せてくれるのがこの喜助だと、庄兵衛は気がついた。 -
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ヰタって何て読むんだろう?から手に取った。正解はウィタ。
アリスも可愛らしいと思ったが、日本語訳はファンタジーの欠片もない「性欲的生活」でした。
鴎外の分身とも言える金井湛くんの性欲との出会いとお付き合いが朴訥と、時にユーモアも交えて書かれている。
文章にはリズムと美学があって、あぁ文芸に触れているという感じ。
これは心地良くて病みつきになる類のもの。
当時は漢詩が身近だったから、文章のリズム感に優れているんだろうなぁ。
坂の上の雲の時にも書いた気がするが、明治の人たちの勉強熱心で自身の哲学を持っている生き様が格好良い。
貧富の差や女性差別の上に築かれた上澄みの部分しか見えていないが、
若者が日本社会と自分の立ち位置を踏まえた上で、世界を見据えている溌剌とした感じが良いなぁ。
題材としては、誰がどう性に目覚めようがそれほど興味はなかったが、
程よい自虐のスパイスが効いた森鴎外史と、当時の日本が垣間見れたのは面白かった。 -
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最初の数ページは文語体に慣れるのに苦労した
しばらく日々飽きもせず同じページばかりを眺めていると不思議なことに理解できるようになってくる
解釈が完全に正しくないかもしれないが、それなりにじわじわ情景が見えるようになってくる
とりあえず、間違っていてもいいから現代文のカンニングだけはやめてとりあえず最後まで行ってみよう!の精神で(笑)
「舞姫」他4篇
【注)ネタバレを含みます(特に「舞姫」)】
「舞姫」
あらすじを乱暴にまとめてしまうと…
主人公太田豊太郎がドイツ留学をして、そこで出会った貧しい踊り子エリスと恋に落ちる
結局当時の時代背景と豊太郎の心の弱さにより、エリスを捨てて帰国するのだが…
主人公豊太郎
父が早くに亡くなり、母が厳しくしつけ、またそれに応えることが親孝行であり当たり前の人生だと優等生として狭い日本で模範生のように生きてきたのだろう
恐らく気心の知れる友人もあまりいなさそうである
決まった道を歩むことはきちんとこなせるが、自分で考えて道を開くということはとても苦手そうだ
自分の人生に前例のない大事な決断が一人でできなく、メンタルが非常に弱い
せっかくの華やかなヨーロッパの地でさえも遊ぶ勇気もなく、人付き合いも悪く、なまじ優秀なため仲間内で嫉みを買う
しかしながら、さすがの豊太郎もヨーロッパの自由な思想に影響を受けた模様
本ばかり読んでいたような豊太郎はエリスと出会い、心を揺さぶられ交際を重ねていくことに…
エリス
16〜17歳
どうやらとても美しいらしい
舞姫の身の上
薄給で厳しく使われても耐えていた「おとなしき性質」らしい
最初はいじらしい娘だと思っていた
しかし、豊太郎の裏切りを知ると…
〜「我豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか」と叫び、その場にたおれぬ。………
………我名を呼びていたく罵り、髪をむしり、蒲団を噛みなどをし、また遽に心づきたる様にて物を探り討めたり。…〜
心労のため、精神病を患うのだが、この豹変ぶりがなかなか怖い
もはや般若である(ドイツ女性を般若ってのもおかしいが…)
この恐ろしさは現代語では表すと、半減する気がする…「豊太郎どの、よくも裏切ったわね!きぃぃぃぃ!」って言うより、上記のが断然怖い
どちらかというと「豊太郎どの、よくも我を裏切り給う…この恨み現世では晴らせまい…ああ、恨めしい恨めしい…末代まで祟るぞよ」くらいかなぁ
妄想が好きに拍車がかかって遊んでしまったが、それはともかく貧しく、頼る相手もいない上、異国の男の子を宿して裏切られる…それはもう発狂したくもなる!
