藤井太洋のレビュー一覧

  • オービタル・クラウド 下

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    熱い。とてつもなく熱く、そして尊かった。

    サフィール3の異常な機動から、国際宇宙ステーションを
    狙う軌道兵器であるという噂が広まりつつあった。
    北米航空宇宙防衛司令部のダレル・フリーマン軍曹は事態の調査を開始。
    一方、著名な起業家ロニー・スマークは民間宇宙ツアーPRのため、
    娘のジュディと共に軌道ホテルに滞在しようとしていた。
    調査を続ける木村和海は、
    全ての原因が新型の宇宙機スペース・テザーにあるという情報を
    イランの科学者ジャムシェド・ジャハンシャ博士より得る。

    迫り来るスペーステロの脅威。それに立ち向かう下巻。
    スペース・テザーを使ったテロの全貌が和海たちの手によって
    段々と解明されていく。北朝鮮と手を組んだ白石蝶羽の計画。
    けっこうズシッと来るものがあった。
    全てが全て、この小説で描かれた通りではないだろうが、
    それでも持たざる者たちになるしかなかった彼らの無念さは伝わった。
    そしてそれが、歪んだ感情にすり替わってしまうのもまたわかる。
    白石やジャハンシャ博士の思いはかなりの重さだった。

    だからこそ、簡単に止められる代物ではないという構図。
    それに対し、和海や明利の元に国境や立場を越え集結する仲間たち。
    チームとなりテロを食い止めるべく奔走する姿はとても眩しかった。

    ただの金持ちだと思っていたロニー・スマークやオジー・カニンガムも
    ちゃんとした役割と熱い言葉が用意されていて、胸アツな展開が続いていく。
    下巻はハラハラドキドキ、そして王道のストーリーが待っていた。

    確かに穿った見方をすれば都合が良い展開で片付けられてしまうが、
    本来エンタメとはそういうもの。読む人を熱くできるかどうか。
    そういった意味でも、この作品は間違いなく自分の胸を熱くさせてくれた。

    よくもまぁこの複雑怪奇な設定と事象を、ここまでエンタメに昇華できるものだ。
    ラストに描かれる展開は、是非とも実写で観たいと思ってしまった。
    とても実写化に向いている作品だということは間違いない。
    ちゃんとお金と時間を掛ければ、とんでもない傑作になりそう。
    時代よ、早くこの作品に追いついてくれ。

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    2026年08月10日
  • ビッグデータ・コネクト

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    まさに新時代の警察小説だった。

    京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、
    ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。
    協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー・武岱修。
    二人の捜査は進歩的市長の主導するプロジェクトの闇へと。
    行政サービスの民間委託計画の陰に何が?_

    冤罪により全てを失った武岱修のモデルは
    ウィニー事件の金子氏なのだろうか?
    少なくともウィニー事件も含めてどこか取り入れてるような気も少しした。

    専門用語がバンバン飛び交うのでIT関連に疎いとチンプンカンプンなのだが、
    物語の筋としてはとても良くできている。
    むしろ、現代における情報社会の闇を見ているようだった。
    背筋が凍る。現実でもこのように個人情報というものは
    そこら中にバラ撒かれ、そして監視されているのだろうか。
    そんなことあるわけないと鼻で笑えないのが、怖いところだ。

    後半にかけての真相が明るみになっていく流れは読んでいて胸が熱くなった。
    スカッとする展開、そして何とも胸が詰まるエピローグ含めて
    エンタメとしても完璧な流れであった。
    まさに埋もれた傑作と言える一冊。もっと世に広まってほしい。

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    2026年08月02日
  • ワン・モア・ヌーク(新潮文庫)

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    圧倒的な密度だった。圧巻の一作。

    「核の穴は、あなた方をもう一度、特別な存在にしてくれる」
    原爆テロを予告する一本の動画が日本を大混乱に陥れた。
    爆発は3月11日午前零時。
    福島第一原発事故への繋がりを示唆するメッセージの
    その真意を政府は見抜けない。
    だが、IAEAの技術官・館埜と警視庁公安部外事二課の刑事・早瀬の執念は、
    互いを欺きながら正義の瞬間に向けて疾走するテロリスト
    イブラヒムと但馬樹の歪んだ理想を捉えていた。
    戒厳令の東京、110時間のサスペンス。

