藤井太洋のレビュー一覧
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第53回星雲賞日本長編部門受賞作品。その賞の名に恥じぬ濃密も濃密、もはや濃すぎるのではないかというレベルのゴリゴリのハードSF。2045年のテクノロジー描写が絵空事にならないようにしっかり練り込まれていてITに関心がある人はたまらないはず。一方でその辺りの土地勘が無いと情報量過多で戸惑うかも。土地勘があっても情報量は圧倒的で、とてもじゃないが「サクッと読める」ボリュームではない。じっくり味わうべし。社会批評SFとしてもアメリカの内戦という設定でアレックス・ガーランド監督のヒット映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と共鳴しており、こんな小説が2010年代から日本で連載されていた事実が興味深い。
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Posted by ブクログ
近未来リアルサイバーSFというか、まずその近しい未来の描き方がさらりと自然で、説明くさくないので、世界観に入り込みやすいのがいい。物理空間と仮想デジタル空間を融合したMixed Realityなよくアニメで観る世界(空間に向かって手をささっと動かすと仮想空間のドキュメントがばばばっと分類されてそいつを相手にシュッみたいな)が文字の中で背景のように当たり前に存在している世界を構築している時点で、物語が面白くなる素地ができているのがすばらしい。
近未来の戦争が「公正戦」と言われる事前に戦力を情報公開してライブ配信することを前提とした、まるで過去の正々堂々といざ勝負的な戦闘行為となっていたり、その報道方法も現地の中継中に記事の信頼性をチェックする機関を通して、フェイクじゃないことを実証してからじゃないとニュース配信できないようになっていたりとか、現在の状況からさもありなんというSF作家的視点がバリバリ効いている。
当の物語としての楽しみは、後半仕掛けがうすらわかり始めてくるあたりからの展開が少しやりすぎ感を感じたものの、きっちり最後まで楽しませてくれる。
ネトフリとかでアニメか実写化しないかな? -
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ネタバレ――
バネ座金過激派アンチ。
確信犯的に、間違いのないものを。
ある程度専門的な知識や技術を必要とする業界に居ると、それぞれの技術には流派というか流儀、みたいなものがあることが解ってくる。冗談めかして「それは◯◯流だねぇ」とか云ったりするのだけれど、実際のところ結構本気で信じていたりする。
前の職場に居たサイボーグ姉御もそうだし、いまの職場にいるバネ座金過激派アンチもそうなんだけれど、突き詰めた技術に神性が宿るというのはどうやら確かなようだ。
この方法でやらないと失敗する、この手順でやらないと意味がない。それはもう、宗教や信仰と同じ色をしていて。
小説にもそれはあるよな、と思う。特にSFやファンタジーの、緻密に組み上げられた設定には自然と信仰が宿るのだ。もちろんいま存在するものの延長線上にある信仰もあれば、それはそうなるよな、という想像力にガイドされた信仰もあるし、物語の設計上間違いなく生まれるだろう信仰もあるし。
そういうのがある小説が、好きです。
さて。
そういう意味では、得意分野の土俵に色々なテーマを取り込んで切り刻むこの短編集も、職人技である。2013年から2017年の間に書かれたとは思えないくらい、現代に切り込むSF短編集でした。
素直に面白く、洒脱で、肌寒く、熱い。
これよ、これ。☆3.9 -
Posted by ブクログ
現代東京、しかも時は2020年3月。
東京オリンピックを目前に控えた国内の混乱を具体的に描写しており、舞台描写はこの上なくリアル。
対して、そこで展開されるイスラム圏やCIAを巻き込んだストーリーは壮大で。
このリアルさと壮大さのギャップにイメージを刺激される。
突っ込み処はいくつもある。
例えば女犯人、超人過ぎ問題。
この人が本気出したら大統領選に出馬しながら自前でロケットつくりそう。
また例えば警官・科学者ペアの、察し過ぎ問題。
あの情報範囲からテロ犯の動機と分裂を見抜くのは第六感に近い。
世界を混乱に陥れ、日本経済に壊滅的ダメージを与えた犯人に、この人たちは事件による死者の「数」を日常のそれと比較して慰めたりもしている。
余波を思うと絶対そんな場合ではない。
ただこうしたザラザラした違和感を呑み下して先へどんどん読み進めるほど、魅力的な物語ではあった。
その魅力の主軸になっているのがおそらく、先述のリアルさに込められたメッセージ性。
3.11以降の原発問題や9.11以降のイスラム圏テロリズム勃興、隣国での核実験と人権侵害など、現代日本が抱える社会問題が多く織り込まれている。
読み進む程に、「我々日本人」は、「日本人だからこそ」、核・原爆を遠い国や過去の問題とせず、原発問題を過ぎ去った出来事としないで、学び続けねばならないと思いを強くする。
読後に余韻を引く物語。 -
ネタバレ 購入済み
士官学校生の恋は
ヤンが士官学校時代。同級生の恋バナをキャゼルヌ少佐にしたことから不穏な話に…キャゼルヌ夫人がまだキャゼルヌ少佐と交際中、名探偵さながらに謎を解く話。