藤井太洋のレビュー一覧
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舞台は2045年。2030年代に横行した自動機械による殺戮応酬、非対称戦争への反省から、ORGAN(限定銃火器行使単位)という兵士部隊を運営する組織は、あらかじめの約束事に従う公正戦なるハンデを自らに課している。
そんな公正戦という概念が一般的になった世界で、独立宣言した企業都市〈テラ・アマソナス〉の排除の依頼を受け、公正戦を受諾したのが、アメリカ最大の軍事企業〈グッドフェローズ〉。公正戦の終わり、〈テラ・アマソナス〉の公正戦コンサルタントであるチェリー・イグナシオが捕虜の兵士を虐殺する。明確な戦争犯罪の真意を、その第一報を届けようとしたジャーナリストが追う。
というのが物語の導入 -
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長らく積んだままになっていた本書に取り掛かってみたが、「誘拐殺人事件」の謎で興味を引っ張りつつ、個人情報照合システムの問題点に切れ込んでいく構成が素晴らしい。
もっと早く読んでおけばよかった、と思う面白さであった。
ギークの生態もよく描写されており、個人情報保護法の問題点の指摘も的確である。
また、IT業界で横行しているといわれる多重請負問題についても、中抜きやブラック労働だけが問題なのではなく、個人情報の取扱いについても問題があることが指摘されている(本書では明示されていないが、政府や企業の秘密情報も同様であろう)。
それにつけても、日本そのものが巨大な虎にのまれることがないように願いたいも -
Posted by ブクログ
2010年代に行われた“遺伝子組み換え作物”は既に時代遅れとなり、作物の性質や色・形までも完全に遺伝子設計された“蒸留作物”が食卓の主役となった近未来の世界。
遺伝子デザイナーの林田は、自分が設計した稲が遺伝子崩壊した可能性を告げられ、原因究明のために発注元のエージェント・黒川と共にベトナムへ向かう。
藤井太洋さん、初読。
うわわわ、カッコいい!
めちゃくちゃ面白かった!
仮想現実やアバター同士のやり取りなどが日常としてありながら、ベトナムの蒸し暑さや甘すぎるコーヒー、データが直接送り込まれる感覚の気持ち悪さなどがリアルで、この世界にあっという間に没入して、酔える。
黒川さんの本当の肉 -
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気兼ねなく、旅行ができなくなってから、どれだけの月日が流れただろう。ほんのたまに行く旅行でさえ、近場であっても感じてしまう後ろめたさ。
現実に旅行ができなくても、家の中での読書なら、マスクを外してできるという気持ちで読みはじめましたが、とんでもない異世界が待ち受けていました。
個人的なオススメは、『ちょっとした奇跡』と『シャカシャカ』。(星新一の影響か、SFものの短編に、ついハマってしまいます。)
特に、『シャカシャカ』は、最初、意味がわからないのだけれども、なるほどこの世界はそういう仕組みなのか、と納得して、そしてまた置いてけぼりにされるという、読後感が不思議な話でした。
登場人 -
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ネタバレ銀英伝のトリビュート短編集。ラインハルトがルアーフィッシングをするなら、ヤンは2人劇で女装で役者をする。キャゼルヌ婦人の名探偵っぷりは堂に入ってるし、フェザーンと地球教はなるほどなるほど…
田中芳樹のすごいところは、あれだけ売れてあれだけ続編を書きやすそうな「銀英伝」を正伝10巻、外伝5巻できちっとけじめをつけたところだと思う。これは真逆の方向性だが、死ぬ間際までグインサーガを描き続けた栗本薫と同じくらいスゲーことだと、俺は思っている。
だからこそ、銀英伝の2次創作は枚挙にいとまがない。世の中にあふれたくっているのだが…、深い愛とそれを表現できる技術をもった一流の小説家たちが創る二次創作作 -
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エンジニアのなんでも屋の文椎。日本、アメリカ、ベトナム、中国を渡り歩く。短編集
slack,ブロックチェーン.シンギュラリティなどのIT用語も登場しますが、最後の「めぐみの雨が降る」はブロックチェーンの仕組みが分からないと理解しにくいなと感じましたが、総じて分かりやすかったです。
ITで世界を変えるといった時に最後は人との繋がりではないかと感じます。またネットで世界が繋がるということは資本主義や社会主義を越えて世界がより良くなること。理想論もあるかもしれませんが。
自分のまわりに、主人公の様なコミュニケーション力、技術、英語も話せてなんてスーパーエンジニアがいないのは自分の世界が狭いのか -
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6人の作家による銀河英雄伝説公式トリビュート・アンソロジー。
原作が完結してから何年?1989年の完結?30年近く経て、トリビュートされるのは衰えない人気の証明。
嬉しい。
タイトルに列伝1とあるからには、今後も刊行の予定があるという含みと思います。銀英伝の世界が、銀河の歴史が1ページ、また1ページと増えてゆくわけです。これは嬉しい。
「竜神滝の皇帝陛下」
エミールのラインハルトへの心酔っぷりを評して、釣りをしている時も宇宙を釣り上げているようでした、という一文があったことを思い出す。そこからふくまらせた作品。日常生活というか余暇を楽しむことができないラインハルト。彼の数少ない日常の光景を垣 -
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普段アンソロジーは手にとらないのですが、銀英伝トリビュートとくれば話は別です。
ファン必読の書と言えるでしょう。
列伝1とあるので、今後2、3と続いてほしいです。
では、簡単なエピソード紹介を。
①竜神滝の皇帝陛下(小川一水さん)
ラインハルトの新婚旅行中の数日が描かれます。
僕は最後の作者自身による注釈を見るまで気づきませんでしたが、原案はあの超有名な漫画の1エピソードらしいです。
冒頭のエピグラフに続いて、史書あるいは史家の論文と思しき記述があってから本編に入るという銀英伝らしさ溢れる構成に、一話目から胸が熱くなります。ラストに年表形式で語られるエピローグもいい。
②士官学校生の恋(石