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Posted by ブクログ
フランス人の書いた北欧ミステリー。そう言ってよいのかどうか? いずれにせよ、内容は、都会とは遠く離れた場所に展開する辺境エンターテインメントである。しかもそんじょそこらの中途半端な辺境ではなく、北極に一番近く、地の果てもいいところ。白夜とは真逆となる<黒昼?>。無論そんな言葉は作中にはない。しかし一年に四十日間も全く太陽が顔を見せない季節が地球上にあるなんて! 地軸の傾きが作った宇宙の奇跡としか言いようがない。そんな四十日間の長い夜が明ける瞬間に幕を開けるのがこの物語である。多くの人々が極寒の暗闇で日の出を待つシーンで! どうです、神秘的でしょう?
しかも初日は日照時間は4時間ほど。日が経つにつれ日照時間が伸びてゆく。日が変わる毎に日照時間が小題に記されるのも本作の特徴。太陽は地平近くを横に移動して四時間後にはまたすぐに沈んでしまうのだそうで日照時間は実に重要。むしろそんな場所でそんな時を経験してみたいくらいだ。
ともあれ、そんな季節に起こってしまうトナカイ牧場殺人事件。調べるはトナカイ警察。トナカイ業を営む多くはサーミ人という少数民族。日本ではアイヌ人、もしくはいわばイヌイットなどの海洋民族を想起させられる。いずれも人種差別や迫害を免れない先住民族共通の国家的課題を抱えている状況もしっかり描かれてゆく。差別を日常的に口にする警察官の存在が鼻につくが、それはきっとリアルなことでもあるのだろう。
長い夜。極寒。差別。そういった逆境を背景に、描かれた警察小説が、本書なのである。警察小説と言っても、本書の主人公クレメットとニーナが所属するのはトナカイ警察。トナカイ猟に関わる事件を専門とするので、一般の捜査陣よりはワンランク下に見られているようである。本作では、トナカイ業経営者の殺人事件を彼らは特別に担当する。また同時に村の博物館ではやはり先住民族の史的文化財とも言える太鼓の盗難事件が発生し、二つの事件の関連が疑われる。
ノルウェイ、フィンランド、スウェーデンが国境を接する北欧の最北端を舞台に、二人の若いトナカイ警察と、彼らを取り巻く一般警察、役場、さらには利権を企んで集まってくる有象無象の輩、性犯罪の常習犯である地質学者などが入り乱れる中、静かなはずの北辺の地が一気にざわめく。
穏やかならざる犯罪の気配に連続して巻き込まれゆく極光の雪原を舞台に、零下40度を軽く超える極寒の地で、二人の捜査が展開される。クレメットは先住民族の血が流れ、ニーナは南ノルウェイの出身でこの地へは配属され初めて足を踏み入れたばかりの新任である。
ちなみに、作者は『ル・モンド』紙の北欧特派員としてストックホルムに在住しているフランス人であるそうだ。ゆえに本書はフランス語圏で出された北欧舞台のミステリー。いわゆる北欧ミステリー特有のエンタメ性というよりは、サーミ人という知られざる北方民族の存在、また彼らに対する差別、金鉱・ウラン鉱の発掘のために自然を虐げようとする先進国の文化的暴力、悪徳企業による自然破壊への怒り等もろもろをモチーフとした社会小説的側面が強い善良な作品であるように思われる。ストーリーの面白さやリーダビリティは、北欧エンタメの快適さには遠く及ばない。
それでも、武骨ながら独自の題材に迫ってみせる作者の気概がストレートに伝わる意欲作として評価したい上、さらなるこの地を舞台にした続編にも個人的には期待したく思う。少なくともワイルドな地の果てが大好きなぼくにとっては、心惹かれる個性的な一作であった。
Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
ヨーロッパの北の果て、
ノルウェーとスェーデンとフィンランドが接するところ。
先住民サーミ人のシャーマンが使っていた太鼓が博物館から盗まれる。
トナカイ警察のクレメットとニーナも捜査に駆り出され、
トナカイ所有者のところに聞き込みに言った直後に、その所有者が殺される。
先住民サーミ人が暮らしていた地域で活躍するトナカイ警察のクレメットとニーナ。
トナカイ警察は、トナカイの密漁や盗難、
決められた放牧地からトナカイの群れが出たり、
春の群れ分けでもめたりすると駆り出される。
クレメットが、
所有者が殺され残されたトナカイの群れを集めていく様子が、
興味深かった。
他にも、四十日間の極夜が終わった日は37分間しか日が差さないとか、
そのあと、昼が42分づつ長くなっていくとか、
トナカイの数を数えられるのを、銀行口座の残高を知られるように嫌がるとか、
煙草を買いに100キロぐらい平気で車を飛ばすとか、
サーミのシャーマンが太鼓を使うとか。
太鼓は最初にどういう形状なのか説明がなかったので、
よくわからずいわゆる大太鼓を小さくしたような、
胴の両方に革がはってあるようなものを思い浮かべてしまった。
しかも模様が描かれているのが、革の表面だっとは。
(下巻へ)
Posted by ブクログ
太陽が一切昇らない期間が40日間もある北欧サプミの地。
トナカイ放牧が生業としてあるこの地にて、トナカイ警察として、放牧者たちのいざこざを捌く(やれトナカイの群れが決められた範囲を越えて移動したがためにほかの群れと混じってしまっている、やれトナカイが盗まれたなどなど)クレメットとニーナ。
待ちに待った太陽がまた昇るその日、トナカイ放牧を担う土着民族サーミ人のマッティスが両耳を切り取られた状態で死体で発見される。
また、時をほぼ同じくしてサーミ人のアイデンティティ、差別受難の歴史のアイコンとも言えるサーミの太鼓が何者かに博物館から盗まれる事件も発生。
めったに事件らしい事件の起きないこの地にて立て続けに2件も。
儀式殺人かのような様相を見せる殺人事件と民族を象徴する民芸品の盗難、そりゃ関係ないわけないのだがどこに接点があるのかわからない。。
北欧の先住民族、土着生活を深くストーリーに絡ませるところが特徴的。
サーミ人とかラップ人とかの呼称はジョー・ネスボの作品で出てきたのを覚えているが、コタ(テントみたいな一時的な住処)とかグンピ(ググってもよくわからなかったけど、山小屋的なもの?)、ヨイク(伝統民謡)など見知らぬ用語が飛び交い濃密な民族色。
加えて0時間から次第に伸びていく日照時間というこの土地ならではの雰囲気固め。
ここにもう一声とばかりに意味深に織り込められた鉱物採掘の利権闘争(なのか?)が後半どう物語を盛り上げていくのか?ってとこでしょうか。
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