あらすじ
自己出版され話題をさらった電子書籍が、分量1.8倍以上、文体・構成も一新した完全改稿版として登場。
バーチャルリアリティ技術と遺伝子組換作物が浸透した近未来、謎の塩基配列を持つ稲に秘められた陰謀に迫る、本格SFサスペンス。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2010年代に行われた“遺伝子組み換え作物”は既に時代遅れとなり、作物の性質や色・形までも完全に遺伝子設計された“蒸留作物”が食卓の主役となった近未来の世界。
遺伝子デザイナーの林田は、自分が設計した稲が遺伝子崩壊した可能性を告げられ、原因究明のために発注元のエージェント・黒川と共にベトナムへ向かう。
藤井太洋さん、初読。
うわわわ、カッコいい!
めちゃくちゃ面白かった!
仮想現実やアバター同士のやり取りなどが日常としてありながら、ベトナムの蒸し暑さや甘すぎるコーヒー、データが直接送り込まれる感覚の気持ち悪さなどがリアルで、この世界にあっという間に没入して、酔える。
黒川さんの本当の肉体が超絶美少女とか、しょうもないサービスもなく、どこまでもクールでストイック。
何より、作中の人物がそれぞれに魅力的…人間的と言い換えても良いのか?拡張現実を通して、外見も感情表現も補正してアバター同士で接していても、気持ちのいい相手だと感じたり、お互いを信じ合える、その感性が瑞々しいことに驚く。
いま、パソコン通信時代から、まだ崩壊していない〈インターネット〉で、一応顔を合わせてオンライン会議がやれる時代まできた。
それでもまだ、文字を通して感じていた印象とリアルな人物とのギャップが酷かったり、対応スピードの要求に消耗したり、AIに書かせた文章はどうなんだとか、口コミが信用できるのかとか、そんなところにいるんだけれど…
もう少し未来の、すぐそこには、こんな未来があるのかも。
ラストで、革新的な技術を封じ込めてコントロールしようとせず、オープンにして未来を目指そうという林田の決断も、SFの魅せてくれる希望だろう。
まだ未読の作品があるのが嬉しい。楽しみ!
Posted by ブクログ
近未来のテクノロジーについてのきめ細やかな設定もSF好きにはたまらない内容でしたが、それに負けないくらい登場人物がとても魅力的に描かれていました。
Posted by ブクログ
作者の真面目さが伝わると共に、多少なりともデザインやエンジニアリング、ウェブの仕事でPCに関わっている人間ならば、もはやリスペクトとともに色んな角度から同調したくなるような用語やニュアンスに満ち溢れている。
ギブソンを彷彿とさせるキラーなジャパニーズSFの名作と言って良いでしょう。
Posted by ブクログ
遺伝子工学、拡張現実、難しい言葉が並ぶけど、ほんの少し読み進めればグイグイ行けます。
あっという間のイッキ読みです!