    核に対する知識が無いに等しいので、細かい設定や描写に
    画を思い浮かべるのに苦労はするのだが、緊迫感は十二分に伝わる。
    作中でも触れられていたが、自分自身もあの震災、そして原発事故に対し
    正面から向き合ってきたかと問われれば、とても向き合ったとは言えない。
    そんな無自覚かつ無知な自分が読んでいて情けなくなる。

    決して、思想的な何かを押しつけるような作品ではないので
    ちゃんとエンタメとしても機能している。
    こういった類いの作品は希有であり、重要である。

    東京のど真ん中、象徴的な場所で原子爆弾を爆発させるという
    あまりにも想像の斜め上を行くとんでもない設定自体も
    何故か荒唐無稽とは言えず、あり得そうなことだと思ってしまうのが
    何ともこの先の未来に不安を覚えてしまう部分である。

    早瀬が但馬樹に見せたラストの振る舞いで思わず涙してしまった。
    人間描写もキチンと描かれているので、感情移入もスムーズにできる。
    偶然にも今作を手にしてとてもラッキーだった。この幸運に感謝。

    0
    2026年07月29日
  • Gene Mapper -full build-

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    少し先の世界を見ているかのようなリアリティがありました。もしかするとそうなっているかも、と思ってしまうような概念や技術が多かったです。
    比較的に読みやすい文章で気がついたら読み終えていました。

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    2026年05月23日
  • 伊藤計劃トリビュート

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    ネタバレ

    伊藤計劃を追悼する8篇。どれも短編としては濃密な設定で、長編小説としても読んでみたいと思わせるものばかりだった。以下は特に面白かったものを示す。

    藤井大洋「公正的戦闘規範」
    伊藤計劃、「虐殺器官」を彷彿とさせるような重厚な戦闘シーンが魅力。偵判打というゲームが、実際の戦闘ドローンの操縦になっていた、という設定に恐怖した。

    吉上亮「未明の晩餐」
    孤高のシェフと孤児二人、死刑囚の最後の晩餐専門シェフというなんともいいキャラ設定。感動。

    伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」
    切り裂きジャックの独白。ナイチンゲールがフランケンシュタイン博士に改造された屍者で、なんやらこうやら歴史が交錯するスペクタクル。一番面白かった。

    長谷敏司「怠惰の大罪」
    キューバの麻薬カルテルでのしあがるカルロス・エステベスの半生。クライム・ノベルとしての魅力が沢山でワクワクさせられた。

    非常に楽しめた。

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    2026年04月30日
  • ハロー・ワールド

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    毎日使ってるネット自体の根本について考えさせられる。
    難しいプログラミング言語、コード、単語に原理。典型的文系の私には縁のなかった世界ですが、毎日自分が不自由なくネットを使えるのは縁のない世界の住人が作ってくれたものがあるから。
    何も考えずに使ってましたが、この本を読んで、ネットに頼ることの危険性も、ネットがもたらす可能性も知ることができました。
    どっぷり技術屋ではない主人公が魅力的で、すんなりと小難しい言語が飛び交う世界に入って行くことができました。
    勉強になります!

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    2026年04月25日
  • 銀河英雄伝説列伝1

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    ネタバレ

    恒久平和なんて人類の歴史上なかった。だから私はそんなもののぞみはしない。だが何十年かの平和でゆたかな時代は存在できた。吾々が次の世代になにか遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和がいちばんだ。そして前の時代から手わたされた平和を維持するのは、つぎの世代の責任だ。それぞれの世代が、のちの世代への責任を忘れないでいれば、結果として長期間の平和がたもてるだろう。忘れれば先人の遺産は食いつぶされ、人類は一から再出発ということになる。まあ、それもいいけどね。

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    2025年11月23日
  • マン・カインド

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    ネタバレ

    名前だけは知っていた藤井太陽を初めて読んでみた。最高、今までなんで読んでこなかったのか猛反省。

    初めてのSF作家って緊張するねんなぁ、理系素養が圧倒的に足りてないので、安易に近づくとバチコーンと跳ね返されてしまう目になり、半世紀に及ぶ読書生活で何度バチコーンされてきたことか…。

    でもこの作品は、杞憂中の杞憂に終わった。遺伝子の事、多次元仮想空間の事、人造マイクロチップの事、究極のマルチタスクの事等々、理系仕草?はたっぷりあるんだけど、なんとなくのニュアンスがつかめてしまえば、それだけで十分作品に没頭できる。ちょっと凝った月村了衛といえば月村さんに失礼か?

