羽田詩津子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ジョーン・ヒクソン版のドラマは観たことがあったのだけど、あまり内容を覚えてなかったので、普通に新鮮な気持ちで読み始めた。
ドラマは語り手というものがないから、小説だとけっこう印象が違ってて、マープルの出番が思ってたより少ないなと思った。
しかも、初めて言及されるシーンではあまり良い印象として語られてなくて、ドラマもキャラクターも全く知らずに読んだら、マープルの印象ってだいぶ違ってたかも。
ただ、語り手が牧師さんでわりとフラットな見方で物語が進むから、びっくりしたのは最初だけだった。
ドラマは演出によるミスリードで、より誰が犯人であってもおかしくない感じが強いけれど、小説も絞れはすれど確信は持てずで、最後まで犯人当てをじっくり楽しめた。
ドラマシリーズも見返してみようと思う。 -
Posted by ブクログ
これだけ新刊の発売を楽しみにしていると、期待値が高すぎてがっかりする、ということが起こっても仕方ないと思うのですが、今回はこれまでの中で一番ハラハラドキドキして、期待以上の面白さでした。
アガサ・レーズンもジェームス・レイシーもどうしちゃったの、という展開だったけど、あ、アガサ・レーズンに関しては期待通りか。中年になった今、2人のはちゃめちゃはこれからの未来に希望を持てるはちゃめちゃです。中高年になっても、自分を失うことも、若い頃からの失敗を繰り返すこともあり、落ち込んで泣きたくなって、実際に泣いて、それでもこれまでの経験からちゃんと克服して元気に明日を生きることができるのだという希望が持てます。
このシリーズが面白いのは、ミステリーの内容よりも、こうした登場人物たちの一生懸命に生きる様に心が打たれるからなのかなと思います。次の新作は6月に発売とのこと。いつものように、読んだそばから楽しみで仕方ありません。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。
映像化されていたので、期待して読んだけどそれを裏切らない面白さ。
たぶん、シーンを短く区切って進めるので冗長的にならないし、隙間は勝手に読者のほうで勝手に補完できるような構成になっていたからだと思う。
売れる小説スタイルとしてシーンを短く区切るというのが今の流行りのスタイルなんだろうか?
読者を飽きさせない工夫として使われている気がする。
あらすじでは死人の数は一人しかわからなかったが、本書では3つの死が絡み、それぞれ犯人がいる。
トニー・カランの死
犯人はボグダン。この謎を最後まで引っ張り、作中でも真相に辿り着きながらも指摘せずに終わるというなんとも引っ張られる筋立て。
動機は友人をトニーが殺したから。トニーが殺した男の死体の始末に運転手として友人が付き添ったら、口封じにまとめて殺されたので、その復讐にジムの経営者であるスティーヴとトニーの仲間のジャンニを殺して、トニーから金を奪って逃げるという。ちょっとややこしかった。
イアン・ヴェンサムの死
犯人はペニーの夫のジョン。動機はペニーが昔殺した男の遺体が墓地に埋まっているので、墓地を動かすわけにはいかなかったから。
フェンタニルの過剰摂取による死なので、あの場にいて、フェンタニルを用意できて、動機がある奴が犯人ということになるので、カレンや神父が容疑者から消えていき、最後に残ったのがジョンとなる。
消去法で犯人を絞り込むのはあまり好きじゃない。そこに辿り着くまで各キャラの事情を把握しなければいけないので、できればその前にヒントがあったらなあと思う。
墓地の男の死
犯人はペニー。これが冒頭、エリザベスがジョイスに尋ねた事件の話で、ここと繋がるのか!となって面白かった。
エリザベスがいつまで夫のスティーヴンといられるのかと怯えたり、自身の老いを自覚したりするので、全編その老いが辛かったけれど、人間ドラマに深みが出ていて良かった。
