羽根田治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
我が家は筋金入りのインドア家系。そのため、好天・悪天関係なく野外に繰り出すことはまず考えられないが、いつ・どこで・どうやって死ぬのかまでは当然断言できない。
「まさかこんなところで、こんなかたちで…」
死の直前までアウトドアを楽しまれていた方々もそう愕然とされたに違いない。本書では、遭難事故等ニュースでもお馴染みものからインドア派の自分でも遭いかねないものまで、実際に野外で起こった死亡事故が取り上げられている。
サメの捕食活動時間(夕方から明け方にかけて)になっても海に浸かっているかもしれない。頂き物の山菜…に酷似した毒草を食卓に並べるかもしれない。近所の山で熊とバッタリ対面するかもしれない。
自分だったらどれも回避・生還できる自信がないと、読書中はずっと危機感を募らせていた。
タイトルも危機感を募らせるのに有効である。
アウトドアには大自然のスリルを味わう楽しみもあるけど、何よりも自然への敬意を払わなければならない。ちっぽけな人間が強引に踏み込んでいくほど、災いへと近づくことになる。楽しむ反面下準備は抜かりなく、当日も死と隣り合わせなのだと気を引き締めなければならない。そうやって気をつけていても事故に遭う時は遭うから、冷静に命を守る判断力を働かせよう!
そんなメッセージが聞こえてくるようだ。
アウトドア慣れしていても決して読み飛ばさず、インドア派なら尚更無視してはいけない。実際初めて聞く用語や、アウトドア経験がなければ容易に想像できないシチュエーションがちらほらあって、それだけでも勉強になった。(恥ずかしながら、雪崩ビーコンとプローブをここで初めて知った)
シンプルだが事前・事後策をまとめてくれているのも有難い。
青森県の八甲田山といえば、旧陸軍が地元住民の注意喚起を無視して行軍を続け、多くの死傷者を出した遭難事故が有名だ。その八甲田山では火山ガスも発生するらしく、6月中旬タケノコを採りに入山していた一家を襲った。
「何度も訪れていた」というのが、言ってしまえば回避しようもない。事前に確認するとしてもせいぜい天気予報くらいだろうし、自治体に問い合わせるところまで手が回るだろうか。
「離岸流」「戻り流れ」という自然現象をご存知の方はどのくらいいるだろうか。
前者は海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする時に発生する強い流れのことで、後者はそれよりも戻るスピードが速い。死に至らしめる率が高く、急いで戻ろうとして力尽きることが主な死因だという。
遠泳技術がない場合、小さな子供だった場合を考えると、浜に残された方も気が気でない…
自分の身や大切な人を守るために、本書を活用する意義は大いにある。
お子さんのいるご家庭であれば、例えばP.17のコラム「転滑落事故が起きやすい場所は?」をクイズ形式で確認し合うのもアリかもしれない。お互い勉強にもなるし、よりインプットされやすくなる…はず。
インドア・アウトドアの皆さま、遊びに行った後も生きていたいなら、お互い命を“死“守していきましょう。
※奇しくも本日18日(火)、本書の「子ども版」が発売されたそうです…! -
Posted by ブクログ
羽根田治『十大事故から読み解く 山岳遭難の傷痕』ヤマケイ文庫。
日本の山岳遭難史に於ける十大事故を時系列に検証しながら、今後の糧にしようとしたノンフィクション。
荒天や雪崩、落雷による遭難の原因の一つではあるが、撤退することの決断力が遭難事故を防いだものと思われる。
『第1章 木曾駒ヶ岳の学校集団登山事故』。新田次郎の記録文学小説『聖職の碑』で有名になった山岳遭難事故。1913年、長野県の伊那地方の中箕輪尋常高等小学校の高等科二年生の男子生徒25人と赤羽校長ら教諭3人、同窓会員の青年9人の総勢37人が学校集団登山で木曾駒ヶ岳に登る。しかし、予想外の台風による暴風雨で11人の死者を出した。『聖職の碑』は映画にもなった。
『第2章 剱澤小屋の雪崩事故』。1930年の東京帝大の剱沢小屋雪崩事故。東大OBを中心とした4人がガイド2人を伴い、厳冬期の劔岳登頂を狙いながら立山や劔岳の景観をカメラに収めようとする。弘法茶屋で4人が談笑していると、後に単独行で名を馳せる加藤文太郎がやって来る。その後、劔澤小屋で彼らに再開した加藤は彼らと行動を共にしたいと願うが、4人に追い返されてしまう。そこが運命の別れ道だったようだ。
