藤井太洋のレビュー一覧

  • ワン・モア・ヌーク(新潮文庫)

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    2020年東京オリンピックが開催される記念すべき年の春。今を舞台に描かれた作品。日本は世界にどう映っているのだろうか。原爆を落とされた国。そして原発事故のフクシマを抱える国。その国の首都に核爆弾を仕掛けるという企て。日本を舞台にしながら、戦争やISISに翻弄される中東圏、日本で働く外国人労働者、国際原子力機関、CIAなどの国際機関など、様々な背景を持つ人々が描かれている。
    現在進行形のコロナウィルスの状況と重ねつつ読みました。

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    2020年02月15日
  • ビッグデータ・コネクト

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    なるほどなあ……とか思うくらいノンフィクションに感じた。現実に同じような事が、国内で起きているんではないかと思わせられたが、現実はどうなんだろう。ネットセキュリティーとか、プログラムとか、本当に分からない世界なので、全て信じてしまいそうだ。
    ストーリー的にはブダイというキャラが個性的で印象的。
    刑事ものサスペンスというより、未知なITに対するサスペンスという気がした。

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    2019年12月12日
  • ビッグデータ・コネクト

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    友人に、SEが居ます。彼の言動の原因が、この本を読んで、なんとなくわかった気がします。病んでるなぁ・・・

    って言うか、描かれている事が、余りにも“リアル”なので、不思議な感じがしたんですが、それはそう、著者が、元々ソフトウェア会社に勤務していたので、その経験が活きているんでしょうね。

    ただ、ちょっと足りなくね?と思ったのは、武岱の要望の変化の理由が、イマイチ明らかにされ無かった事。まぁ、想像すれば、色々と考えられるんですが、伏線と思っていたので、その謎が解明されなかったのは、ちょっと残念。

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    2019年12月07日
  • オービタル・クラウド 下

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    面白かった。各分野のプロフェッショナルが集結し、それぞれが死力を尽くして戦う構図が熱くてかっこいい。SFでありサスペンスであり、そのどちらの視点からも素晴らしいエンタメ作品として楽しめた。
    ただ、主人公チームの能力がほとんどチートと言っていいほど高すぎるために難問が難問として機能しておらず、ただ主人公チームの「凄さ」を強調するための装置としての役割しかなくなっていることが惜しく感じた。
    また、「なんてやつだ!」「たったこれだけの時間でこんなことを!」のような持ち上げが多すぎて途中から「はいはいすごいすごい」と感じてしまったのが正直なところだった。
    しかし、最後は大団円を迎えて読後感も非常に爽や

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    2019年11月01日
  • Gene Mapper -full build-

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    処女作にして、セルフビルドで構築された電子書籍をもとに加筆されたもの。
    近未来の遺伝子組換植物のエラーが引き起こす物語を描いている。ここ数十年で世界各地の農業の多様性を破壊したモンサント社や、それに対して活動する環境NGOの対立を彷彿とさせる部分があり、個人的に既視感が強い作品と感じた。
    著者の生まれた奄美大島は、世界自然遺産登録候補である。日本は生物多様性の宝庫で在来種も多い。その中で琉球列島は地域固有種が多く、生物だけでなく文化の多様性も豊かである。奄美群島では近年、海外資本の豪華客船ルート誘致や、オサガメの産卵地である自然海浜の護岸工事等、観光や環境の影響が懸念される事件が複数あり、更に

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    2019年10月05日
  • ビッグデータ・コネクト

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    下請け、そのまた孫請け労働の顛末とは?

    IT分野の仕事はよく知らないが、就職氷河期世代として、非正規職員を転々としたので、この中に登場する社会や企業の仕組み、歪み、世界観は嫌と言うほどよくわかる。個人情報保護について、非正規職員も法令遵守を事細かに指示され、研修を受け、教育されたことを思い出す。
    はてさて、ところで、そんなに難しい専門的な業務を委託する発注者の仕事とは?!

