あらすじ
「山登りにベテランなし」。
すべての登山者が知っておくべき山岳遭難の真実。
登山者にとって山岳遭難はけっして他人ごとではない。
人が自然のなかに踏みこむ以上、なんらかの危険を受け入れる覚悟が必要であるということを、過去の遭難事例は雄弁に物語っている。
本書はこれまでに起きた山岳遭難をレポート。
雪崩、高体温疾患、爆弾低気圧、低体温症、道迷いと、それぞれの遭難の背景を検証しながら、学ぶべきポイントを指摘する。
彼らはなぜ遭難してしまったのか。
そこに至るまでの過程を丁寧に紹介したレポートは、読む者に山に対する心構えを新たにさせるにちがいない。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『起きてしまった事故をなかったことにするのは不可能であり、亡くなった人は還ってこない。幸い助かった人にしても、おそらく心に深い傷をおうだろう。しかし、教訓は残される』
本文から引用して帯の裏に書かれたこの言葉が本当に胸にのこる。
気をつけていれば避けられた事故もあれば、急な天候での予測不能の事態もある。どんなに慣れていても、また身近な山だとしても油断は禁物だということを分かりやすく解説してくれるいい一冊でした。
Posted by ブクログ
山岳遭難や事故の教訓。過ちや死者を冒涜することではない。
今を生きている人が、そこから何を学び、同じ過ちを繰り返さないために学びを得られるかだ。避難や中傷、批判でもない。
命に係わる山岳遭難を感情論で捉えてはいけないと思う。
今を生きる人が、これから人生を歩んでいく人が取り返しのつかない事態にならないように。
Posted by ブクログ
面白かった。
けれども、読むのに時間が かかった。頭が小説を読むのに特化しているため、記録的な文章だと飽きてしまうんだと思う。
それでも、事実を明確に記述し、状況の解説や証言によって、事故はどうして起きたか、どうしたら防げていたか、というのを考えられて面白かった。
山登りする趣味は無いが、サバイバル自体には興味があったので楽しめた。
だいたいはみんなうっかりなんだよなあ。大丈夫だろうで進んで引き返すという判断ができない。グループでも単独でも。
雪崩でテントが埋もれてしまったのは人為というより天災すぎて避けようが無いが、他のはだいたいもっと気をつければになる。
けれども、簡単には気を付けられないからこうしようで考えるしかないなあと思う。
装備の見直しや登山計画書を出しておくとか、天気が崩れたら引き返すとか、予定が狂えば引き返すとか、そういうことに気を付けなくちゃいけないなと思った。
安易にこうすれば大丈夫!ではなく、こういうことが起きるから気を付けようねのほうが学びとしていいなと思った。
Posted by ブクログ
田舎の祖父母に勝手に山に入るな山は怖いから、とよく子供の頃言われていたが、本当に怖いとこだと実感できる本書。
急に天気が崩れることはざらだろうし、何回も登山してる人が遭難したりもする。
遭難中に幻覚をみていたひとの手記はゾッとするものがあるし、最後に交わしたことばがあれだったのか…と亡くなられた方を思う切なさなどもすごいものがあった。
山は本当になめてはいけない場所だとおもう。
確かに山に惹かれる気持ちもあるけれど、私はよほど整備された登山道があるところ以外はこの先も登ることはないだろうな…。
Posted by ブクログ
大峰山で道に迷い、幻覚に苦しめられながら彷徨った人の手記が怖い。幻覚はどれも、彷徨ってる人を楽な方へ、状況を悪くする方へと導いている。山を降らせたり(迷ったら下らない、沢に降りないが鉄則)、靴やスパッツを脱がせたり、時計を取らせたり。
大峰山という霊山だけあって曰くを感じてしまう。もともと迷いやすい厳しい山だからこそ霊山になってるのかもしれない。
迷いながら見る幻覚は、日本昔話に出てくる怪談や、山の話にでてくる「まよいが」的だ。
かつてここで彷徨った昔の人が、霊的な体験をし、それがよく起こるから霊的な山と畏怖されたのかも。
大峰山、穂高岳は、ヤマケイの遭難シリーズでよく名前が登場するので要注意な山なのだなと思う。
