藤井太洋のレビュー一覧
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ネタバレこの人のSFアイデアはどこから湧いてくるのだろう?長編も良いが、アイデアを凝縮している短編はもっといい。近未来のガジェットの使い方も秀逸。初出が中国だったり、アメリカだったり韓国だったり、国際色豊か。特に中国からの依頼で書き上げた作品は舞台や登場人物が中国なので、中国人作家のようである。
以下ネタバレ含む備忘録
ヴァンテアン:ヒトタンパク質を構成するアミノ酸の21個目を発明したら・・・フランス語の21という題名。バイオ特許は自然に存在するものには効かない
従卒トム:幕末に米国から派遣されて屍者のお話
おうむの夢と操り人形:オウム返しでも役に立つ。今のAIチャットはオウム返し以上だから大変役に立つ。
まるで渡り鳥のように;春節の帰省をヒントに量子力学で離れ離れの恋人たちが再会する
晴れあがる銀河:銀河英雄伝説のトリビュート。帝国は出自が大事
距離の嘘:新型感染症対策と大国の侵入からの防衛
羽を震わせて言おう、ハロー:宇宙船自体が異星に意思をもって航行する
海を流れる川の先:1609年海流を使って薩摩の琉球侵攻に抗う奄美の少年
落下の果てに:太陽フレア事故時に作業員がシールドを下ろさなかった理由は?宇宙の息吹を感じたから・・・
読書家アリス:小説がAI作か人間作かを見分けるAI。人間らしさを学習するには、たくさん読め
祖母の龍:奄美大島の海流が太陽フレアに置き換わって、帆を使ってフレアを乗り切る。解説によると紬の着物柄は龍郷柄と秋名バラらしい。 -
Posted by ブクログ
刊行した時点では約5年後の未来が舞台だが、
まぁいわば現代と言っても差し支えない時代を舞台にしたSF。
2020年、流れ星の発生を予測するWebサイト『メテオ・ニュース』を
運営する木村和海は、イランが打ち上げたロケットブースターの
二段目『サフィール3』が、大気圏内に落下することなく
逆に高度を上げていることに気付く。
シェアオフィス仲間である天才的ITエンジニアの沼田明利の協力を得て、
サフィール3のデータを解析する和海は、
世界を揺るがすスペーステロ計画に巻き込まれていく。
まず基本としてロケットが飛ぶ仕組みがわかっていないと訳がわからない。
前半はとにかくセットアップのための説明が続いていく。
丁寧に設定の詳細だったりを説明してくれるのだが、
専門用語のオンパレードなのでもうちんぷんかんぷん。
宇宙工学にもIT関係にも疎いので、頭の中で画を浮かべるのに苦労する。
まさにSFあるある。興味がないと脱落してしまう。
だが中盤以降、異変に気付いた和海と明利に対して
テロリストたちの魔の手が伸びていく辺りからグッと面白さが加速する。
想像の遥か上を行くスケールのデカさに期待感も膨らんでいく。
よくこんなことを思いつくものだと感嘆の声をあげてしまう。
さて、下巻へと。物語はまだ全貌を見せていない。
どう展開していくのか、期待で胸が膨らむ。 -
Posted by ブクログ
遺伝子操作で生み出された超人とSFと、詰まりに詰まった怪作。
公正戦闘の概念が世界に浸透した2045年。ジャーナリストの迫田城兵は、
国際独立市テラ・アマソナスの指導者チェリー・イグナシオが
軍事企業グッドフェローズの捕虜を銃殺する場面に遭遇する。
この不可解な虐殺を世界にレポートしようとする迫田だったが
何故か事実確認プラットフォーム『コヴフェ』により配信を拒否されてしまう。
チェリー本人から遺族訪問を依頼された迫田は、
グッドフェローズ唯一の生存者レイチェル・チェンと共に
熾烈な第二内戦を経た北米の自由領邦をめぐる。
やがて二人に合流したコヴフェのトーマ・クヌートは、
虐殺に関する迫田のレポートが軽視された原因を解析。
グッドフェローズのメンバーに秘められたある秘密を知る。
あらすじを見ただけではちんぷんかんぷんだが、
本編を読んでも専門用語のオンパレードで少し気を緩めると
たちまち置いていかれてしまう。SFあるあるの一種がこの作品にもある。
両親の人種とは懸け離れた肌や目や髪の色を持って生まれてきた子供たち。
チェリー・イグナシオは何を以て公正戦と言われるルールを破り虐殺したのか、
