藤井太洋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ名前だけは知っていた藤井太陽を初めて読んでみた。最高、今までなんで読んでこなかったのか猛反省。
初めてのSF作家って緊張するねんなぁ、理系素養が圧倒的に足りてないので、安易に近づくとバチコーンと跳ね返されてしまう目になり、半世紀に及ぶ読書生活で何度バチコーンされてきたことか…。
でもこの作品は、杞憂中の杞憂に終わった。遺伝子の事、多次元仮想空間の事、人造マイクロチップの事、究極のマルチタスクの事等々、理系仕草?はたっぷりあるんだけど、なんとなくのニュアンスがつかめてしまえば、それだけで十分作品に没頭できる。ちょっと凝った月村了衛といえば月村さんに失礼か?
テンポよく読み進めることができて -
Posted by ブクログ
最高でした! 2045年の戦場ジャーナリストが主人公の、ミリタリーSF、なのですけれど、とにかく近未来への解像度が高くてワクワクする!
たとえば「年寄りのエンジニアは、音声エージェントをわざわざ名前を呼んで立ち上げがち。HeySiriだのOKGoogleだの、当時の製品名で呼ぶのを好む人も多い」みたいなちょくちょく挟まる『近未来ありそうありそう』がいちいち絶妙。
ラスボスが『チェ・ゲバラの扮装をしてハバナ葉巻を嗜む現代戦争コンサルタント』なのも、みょーに男心をくすぐる!
クライマックスの王道的な盛り上がりと、エピローグの余韻もたまらない……。
専門家同士のよくわからない専門的な会話で妙 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終えるまでに時間はかかったものの、三作くらい読むと後は毎夜日課になって直ぐ読み終えた。
各者の銀英愛が眩しい。
太田忠司の暖かで素直なミステリも素晴らしい。
小川一水はビジュアル面で印象的に切り取って終わる。
小前亮の実に正攻法な艦隊同士の大戦は銀英伝の面白みを再確認させる。
藤井太洋の短編は「これどうなってるのかな…」などと見ていたら実に衝撃的な展開で成程!と。ある意味ニヤリともした。
激推しは高島雄哉の「星たちの舞台」で、ヤンというキャラクターを見たまんまのパロディやコピーにせず、彼ならばこの状況ではこうもあり得るだろう、という絶妙で繊細なキャラクターに仕上げ、若き日のヤンの繊細さに惚 -
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現在の技術の延長線上にある遺伝子編集でニュータイプを作るお話。作為的な進化という話はエヴァンゲリオンの人類補完計画を思い出させるが、更にその淵源を辿れば「地球幼年期の終わり」にルーツを見出すことができるだろう。
実はうちの子もIVFで生まれたのだが、文系脳の両親には似ずに読書はあまり好きではなく、理数系を得意としている。いや、まさかね。
ちょうどこれを読み始める前に映画「シビル・ウォー」を観ており、更に本書を読むのと同時並行的にアニメ「サイバーパンク:エッジ・ランナーズ」を観ていた。
本書内での政治状況や、「インプラント」などの技術についてはこれらの映像作品と共通するものがあり、これがいわゆ -
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藤井太洋(大洋ではない)、初めて読むSF作家。普通、初めて読む作家の場合は短編小説から読んで様子を見るのだが、今回はタイミング良く早川書房から新刊書が出版されたのをきっかけに思い切って読むことにした。帯を見ると、第53回星雲賞日本長編部門受賞作という華々しい勲章付き。例によって、素晴らしい作品は読む速度に加速度が付く。読み始めて早速、藤井太洋の書籍を集めにかかり、読み終わる頃までには殆ど揃えた。余りにも強烈な感動が私を襲ったので、この勢いで他の2つの長編に行くか?ちょっと待て。明後日、東京創元社から叢書短編集が出るとのこと。読むならそっちだな。
この小説の重要なテーマの一つに「公正戦」があり -
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舞台は2045年。2030年代に横行した自動機械による殺戮応酬、非対称戦争への反省から、ORGAN(限定銃火器行使単位)という兵士部隊を運営する組織は、あらかじめの約束事に従う公正戦なるハンデを自らに課している。
そんな公正戦という概念が一般的になった世界で、独立宣言した企業都市〈テラ・アマソナス〉の排除の依頼を受け、公正戦を受諾したのが、アメリカ最大の軍事企業〈グッドフェローズ〉。公正戦の終わり、〈テラ・アマソナス〉の公正戦コンサルタントであるチェリー・イグナシオが捕虜の兵士を虐殺する。明確な戦争犯罪の真意を、その第一報を届けようとしたジャーナリストが追う。
というのが物語の導入 -
Posted by ブクログ
長らく積んだままになっていた本書に取り掛かってみたが、「誘拐殺人事件」の謎で興味を引っ張りつつ、個人情報照合システムの問題点に切れ込んでいく構成が素晴らしい。
もっと早く読んでおけばよかった、と思う面白さであった。
ギークの生態もよく描写されており、個人情報保護法の問題点の指摘も的確である。
また、IT業界で横行しているといわれる多重請負問題についても、中抜きやブラック労働だけが問題なのではなく、個人情報の取扱いについても問題があることが指摘されている(本書では明示されていないが、政府や企業の秘密情報も同様であろう)。
それにつけても、日本そのものが巨大な虎にのまれることがないように願いたいも -
Posted by ブクログ
2010年代に行われた“遺伝子組み換え作物”は既に時代遅れとなり、作物の性質や色・形までも完全に遺伝子設計された“蒸留作物”が食卓の主役となった近未来の世界。
遺伝子デザイナーの林田は、自分が設計した稲が遺伝子崩壊した可能性を告げられ、原因究明のために発注元のエージェント・黒川と共にベトナムへ向かう。
藤井太洋さん、初読。
うわわわ、カッコいい!
めちゃくちゃ面白かった!
仮想現実やアバター同士のやり取りなどが日常としてありながら、ベトナムの蒸し暑さや甘すぎるコーヒー、データが直接送り込まれる感覚の気持ち悪さなどがリアルで、この世界にあっという間に没入して、酔える。
黒川さんの本当の肉