読後のゾワゾワする高揚感がもうたまらない。
Posted by ブクログ
プログラミングの経験があるおかげでなんとなくのイメージができる部分もあって楽しめた。
ストーリーももちろん面白かった。
後半に出てくる設計動物のプログラムを書いた環境保護団体のエンジニア(笑)のコードの変数名に変数Aとつけるとか、"ここで変数を定義"のコメントとか笑ったw
Posted by ブクログ
これも面白かった。
gene mapperの話がメインなのだけれど、ところどころに出てくるギミックが、それだけしか出ないなんてもったいない、という感じで使い捨てられていっていた。
このお話で作り上げられた世界観で、いくつもお話が出来上がるのではないかと思うし、それをもっと読みたい。
150712
Posted by ブクログ
拡張現実とリアルな場が融合している未来、遺伝子デザイナーの活躍を描くSF小説。この面白さをどう表現すればいいのだろう。まだみたこともない未来社会で登場するさまざまなギミックが生き生きと描かれていて、未来社会に読者を連れて行ってくれます。なんだか、夢を見るような未来社会ではないけれど、実現しそうな未来社会が描かれているように感じるのです。感情をフィルターにかけるアバターのようなものや、拡張現実へリンクする装置とかが生き生きと描かれていました。
Posted by ブクログ
近未来を描いた物語。
単語や背景の理解に最初時間がかかったものの、本当にありそうな話しで一気に読むことができた。
よくある?遺伝子を組み替えるのではなく、遺伝子すべてを人工的に作りそれが生命として誕生する、なんてできるのか?と読み終わった後考えてしまいました。すごくおもしろかったです。
Posted by ブクログ
ソフトウェア×遺伝子工学の近未来を描いた作品。ミステリー仕立てで最後まで飽きずにハラハラ読めた。ツールのインターフェースや、コードの書き方でauthorの技術力がわかるなどエンジニアあるあるみたいなネタも散りばめられていた。メッセージとしては、テクノロジーの急速な発達に対する人々の見方の正しい姿を描いている。MR技術を身体改造によって受け入れられている社会の実現性に関しては疑問を抱いた。
Posted by ブクログ
遺伝子をマークアップし、スタイルシートでデザインして遺伝子組換作物をフルスクラッチで作ると言う発想がまず面白い。それを取り巻く環境や背景の設定もかなり綿密で「いつか本当にこうなるかも」と思わせるリアリティすらある。
科学的な知識がなくてもスムーズに読ませる明快さ、ギブスンやディックを思わせる拡張現実の描写も見事でこれがデビュー作とは思えないほど。面白かった。
Posted by ブクログ
処女作にして、セルフビルドで構築された電子書籍をもとに加筆されたもの。
近未来の遺伝子組換植物のエラーが引き起こす物語を描いている。ここ数十年で世界各地の農業の多様性を破壊したモンサント社や、それに対して活動する環境NGOの対立を彷彿とさせる部分があり、個人的に既視感が強い作品と感じた。
著者の生まれた奄美大島は、世界自然遺産登録候補である。日本は生物多様性の宝庫で在来種も多い。その中で琉球列島は地域固有種が多く、生物だけでなく文化の多様性も豊かである。奄美群島では近年、海外資本の豪華客船ルート誘致や、オサガメの産卵地である自然海浜の護岸工事等、観光や環境の影響が懸念される事件が複数あり、更にそれに対立する市民団体の活動も伺える。
東日本大震災をきっかけとして著述開始したという著者の今後の作品に、グローカルで土着的な要素が描かれ、更なる世界観が構築されることを期待している。
Posted by ブクログ
個人的に大好きなジャンル。農学と生物学(遺伝子工学)と、プログラミングが合わさった話。
ジーンマッパーとして、遺伝子をプログラミングすることを生業とするフリーランスの主人公と、遺伝子組み換えではなく、遺伝子からプログラミングされて作りだされた植物の話。
何故か、緑の革命を思い出しました。多分作物の名前の所為です。
Posted by ブクログ
拡張現実、遺伝子デザインされた作物が広く行き渡る未来。
遺伝子デザイナーは大手企業に依頼されて手がけた自身の仕事、稲のデザインに不備があったと告げられる。企業のエージェントとともに原因究明に乗り出すが・・・
思っていたより楽しく読めました(当初はもっと難しいかと思ってた)。