    不条理な世の中で起きた事件がフィクションでありながら、あたかも事実のように思えて仕方なかった。

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    2019年09月29日
  • 伊藤計劃トリビュート

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    ネタバレ

    目次
    ・公正的戦闘規範 藤井太洋
    ・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
    ・南十字星 柴田勝家
    ・未明の晩餐 吉上亮
    ・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
    ・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
    ・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
    ・怠惰の大罪 長谷敏司

    どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
    この2作品は好きだなあ。
    特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。

    単純な幸福はない。
    幸福に正解はない。
    けれどどの作品も屈託があり

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    2019年08月14日
  • アンダーグラウンド・マーケット

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    若者の貧困をテーマの一つとして描かれていますが、そこを力強く駆け抜けていく姿に希望を抱ける良作です。仮想通貨が世界中を席巻していますが、日本ではまだまだ広がっていないし、僕自身まだpaypayもLinepayも使っていません。なんとなく必要性を感じていないからというのが大きいです。それでも殆ど買い物も支払いもクレジットなので、現金使用しなくなって来ていますが。
    この中ではN円という仮想通貨を巡って、3人の若者が事件に巻き込まれていきますが、上田岳弘の「ニムロッド」の仮想と現実との境界線があやふやになるような漠然とした不安感とは真逆で、肉体的で汗ほとばしる青春作です。
    国家という傘から弾き飛ばさ

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    2019年06月06日
  • Gene Mapper -full build-

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    個人的に大好きなジャンル。農学と生物学(遺伝子工学)と、プログラミングが合わさった話。
    ジーンマッパーとして、遺伝子をプログラミングすることを生業とするフリーランスの主人公と、遺伝子組み換えではなく、遺伝子からプログラミングされて作りだされた植物の話。
    何故か、緑の革命を思い出しました。多分作物の名前の所為です。

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    2018年12月28日
  • Gene Mapper -full build-

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     拡張現実、遺伝子デザインされた作物が広く行き渡る未来。
     遺伝子デザイナーは大手企業に依頼されて手がけた自身の仕事、稲のデザインに不備があったと告げられる。企業のエージェントとともに原因究明に乗り出すが・・・

     思っていたより楽しく読めました(当初はもっと難しいかと思ってた)。
     拡張現実のギミックがいろいろ挟まれていて、一応、遺伝とかの基礎知識があったからかな。
     最後は希望にあふれ過ぎとのむきもあるけど、オープンソースが叫ばれる中では割とありかなぁ、という気もしました。

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    2018年12月22日
  • オービタル・クラウド 上

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    "近未来の宇宙で起きる国家規模の陰謀を描くSF小説。
    だんだんと物語に引き込まれていく。
    下巻が楽しみだ。
    ローレンツ力という言葉を覚えた。フレミングの左手の法則で向きを確認できるもの。
    説明できるほど理解をしていない。量子力学とともに理解を深めたいと思った。"

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    2018年11月23日
  • Gene Mapper -full build-

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    ネタバレ

    ある日ふと「大豆(遺伝子組み換えでない)」ってどういうことだろう?と思い、そういえば遺伝子操作の小説があったなと思い出して読んだ本。

    遺伝子デザイナー林田が主人公で、過去の仕事(遺伝子設計)にバグが出て、それを解決するために調査をしていたら……というお話。
    舞台は2037年。通信技術も生活様式も、インターネットの在り方も大きく変化した時代。
    拡張現実内での描写がほとんどで、とんとんと困難な調査が進んでいく。
    読み終わって、「この怒涛の出来事が4日で終わったなんて」という感じに。良い意味で。

    遺伝子設計された稲が問題になるので、なんとなく「食」に対する意識を、読みながら感じていた。
    黒川さん

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    2018年09月10日
  • オービタル・クラウド 上

