藤井太洋のレビュー一覧
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伊藤計劃氏が亡くなってから16年
この“トリビュート”が出版されてから10年
その間、
大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。
多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。
最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響い -
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ネタバレ公正的戦闘規範 の第二内戦の後の世界が舞台。前作読んだのが7年前で、すっかり忘れているが、ORGANの説明等、舞台設定うっとうしいほど細かいので特に問題なし。近未来ガジェット満載で、戦闘用の犬型?多脚ローダーや監視ドローンだけでなく、自動運転(LEVELが場所によって変わる)、高層建築(1200mの富裕層マンション)、コンタクトレンズに内蔵された層化視(クシュヴ)、動画から記事の自動生成(これは既に現実化?)、遺伝子操作。展開もSPEED速く、最後の読後感もいい。だが
藤井太洋のSFは今ある技術の延長線上で現実化できそうな技術が売りだとおもっていたので、最後のおちには納得できない。最後だけオカ -
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第53回星雲賞日本長編部門受賞作品。その賞の名に恥じぬ濃密も濃密、もはや濃すぎるのではないかというレベルのゴリゴリのハードSF。2045年のテクノロジー描写が絵空事にならないようにしっかり練り込まれていてITに関心がある人はたまらないはず。一方でその辺りの土地勘が無いと情報量過多で戸惑うかも。土地勘があっても情報量は圧倒的で、とてもじゃないが「サクッと読める」ボリュームではない。じっくり味わうべし。社会批評SFとしてもアメリカの内戦という設定でアレックス・ガーランド監督のヒット映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と共鳴しており、こんな小説が2010年代から日本で連載されていた事実が興味深い
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近未来リアルサイバーSFというか、まずその近しい未来の描き方がさらりと自然で、説明くさくないので、世界観に入り込みやすいのがいい。物理空間と仮想デジタル空間を融合したMixed Realityなよくアニメで観る世界(空間に向かって手をささっと動かすと仮想空間のドキュメントがばばばっと分類されてそいつを相手にシュッみたいな)が文字の中で背景のように当たり前に存在している世界を構築している時点で、物語が面白くなる素地ができているのがすばらしい。
近未来の戦争が「公正戦」と言われる事前に戦力を情報公開してライブ配信することを前提とした、まるで過去の正々堂々といざ勝負的な戦闘行為となっていたり、その報 -
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ネタバレ――
バネ座金過激派アンチ。
確信犯的に、間違いのないものを。
ある程度専門的な知識や技術を必要とする業界に居ると、それぞれの技術には流派というか流儀、みたいなものがあることが解ってくる。冗談めかして「それは◯◯流だねぇ」とか云ったりするのだけれど、実際のところ結構本気で信じていたりする。
前の職場に居たサイボーグ姉御もそうだし、いまの職場にいるバネ座金過激派アンチもそうなんだけれど、突き詰めた技術に神性が宿るというのはどうやら確かなようだ。
この方法でやらないと失敗する、この手順でやらないと意味がない。それはもう、宗教や信仰と同じ色をしていて。
小説にもそれはあるよな、 -
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現代東京、しかも時は2020年3月。
東京オリンピックを目前に控えた国内の混乱を具体的に描写しており、舞台描写はこの上なくリアル。
対して、そこで展開されるイスラム圏やCIAを巻き込んだストーリーは壮大で。
このリアルさと壮大さのギャップにイメージを刺激される。
突っ込み処はいくつもある。
例えば女犯人、超人過ぎ問題。
この人が本気出したら大統領選に出馬しながら自前でロケットつくりそう。
また例えば警官・科学者ペアの、察し過ぎ問題。
あの情報範囲からテロ犯の動機と分裂を見抜くのは第六感に近い。
世界を混乱に陥れ、日本経済に壊滅的ダメージを与えた犯人に、この人たちは事件による死者の「数」を日常