羽田詩津子のレビュー一覧
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マープルは、13の短篇からなる『火曜クラブ』で安楽椅子探偵として描かれていましたが、本作は長篇での初作品。そのためか図が3頁もあり、セント・メアリ・ミード村の様子がよくわかり、読みやすかったです。
あらすじ:
場所は、閑静なセント・メアリ・ミード村。語り手で聖職者であるクレメント牧師に「誰かがプロザロー大佐を殺してくれたら、社会にあまねく貢献することになるのに」と言わしめるほど、誰からも疎まれていた治安判事が殺されます。殺害現場は、牧師館の書斎。事件当時、クレメント牧師はイタズラ電話の呼び出しで外出して戻ってくるところ、門前で青ざめた画家のローレンスとすれ違う。書斎に入ったクレメント牧師は、撃ち殺されたプロザロー大佐を発見。翌日、ローレンスが自首しますが、やがてプロザロー夫人も事件への関与を自白し、詮索好きな村人たちを巻き込んで混迷を深めて行きます……。
と、牧師が死ねばいいのにと言うくらいなので、殺された人には同情はしませんが、村人たち皆に嫌われている設定なので、誰が容疑者としても考えられる状況は、著者にけむに巻かれているようでした。途中、あーこいつら絶対グルだなと思いながら読み進めつつも、のんびりした展開が進む中、読み進めるほど怪しい人が増えていき、犯人はなかなかシッポを見せない。マープルもほとんど登場せず、語り手のクレメント牧師が興味本意で奔走する様子は、まさか『アクロイド殺し』のようなことはないよねと思ったり。
終わってみれば、マープルの見事な推理やそのとき語られなかった残された謎もスッキリする、読後感の良い話しでした(特にラストの一行がいいですね)。意外だったのが『火曜クラブ』での椅子に座りっぱなしのイメージと異なり、終盤でのアクティブな一面が見られたこと。まだマープルの作品の入口なので、他の作品も楽しみです。
ところで、所々でクリスティーのコミカルなユーモアのセンスに笑えました。例えばP172のクレメント牧師によるスラック警部の印象、P262-263のクレメント牧師が画家のローレンス・レディングに、ニュースに飢えたセント・メアリ・ミード村の住人の特徴を語る場面、P283の牧師の甥デニスによるプロザロー大佐の娘を評する場面でのクレメント牧師が「実に魅力的な癖だな」と言う場面などが面白かったです。
正誤(7刷)
P190の11行目
ローレンス・レディグ
↓
ローレンス・レディング
P253の6行目
どこなく感じが似ている青年
↓
どことなく感じが似ている青年
P349の5行目
母親ははちゃんとした人間です。
↓
母親はちゃんとした人間です。 -
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ネタバレこの作品だけではないけれど、欧米の小説で往々にして見られる高齢者の恋愛事情、日本とは違うなあと思わされる。
今回は後期高齢者であるロンに若い彼女ができた。
その他、作中で61歳の男性が20代前半の彼女に愛情を寄せ、彼女もまた彼を守るために身を引くというロマンスも。
完全に身を引いて10年、互いに相手を思う気持ちが薄れていなさそうなところも含めて、日本とは違うなあと思うのだけど、それは恋愛偏差値底辺の私だからなのかしら。
それはさておき、今回の事件はゴリゴリの刑事事件で、さらにエリザベスの誘拐事件まで絡んできて、次はどうなる!?が止まらなかった。
たぶん彼女のことだからうまく切り抜けるのだろうと思いつつ、逃げ道はどこ?
それがタイトルの『逸れた銃弾』につながった時、解決してないじゃーん!!って。
前回の事件で逮捕されたコニー・ジョンソンはロンとボグダンに復讐を誓っている。
牢から出ることができた暁には、絶対に殺してやる、と。
そんな彼女にイブラヒムは近づき、カウンセリングをするのだが、一体彼女が刑期を終えるまでに復讐を断念させることはできるのか?というのも今後の見どころとなるのだろう。
この作品には多くの老人が出てくるが、彼らに生活の不安はあまりない。
でも、彼らが幸せそうに見えるのは、お金のことよりも傍にいつも仲間・友達がいるからなのだろう。
元労働運動家のロンが、元大物犯罪者のジャック・メイソンや元KGB将校のヴィクトルと友情をはぐくみ始めたシーンはよかった。
けれどそれは永久のものではない。
エリザベスが寒空の下、空中プールで泳ぐジョイスに、「夏になってもまだプールはあるのよ」というのに対して「そうね、だけど私達はいないかもしれないわ」と答えるのが、切ないけれど真実だ。
ボグダンについては、常々、有能すぎて胡散臭いと思っていたのだが、エリザベスがボグダンは自分に秘密を持っていると感じていることが分かって、逆に信じていいのだなと思い始めた。
裏切るなよ、ボグダン。 -
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ミス・マープルはテレビドラマシリーズで見ていましたが読んだことはありませんでした。
なにか読んでみようとこちらを。これはドラマで見ていないので犯人知らない。
イギリスの田舎町チッピンググレイホーンの住人は新聞の広告欄に「殺人お知らせ申し上げます。リトル・パドックス館で午後6時30分。」という文章を見る。「晩餐会の催し物だろう」と言いながらも訝しがる気持ちは抑えられない。村の人々はたっぷりの好奇心でリトル・パドックス館に集まる。
リトル・パドックス館の中年女主はレティシア・ブラックロック。彼女も「覚えがない」と言いながら客を迎える準備をする。
そして6時30分。館の明かりが消え男が乱入してくる。「手を上げろ」それから銃声。明かりがついたとき、血を流すレティシアと、銃を傍らに倒れ死んでいる乱入者の姿があった。強盗に失敗しての自殺なのか?