ジョイス自体は裕福では無いけれど娘のジョアンナが裕福でジョアンナの会社が施設を買い取るという流れが結構爽快感があって良かった。
ロンも息子がリッチだから施設に入れた組なんだろうな。
エリザベスは結局何者か?警察ではなく、MI6勤めだったんだろうなと思う。ペニーとはどこで知り合ったんだろう。
面白かったのでシリーズをこれからも追いたい。
アクションバトルモノではない作品でキャラが老いで死ぬかもとハラハラするスリルは結構面白いなと思う。 -
Posted by ブクログ
アウシュビッツから脱出したユダヤ人、ナチスのユダヤ人ホロコーストの事実を何としても外のユダヤ人に伝え、さらなる殺戮を止めようと脱出。
脱出後に詳細な収容所の実態をレポートにまとめ、宗教関係者や政治家にそのレポートを広めようと努力するも、その真実を信じなかったり、中にはナチスに取引や加担した者に握りつぶされたりし、脱出後もユダヤ人の移送は止まらず。
同レポートの前にもホロコーストの実態は宗教界や連合国側にも漏れ伝わっていたこと、ドイツに占領された国の政府がホロコーストに加担したことに驚く。
同作品の主人公のその後の人生も収容所の影とその偏執的な性格も影響し、離婚や色々な人との確執、衝突を繰り返し、共産国から脱出し、イスラエル、イギリス、カナダと身の置き場を替えて行く。
ホロコースト歴史家の言葉「情報は信じた時だけ知識になり、行動につながる」や「主人公は脱出の達人であるが、自分が経験した恐怖からは自由になれなかった」と最後の段にあるが、主人公がもがいたホロコースト、ナチスとの戦いの事実にただただ圧倒された。
また、人種や宗教などの違いから、自分達以外のグループを排斥する歴史を何度となく繰り返す人間の愚かしさを痛感する。 -
Posted by ブクログ
ヴァルター・ローゼンベルク、スロバキア生まれのユダヤ人。
彼がアウシュビッツから脱出を企て、隠れているシーンから始まる。
ナチの非道の本は何冊も読んでいるけど、脱出した人の目線で綴られたものは初めてで、読みごとに引き込まれて行った。
ヴァルターは、たくさんの非道に鍵をかけて、冷静を保ちながら脱出の機会を窺ってきた。
脱出してもたくさんの迷いと戦い、巡り合わせなどもあって、ナチの非道を託すべきひとに伝えることができる。
通常ここまでだが、この先があるのがこの本の特徴だろう。
ヴァルターはルドルフとなって、結婚したが離婚してアウシュビッツで身についた生活スタイルや思考と闘いながら生きている様が映し出される。
-
Posted by ブクログ
冒頭は、現代のポーランドだ。女性版オスカー・シンドラーと呼ばれる、ポーランド人女性イレナ・センドレルの存在は、長らく秘せられてきた。本家本元オスカー・シンドラーは、スピルバーグの映画で、一躍有名となったのに。
プロローグは、ゲシュタポに捕まったイレナが、あるファイルを必死に隠そうとしている。そのファイルは、彼女と仲間たちが救い出した、子供たちの本名と出自の記録だ。戸籍に乗せようものなら、ナチスドイツの餌食になる。戦争が終わって家族と再会できた時に、自分が自分であることを証明できる、唯一の大切な書類は、シガレットペーパーに書かれていた。
本編でイレナの出生に戻る。1939年9月1日、ドイツ軍がポーランドに侵攻して、第二次世界大戦が始まる。戦前、ポーランドにはユダヤ人の富裕層が多く住んでいた。ナチス占領下では、彼等が真っ先にターゲットになる。資産を奪われ、職業を奪われ、ユダヤの星をつけて歩くよう命じられる。
当時ポーランド人は、アーリア人種から一段下がった人種のように看做されており、ユダヤ人と同じく、親衛隊員の気まぐれやお遊びで、通りすがりに撃ち殺される対象だった。自らが救われるために、ユダヤ人を差し出す者もいた。一方で、唯々諾々と従ったポーランド国民だけではなかった。イレナは既に結婚していたが、信奉する教授のもとで、ユダヤ人救済にいち早く動く。その事で夫とも疎遠になるが、彼女には恋人がいた。ナチス占領下のワルシャワのゲットーから、彼女は2500人ものユダヤ人の子供たちを救い出した。あるときは木箱に入れて、あるときはトラックの積荷に隠して、あるときは下水道をつたって、連れ出した子供たちは、仲間たちがかくまい、カトリックに改宗させて偽名を与え、ナチスの目を欺いた。子供の命だけは守りたいという親たちの願いをかなえるために、イレナと仲間達は、文字通り自らの命を賭けた。
