藤井太洋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
サイバー犯罪捜査官とサイバー犯罪の元容疑者がタッグを組んで個人情報絡みの事件を追いかける警察小説。 元容疑者である武岱のキャラが立っていて、その存在感に本筋の話が絶妙にフックアップされている。
「XPウィルス」の作成と配布の罪で逮捕された武岱は2年に渡る勾留の末に不起訴処分となるも、長期の勾留期間によって蝕まれた彼の身体は痩せこけ釈放された頃には骨と皮の亡者然に成り果ててしまう。しかし、その2年後には驚くべきことに彼は筋骨隆々・頭脳明晰というスーパマンへと変貌を遂げていた。 そんな武岱がかつて自分の取調べ担当だった捜査官とコンビを組むという「設定」を軸にして、主要登場人物達(主に警察関係者) -
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Posted by ブクログ
意外な人があっけなく退場したり、
意外な背景を持つ人だったり、
意外な変貌を遂げる人だったり。
何十年も先には、技術的に時代遅れになるかもしれない、
世界の情勢も変わっているだろう。しかし大国と
そうではない国、そうではなくなっていく国、
そこに生まれてしまった人、本当に輝ける場を
探す人、世界・宇宙の複数の舞台で、
それぞれに自分の持つ能力を存分に発揮しながら、
チームとして事態を解決していく爽快感。
SF、サスペンス、スパイアクション、
映画が似合うエンターテインメント!
みなが真剣ななかでも、わかりやすく前向きで明るく
ふるまうスマーク親子のやり取りや、オジーが
よいスパイス。一代で巨 -
Posted by ブクログ
文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。
以下、個別作品の感想。
◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化さ -
Posted by ブクログ
ネタバレコンピュータウィルス/詐欺名簿事件の冒頭から、組織・行政・国ぐるみの大きな展開に。章を追うごとに高まる緊張感と徐々に炙りだされていく全容。警察モノという新題材だが変わらず理性的・解説的な記述が特徴。
・警察のフリーダイヤル負担も捜査コストに
・”生活反応”
・住基ネット/マイナンバー/セキュリティ会社監視カメラが収集する顔紋データ/キャリア位置情報/店舗での購買情報/全てがつながったら・・?
・個人情報保護法の誤認(プライバシーの保護が目的ではない。企業が保有する個人情報が破損したり盗まれないよう保護する、利用方法を定めただけ。)
・顔紋は”特徴点を結んだデータの固まりにすぎない”=条文のい -
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Posted by ブクログ
帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。
〇 国境の子/宮内悠介
講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範