現代と違い、生きる方法を探す術もない時代であろう
友人・相沢
出世欲のある極めてエリートらしい考え方をもった男である
豊太郎に仕事を紹介し、エリスと別れ帰国を進める
悪気などない、ただの価値観の違い
豊太郎が大臣に付いて帰国を決意するのを、エリスに打ち明けられず、ぐずぐずした結果、相沢がエリスに話すことになる
豊太郎も心労で動けない時、豊太郎の帰国の際など生計に困らないようにエリスに支援をしている
豊太郎は相沢は我々の恩人としながらも、エリスを精神的に殺したという
残念ながら豊太郎はこのように悪いことは全て人のせいにするのだ(もちろん豊太郎だってかなり精神的には参ってしまうのだが…)
明治時代の日本男子は恐らく、世界を見ることができる一握りになれることがどれほどの名誉なことであっただろうかと察する
輝かしい日本を自分が背負って立つんだ!という気負いが溢れていたはずだ
そのため相沢は必死で豊太郎をエリートコースに乗せてやりたかったのだろう
優秀で語学が堪能なため、そんな理由でさえも同僚の嫉みを買うのもわかる気がする
ではドイツ女子はどんな時代背景があったのだろうか…⁇
貧しい踊り子に、どんな人生が待ち受けていたのだろうか
この時代のヨーロッパや、日本の背景なども興味深く、様々な観点から深読みできて面白い
当時のヨーロッパの石畳、街灯、様々な像、街のカフェや、華やかな紳士淑女の装い…
馬車の通る音や、高い空の色、色彩豊かな街並み…
これは視覚的感覚等、想像力を駆使してなかなか面白い体験ができる
残念ながら共感部分は皆無であったが、登場人物も少なく、ストーリーも短めかつ複雑でもないので文語体の手慣らしに良い
シンプルなストーリーなのでひたすら妄想が膨らみ、楽しめる
「うたかたの記」
これはなかなかストーリー展開が激しく、ドラマティックで激動感のある内容
当時ハマった女子が結構居そうな気がするのだが…
日本人美術男子巨勢(こせ)とドイツ女子マリイ
マリイの今までの人生が波乱万丈に展開する様を巨勢に語る
そして二人の行動(マリイに付いていくだけの巨勢だが)により、すべてのことが過去と繋がり、最後は現在で完結する
その一周する構成も凝っており、面白い
なかなか小説として読み応えがある
巨勢がマリイの人生のガイドのような役目に感じるほど、圧倒的なマリイの存在感が光る
「文づかひ」
ドイツの王宮や舞踊会など、上流階級の住まいや華やかな生活をうかがい知ることができ、所々ストーリーそっちのけになってないかい?というほど執拗に描写されている部分もある
鷗外の意図であろうか…
主人公である日本人大尉が、初めて入るドイツ貴族の城に胸が高まる
そこには6人の姫がおり、その中でも大尉が気になるのは前に見かけたことのあるミステリアスなイイダ姫だ
イイダ姫は下記のように表現されている
~イイダといふ姫は丈高く痩肉にて、五人の若き貴婦人のうち、この君のみ髪黒し。かの善くものいふ目をよそにしては、外の姫たちに立ちこえて美しとおもふところもなく、眉の間にはいつも皺少しあり。面のいろの蒼う見ゆるは、黒き衣のためにや~
他の姫君たちは各々華やかな装いで美しいが、イイダ姫だけは上下黒の衣装姿、また他の姫たちのようにおしゃべりな女性でもなさそうである
普通の姫とはちょっと違うのだ
そんな綺麗じゃないけど凛としており、口数少なく、しかし心の奥は深そう…そんな印象だ
そのイイダ姫の奏でるピアノの音がどうやら凄そうである
凄そうというのはただ繊細で美しいだけではなく、「物くるほしきイイダが当座の曲」とある
(詳細は省くがここでのピアノがどんな演奏であったか…この表現の描写が素晴らしい
どれほど聞くものを美しくも恐ろしくもあり、虜にしたか…見事に表現されている
ここは原文を読む醍醐味部分だ)
大尉は心を奪われ、眠ることもできない
そして、このピアノに合わせるかのような外から聞こえてくる笛の音…
これは一体!?