    テンポよく読み進めることができて、物語の展開も意外性があって、アクションも対話もグッと入り込める丁度良い密度で…ジェンダーと多様性のテーマもそんじょそこいらの人権さん等の想像を超えたとこがあるのに、臭さ怪しさ一切なし!

    遅くなったら過去作も追いかけて行くぞ。いやぁジャパンSFもまだまだガンバってるよねぇ

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    2025年09月02日
  • ハロー・ワールド

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    大抵の章で取り上げられたトピックについて、仕事で得た土地勘もあり、ITよもやま話という内容だがとてもリアリティを伴ってのめりこめました。

    コロナ禍で一度分断されなかった世界はこういうかたちになっていたのかもしれないと、しみじみと思いました。

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    2025年08月19日
  • マン・カインド

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    最高でした! 2045年の戦場ジャーナリストが主人公の、ミリタリーSF、なのですけれど、とにかく近未来への解像度が高くてワクワクする!

    たとえば「年寄りのエンジニアは、音声エージェントをわざわざ名前を呼んで立ち上げがち。HeySiriだのOKGoogleだの、当時の製品名で呼ぶのを好む人も多い」みたいなちょくちょく挟まる『近未来ありそうありそう』がいちいち絶妙。

    ラスボスが『チェ・ゲバラの扮装をしてハバナ葉巻を嗜む現代戦争コンサルタント』なのも、みょーに男心をくすぐる!

    クライマックスの王道的な盛り上がりと、エピローグの余韻もたまらない……。

    専門家同士のよくわからない専門的な会話で妙にわくわくする感覚は、アレだ。『シン・ゴジラ』に似てるんだ! 兎に角お勧めです!

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    2025年08月13日
  • マン・カインド

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    活字の本がまだまだ得意ではない自分でもこの本は楽しく読めた。
    ヒデミスで知って買った。ミステリーをあまり読んだことはないけど、こういうミステリーもあるんだなと感じた。
    読み進めながら脳内アニメ化して楽しんでました。いつか本当にアニメや映画になってほしい作品。

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    2025年06月24日
  • オービタル・クラウド 下

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    普段あまりSF小説を読まないけれど、かなり面白かった!読んでいる途中は上・下どちらも多少読みづらい単語があったりしたけど、慣れると気にならないし、読み終えた後おもしろかったーー!しか残らない。笑
    この方の別の作品も読んでみたい

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    2025年06月12日
  • オービタル・クラウド 上

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    おもしろい!!!!
    SF感が強いというわけではなさそうで、宇宙開発に、国家同士の争いに、思想に、大きな野望に、、、、と本当に様々な視点が交わっていて、展開がどんどん気になった。
    普段あまりSF小説を読まないから、とても新鮮でワクワクした。

    0
    2025年06月12日
  • 銀河英雄伝説列伝1

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    ネタバレ

    読み終えるまでに時間はかかったものの、三作くらい読むと後は毎夜日課になって直ぐ読み終えた。
    各者の銀英愛が眩しい。
    太田忠司の暖かで素直なミステリも素晴らしい。
    小川一水はビジュアル面で印象的に切り取って終わる。
    小前亮の実に正攻法な艦隊同士の大戦は銀英伝の面白みを再確認させる。
    藤井太洋の短編は「これどうなってるのかな…」などと見ていたら実に衝撃的な展開で成程!と。ある意味ニヤリともした。
    激推しは高島雄哉の「星たちの舞台」で、ヤンというキャラクターを見たまんまのパロディやコピーにせず、彼ならばこの状況ではこうもあり得るだろう、という絶妙で繊細なキャラクターに仕上げ、若き日のヤンの繊細さに惚れ込んだ。
    突発的に出てきたヒロインも実に聡明で奥ゆかしく、なんというかこの二人は恋物語では無いのだがたまらないね!(本音)大好きです!
    1とついているのでそろそろ列伝2出して下さい。

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    2025年05月13日
  • マン・カインド

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    現在の技術の延長線上にある遺伝子編集でニュータイプを作るお話。作為的な進化という話はエヴァンゲリオンの人類補完計画を思い出させるが、更にその淵源を辿れば「地球幼年期の終わり」にルーツを見出すことができるだろう。
    実はうちの子もIVFで生まれたのだが、文系脳の両親には似ずに読書はあまり好きではなく、理数系を得意としている。いや、まさかね。

