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日本人留学生とドイツの一少女との悲恋を描いた『舞姫』、他に『うたかたの記』『文づかひ』と名訳『ふた夜』、いずれも異国的な背景と典雅な文章の間に哀切な詩情を湛える。加えて鴎外作品の初期から中期への展開を示す『そめちがへ』を収め、難読語には、できるかぎり振仮名を付して読者の便に供した。 (解説 稲垣達郎)
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Posted by ブクログ
高校で誰しも学ぶであろう「舞姫」 好きすぎて物理の授業中でも読んでた。今でも一番好きな古典派文学かも。これが学習指導要領からなくなった?なんて信じたくない、、、
高校生のときに舞姫に出会い、その時受けた講義のおかげで主人公の状況、時代背景、そして顛末が意図するところなどの読み方を学びました。 本を購入し、一番に感銘を受けたのは「染めちがへ」でした。お話の情感豊かな表現と最後の落としどころとなる文章が素晴らしく、ふとした折に音読しては良さを味わっています。
教科書にも載っている有名作品とその他による短篇小説集です。 まず擬古文が手強い。現代口語訳みたいなのが欲しいところです。 それにしても、心情の描写や嵐の描写など目を見張るものがあります。 解説者は舞姫を犠牲者としていますが、本当にそうなのかな?男を手玉に取った女優という見方もありだと思うな。 イタリ...続きを読むア統一運動の描写があるけど、当時の戦争ってのんびりしたもんなんですねぇ。 舞姫(1890) うたかたの記(1890) 文づかひ(1891) そめちがへ(1897) ふた夜-Friedrich Wilhelm Hacklaender(1890) 著者:森鷗外(1862-1922、島根県津和野町、小説家) 解説:稲垣達郎(1901-1986、敦賀市、日本文学)
森鴎外のドイツ3部作である。 舞姫は、高校の国語で読んだ人も多いと思う。 個人的には、「即興詩人」と合わせて、文語文文学の最高到達点だと思っている。
20年ぶりくらいに読んでみた。若かった当時よりは文語体への抵抗も少なくなり、味わって読めた。 それにしても、岩波版では「舞姫」はほんの28ページのみ。その凝縮された文量で、100年先まで名を轟かすことの凄まじさよなぁ…。すでにストーリーが分かっているとはいえ、ドイツの凍える冬の色彩が目に見えるかの...続きを読むよう。豊太郎が選んだ結論だけを見れば「酷い」で終わってしまうかも知れないが、明治の日本の世情や、現代とは全く違う立身出世にかける想いなどを踏まえて感情移入して読むと、エリスと豊太郎、それぞれの苦悩が胸に迫る。 舞姫以外の話も圧倒的な悲恋ストーリー。現代語訳でも何でもよいので、若い人には多感な時期のうちに読んでおいてもらいたい。
豊太郎って人気ないですよね。 そりゃひどいやつかもしれない。でも、私には彼の行動も仕方なよなぁと思えてしまう。
千年読書会・第2回の課題本でした。 森鴎外の自伝的な小説とも言われている一編となります。実際には、身近な友人と自身の経験をない交ぜにしたもののようで、「うたかたの記」「文づかひ」ともあわせて三部作的な位置付けとも言われてるのでしょうか。 相変わらずに美しく流れる文体も堪能しましたが、内容も...続きを読む当時の状況を敷衍しているかのようで何気に興味深く。“誰”に感情移入するかで、読み解き方は変わるのかなと感じました。 さて、主な登場人物はこちらの3人。 主人公:太田豊太郎 踊り子:エリス 友人:相沢謙吉 政府の公費でドイツに留学した秀才肌の主人公・太田豊太郎、彼が留学先で踊り子・エリスと恋に落ちたところの回想から、物語は始まります。その恋に“ハマった”豊太郎、仲間の心無い讒言などもあり、結局は政府から罷免されて、エリスと暮らしながら現地の新聞記者として糊口をしのいでいました。 そこに、友人・相沢謙吉からの再チャレンジの誘いがあり、記者として培った知見や語学力で政府関係者から評価され、祖国に復職することが夢でなくなっていくのが大筋となります。 ただ、相沢からの提示されたのは「エリス」とは袂を分かつべきとの一つの“提案”がなされたところから、悲劇の歯車をも回りはじめます。 恋をとるか仕事(出世)をとるか、現代の視点で観れば“エリスを連れて帰る”との選択肢もあったのでしょうが、政府役人との立場ではそれも難しかったのかな、といった当時の世相を、まずは読みとることができました(今でも治安や外交などの重要事案に携わる役人さんには制限事項があるみたいですが)。 