そしてイイダ姫は一緒に城に宿泊した中尉のフィアンセらしいのである…
うーんまるでミステリーのような先の気になる展開に
しかしながら、やはり自力ではわからない部分が出てきたため、最後は現代語訳のカンニングを頼ることに
解決しきれない詳細が気になって…(要は詳細をしっかり知りたいほど面白かったということなのだが…)
他にも読みどころはたくさんある
各人の心の内だけでもなかなか興味深いのだが、時代背景、宗教的事情、女性の生き方…
そして「文づかひ」のタイトルの意味
ああ、この話の後、彼らは一体どうなったのだろうか
そしてイイダ姫の取った大胆な行動は当時どのような反響であっただろうか…
自由を勝ち取った勇姿?はたまた自分の我を通しただけの我儘娘?
賛否両論が飛び交ったのではないか?
最後はそんな思いを馳せて終わることに…
「舞姫」、「うたかたの記」、「文づかひ」の三作品を独逸(ドイツ)三部作あるいは浪漫(ロマン)三部作と呼ばれている
個人的には「文づかひ」が一番好みであった(続いては「舞姫」…ではなく「うたかたの記」(笑))
先の展開が気になり、イイダ姫の心をのぞいてみたくなった
そうイイダ姫にやられます(笑)
そして、この三作品に共通して思うのは、各女性の圧倒的存在感の強さだ
「舞姫」エリスは典型的な貧しい悲劇の美しいヒロイン、「うたかたの記」マリイは華やかで美しく激しいドラマティックな女性、「文づかひ」のイイダ姫は内に秘めたツンデレタイプの独立心旺盛な姫君
そこに添えられたかのような男性はまるで進行役かガイド役か…という立ち位置にすら感じてしまう
(鴎外は女性を主体に何か訴えたかったのか…)
それぞれの女性に個性があり、幸福かどうかは別として、見事に話の中で彼女たちがそれぞれ一番際立ってくる
「そめちがへ」
なかなか難しかった
最初のつまずきが、主人公「兼吉(かねきち)」を名前的に男性かと思い、なんだかおかしいなぁと思いながら読み進め、途中で「あら、嫌だ女性だわ!」と慌てて読み返す
兼吉さんは茶屋の芸者さんのようだ
なにやらご不満があったようで、ビールにお酒を混ぜてぐい飲みし、二日酔いのご様子(あらあら)
そこへお得意さんが来て、「おや、兼吉つあん、何やらご機嫌麗しくないようだなぁ、そんな時は遊んじまうに限るぜ!
で、誰を呼んで遊びたいかい?」ってなノリで展開する
そこで兼吉さんが選んだのは自分のお友達と「出来た仲」の清さんという男性…(あらあら)
さてはてどうなることやら…
どうも評価が低いようだが、いったいどういう展開になるのか、と好奇心をそそられてまぁまぁ面白く読めた
江戸っぽさと、落語の小咄のような雰囲気が悪くない
「さすがは兼吉つあんだ」てな感じ(笑)
「そめちがへ」のタイトルは「染め違え」であり、最後にこの意味も…なるほど
「ふた夜」
どうやらこちらはハックレンデルというドイツ作家の小説の翻訳
どうりでなんか違うと思った
田舎ののどかな雰囲気から、たった1日のドラマティックな男女の出会い、そして戦争、最後は…
なかなか悲しい運命の切ない話であった
これは現代語訳で読みたいかなぁ…もともとドイツ人作家の話しなんだし
結構胸キュンのメロドラマである
しかしなぜこの5作品が一冊にまとまったのだろうか
ページ数の関係とかあるのであろうか?