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    SF。サスペンス。
    良いスピード感。
    序盤こそ内容が分からず、なかなか進まなかったが、気付けば止まらなくなってました。
    このまま下巻へ。

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    2018年08月16日
  • 公正的戦闘規範

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    そうそう、これこれ!
    現在の延長線上にあるちょっとした未来と、新技術がもたらす社会変化をポジティブに描いてくれる、藤井太洋ワールドが炸裂です。
    未来に希望が持てる作品です。

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    2018年08月11日
  • ビッグデータ・コネクト

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    ビッグデータを握ったものが、世界の覇者になれると思われる。GAFAが個人情報の元締めとなる。
    インターネットが、実に便利になったと喜んでいたが、実は、個人情報がダダ漏れである事実の中で、それを意識的に統合しようとするものは、その情報自体が、マーケティング手法にとって大きな商品になるばかりでなく、あらゆるものがデータ化されて分析されていく。収入、貯金、ポイントカードの購買記録、その嗜好、犯罪者、病気履歴、親族関係、人脈。思想経歴、エッチサイト閲覧経歴、遺伝情報、などなど。ネットで繋がる限り、もはや個人情報を守ることができない。フェイスブックに顔写真を載せれば、監視カメラにより行動履歴はもはや全て

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    2018年08月01日
  • アンダーグラウンド・マーケット

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    たくましく生きる3人の若者の青春物語。…と書くと、「あら退屈そう」と思う人もいるかもしれない(私です)が、そこは藤井氏。若者の活躍を軸にして、設定を仮想通貨が流通し、多くの移民が暮らす日本にすることで、知的好奇心も満たされ、またそこに事件が絡みと、刺激的で痛快なエンターテイメントに仕上がっている。

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    2018年07月18日
  • ビッグデータ・コネクト

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    SFの定義に当てはまるかわからないけど、マイナンバー制度の抜け穴や、IT開発の多重請負構造など、現代社会の闇に、焦点を当てた作品。

    マイナンバーを利用した個人情報収集とは…。
    プライバシーマーク掲げて仕事してる人達がキレそうな内容だわ。
    プライバシー保護がいかに善意に基づいて成り立っているか、あらためて思い知らされた。
    中国とかすでに顔紋導入されてるし。
    犯罪者の検挙とか、功績は上がってるだろうけど、一方で個人情報の漏洩と、冤罪リスクの危機も恐ろしいわー。

    とりあえず、アプリをダウンロードするときは、ちゃんと、連絡先へのアクセス許可をしてくるか、それは正当な理由かを確認した方がいい。

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    2018年06月10日
  • 公正的戦闘規範

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    身につけたITスキルがレガシーになって取り残されていく感覚はよくわかる。ましてや量子コンピューターなんてものが主流になったらなおさらだろう。しかしそれほどは遠い未来ではないのかもしれない。この本を読んで、そんな感じがした。

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    2017年12月18日
  • ビッグデータ・コネクト

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    住基ネットとカメラが結びつけば、リアルタイムで追跡されるんだろうけど、既にGoogleは位置情報と写真とその人の趣味とかビッグデータで持ってるからな 怖い世の中

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    2017年11月09日
  • ビッグデータ・コネクト

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    ITエンジニアの誘拐事件を取り扱った警察小説。マイナンバーや公設民営施設といったトピックを物語の中に上手く盛り込みつつ、その裏側を垣間見せられてちょっと恐ろしくなります。IT業界の労働環境って…。

    同じ著者の「オービタル・クラウド」ほど仕掛けは大きくないのですが、ディテールが緻密でそれぞれのシーンに物凄く説得力があるのは相変わらず。物語も中盤からは疾走感を持って進むし、キャラも描き込まれていて感情移入できます。
    ただ、それゆえに一部の登場人物の動機は「そこまでかなぁ…?」と思ってしまったところも。あと、個人的な好みのレベルですが結末はちょっと残念。

    最新のトピックを表層的でない形で(しかも

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    2017年10月29日