そういえば、父の友人のお父さんも、登山が趣味で、何度も大峰山に登っていたが、ある日大峰山に行ったっきり行方がわからなくなってしまったらしい。その後だいぶ後になってから、山の中で亡くなってるのが見つかったとか…。慣れても尚危ない山、大峰山。
この前桜井駅に行った時、「登山に行くなら必ずしも登山届けを!」ってポスターが貼ってあったのを見かけた。
「明暗を分けた分岐点」、秩父の前鬼に行こうとして迷った人の話はこのシリーズで他にも読んだことがある。道を間違えた際、先行する犬連れの人に「こっちで良いんですかね?」と聞かれ、「良いと思いますよ」と答えてしまった。その後、自分は遭難しかけ3時間彷徨うが、なんとか正規のルートに帰る。しかし犬連れの人は遭難しそのまま行方不明になってしまった、という後味の悪い話。
山で人に適当なことを言ってはいけない…。これとは別のヤマケイ本では、休憩所で見知らぬ人に「沢ルートから帰った方が早いんじゃないかな、行ったことはないけど」と言われてその気になり、彼の力量では到底行けないような沢に迷い込み遭難した人の話が紹介されていたのを思い出す。
「冬山登山基地を襲った雪崩」では、山小屋の側で雪崩がおき、山小屋の周囲にテント泊していたテントが二基押しつぶされて死者が4人でた。テントの端にいた人は雪の重みで窒息死、中央に近い人スペースが確保できなんとか生還。雪崩が起きそういないところで起こった雪崩。山に安全地帯はない。
ゴールデンウィーク中に、北アルプスで吹雪が起こり何人もなくなった事故も…。初夏とはいえ山の上はいつでも真冬に戻り得る。
「春の爆弾低気圧」、山登りには天候予測や気圧読みが欠かせない。大荒れになる直前の山はむしろ天気が良い擬似好天になる、っていうのも怖い。自然の罠。
Posted by ブクログ
人間はこんなに”事前に計画すること”と”引き返すこと”が苦手で、過信、希望的観測を止められないものなんだということがよくわかる。とても興味深い。自分にそういうところがありすぎるくらいあることを忘れないようにするためにもときどき読み返してみたいと思う。
Posted by ブクログ
『穂高小屋番レスキュー日記』(宮田八郎)がキッカケで読む事になった『山岳遭難の教訓』(羽根田治)。
「低体温症の男が意識がない状態で暴れた末に抑えられ、看病された後に正気に戻った。けれど、その時の記憶が全くない。」という事を読んで、
「体の中で一体何が起きてるんだろう?」と思い、
関連本を探している時に発見しました。
人体じゃなくて、事故例なんだけど当時の私は気になってしまった。
まぁ……………どれ読んでも悲惨。
「さっきまで話してたのに、生きていて望みはあったのに」という苦悩を、
事故当事者は皆思ってました。
プロでさえ見誤る悪天候が起きる山へ、自身の能力も含めて情報不足な状態で山に入る事の恐ろしさを知りました。
かくいう私も抜け抜けで、「せっかくここまで来たんだから!」と強行突破しようとするクセ、まぁ危ない。
今まで奇跡的に下山できてただけかもしれない。
山に入る事に勇気がいった初期の気持ちを思い出して、
ちゃんと調べて、何が起こってもいいように用意して行こうって思った一冊でした。
Posted by ブクログ
山に登ったことが無いけれど、登山の本を読むのは好き第2段です 笑
いつか、いつか登るんだ!
本当は実体験した人が書いた話が読みたかったのですが、
この本は取材という形を取りながらも、なかなか鬼気迫る書き方で山岳遭難の怖さを読むことができました。
前半の冬山関連については現実感が無かったのですが
後半はとてもリアルで自分にも十分に起こりうることだなぁと感じました。
特に釈迦ヶ岳の幻覚と、奥秩父の分岐点の話はこれが現実に起こったと考えると背筋がヒヤっとします。
その厳しさも山の魅力…と思うのは、まだ登ったことのないあまちゃんだからでしょうか。
その厳しさの中で、自らが選択し進んでいく登山がいつかできたら良いなと思っています。
(その時はこの本をもう一度読み直そう!)
後日談で、無事生還された方の多くが再度同じルートに挑戦しているところが素敵でした。