うーん…どうでもいいことが気になる
ドイツ留学や軍医の経験をしている森鴎外自身の人生背景を知っておくとまた読み方が変わるだろう
読むのにかなりの時間を要したが、それでなくては意味がないような気もした
文語体ならではの味があり、たまにはこんな読書も悪くない
秋だしね♪
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Posted by ブクログ
ネタバレ古典的な文章は得意じゃないけど
教養として読んでおこうと思って手をつけた。
何の予備知識もなく読み始めたから、始まりの
「性欲的生活について書き記してみよう」で
そういう感じの内容か〜と覚悟したけども
ハッキリした描写は一切無く、
欲にありつける環境に身を置かれながらも
頑なな態度を見せる金井君の心情を楽しめた。
文章にドイツ語が頻出するのも独特。
最後の VITA SEXUALIS 表記は
「だからこのタイトルなのか〜」と納得して
スッキリした。
個人的には、最後の高橋氏の解説にもあった、
児島君のきんとんのくだりが
一番印象に残っているし好き。 -
購入済み
読みやすいけど
読みやすい本でした。
この本が書かれた当時の社会と現在の社会とでは、
それこそ時代が違うので、内容については評しようがありません。
それでも、文章はリズミカルで、
文章を読むこと自体を楽しむという点では、
悪くないと思います。
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購入済み
なんとも言えない
読みやすい本でした。
主人公の語りがメインの話しです。
もともと口語体の文章で、
その語り口がリズミカルなので
とても読みやすく読んでいて楽しいのですが
内容は今一ピンとこないものです。
書かれた当時の社会情勢に関係しているのかもしれませんが。
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購入済み
文章を味わう
はたして佐橋甚五郎という人物が実在するのか。
この本に書かれていることが事実なのかどうか。
そんな風に考えると、
ストーリーについては、面白いも面白くないもありません。
それなのに読ませる魅力はある。
文豪とはすさまじいものです。
何てことのない情景描写に感心してしまう。
自分もこんな文章がかけたらなあと思ってしまう。
読書の醍醐味は、わくわくするストーリー展開ではあるけれど
文章を味わう、そんな読書も乙なものです。
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Posted by ブクログ
初鴎外。有名な表題作など全十二篇を収録。私小説的な作品もちらほらあり、鴎外の考えをうかがうに重要なようですが、ドイツ語やらフランス語やらがやたらめったら差し込まれており、とにかく読みづらい。こーゆう作風が当時の流行りなのかなと思いきや、解説曰く、どうやら鴎外の厭味の表れであるよう。
一方、「護持院原の敵討」や「山椒大夫」、「最後の一句」、そして「高瀬川」はおもしろい。「山椒大夫」はとにかく悲惨。最後は厨子王の地位も安泰し母親と再会してよかったと思いますが、心にしこりが残ります。それはやはり安寿の存在。犠牲のうえに成り立つ幸福。これは手放しで喜んでいいのでしょうか。本作ではそのあたりの葛藤を一切除いて描かれているような気がします。犠牲と幸せは表裏一体、それが当たり前の世の中に疑問を投げかけているようで、魅力を感じます。
そう思うと「高瀬川」も犠牲と幸せの構造と捉えられなくはない気がしますが、この作品の魅力は善悪二元論で語れないところかと。加えて、登場人物の心情の変化もわかりやすいので、たしかに国語の教科書向きだなぁと思うところです。 -
Posted by ブクログ
鷗外の後期作品、「山椒大夫」から「寒山拾得」までの5篇が収録されています。
・山椒大夫 …
原作は古浄瑠璃の「さんせう大夫」、絵本で「安寿と厨子王丸」というタイトルでおなじみの説話です。
元の話から鷗外が改変を施した内容となっており、安寿が拷問の末殺された描写や山椒大夫へ厨子王丸がその復讐をする話など改変されており、より一般向けの話になっています。
森鷗外も後期の作品というだけあって、舞姫等と比べるとかなり文章がこなれていて、読みやすく面白かったです。