そして、迫田に課した遺族への慰謝料や謝罪の真意。
ざっくり言えば、この辺りの謎を追っていく物語。
設定はかなり複雑だが、面白さは担保されている。
戦闘描写など、目を覆いたくなる残虐さはあるのだが、
次々と襲いかかる展開には思わず息を呑んでしまう。
とっつきにくい難解さはあるものの読んで損はない、そんな一作。 -
Posted by ブクログ
帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。
〇 国境の子/宮内悠介
講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範囲内での気持ちの揺れ動きが小さい所が逆に心に引っ掛かる。
〇 月の高さ/藤井太洋
劇団の舞台美術スタッフと星座との関係でほんのわずかながらにSFのにおいがするが、話の流れは至って普通の話。
〇 ちょっとした奇跡/小川哲
既読。初めて読んだ時にはかなりインパクトを受けたが、2回目ともなるとインパクトは皆無。逆に言うと、もう完璧に完成された作品であるとも言える。
〇 水星号は移動する/深緑野分
設定は宇宙旅行も簡単にできる未来社会。その未来社会でも下層社会で生きる人もいる。キャンピングカー、いや移動式の旅館「水星号」に搭乗、いや宿泊する人達とのなんでもないやり取りが実に面白い。
〇 グレーテルの帰還/森晶麿
立派な推理小説。「旅」というイメージよりも、人生の旅のようなイメージ。最大の賛辞を述べるならば、ミニ松本清張っていう感じ?
〇 シャカシャカ/石川宗生
まずは「シャカシャカ」が何であるか考えることから始まる。最初のシンガポールが何故4番なのか判らないまま読み始める。その後、それらの意味が判る。山田太一の「終りに見た街」が激しく連続して起こると言えば良いのだろうか・・・結末は全然違うけど。この作品が一番SFっぽくてとても楽しめた。素晴らしい作品だ。
裏表紙の解説で知ったが、この文庫本は「Voyage想像見聞録」の改題だった。そういうことか。 -
Posted by ブクログ
伊藤計劃氏が亡くなってから16年
この“トリビュート”が出版されてから10年
その間、
大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。
多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。
最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響いた。
まるでドン・ウインズロウ『犬の力』を読んでるようで、SF集であることを忘れた。AIの及ぼす「天国と地獄の境界線」が、ノワールにまで入り込むとは……。
面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ公正的戦闘規範 の第二内戦の後の世界が舞台。前作読んだのが7年前で、すっかり忘れているが、ORGANの説明等、舞台設定うっとうしいほど細かいので特に問題なし。近未来ガジェット満載で、戦闘用の犬型?多脚ローダーや監視ドローンだけでなく、自動運転(LEVELが場所によって変わる)、高層建築(1200mの富裕層マンション)、コンタクトレンズに内蔵された層化視(クシュヴ)、動画から記事の自動生成(これは既に現実化?)、遺伝子操作。展開もSPEED速く、最後の読後感もいい。だが
藤井太洋のSFは今ある技術の延長線上で現実化できそうな技術が売りだとおもっていたので、最後のおちには納得できない。最後だけオカルトファンタジーになってしまったので星4つ。 ここからネタバレ
マン・カインドが遺伝子操作により聖徳太子のごとく同時多数の事務処理ができるようになるというのは納得。分岐意識が脳内で多数芽生えるというのも判る。だが意識をドローンに載せるのは飛躍しすぎ。ドローンのセンサからの情報を処理する主体は人間の脳でしょ?人間の脳が死んだのにドローンに意識が残るってのは、さすがに説明必要でしょ!ドローンの処理ICが人間の脳のようにニューラルでできているとか。バイオテクで造る生体ICが主流になっている可能性もあるので、そのあたりのガジェット説明があったら星5つだったのに。