『第3章 冬の富士山巨大雪崩事故』。1954年、日大、東大、慶大のパーティが冬季の富士山で訓練中に次々と雪崩に巻込まれた事件。
『第4章 前穂東壁のナイロンザイル切断事故』。1955年、社会人山岳会『岩稜会』が冬季の前穂高岳東壁をアタック中にナイロンザイルが切れるというアクシデントに見舞われる。未熟な技術が事故を招いたのか、ナイロンザイルに致命的な欠陥があったのか。井上靖の小説『氷壁』はこの事件を題材にしている。
『第5章 谷川岳の宙吊り事故』。これは非常に有名な事故。1960年、谷川岳の衝立岩で岩壁登攀中にザイルで宙釣りになった2遺体。遺体を回収するために自衛隊が出動し、ザイルをライフル銃などで切断するという前代未聞の作戦が決行される。
『第6章 愛知大学山岳部の大量遭難事故』。1963年、冬期の薬師岳で愛知大学山岳部の13人全員が消息を断つ。空と地上からの大規模な捜索を行うが、全員の死亡が確認される。愛知大学とほぼ同時に薬師岳に挑んだ日本歯科大学のパーティは悪天候の中、登頂を果たし、無事下山する。2つのパーティの明暗を別けたものは……
『第7章 西穂独標の学校登山落雷事故』。1967年、松本深志高校の生徒たちが学校登山で西穂高岳の独標付近を行軍中に突然の落雷により11人が亡くなった悲惨な事故。不運としか言いようのない事故。自然の力はどう作用するか解らない。
『第8章 立山の中高年初心者遭難事故』。1989年、立山三山を縦走中の中高年パーティが悪天候に見舞われて遭難、10人中8人が死亡した事故。装備の差と決断力が生死を別けた。
『第9章 吾妻連峰のスキーツアー遭難事故』。1994年、吾妻連峰をスキーで縦走中の7人が道に迷い、5人が死亡した事故。
『第10章 トムラウシ山のツアー登山遭難事故』。2009年、北海道の旭岳からトムラウシ山への縦走ツアーに参加した15人と登山ガイド4人が悪天候の中、遭難し、8人が死亡した事故。商業登山のあり方が問われる。
定価1,210円
★★★★ -
Posted by ブクログ
山と渓谷社のレスキューハンドブック。
読まずに荷物に入れておこうと思ったが、パラパラとページを繰ったらアウトドアや災害現場基礎として知っておかねばならないことがコンパクトにまとめられているようだったので、とりあえず一読。
海、山、川、キャンプ場などのシーンに分けて、一般的に想定される危険、事故と、その状況についての基礎的な知識、対応の基礎指針、具体的対応の概要がまとめられている。
読めばあなたもレスキューのスペシャリストとなるわけではないが、少なくとも誤った方法でアプローチすることによる無駄な被害の拡大、二次災害の発生などを避け、レスキューの専門家が来るまでの時間を稼ぐといった対応に結びつけられると思う。
WEBにもさまざまな情報(正しい情報を含む)が溢れているが、ちゃんとした出版社とちゃんとした著者(あーって感じ)が責任を持って出している情報は、信頼できる。 -
Posted by ブクログ
読んでいるだけで想像してこちらの体が痛くなるような、死亡事例も含め、凄絶な滑落事故の数々が綴られている。
傍証や聞き書きでも充分臨場感は伝わるが、直に取材した当事者の声も多く収録されており、なおのこと背筋が冷える。
改めて、"ながら歩き"は厳禁であると思いを新たにした。
スマホをいじるなどもちろん論外、ウェアの脱着、バックパックやポケットの物の出し入れ、行動食や水分の補給等は、必ず安全な足場を確保した上で、立ち止まって行わねばならない。
私自身、頭では分かっているつもりだが、ついつい歩きながら行ってしまって、ひやりとする瞬間があったり…。
頻繁に訪れる近所の低山であっても、ここから落ちたら下手したら死ぬな、大怪我は免れん…という箇所はいくつもあるので、今一度肝に銘じようと思う。
また、道迷いが焦りを生んで滑落を誘発するという現象も多いんではないかな…というなんとなくの感覚についても、実際にそうだということが、著者の検証によって事実としてよく分かった。
終盤に収められた北岳のエピソードは、果たして遭難者が助かるのか助からないのか、このようなテーマのドキュメントに対して不謹慎ながら、読み物としての面白さがあった。
自然の中では人間は極めて非力な存在であるという前提を、謙虚な気持ちで常に心に留めておくことが必須である。