藤井太洋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
おもしろい!
日本SF大賞受賞の傑作長篇、と裏表紙には書いてあって期待を持たせられたのですが、上巻を読み終わって思ったのは、SFのジャンルを飛び越えて面白い!ということ。
※念のため、SFは大好きだし、低く見ているということも無いです。歴史小説だろうがビジネス書だろうが、なんかもう普遍的に面白いな!的な驚きと興奮がある本だと言いたい…
最初は別々の出来事に見えていたそれぞれの情景が、物語が進むにつれて徐々にリンクしていき、ジェイソン・ボーン的なスピード感や緊張感が生まれてきて…の途中で上巻は終わります(笑
登場人物も今のところ非常に魅力的で(ちょっと全員スペック高すぎ感はあるのですが)、カッコいい。上巻だけで2箇所ほど「うおー」ってなったシーンが。。
理論やIT、諜報関係等々の考証は私には検証不能ですが、よくぞここまで贅沢に盛り込んでくれた、という印象です。かつ、決してこれらの要素にストーリーが振り回されることなく、上手く調和しているのが素晴らしいところ。
下巻が楽しみですが、同時に上巻を読み終わった時点で自分の中でのハードルが上がりすぎてしまっているのでそこが心配。。 -
Posted by ブクログ
サイバー犯罪捜査官とサイバー犯罪の元容疑者がタッグを組んで個人情報絡みの事件を追いかける警察小説。 元容疑者である武岱のキャラが立っていて、その存在感に本筋の話が絶妙にフックアップされている。
「XPウィルス」の作成と配布の罪で逮捕された武岱は2年に渡る勾留の末に不起訴処分となるも、長期の勾留期間によって蝕まれた彼の身体は痩せこけ釈放された頃には骨と皮の亡者然に成り果ててしまう。しかし、その2年後には驚くべきことに彼は筋骨隆々・頭脳明晰というスーパマンへと変貌を遂げていた。 そんな武岱がかつて自分の取調べ担当だった捜査官とコンビを組むという「設定」を軸にして、主要登場人物達(主に警察関係者)のキャラが本筋の流れの中で自然に深掘りされていくのが良かった。
手垢のついたような構成の話だとしてもキャラに魅力・奥行きがあると見える光景が全然変わってくる。 -
Posted by ブクログ
意外な人があっけなく退場したり、
意外な背景を持つ人だったり、
意外な変貌を遂げる人だったり。
何十年も先には、技術的に時代遅れになるかもしれない、
世界の情勢も変わっているだろう。しかし大国と
そうではない国、そうではなくなっていく国、
そこに生まれてしまった人、本当に輝ける場を
探す人、世界・宇宙の複数の舞台で、
それぞれに自分の持つ能力を存分に発揮しながら、
チームとして事態を解決していく爽快感。
SF、サスペンス、スパイアクション、
映画が似合うエンターテインメント!
みなが真剣ななかでも、わかりやすく前向きで明るく
ふるまうスマーク親子のやり取りや、オジーが
よいスパイス。一代で巨万の富を得て、
さらに夢を追い続けられる資本ドリームには
ちょっと嫉妬するけど。 -
Posted by ブクログ
文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。
以下、個別作品の感想。
◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化されている現代において、生身の人間がどのように戦闘行為に携わるか、戦争の正義を提案しているとまでは言わないが、現代のノールールな戦争より少しはましな状態を描いていると思う。
◎仮想の在処(伏見 完)
「ハーモニー」を彷彿とさせる物語。人間の意識とは、人格とは、存在意義とはなどを考えさせられる。伊藤計劃の作風に近い小説であり、彼の作品を読んでいるかのような感覚になった。
◎南十字星(柴田 勝家)
伊藤計劃っぽさはあまりないけれど、作品自体は面白い。少女との出合い、少女の死、仲間の死、自我の死、いろいろな死が平気でまわりに存在する中で生きている自分。意識がある自分、他人と同化した自分、自分ではない自分、意識と生命の存在を意識したところはやはり伊藤計劃っぽいのかな。
◎未明の晩餐(吉上 亮)
死刑囚に最後の食事を作る料理人の話。読んでいてどんどん引き込まれる。素直に面白い。哀しくもありハートウォーミングでもあり、見事な作品だと思う。
◎にんげんのくに Le Milieu Humain(仁木 稔)
ジャングルで生活する少数民族の話。部族に所属する“人間”と部族出身ではない異人がどのように生活するのかを描いている。普通に読んだだけでは、現実にある少数民族の普通の話のようにも読める。SFとして読むのは無理があると感じたのだが、他の人はどのような感想を持ったのだろうか。
◎ノット・ワンダフル・ワールズ(王城 夕紀)
生命の進化とはを問う物語。その定義を作品に語らせている。おそらく学術的な進化とは異なる解釈がなされていて、「へぇ~なるほど」と思わせる。「ハーモニー」を思い起こさせる作品である。
◎フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪(伴名 練)
実に面白い。「屍者の帝国」を思い出す。三原則についてはどこかで聞いたようなものもあるが、最初に出てきた原則を読んで瞠目した。確かに意識があるとかないとかはどのように判別するのだろうかと。それを疑問に思ってしまうと、自分自身が生きているのかどうかさえ疑ってしまう。この恐怖に震えてしまった。
◎怠惰の大罪(長谷 敏司)
人口知能(AI)が出てくるものの、それ以外でSFを感じさせる要素はない。ストーリーはキューバを舞台にした麻薬がらみの裏世界を描いたもの。ゴッドファーザーを思い出させる。長編作品の第一章が掲載されている。SF要素を楽しめるのは、第二章以降なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレコンピュータウィルス/詐欺名簿事件の冒頭から、組織・行政・国ぐるみの大きな展開に。章を追うごとに高まる緊張感と徐々に炙りだされていく全容。警察モノという新題材だが変わらず理性的・解説的な記述が特徴。
・警察のフリーダイヤル負担も捜査コストに
・”生活反応”
・住基ネット/マイナンバー/セキュリティ会社監視カメラが収集する顔紋データ/キャリア位置情報/店舗での購買情報/全てがつながったら・・?
・個人情報保護法の誤認(プライバシーの保護が目的ではない。企業が保有する個人情報が破損したり盗まれないよう保護する、利用方法を定めただけ。)
・顔紋は”特徴点を結んだデータの固まりにすぎない”=条文のいう個人を特定する情報ではない。顔紋にフラグをつけてやりとりするだけ、という抜け道
・利用者官吏システムと見せかけた市民監視による防犯活用の二重構造