拡張現実のギミックがいろいろ挟まれていて、一応、遺伝とかの基礎知識があったからかな。
最後は希望にあふれ過ぎとのむきもあるけど、オープンソースが叫ばれる中では割とありかなぁ、という気もしました。
Posted by ブクログ
ある日ふと「大豆(遺伝子組み換えでない)」ってどういうことだろう?と思い、そういえば遺伝子操作の小説があったなと思い出して読んだ本。
遺伝子デザイナー林田が主人公で、過去の仕事(遺伝子設計)にバグが出て、それを解決するために調査をしていたら……というお話。
舞台は2037年。通信技術も生活様式も、インターネットの在り方も大きく変化した時代。
拡張現実内での描写がほとんどで、とんとんと困難な調査が進んでいく。
読み終わって、「この怒涛の出来事が4日で終わったなんて」という感じに。良い意味で。
遺伝子設計された稲が問題になるので、なんとなく「食」に対する意識を、読みながら感じていた。
黒川さんのチョコレートバー。カロリーを得るための食品としてのチョコレートバー。
キタムラが飲む、練乳色のカフェ。氷は溶けると水にあたる。
人間が満足するための安全基準、収穫量を操作した稲。
未来の、フィクションの話だとは思いつつも、自分がかじっているおにぎりは……と思ってしまう。
「食」はどんな人間にも共通して必要なので、特に倫理観が求められるのだろう。
拡張現実へと移行する際の描写が、好きだった。
「瞬きを二つ、拡張現実を有効化して―」
「メガネの蔓を押し上げる仕草で」
「親指と小指で目の両端を挟んだ」
拡張現実内で起こっていることと現実とのギャップ。細かく描写されているわけではないのだけど、想像して楽しんでしまう。
ミーティングやさまざまなやり取り、仕事や調査は拡張現実上で行われる。
本当の感覚ってなんだろうな。そう思いながら、林田や黒川の仕事を見ていく。
あとつくづく、技術の最先端は軍が持っているんだなあと感じた。
いいんだか、わるいんだか。でもそれがないと、私は時間すら時計で確認することができないんだから。
物語の展開の仕方が、お手本かなと思うくらい関心しながら読んだ。
なるほど、あれはこの伏線だったのだなあ、なんてまじまじと読んでしまう。要はわかりやすい。
安易に想像できるというわけでなく、ハラハラしながら、納得ができる。いいことだと思う。
また読み仮名、略字が多いために、ちょっと抵抗もある。これってどういう意味だっけ?と。
展開のテンポの良さは、そういうった抵抗への不満をちゃんと解消してくれたんじゃないかな。
設定は、作者がHPで「現実化する世界」として実際の技術と作中の設定を照らし合わせて解説している。
こっちも面白そう。
Posted by ブクログ
面白かった。DNAシーケンサ、DNAプリンタ、拡張現実など現在原形がある機器が登場するので違和感なく入れた。
登場人物も、黒川、あっけらかんとしたハッカーのキタガワ、どことなくミリタリー臭のする金田などクセのあるオッサンばかりが活躍し若者の場面はないが、その分全体的に落ち着いた内容でイラッとくるところがなく楽しめた。
Posted by ブクログ
近未来の世界、人々は拡張現実の空間で感情も言動も補正された状態でアバターを通して会議する。そして地球上の食料難を解決するため、遺伝子組み換えではなく、一から作物のDNAが設計されている世界。ある日主人公がデザインした農場でバイオハザードは起きた。言葉に慣れるまでが少し読みにくかったがなぜか場面はわりと楽に想像できた。地球上の生き物の一つである人間が、他の生き物の遺伝子プログラムに手を出すのは時間の問題なんだろうか。しかもその中に自死プログラムまで組み込んで操作するとは末恐ろしい。映画化したら見応えありそうな作品です。
Posted by ブクログ
最近TEDにはまっていて、YouTubeで何本も見ていたら、へー電子書籍作家の作品って読んだことないなぁ。と興味を持ちました。
ふだんはSFものは苦手なので、序盤は想像して読んでいくので時間もかかりましたが、気づいた時に夢中で読んでました。たしかにいつかこんな世界が来そうと腑に落ちました。
Posted by ブクログ
最初ルビの多さや拡張現実の表現がとっつきにくかったがそれをなんとかイメージできるようになると俄然面白くなってくる。ちょっと違うかもしれないけど攻殻機動隊的な世界?
