あらすじ
クリスマス間近のある夜、湖畔の町で若い司書のジェニファーが殺された。容疑者は交際相手のトラヴィスで、犯行を認めていた。彼をよく知る地元弁護士のヴィクトリアは、犯行を信じられず、友人の大学教授キャメロンに無実を証明してほしいと調査を依頼する。
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Posted by ブクログ
アンドリュー・クラヴァン。
『真夜中の死線』は確か読んだことあるけど、もうだいぶ昔のことなので内容はおろかテイストなんかも全く思い出せない。
もうとんとお目にかかっていなかったと思うが、ポケミスで唐突に邦訳された一冊。
へぇーまだ現役なんだ、しかも新シリーズとのこと。
主人公ウィンターの過去をぼかしつつなところは、今後の作品に備えるかのようではあるが、どちらかというとシリーズものらしからぬ一発もので勝負するような尖ったストーリー展開と感じた。
英文学教授のウィンターは、かつての教え子かつ恋人からの依頼により、「一風変わった思考の習慣」を拠り所に元軍人の男トラヴィスが恋人ジェニファーを殺した事件の情状酌量の余地を探る。
合間に入るウィンターの受けるサイコセラピーとそこで語られる物語。
事件調査の過程で明らかになってくるジェニファーの善良かつ静謐さ。
これはミステリーの顔をしたラブ・ストーリー。
ジェニファーにより、日常を取り戻したトラヴィスとその娘ライラ。
普通に語られるだけでもこの3人の馴れ初め、育まれる愛情には胸をうたれるのだが、これがウィンターの「一風変わった思考の習慣」、人の物語にまるで自分がその場にいるみたいに関わっていると想像してしまう語りにより、読者までをもその立場に引き込むような効果が生まれ、ジェニファーへの深まる愛に強い共感を覚えた。
ウィンターが受けるサイコセラピーで語る過去の意味深な思い出とその解釈、様々なエピソードのメタファー、複数の人物の心情を重奏的に重ね合わせる文学的テクニックもいい意味で重厚な雰囲気づくりに寄与していると感じた。
ポケミス一段組250ページほどと分量も少ない中、ぎゅっと濃縮された物語でとっても自分好みの一作だった。
是非この後も邦訳出して欲しいと心から思った。
『真夜中の死線』も再読してみようかな。
Posted by ブクログ
アメリカの作家、アンドリュー・クラヴァンの数十年ぶりの邦訳とのこと。以前はキース・ピータースン名義らしいが、流石にその頃の作品は軒並み絶版。
自身の恋人を殺害した退役軍人の英雄。以前に親密な関係にあった教え子の弁護士からの依頼を受け、大学教授のキャメロン・ウィンターは、犯人が自供するこの事件を再捜査する…
どこか暗い影を漂わせつつ、キザな文体が続く。非常に好みの作風だけど、好き嫌いは分かれるかも。
そこまでのボリュームではないにしろ、私立探偵小説として非常に手堅くまとまっている。また主となる恋人殺しに加え、各章の冒頭には、ウィンター自身の初恋にまつわるストーリーが挿入される。わかっちゃいるけど、この過去編が色々なものをゴリゴリ削っていく。
結論も、割と賛否が分かれそうだが、個人的には好み(やや強引な気はしたが。。。)。シリーズものとのことで、ぜひ邦訳を続けてほしい。