警察の捜査により、レティシアはかつての雇い主のし参加、ランダル・ゲドラー遺産相続人となっていることがわかる。遺産を巡る殺人計画なのか?それならレティシアはまた襲われるだろう。
捜査にあたるクラドッグ警部は、名付け親のヘンリー卿の紹介で、田舎町の老嬢ミス・マープルの協力を得ることにする。ミス・マープルは「老嬢は詮索好きだから怪しまれないし、田舎町には詳しいわ」というのだ。
しかし第二第三の事件が起き…。
終盤の「名探偵、皆を集めてさてと言い」の場面ではミス・マープルがいない時に警察や本人が隠された真相が話していくので読者としては「ミス・マープルはどうした!解決しちゃうぞ!」とちょっと焦った 笑
物語の時代は、何世代も前から同じ町に住みお互いを知っている時代から、人々が自由に移動して隣人の身元もわからない時代に変わるころ。この時代の物語を読むと社交が面倒臭そうだなあと思いながら、しかしお互いを知ることは自分の生活を守ることでもあるんですよね。
初めて読んだミス・マープルの性質ですが、穏やかで優しく親しみがある(ので、詮索できる)反面、「私は悪い方に考えるから、物事が見える」ようなことを行っていて、芯の強さと案外苦労した(しかしおそらく苦労を見せない)こともあったのかな。
さて、事件の真犯人は…なんとなくわかりましたが、真相はわかりませんでした(^o^;
ミステリーの真犯人がわかるのって洞察力とかじゃなくてその作家の本を複数読んで、その作家の癖がつかめるってところがありますよね 笑
冒頭は人が死にながらもどことなくコミカルな雰囲気だったのですが、殺人が重なると殺された人はお気の毒だし、犯人の言葉も真実だったんだろうなあと思う。そして事件や人間関係、さらに当時の社会情勢も感じられるクリスティは流石だなあ。
ミステリーって、言い方が矛盾していますが頭を使わないので気分転換によいんですよね。犯人も真相も作者次第なのでわかりません。そして小説はエンタメで、ミステリー小説の「死」はその場だけの無個性のもの。(もちろんあとに引きずり続けるミステリーもありますけど)さあ、また楽しいミステリーを読もうっと。(※^^※) -
匿名
購入済みクリスティーの代表作
アガサ・クリスティーのチャレンジ精神の、一つの到達点。中心となるトリックは、一度読めば単純明快なんだけど、それを盛り上げる細工も上手くできてて、何度読んでもクライマックスはドキドキできる。
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ネタバレミス・マープルの長編初登場作。
セント・メアリ・ミード村におけるマープルの印象があまり良くないことに驚いた。
「あの人は村いちばんの意地悪よ。村で起きることを残らず知っているうえに、そこから、とっても悪意のある推測をするの」
マープルが村人にこんな風に思われているなんて、少しショック。地元の警察関係者にも胡散がられているし。アガサ・クリスティはマープルを何故もっと魅力ある女性にしなかったのか不思議に思った。
事件の真相には驚いた。それこそ胡散臭い村人がたくさん出てきた中での、まさかの真犯人。事件の謎解きも二転三転し読んでいて混乱した。
逆にずっと胡散臭い嫌な娘と思っていた女性が実は意外にいい娘だったことにも驚いた。
マープルがポアロと違うのは、あくまでも素人探偵という位置づけである点。ポアロのようにズバリ真犯人や事件の真相を言い当てるのではなく、あくまで自分の意見を警察関係者に述べて後は一任する。
これで事件が解決するのはマープルの洞察力と熟練された説得力によるものか。
マープルについて。
マープルはアガサ・クリスティの実のお祖母さんに似ているらしい。「気持ちのいい人間なのだけれど、あらゆる人、あらゆることで、その人やことの最悪の事態を驚くほどの的確さで予想し、それがたいてい的中する」
さらにポアロシリーズの『アクロイド殺し』に登場したシェパード医師の姉キャロラインの原型とも言われている。「気むずかしい老婆、好奇心いっぱいで、何でも知っているし、何でも聞いている、家庭内の完璧な探偵」
私のご近所にこんな鋭い洞察力を持ち近所の人たちを常に観察するお婆さんが住んでいたら嫌かな。 -
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ネタバレクリスティのミス・マープルシリーズ第一弾。
ポアロは映画などで何となく触れたことがあるが、ミス・マープルは本当に初めて。マープルのシリーズにも良作があるらしく、それを読むためだけに一作目を手に取った。
語り手は牧師。その牧師の家でセント・メアリ・ミード村一の嫌われ者が殺される。意外なことに犯人はすぐに自白するが。。。
思った以上にマープルが出て来ず、あれっという感じ。語り手がマープルの隣人というだけで、ある意味村人Aから見た事件、という体裁だから非常に淡白にストーリーは進む。クリスティらしい、適度に退屈で、適度に意外な犯人。当たりハズレもなく、シリーズの一作目としてはある意味普通すぎるのではないか。
何となく、語り手によって面白さが変わりそうなシリーズだと思った。