歴史小説というよりも、日本昔ばなしを読んでいるような気軽さが感じられました。
・魚玄機 …
魚玄機という実在した唐の末期の女流詩人の生涯を綴った話。
容姿に優れ、幼少期から詩文の才に優れ、女道士となった魚玄機が、なぜ女を殺し獄に下ったのか、その経緯が述べられています。
魚玄機の逸話に興味を持ったのであろう鷗外が著した歴史物で、文末に鷗外が本作を書くに参考にした文献が記載されています。それも含め非常に興味深い作品です。
文章がやや難しく、中国が舞台のため登場人物名は当然漢字です。
また、場面の形容などで見慣れない表現が多いために人物名と場面表現の漢字がごっちゃになり、中盤よくわからなくなって読み返すことがありました。
ただ、内容が紐解けないほど難解というわけではなく、難しい言葉が多いですが読みやすいと思います。
ラストについて、明言はなかったですが結局は勘違いだったということでしょうか、であれば、悲しい物語だと思います。
・じいさんばあさん …
全2作に比較すると比較的読みづらい作品だと思います。
主人公は「美濃部伊織」というじいさんと、「伊藤るん」というばあさんで、二人が隠居所で一緒に住むまでの経緯、紆余曲折を描いた内容となります。
他の鷗外歴史ものもそうなのですが、情景描写あるいは起きていることを淡々と述べている描写が文章の殆どを締めており、本作はそこが顕著故に物語を追うのが少し難解に感じるのかと思いました。
12ページほどの短い作品ですが、読むのに体力が必要でした。
ラストはいい話で終わります。
描写は淡々としていて短いので、あまり終盤にかけての盛り上がりというのも感じられる展開ではないですが、短いのに時間の流れを感じさせてくれるストーリーです。
・最後の一句 …
鷗外の作品としてそれほど有名ではない作品ですが、"最後の一句"の意味については現在まで議論が続いています。
原作は太田蜀山人の随筆で、大阪の船乗り業の「太郎兵衛」という男が、知人と共に犯してしまった罪を被る形で死罪を言い渡されるが、父の無罪を信じる長女「いち」が奉行所に嘆願書を認め、父の命と引換えに子供ら兄弟を死罪にするよう申立をするというストーリー。
役人の詰問に対し、いちは思いついたように「お上の事には間違はございますまいから」という言葉を述べ、それが役人の顔に驚愕の表情を浮かべさえ、見事、太郎兵衛は死罪を逃れるのですが、この「お上の~」の一句の意味するところというのが、長年議論の的となっています。
なお、この言葉は原作にはない鷗外の創作で、当時の鷗外の状況から痛切な役人批判だとか言われています。
物語としては、正直、凡作かなと。
・高瀬舟 …
鷗外の代表作として著名な作品。本作を目的に本書を購入しました。
原作は江戸時代の随筆集「翁草」の中の一節「高瀬舟縁起」で、それを読んだ鷗外が興味を持ち、著したものとなります。
本文庫にはそういった経緯が書かれた"附高瀬舟縁起"が、高瀬舟の後に続きます。
本作は教科書などで有名で、いわゆるユータナジーを題材としたものとなり、当時も、現代においても非常に考えさせられる内容です。
ただ、それを疑問に感じたのは高瀬舟の船頭であり、手を下した本人は晴れやかな顔で罪を受け入れている様子なので、後味の悪い内容となっておらず、中高生向けの内容と感じました。
流刑ではなく打首で、死の直前まで自分の行いの正当性を叫び続ける高瀬舟だったら、全然違う印象になったでしょう。
鷗外作品で中高生向けというのも珍しい。
・寒山拾得 …
寒山と拾得の伝承を書いた作品。
その風貌や乞食同然の生活ぶりなど、伝承通りで、豊干も登場します。
ただ、正直内容は非常によくわからない内容で、納得ができかねる内容となっています。
閭という官司 (これもいるのやらいないのやらわからないと記載があります) が豊干に頭痛を癒やしてもらい、その後、豊干が所属していたという寒山寺に訪れ、寒山と拾得に出会うところまでは、まぁわかるのですが、それ以降はもう何がなんだか。
寒山拾得というと禅林美術の水墨画などで描かれる奇妙なコンビですが、そのイメージには則しているものの、支離滅裂な展開についていけなかったです。
付属の"附寒山拾得縁起"を読むと、わからない人が無闇矢鱈に興味を持たないよう、わざとそうしている感じがあり、「どうせわからないだろうなぁ」みたいな追記があるので、思惑通りということでこれで良かったのだろうか。