    ちょうどこれを読み始める前に映画「シビル・ウォー」を観ており、更に本書を読むのと同時並行的にアニメ「サイバーパンク:エッジ・ランナーズ」を観ていた。
    本書内での政治状況や、「インプラント」などの技術についてはこれらの映像作品と共通するものがあり、これがいわゆる共時性(シンクロニシティ)というものなのだろう。

    本書を読んで思い出したのはヴィレム・フルッサーの「サブジェクトからプロジェクトへ」で、ディテールは忘れてしまったものの、「人体を任意にデザインすることはグロテスクに思えるかもしれないが、未来の人間はそれをするだろう」というようなことが書いてあった覚えがある。

    本書のテーマからは外れるが、本書の「叙述記憶」についての叙述を読んで思ったことがあるので記しておく。
    「起きた出来事を、些細な前後関係などを無視して脳が合理的なストーリーにまとめてしまう」という叙述記憶は、夢の中の時間が早く進行すると感じられることと関連しているかもしれない。夢を見ているとき(レム睡眠時)は、脳の複数の箇所が活性しているという。その間には、無意識の中で複数のストーリーが進行していると思われる。それが、覚醒に近付くにつれて、意識を駆動する脳の理性的な部分がバラバラのストーリーを合理的にまとめてしまうのではなかろうか。レム睡眠時には幾つかの出来事が短い時間の中で同時並行的に起こっているが、脳がこれを後から一本のストーリーにまとめるので、覚醒後の私たちは長い時間が経過したように感じられる、というわけである。これは検証の方法も思い付かない仮説なのだが、叙述記憶という概念は、この仮説の補強に使えるように思う。

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    2025年01月30日
  • マン・カインド

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    傑作だった。

    最初は理解できない単語の連発で戸惑ったが、話が進むにつれて少しづづ分かるようになるのが良かった。

    内容は自信を持って満点を付けれます。それほど面白かった。いつか分からないほど遠い未来で実現しそうなテクノロジーに、興奮と少しの怖さを感じました。

    新しい人類が誕生する場合は、自然にではなく人工的に作られる。そう確信させられるほど、本小説に魅入られてしまいました。

    本屋大賞を是非取ってほしい。
    万人受けする内容じゃ無いから難しいかもしれないけどね。

    大おすすめです。



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    2025年01月20日
  • マン・カインド

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    藤井太洋(大洋ではない)、初めて読むSF作家。普通、初めて読む作家の場合は短編小説から読んで様子を見るのだが、今回はタイミング良く早川書房から新刊書が出版されたのをきっかけに思い切って読むことにした。帯を見ると、第53回星雲賞日本長編部門受賞作という華々しい勲章付き。例によって、素晴らしい作品は読む速度に加速度が付く。読み始めて早速、藤井太洋の書籍を集めにかかり、読み終わる頃までには殆ど揃えた。余りにも強烈な感動が私を襲ったので、この勢いで他の2つの長編に行くか?ちょっと待て。明後日、東京創元社から叢書短編集が出るとのこと。読むならそっちだな。

    この小説の重要なテーマの一つに「公正戦」があり、既に発表した作品からこのテーマを引き継いでいるとのこと。この世から戦争が無くなれば良いのだが、どうしても戦争で決着を付けたい国同士で極めて平和的に戦う(限られた土地で、限られた人数で、限られた時間内で戦う等々の限定付きで国を代表して戦争を行う)ことができる考え方。これと比べると、いかにロシアやイスラエルが無駄な事をやっているのが判る。近未来では、ようやく戦争の愚かさを学んだようだ。また、恐らく現在からこの間は幸運にも核戦争は起こっていないようだ。

