カツセマサヒコのレビュー一覧
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ネタバレあいつも、かつて好きだった雌が、知らぬ間にほかの雄とつがいになり、子供をうみ、それを育てていく様子を、どこかで知ったりするのだろうか。
空腹で目を覚ます。外はもう暗く、携帯の液晶画面のライトだけが、この世の灯りのように見えた。
全席禁煙です、と強い口調で言われて、わかりきっているのに、寂しかった。
会うことが決まった直後から、会いたくない気持ちが強くなってきていた。
東京には、どこに居ても、妻との思い出があった。たかだか二年だが、その間に、本当にいろんな場所に行ってしまった。
俺はいつも、誰かと疲れていたかったのかもしれない。
鳴き声が下手なまま老いていくウグイスがいるなら、生きるのが下手なまま、生きていく人もきっといる。何度も失敗しながら、笑われながら、自分に疲れながら、それでも生きていく人はきっといる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりにページを捲る手が止まらなかった。カツセさんの作品のなかで飛び抜けて好きな1冊。アルバムを小説化しようという発想、登場人物たちの心がきちんと回収されていくところ、ハッピーすぎない曖昧な結末、多すぎないページ数。こういう小説がもっと増えたら楽しいな、と思うほど好みだった。
・それっぽいことを、それっぽい説得力を持って述べる。人は話し方が九割。見た目が九割。第一印象が九割。新書のタイトルにありそうな情報を本気で信じているようなコメンテーターたちは、残りの一割に全く興味を示さない。
・寒い日に二人で食べるコロッケは、本当に美味しかった。雪山で食べるカレーとか、海の家で食べるラーメンとか、高速道路のサービスエリアで食べるホットドックとか、そんな風な「ふつうの特別」が、そのコロッケにはギュッと詰まっていた。食べながら涙が出そうになった。大袈裟でもなんでもなく、世界で1番好きな食べ物が、コロッケに変わった瞬間だった。
・「期待を超えてほしいけど、予想は裏切らないでほしい」 -
Posted by ブクログ
恋愛系半分、それ以外半分、といったところ。
全体的にいい。
歌詞+ナナカワさんのイラスト+小説
のメディアミックスが上手く機能している。
『終電間際≦オンライン。』は、『終電間際』という時間帯と、『駅』という場所を固定して、そこで紡がれるストーリーを共有するという意図を持つユニットなのだと思うが、その世界観がこの小説集においても通底しており、単発小説を個別に読むのとは全く異なる読後感を得られる。
個別小説に目を向けて見た時、特に良かったのは
『リタルダンド残して』を題材にした『海の底にふる雪』かな。
MVの雰囲気も取り込まれているので、MVを見た後で読むのがおすすめ。
あと、春茶さんの小説が意外にロジカル系で出来がいい。西田一紀さんの『熊』もそうだけど、二人とも本当に小説初執筆なのか?
だとしたら天才なんですけど。
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ネタバレ東京がもっとすきになる本!東京にいる間にいろんなところに行きたくなった!カツセさんが紡ぐストーリー、とても心に染み渡ってすき。やはり天才。ただ、コロナの打撃を一身に受けたんだなと思われる紹介されているお店の廃業っぷりに、心がいたんだ。
p.32 「あのね、歳下とか、気にしてるでしょ。そういうの、大丈夫。好きだから付き合ってんだし、無理しなくていいの。今日もずっと嬉しかったけどね、いつもこうだと、疲れちゃうじゃん。もっとのんびり、お互いが好きなところ行きたいところに、気軽に行けるように付き合いたいなって」その時僕は悟ったのだった。僕はいつまでたっても彼女に乾杯し続けて、それでいて、幸せなのだと。
p.52 「俺とだったら、今のままでも、大人になっても、きっと楽しいよ?」ビフテキを焼く音が、耳に入ってこなくなった。彼女は、頬を赤らめた。
p.60 記念日すらディナーを予約しない夫と、土日すら手料理を作らない女だ。ずぼらと言う共通点によってお互いを補完してあった私たちは、そこら辺の夫婦よりよっぽど平和的だし、世界中のカップルでも上位に入るレベルで幸せだと自負している。
p.90 「でもそうやって悩んでいるうちは、東京がいいかもね」「え、なんで?」もんじゃをゆっくりほおばって、弟は言った。
「東京って、答えを出した人の数よりも、悩んでる人の数の方が多そうじゃん」生意気な大学生の弟は、本当に我に、良いことを言う。
p.98 「同棲したらさぁ、『またね』なんて言うこと、なくなるんだね」生ぬるい風が吹く。いつもなら不快に思いそうなのに、なぜだか今日は心地よい。
「あー、そうか。家まで一緒だからまたねはないもんね」
「そう。あと、『待ち合わせ』も、減っちゃうね」
「あぁ、そうだね、持ち合わせる必要がないもんね。不思議だね」
「そういうのさぁ、一緒に暮らすまでに、いっぱい経験しとこうね」彼女が僕の手を強く握った。愛おしさが一気に込み上げて、雄叫びでもあげてしまいそうだった。
「ねぇ」僕は彼女に問いかける。「やっぱり結婚したいかも」「だからそれは、同棲がうまくいったらって言ったでしょ?」せっかちな僕は、いつも”順番”を間違える。
p.125 その大人な優しさに溶け出すとろりとした嬉しい気持ちと、その分仕事を頑張ろうという凛とした気持ちで、だらだらとこぼれだす、自分が情けない気持ちを覆い隠した。
p.127 好きな人が恋人になって嬉しいことの1つは、何の遠慮もなく、大事な1日も、次の季節も、私のそばにいてね、と言われたところにある。私も彼に暖かそうな靴下を買って、「今年の冬に履いてね」と言った。
p.168 僕らの約束がどのように続いていくのか、正直わからない。けれど、約束は、いつも意思でしかないから。未来は見えなくても、今はっきり見えている意思だけは、口にしてはっきり伝えたかった。
紹介されていたお店
・しぇりークラブ… 「ギネスブック認定」の300種類以上のシェリーを揃えるシェリー専門店。本格的なスペイン料理も味わえる。
・DNPプラザ…1階にある「問いカフェ」は、社会が抱えるさまざまな「問い」に対する”ヒント”となるような書籍を閲覧できる。
・トルコ文化センター:トルコならではのカラフルなビーズとガラスを組み合わせるランプや小物作り体験は、エキゾチックな気分を味わえる。 -
Posted by ブクログ
一言で【恋愛、結婚観について言語化】してくれた本でした。
17個の短編エピソードがあってどのお話も、心が柔らかくなりました。
エピソードを通して、こんな夫婦になりたいなあ、とか相手の好きなところを見つける彼だったり、男気ある旦那や、カツセさん含む御三方は、本当に優しい人間を描写するのが上手だなと思いました。
他のレビュー者様の言うように、確かに内容はライトでしたが、しっかりとカツセさんの書いた文章を感じられてとても好きでした。
特に書き下ろし短編集は、本当に天才的だと、カツセさんの虜に、さらになっちゃいました…
男女のエロティックな文を、陳腐な言葉だけど、あんなにエモくかけるカツセさんの次回作がもうすでに楽しみです。
ということで、私は星5個の作品でした!