結末から遡れば、酷薄で不義理であるとの断罪にもなりますが、これは当時も同じであったようで、自身でも「ニル・アドミラリイ」とのフレーズを文中で使っているのが印象的です。 確かに、この“悲劇”は豊太郎の優柔不断さに起因しているのと思いますが、同時に、明治時代の“優秀かつ野心的な若者”であれば、誰しもが持っていた“立身出世”への強い想いもまた、読みとることができるかな、と。 ここにはそんな“エリート”の煩悶が籠められているのかと、感じます。 鴎外自身の経験を投影しているとも言われていますが、当時はこれに類する話は周囲にもいろいろとあったのでしょう。そういった意味では“よい小説は時代を映す”ということを感じることができ、長く読み継がれているのもなるほどなぁ、と。 豊太郎の境遇を慮ればこそ「エリス」を切り捨てよとの言葉を発した、相沢。豊太郎を愛すればこその、不安と絶望を押し隠しながらも堪えきれずに狂気に行きついた、エリス。そして、それらのすべてを実感していながらも決断しきれずに煩悶とし続けた、豊太郎。 “相沢謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。 されど我脳裡に一点の彼を憎むこころ、今日までも残れりけり。” 恐らく豊太郎は、この先も一生涯、相沢にこの“屈託”を見せることは無かったと思います。 三者三様の想いがちょっとしたボタンの掛け違いで、取り返しのつかない悲劇に至ってしまう、この物語の大枠だけ見れば、意外と今でも転がってそうな設定で。人の行為はそうそう変わることが無いのかなぁ、との普遍性を感じてみたりも。 コレが仮に「自分だけが最優先な」いまどきの優秀な人間(エリートに非ず)であれば、なんのてらいもなく、生活のためにエリスを切り捨てたか、もしくは友人の真摯な誘いであっても一顧だにしなかったのかも、とも。 明治であれば福沢諭吉翁、昭和であれば出光佐三氏、現代であれば青山繁治さんのような。彼らの共通するのは「国を支えて国を頼らず」との気概と思います。ふと感じたのは、今の日本に足りないのは、こうした気概を持った“エリート”かなとも、考えてみたりしています。 初めて読んだのは確か高校生くらいの頃、その時は豊太郎の不甲斐なさや不義理さに、違和感と反発しか残りませんでした。今回、久々の再読で俯瞰して見ると、その心の動きはなんとなく理解できる気がします。それはどこか、息子なり甥っ子なりといった眼で豊太郎を見ているからなのかもしれません。 そして自分が、相沢と同じ立場になったら、、「切り捨てよ」と言わない自信は正直、持てません。親しい間柄であればそれだけ“近くにいてほしい”と思うでしょうから、、と、そんな風に感じた一編です。 もう一つ興味深かったのは、どこの国でも、どの時代でも、“芸妓”が、性サービスと密接にかかわりがあるとの視座でした。確か、同時代のドガが「舞台の踊り子」でも舞台裏にいるパトロンの様子を描いていたと思います。 それを踏まえて、現在の日本の芸能界はどうなのだろうと、最近では“ミスインターナショナル・吉松育美さん”の事件などから垣間見える“現代日本の芸能界の闇”も思い出しながら、そんな風に感じたことを付け加えておきます。
豊太郎のだめっぷりが久しぶりに読みたくなったので、「舞姫」を高校の教科書ぶりに読んでみた。 エリートコースを歩む豊太郎が、法律から歴史や哲学に興味を移し、母親や上司の言いなりの受動的な人間から、自ら決断する能動的な人間になろうと藻掻く。 そして舞姫のエリスと出会い、貧しいながらも幸せに暮らし始め...続きを読むる。 が、帰国してエリートに戻りたいと思う気持ちとエリスへの愛情との間で心揺らぐ。 結局は自ら決断できず、自分が倒れている間に友人がエリスに告げ口したことにより、"仕方なく"帰国せざるを得なかった、と自分が悪いわけではないようなところがあいかわらずダメ男だと思った。 けど、しょうがないよなー、とも思う。 悩んでも悩んでも、きっと豊太郎には決断できなかったんだよなー。
視線、時間、舞台が空間的、建築的に構成されていて本当に面白い。軽快なリズムを刻む文体が音楽的とも言える。計算し尽くされた作品だと思う。
高校の時の現国の時間に読んで衝撃を受けた作品。 その構成、エピソード、言葉遣い全てがものすごく新しく今でも感じるのであるから当時はセンセーショナルだったと思う。 エリスが狂ってしまうあたりの描写の淡々たる遠まわしな他人的な場面が非常に痛く、苦しく、今も昔もオトコってずるいと思ってしまった。 作品...続きを読む全体から欧州の匂いが漂ってきそうな場面描写もすごい。近代文学の骨頂だと思う。
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