    また、この作品にはいろいろな科学的要素が内包されていて、読み進めるうちにどんどん脳が活性化して読書スピードが加速度的に上昇した。特に私が気になったテーマについては簡単にコメントしたい。
    〇 事実確認サービス
    これを早く日本のIT産業で行って欲しい。そして早く日本の政治に適用して欲しい。なになに、そのためには「大規模言語モデル」と「量子コンピューティング」が必要なの?量子コンピューティングの方は最近良く耳にするけど、現在の進捗状況は実際どうなのかな?成功事例あるの?
    〇 精子洗浄剤
    不妊治療に使う薬品「精子洗浄剤」はファルキのP&Zが開発したとのこと。でも、このP&Zってアメリカの洗剤メーカーP&Gのパクリじゃないの?発音も殆ど同じ。洗剤だけに、精子まで洗っちゃうんだ。本当は洗浄じゃなくて遺伝子組み換えだけど。精子をピッカピカに磨き上げてスーパー精子にするなんて、どこまで皮肉たっぷりなの。それと、このファルキという創始者はコロナですっかり世界的に有名になったファウチのパクリ?
    〇 CRISPR-Cas9
    2020年ノーベル化学賞を受賞したこの技術。そりゃこの遺伝子組み換え技術を使ってDNAに新しい遺伝子を追加できるけど、SFだから入れた分だけ機能は追加できるけど、やり過ぎだよ。少しは予測できない不具合も発生するけど、ガンガン有能遺伝子を盛り込むなんて、ちょっとハメ外しすぎ。ここで、おもしろ情報を一つ。CRISPRを初めて文献に載せたのは石原良純だって?良く見たら石野良純でした。ああ、ビックリした!

    一つ謎が湧き出て来た。この作品はSFマガジンにて2017年8月号から2018年8月号まで連載されたものを単行本化したものだが、2022年に第53回星雲賞を受賞してなぜ直ぐに出版されなかったのだろうか。どうして2年間も据え置かれたのだろうか。本当に謎です。

    また最近、早川書房と東京創元社の仁義なき戦いが実に興味深い。似た様な題材で早川書房から8月に春暮康一の「一億年のテレスコープ」が、東京創元社から同じ8月に宮西建礼の「銀河風帆走」が出版された。そして、今回は同じ藤井太洋で早川書房から9月に本書「マン・カインド」が、東京創元社から11月明後日に「まるで渡り鳥のように」が出版される。もう、ライバル関係バッチバチやな。まあ、こういった戦いはウェルカムのウェルカム。

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    2024年11月27日
  • マン・カインド

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    「マン・カインド」(藤井太洋)を読んだ。

    これは見事!

    近未来の戦争のあり方に「公正的戦闘規範」で答えを出したのかと思っていたら実はさらにその先を見据えていたのだな。

    藤井太洋さんが描くちょっと先の未来って(変な言い方だけど)地に足がついた揺るぎないものに思えるんだな。

    意思を強く持たないと徹夜をしていまいそうな面白さなので要注意。

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    2024年11月05日
  • マン・カインド

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     舞台は2045年。2030年代に横行した自動機械による殺戮応酬、非対称戦争への反省から、ORGAN(限定銃火器行使単位)という兵士部隊を運営する組織は、あらかじめの約束事に従う公正戦なるハンデを自らに課している。

     そんな公正戦という概念が一般的になった世界で、独立宣言した企業都市〈テラ・アマソナス〉の排除の依頼を受け、公正戦を受諾したのが、アメリカ最大の軍事企業〈グッドフェローズ〉。公正戦の終わり、〈テラ・アマソナス〉の公正戦コンサルタントであるチェリー・イグナシオが捕虜の兵士を虐殺する。明確な戦争犯罪の真意を、その第一報を届けようとしたジャーナリストが追う。
     
     というのが物語の導入……という認識で良いのかどうか、自分が上手く作品を理解できているのか大変心配になりますが、壮大な謎あり、緊迫感のあるアクションあり、とすごく心に残る作品でした。

     ネタバラシを避けるために曖昧な言い方にはなってしまうのですが、チェリー・イグナシオの〈動機〉を知った時、〈人類とは〉と考えさせられ、そして彼らはどこへ行くのか、と考えさせられる作品でした。よく人類史の話の引き合いに出される、ゴーギャンの絵画のタイトル『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』のあの言葉が、まさに、という感じで胸に迫ってくる壮大さが魅力的でした。

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    2024年11月05日
  • オービタル・クラウド 上

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    SFをベースにした大スペクタクルエンタメ小説。シーンの速度感や構成する技術要素の緻密さによってありありと場面を想像させるので一気に読めた。サイエンスやエンジニアリングの楽しさと素晴らしさが詰まった作品。

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    2024年09月03日