カツセマサヒコのレビュー一覧
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「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」
なんてドキッとさせられる言葉だろう。
一瞬だけ、一瞬だけ息を止めていた自分がいた。
飲み会で知り合った彼女との、
青春らしい青春の恋愛。
彼女との日々はキラキラしていた。
彼女の好きなものは全部好きになった。
好きになりたかった。
彼女の全てが好きだった。
横顔も、後ろ姿も、仕草も匂いも。
連絡が来るだけで嬉しかった。
一緒に過ごしていた日々が楽しかった。
しかし、中盤で彼女の秘密が。
あぁ、″彼女″って私かな。
″僕″ってあの人かな。
重なる部分が多すぎて、辛くなった。
でもあの時、お互いがお互いを必要としていた。
あの人はあの時どう思っていたの -
Posted by ブクログ
20代前半の、甘酸っぱさとほろ苦さが同居した青春がそのまま小説になったような一冊でした。読んでいる間ずっと、「ああ、自分にもこんな時期あったな」と、ページをめくるたび昔の自分に再会するような感覚に襲われます。
ヴィレッジヴァンガードでよく分からない本やお香を衝動買いしたり、深夜の公園で少し背伸びしたような会話をしたり。
あの頃の“自分が特別な物語の中にいる気がしていた”無敵感——今思えば青くてちょっと恥ずかしいのに、なんだかんだ一番楽しかった時期でもあるんですよね。
作中で描かれる「人生のマジックアワー」という言葉が本当に象徴的で、あの一瞬のきらめきは二度と戻ってこないからこそ胸をつかまれ -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
頑張るほど空回りして、それでも愛おしい、この人生。
都会的で悲観的、不器用でまっすぐな40の瞬間。
#1 あのときマカロンさえ買わなければ』
→行きに美容師さんへマカロンを買ったせいで美容院のカット代が足りなくなる話。
私もお金をその日足りるギリギリしか財布に入れないから、気持ちがめちゃくちゃよく分かった。
・プレゼントは良い。もらうのは反応に困るが、渡すなら、いくらでも渡したい。
・愛の対義語は無関心だとか言うけれど、人は愛のある無関心を欲することもある。(アパレル店員さんの眼差しが怖い話)
・5年もあれは、後輩も増えてくる。自分が成長していなくても、難度の高い仕事 -
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ネタバレ結婚って何のためにするんだろう
そう思い始めていた時に読んだ一冊。
結婚を決めた青年と、離婚を言い渡された中年男性の話。
違う立場に置かれた対比だと思いきや共通点もあってお互いの視点を交互に感じられる構成が面白かった。
結婚を軸としつつも無自覚の加害に関する話がメインで、私もどこかで未だ無自覚の加害をしているかもしれないと思うと、何とも表現し難い気持ちになった。
特に翠さんの「覚えてないの?」という一言からは、何だか苦しかった。
土方さんに対する嫌悪を持って読み進めていたこともあり、守と同じ気持ちを感じたような気がする。
長谷川さんに対するハラスメントをしていた土方さんを守が裁く一方で
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Posted by ブクログ
だいたいの誰しもが思い返すと恥ずかしくなるようなことがあり、今自分の身に降り掛かることの意味なんて後からしか分からないし、意味なんてないかもしれないけど、人生ってそういうものだよね、と肩の力を抜いてくれる本でした。
個人的には、#5 肉食獣のアパレル店員 の言い回しがやかましくて好きです。
そして、あのときマカロンさえ買わなければ、がここに活きてくるとはと感嘆しました。
身に覚えのある失敗を、ふふふと笑って気を抜きたい人にぜひ読んでほしいです。
以下、お気に入りのフレーズ抜粋
#5 肉食獣のアパレル店員
ー 白もきちんと200色揃っていた。
ー ちょっとしたパーティがどこで開か -
Posted by ブクログ
読めてよかった。
子育てに悩むパパたちの叫びが、胸にズドンときた。
ママたちと同じくらい、パパたちもうまくできなくて泣きたくなる時があるんだ。
泣きたいのはママもパパも一緒なんだ。
子育ては、子どもと向き合うのと同時に、夫婦がお互いに向き合わないといけないチームプレーが必要なんだと、思い知らされた。
特に「俺の乳首からおっぱいは出ない」と「髪を結ぶ」は、泣ける。
乳児期に感じる焦りと、親としての自信喪失がこれでもかというくらいリアルに描かれていて、当時の記憶が蘇って、本当に泣いた。
パパにはもちろんおすすめしたいが、ママにこそ読んでほしいと思う。
パパの気持ちがわかれば、パパに対しても優 -
Posted by ブクログ
海辺の町で緩く繋がる短編集。
この町は多分私がかつて住んでいた町だ。
山育ちの私は海への憧れが強く、一度でいいからと会社を辞めて移り住んだのだが、経済的にうまく行かずその地を離れた苦い思いがある。
この小説の人びとの様にもう少し根を張れなかったかと悔やむ。
何しろ海の風景描写がいい。
そしてそこで生活をする人達の、あまりの当たり前さ。
更には綺麗に見える風景に垣間見える闇。
それでも生活は続く。
最後の『鯨骨』が本当にいい締め方をしていて、切なさが大半を占めるものの明るさも差しているのが良かった。
が、私の一番は何と言っても『渦』。
主人公の梓がそのまんま私で、何なら恥ずかしい位だった。