いつか親子が出会えるように、子供たちが自分が誰なのかを知ることができるように、それぞれの本名と出自を記録したリストを作った。ゲシュタポに知られたら、命がないのは火を見るより明らかだったというのに。事実、イレナもゲシュタポに連行され死刑宣告を受けるのだ。本当は、親たちは、戦争後の再会を望んでおり、その時のためのリストでもあった。だが“その時”を迎える子供たちは、殆どいなかった。
イリナは勿論偉人であるが、彼女に関わった人々全てが英雄と言っても過言ではない。多くの子供たちを救い、ユダヤ人の血脈を守った人たちの、知られざる闘いを描いたノンフィクション。 -
Posted by ブクログ
本の厚さに若干身構えてしまったけど、実際読み進めていくと、テンポ良く進んでいくストーリや展開に、登場人物同士の軽快な掛け合いなど、全体的にコメディなつくりなので全くダレることなくスルスルと読み進められてしまいました。
特に登場人物達の台詞がいちいち面白く洒落てて、海外の刑事ドラマを思わせるような言葉選びや会話がすごく良かったです。
また登場人物達のキャラクターとしての魅力も良くて、読み終えた後はそれぞれの人物に思いを馳せてしまうほど好きになってました(イアン・ヴェンサムとトニー・カラン除く)
後期高齢者の方達が主要になるため、死がかなり身近な存在としてあるのだけど、決して悲壮的なだけではない描き方をしているのがとても印象的でした。事件解決後の展開のひとつひとつが本当に良かった。
ミステリーとして謎解き部分の面白さは勿論、登場人物が皆ほんとに魅力的。誰かの深掘りパートが入る度に、その人の事を好きになってしまいます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアンドリュー・クラヴァン。
『真夜中の死線』は確か読んだことあるけど、もうだいぶ昔のことなので内容はおろかテイストなんかも全く思い出せない。
もうとんとお目にかかっていなかったと思うが、ポケミスで唐突に邦訳された一冊。
へぇーまだ現役なんだ、しかも新シリーズとのこと。
主人公ウィンターの過去をぼかしつつなところは、今後の作品に備えるかのようではあるが、どちらかというとシリーズものらしからぬ一発もので勝負するような尖ったストーリー展開と感じた。
英文学教授のウィンターは、かつての教え子かつ恋人からの依頼により、「一風変わった思考の習慣」を拠り所に元軍人の男トラヴィスが恋人ジェニファーを殺した事件の情状酌量の余地を探る。
合間に入るウィンターの受けるサイコセラピーとそこで語られる物語。
事件調査の過程で明らかになってくるジェニファーの善良かつ静謐さ。
これはミステリーの顔をしたラブ・ストーリー。
ジェニファーにより、日常を取り戻したトラヴィスとその娘ライラ。
普通に語られるだけでもこの3人の馴れ初め、育まれる愛情には胸をうたれるのだが、これがウィンターの「一風変わった思考の習慣」、人の物語にまるで自分がその場にいるみたいに関わっていると想像してしまう語りにより、読者までをもその立場に引き込むような効果が生まれ、ジェニファーへの深まる愛に強い共感を覚えた。
ウィンターが受けるサイコセラピーで語る過去の意味深な思い出とその解釈、様々なエピソードのメタファー、複数の人物の心情を重奏的に重ね合わせる文学的テクニックもいい意味で重厚な雰囲気づくりに寄与していると感じた。
ポケミス一段組250ページほどと分量も少ない中、ぎゅっと濃縮された物語でとっても自分好みの一作だった。
是非この後も邦訳出して欲しいと心から思った。
『真夜中の死線』も再読してみようかな。