中世ドイツのファウスト伝説をゲーテが独自の解釈を交え戯曲化したもの。
対照的な錬金術師ファウストと悪魔メフィストフェレスが、恐ろしくもどこか滑稽で、矛盾に満ちたやりかたで自らの生の意味を探し求める。
いま世の中にあるもののどれほど多くがここにルーツを持っているのだろう。何か途方も無い気持ちに
...続きを読む襲われる。200年経ってなお親しみやすさと斬新なみずみずしさを湛えているのは圧巻である。
「光」≒「快活な理性の力」≒「神」 という図式のようなものは、日本にいるとどこか空々しいけれど、この世界でははまり過ぎるくらいである。それほど闇と混沌からのイメージの氾濫は激しく、光溢れる南欧への憧れという生理現象が彼らの美学を形成する原動力になっている。
読んでいる数日間、寒くて薄暗い雨の日が続いたので、久しぶりの晴れ間にやたら有り難さを感じたのはファウスト効果だったかもしれない。
これを読む前にはギリシャ神話を少しかじっといた方が楽しめると思う。中世キリスト教的世界観もかもしれないが、現代日本に生きているだけでこちらは結構馴染みがあるもののようだ。