久山葉子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ山好きなので、エベレストが舞台になるのを知って小躍りしたけど、読んでみて残念。
リズベットとミカエルが別件を追いつつもその事柄が一つに収斂していくのではなく、エベレストの件はリズベットに直接関係が無かった。二重スパイの話にもっとザラも深く関わっていて、その件でもリズベットに危機が及ぶとか、そういう関わりがほしかった。
カミラが小物で美女という以外に取り柄がなさそうだし、リズベットは頭脳を駆使して出し抜くわけでもないし、エベレストで起きたシェルパの謎も大したこと無かったし、謎っぽいワードを細かくしてぱらぱらと落とした感じ。
シェルパのDNAのくだりは興味深かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ少し同じような繰り返しの場面と、よけいな描写が多い。マーリンとレオの下りなど、何度もミカエルが会って聞き出すことでもない。レオとダンの危機も、男二人ならいくらでも初老の女相手にねじ伏せられたろうし、なにをもたもたやっているんだろう、会話が長くて緊張感がない、と感じてしまった。
必ず上下巻程度の分量にしなければならないというがために、展開を引っ張ったように思える。
株価暴落は、事件に全く関係のない現実風のトピックを出すことで、レオのいた虚飾の世界とリンクさせる意図なのだろうか?数字だけの、駆け引きだけの脆い世界…。それとも丁寧に危険を冒して暴いた人体実験の真実よりも、センセーショナルな不確実な噂のほうが勝ってしまう様子を描いて、ミカエるの言う真実の価値の暴落に、警鐘を鳴らしたかったのだろうか。
レジストリーにいた研究者の口から語られた、環境が人格に大きく関係しない、という論理は一理ある。成長するにつれ、自分の置かれた環境がなじむ人もいれば、全くなじまずここには居場所がないと感じる人もいる。環境だけが人格を形成するなら、誰しもが生まれた場所で満足し、人生を送るはずだ。テレビでも本でもなんでもいいが、何かしら外部から刺激を受けその知識を得たい、その仕事をしたい、別の場所へ行きたい、と思うことは、何かしら好奇心が刺激されているわけだ。その好奇心の誘因は遺伝子の作用なのかもしれないが、そこにある環境が作用しているわけではなく、自分が選択しているわけだ。もちろん環境が全く作用しないわけではない。遺伝子だけでも環境だけでもない。レオとダンのように好奇心と才能が合致する人はラッキーだ。人間は面白い。
リズベットの描写だけは確立していて、相変わらず不器用でかっこいい。ホルゲルへの追悼の言葉が際だって素晴らしく、涙を誘った。 -
Posted by ブクログ
この作家を読み始めたきっかけは『許されざる者』だったが、その作品はヨハンソンという警察長官のシリーズ主人公であり、しかもシリーズ最終作だった。物凄くシリアスで読み応えのある感動作だったのでかなり気になる作家となって記憶に刻まれた。
同じ作家の別シリーズである本書ベックストレーム警部シリーズが今や、次々と翻訳されているので、期待して読んでいるのだが、このシリーズは、実はユーモア・ミステリー。誰が見てもアンチヒーローな助平ジジイイなベックストレーム警部だけが、喜劇役者のような主人公を演じる。生前のヨハンソンが顔を出してくれるシーンでは、複雑な想いとともにこの別シリーズのヒーローの個性の強さに改めて感銘を受けたりもした。
ベックストリーム警部は、ヨハンソンと同じ地平にいるくせに、かなり際どい類いの主人公である。悪徳警官とは言わないまでも、私腹をこやし、女性を性の道具として利用、それ自体性差別なのだが、人種差別を含め、あらゆる差別の亡者でもある。
それでいて彼を取り巻く警察組織の各部署のキャラクターは生真面目な普通の警察小説の地味眼な主人公たち。あくまで捜査責任者であるベックストレームだけが、エロじじいであり、アル中であり、昼寝大好きであり、私腹をこやすための努力を惜しまないダーティ極まりない漫画チックな主人公なのである。
この手のミステリーで有名なのは、セクハラやパワハラも共通するワーカホリック警部として一世を風靡したあのR.D.ウィングフィールド描くシリーズ主人公であるフロストであろう。どちらも中年の下品男、それでいて事件解決能力の高い主役刑事をヒーローにしたミステリーの双璧と言えるのではないだろうか。