Posted by ブクログ
遺伝子操作により作られた穀物が枯れるはずがないのに枯れてしまう。浮かび上がる陰謀と遺伝子操作の弊害。
あとほんの少しの未来だと思われる時代が舞台のSF。時代背景がよく描かれており仮想現実やアバターなどはとても便利で羨ましい。ハードSFではないものの色々な設定は理解しきれない部分もあり、人によっては苦手かもしれないが、ロジックを理解しなくても充分に楽しめる。
Posted by ブクログ
遺伝子操作植物を巡るストーリー。
SFにしては地味そうなテーマだが、世界観も近未来的世界しっかりと作り上げられており、楽しめた。これが元は電子書籍の個人出版の本だというから驚き。
Posted by ブクログ
非常に面白かった.遺伝子設計された作物が普通に出回っている近未来の世界が舞台で,主人公が設計した作物に異常が発見され,その原因を究明する,という話.仮想現実ではなくて拡張現実であったりと出てくるガジェットがスマートな感じがする.
Posted by ブクログ
「マン・カインド」を読んで、続いて年代を遡って自費出版の初期作品(恐らく)の改稿版となるこちらを。基本的に拡張現実が当たり前になった近未来であることや、遺伝子工学といった基本設定は「マン・カインド」と似ているなと感じ、なるほど初版が10年以上前と考えると、その間拡張現実の表現などを磨かれてきた結果の「マン・カインド」の表現だったのかと納得。
展開的にはかなりの部分が謎が謎呼ぶで風呂敷広げすぎてる感がありつつも、ラストの怒涛の爽快感でスッキリできました。他の作品もまた読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
私にとっては、おもしろいんだけども、めっちゃくちゃおもしろいわけでもない、くらいでした。
あと表紙のイメージほどSFっぽくないというか、いや、しっかりSFなんだけど題材が地味というか……。
たとえば攻殻機動隊であれば光学迷彩で体を透明に見せたりするけども、そういうもんじゃなく、いまのzoomとかが進化してバーチャル空間がめちゃくちゃ進化してるでぇくらいの。
お話のメインは作物なので、地味と感じる理由はそこにもある。遺伝子組み換えがめっちゃ進化したから、最強のお米作れるで!イネ自体に色つけて最強の田んぼアートもできるで!光ったりするで!みたいな話。
Posted by ブクログ
将来は、この本のように完全人工な動物や植物ができると思います。
人間は一つの遺伝子が欠落、もしくは異常を持っているだけで、完治が難しい病を患ってしまう、か弱い生き物です。
だからこそ、希望を持ち技術と向き合う必要があります。
私の頭が悪いせいですが、設定に入り込むのに少し時間がかかってしまいました・・・
Posted by ブクログ
時代的には、2030年代後半の設定になっています。その頃、この様にAR全盛の事態になっているかは不明ですが、いまでVR元年とか言われていますからねぇ。ARが、これほどではないにしても、今よりはもっと進んでいるでしょうね。
また、時代設定がそういう時代設定なので、物語で出てくるエピソードが、既に起きて、過ぎているはずです(笑)。実際には、この作品で言うような事は起きていないのですが、SFで表現されたことは、バック・トゥー・ザ・フューチャーの例を引くまでも無いですが、その後に実際に起きているので、いつしか何か、これに近い事が起きるのでしょうね。
この作品は、だいぶ極端な方向に降った内容だと思いますが、現実世界も、少なからずこの方向に向かっているのかと。
Posted by ブクログ
◯ジーンマッパーという職業や、蒸留作物の考え方はバイオSFらしいガジェットで楽しい。
Δ主人公自身に謎がないため魅力がない。むしろ周りのキャラクターがトリックスターばかりで、物語の牽引力バランスがいまいち。
Posted by ブクログ
オービタルクラウドがよかったので過去の作品も読見たく成り手を取った。オービタルクラウドでも思ったが、本作でも都合よく主人公の周りに有能な人物が集まっているという展開は相変わらず。少々、怪しい人物がどう関わるかが物語の肝ではないかと思ったが、思ったよりもひねりはなかったのが残念。また、そもそもの物語のキーとなるフルビルドの遺伝子組み換え生物の設計図を描いた肝心の部分が軍用としてしか描かれておらず、そこを深堀しておらず、そこから派生する問題をデータ公開という形で収束させている。本当に軍用であれば、そんなに簡単にデータ流出するか、また、そのような意図を持つ人物をほっておくのかという点が疑問。