森鴎外のレビュー一覧
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ネタバレ私自身が十代の終わりを迎えようとして、自分の性のあり方について考えている時に偶然この本を読み始めました。
この中で書かれている価値観のうちのひとつ、「恋愛と性が結びついていない」というものは私が自身に対して思っていたことと同じでした。
なので、男女の差や時代の差はありながらも、共感して読むことができました。
自分と近い価値観を持ちながら年齢的に私よりも大人になっていった金井の姿は、私の中にちいさな不安を残していきました。
私が将来、恋愛と性を結び付けられないまま大人になり、そしてどちらかを経験してしまったらどうなってしまうのだろうか、という将来への不安が出来てしまいましたが、将来のことを考 -
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「舞姫」
作者のドイツ留学体験をベースにした作品
主人公は自らの意志によって人生を切り開こうとするのだが
結局は、故郷のしがらみを捨てきれず
愛した女を裏切り、ついに発狂させてしまう
そのことで自分を責める彼は
例えばそれを「新生」などと言って居直ることもできぬまま
助けてくれた親友のことを密かに恨みつつ
帰国の途につくのだった
良くも悪くもサムライというかな
「うたかたの記」
過去の出会いが運命的な恋となって
まさにいま成就しようとした、そのとき
さらに過去から不幸の使者が甦り
すべてを水の泡に帰す
なお、日本における言文一致運動はすでに進んでいたのだが
ここまでのロマン主義的なアイロニ -
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岩波文庫の表紙によれば「鴎外史伝ものの代表作」なのだそうだが、まず史伝とは何であるのかが今ひとつわからない。歴史小説というのとも少し違う、強いて言えば伝記であろうか。題名のとおり渋江抽斎が主人公というか中心人物であるが、その親族や師弟、交友関係のそのまた親族まで、まさに虱潰しと言うべき執念で記録してある。これを読んでWikipediaみたいだと思うのはマヌケな感想だろうか。
固有名詞の大群に飲み込まれそうになるのだが、じっと耐えながら読んでいると、まさに江戸から明治にかけての大変革期に生きた人々の有様を覗き込んでいる気持ちになくる。
ルネサンス人的ともいえる医者が儒者を兼ねるのが当たり前な -
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実際は新潮文庫版でなく学研から出版されている全集もので読んだ。
森鷗外といえば『舞姫』のような堅牢な文章を操るイメージがあったが、『ウィタセクスアリス』においてはかなり平易な文体で書かれている。内容は草食系男子の性にまつわる体験に関するものだ。性にまつわる体験といいつつ、露骨なものに関しては匂わせつつもほぼ描かれないので安心して読める。
作中で「硬派」と「軟派」の2派が登場するが、読んでいるとどうも「硬派」というのがホモセックス野郎のことを意味しているようでド肝を抜かれた。寄宿舎生活の中で年少者は硬派の先輩の餌食になる。主人公が短刀を持って硬派の先輩から逃げ回り、アヌスの貞操を死守する場 -
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森鷗外の歴史小説三作品「興津弥五右衛門の遺書」、「阿部一族」、「佐橋甚五郎」が収録されています。
目的は「阿部一族」でしたが、この三作は鷗外の初期の歴史小説として代表的な作品で、三作まとめて単行本『意地』に収録されていたものとなります。
いわゆる「鷗外歴史もの」として書かれた三作であり、セットで語られることも多いため、鷗外を知るには丁度いい文庫だと思います。
・興津弥五右衛門の遺書 …
興津弥五右衛門という老人が細川三斎公の十三回忌にて、切腹をします。
その切腹は殉死であり、本作は殉死した興津弥五右衛門の遺書という体となっています。
文章は口語ではなく当時の文体で書かれているため、不慣れで -
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20年ぶりくらいに読んでみた。若かった当時よりは文語体への抵抗も少なくなり、味わって読めた。
それにしても、岩波版では「舞姫」はほんの28ページのみ。その凝縮された文量で、100年先まで名を轟かすことの凄まじさよなぁ…。すでにストーリーが分かっているとはいえ、ドイツの凍える冬の色彩が目に見えるかのよう。豊太郎が選んだ結論だけを見れば「酷い」で終わってしまうかも知れないが、明治の日本の世情や、現代とは全く違う立身出世にかける想いなどを踏まえて感情移入して読むと、エリスと豊太郎、それぞれの苦悩が胸に迫る。
舞姫以外の話も圧倒的な悲恋ストーリー。現代語訳でも何でもよいので、若い人には多感な時期の -
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無縁坂とは不忍池を脇に入り旧岩崎邸庭園と東京大学医学部に挟まれた小さな坂である。文教と花街が混淆する地であった。その地を舞台とし学士と妾の邂逅をテーマに選ぶことで、森鴎外は前近代から近代へ移り変わる時代の変化を巧みに捉えたように思う。純粋無垢だったお玉が艶ある女性へ変遷することは即ち妾という前近代に染まることであり、洋行を決意する岡田は即ち近代化を示すのであり、交叉することなき異界の二人が交叉する過渡期を描くことで時代風景を描写しているのが本作品の主題かと思う。前近代と近代の決別が「雁」という象徴を投石にて死させる部分に込められている。岡田の本心を省略し、愛する人が外洋するお玉の哀切を描かぬこ