フロストがどちらかと言えば、一気に沢山の事件を解決してゆくモジュラー型小説とすれば、本編のベックストレームは一つの事件の裏に重なる分厚い謎を運よく、結果的に解いてしまい、最終的に美味しいところをものにしてゆくという皮肉型主人公であるように思う。
本書でもベックストレームの下品さや強欲さは全開極まりなく、ストーリーはオートマティックに進んでゆくのだが、スウェーデンらしく歴史の世界に入り込んでゆくエピソードの長さには、聞き役であるベックストレーム同様、読者としてもやたら退屈させられた。また歴史上の人物相関図が及ぼす現代の事件への難解度が半端じゃなく、これまでのシリーズ作としては最も長い、と言われる部分がこれのせいだったか、と思うと、ミステリー読者としては辛すぎる構成と感じた。
作者が、犯罪学教授で、国家警察委員会顧問などの肩書を持っているとのことなので、ともすればストーリーテリングよりも楽屋落ちに近い蘊蓄方面に語りが入ると厄介、という印象がないでもない。
このシリーズを読み続けるべきか否かを問われるぼくにとっては分岐点的作品である。中盤で100ページ余を費やしての面倒くさいエピソードの集積さえなければ、あれよあれよと解決に雪崩れ込む展開は魅力だ。何よりベックストレームの日常に関わるストーリーテリングの楽しさと、事件の時空スケールの退屈な奥深い語り口を秤にかけると、結論に至らずというのが、現在の私的心境である。あなたはこの怪作を如何、ご判断されるだろうか? -
Posted by ブクログ
この作家を読み始めたきっかけは『許されざる者』だったが、その作品はヨハンソンという警察長官のシリーズ主人公であり、しかもシリーズ最終作だった。物凄くシリアスで読み応えのある感動作だったのでかなり気になる作家となって記憶に刻まれた。
同じ作家の別シリーズである本書ベックストレーム警部シリーズが今や、次々と翻訳されているので、期待して読んでいるのだが、このシリーズは、実はユーモア・ミステリー。誰が見てもアンチヒーローな助平ジジイイなベックストレーム警部だけが、喜劇役者のような主人公を演じる。生前のヨハンソンが顔を出してくれるシーンでは、複雑な想いとともにこの別シリーズのヒーローの個性の強さに改めて感銘を受けたりもした。
ベックストリーム警部は、ヨハンソンと同じ地平にいるくせに、かなり際どい類いの主人公である。悪徳警官とは言わないまでも、私腹をこやし、女性を性の道具として利用、それ自体性差別なのだが、人種差別を含め、あらゆる差別の亡者でもある。
それでいて彼を取り巻く警察組織の各部署のキャラクターは生真面目な普通の警察小説の地味眼な主人公たち。あくまで捜査責任者であるベックストレームだけが、エロじじいであり、アル中であり、昼寝大好きであり、私腹をこやすための努力を惜しまないダーティ極まりない漫画チックな主人公なのである。
この手のミステリーで有名なのは、セクハラやパワハラも共通するワーカホリック警部として一世を風靡したあのR.D.ウィングフィールド描くシリーズ主人公であるフロストであろう。どちらも中年の下品男、それでいて事件解決能力の高い主役刑事をヒーローにしたミステリーの双璧と言えるのではないだろうか。
フロストがどちらかと言えば、一気に沢山の事件を解決してゆくモジュラー型小説とすれば、本編のベックストレームは一つの事件の裏に重なる分厚い謎を運よく、結果的に解いてしまい、最終的に美味しいところをものにしてゆくという皮肉型主人公であるように思う。
本書でもベックストレームの下品さや強欲さは全開極まりなく、ストーリーはオートマティックに進んでゆくのだが、スウェーデンらしく歴史の世界に入り込んでゆくエピソードの長さには、聞き役であるベックストレーム同様、読者としてもやたら退屈させられた。また歴史上の人物相関図が及ぼす現代の事件への難解度が半端じゃなく、これまでのシリーズ作としては最も長い、と言われる部分がこれのせいだったか、と思うと、ミステリー読者としては辛すぎる構成と感じた。
作者が、犯罪学教授で、国家警察委員会顧問などの肩書を持っているとのことなので、ともすればストーリーテリングよりも楽屋落ちに近い蘊蓄方面に語りが入ると厄介、という印象がないでもない。
このシリーズを読み続けるべきか否かを問われるぼくにとっては分岐点的作品である。中盤で100ページ余を費やしての面倒くさいエピソードの集積さえなければ、あれよあれよと解決に雪崩れ込む展開は魅力だ。何よりベックストレームの日常に関わるストーリーテリングの楽しさと、事件の時空スケールの退屈な奥深い語り口を秤にかけると、結論に至らずというのが、現在の私的心境である。あなたはこの怪作を如何、ご判断されるだろうか?