久山葉子のレビュー一覧
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ネタバレベックストレーム警部の第二弾。
前作の「見習い警官殺し」が面白くなかったので、
全く期待せずに読んだが、良かった。
あくまでも前作に比べれば、と言う意味だが。
アルコール依存症の一人暮らしの男が殺された。
酔っ払い同士のありふれた事件のように見えたが、
死体の第一発見者も死体で発見されてしまう。
謎解きの要素もあったし、
捜査も進展したし、
意外な展開もあった。
さらには、前作に比べて短いせいかもしれない。
といっても、
酒好きで、女好きで、金好きで、偏見のかたまりで、
仕事をさぼることばかり考えているベックストレーム警部は相変わらず。
健康のために、禁酒と運動を誓ったにもかかわらず、
あっという間に元のアルコール漬けの生活に逆戻りしていた。
被害者の貸金庫を見に行って大金を発見した時には、
誰もがベックストレームがネコババするはずだと考え、
それができない融通の利かない部下が一緒だったのを喜んだのには笑えた。
ただし、今回は銃をぶっ放して大活躍していた。
買収できると大金を持って現れた強盗犯相手に。
さらには、ちゃんと謎を解いて犯人をつきとめたし。
不思議なことにベックストレームには、
いろいろと助けてくれるいとこや「友達」がいる。
いわゆる、同じ穴のムジナのような仲間なのだが、
だからこそ強い結びつきがあるらしい。
そこらへんの「絆」に心くすぐられる読者層がいての、
人気シリーズなのかもしれない。
俺にも、こんな悪い仲間がほしいという感じの。
それに何のかんの言っても、
自ら招いたまずい事態をきりぬける運の良さが、
人気の秘密なのかも。
前作での個人的な謎が解けたので、満足した。 -
Posted by ブクログ
フランス人の書いた北欧ミステリー。そう言ってよいのかどうか? いずれにせよ、内容は、都会とは遠く離れた場所に展開する辺境エンターテインメントである。しかもそんじょそこらの中途半端な辺境ではなく、北極に一番近く、地の果てもいいところ。白夜とは真逆となる<黒昼?>。無論そんな言葉は作中にはない。しかし一年に四十日間も全く太陽が顔を見せない季節が地球上にあるなんて! 地軸の傾きが作った宇宙の奇跡としか言いようがない。そんな四十日間の長い夜が明ける瞬間に幕を開けるのがこの物語である。多くの人々が極寒の暗闇で日の出を待つシーンで! どうです、神秘的でしょう?
しかも初日は日照時間は4時間ほど。日が経つにつれ日照時間が伸びてゆく。日が変わる毎に日照時間が小題に記されるのも本作の特徴。太陽は地平近くを横に移動して四時間後にはまたすぐに沈んでしまうのだそうで日照時間は実に重要。むしろそんな場所でそんな時を経験してみたいくらいだ。
ともあれ、そんな季節に起こってしまうトナカイ牧場殺人事件。調べるはトナカイ警察。トナカイ業を営む多くはサーミ人という少数民族。日本ではアイヌ人、もしくはいわばイヌイットなどの海洋民族を想起させられる。いずれも人種差別や迫害を免れない先住民族共通の国家的課題を抱えている状況もしっかり描かれてゆく。差別を日常的に口にする警察官の存在が鼻につくが、それはきっとリアルなことでもあるのだろう。
長い夜。極寒。差別。そういった逆境を背景に、描かれた警察小説が、本書なのである。警察小説と言っても、本書の主人公クレメットとニーナが所属するのはトナカイ警察。トナカイ猟に関わる事件を専門とするので、一般の捜査陣よりはワンランク下に見られているようである。本作では、トナカイ業経営者の殺人事件を彼らは特別に担当する。また同時に村の博物館ではやはり先住民族の史的文化財とも言える太鼓の盗難事件が発生し、二つの事件の関連が疑われる。
ノルウェイ、フィンランド、スウェーデンが国境を接する北欧の最北端を舞台に、二人の若いトナカイ警察と、彼らを取り巻く一般警察、役場、さらには利権を企んで集まってくる有象無象の輩、性犯罪の常習犯である地質学者などが入り乱れる中、静かなはずの北辺の地が一気にざわめく。
穏やかならざる犯罪の気配に連続して巻き込まれゆく極光の雪原を舞台に、零下40度を軽く超える極寒の地で、二人の捜査が展開される。クレメットは先住民族の血が流れ、ニーナは南ノルウェイの出身でこの地へは配属され初めて足を踏み入れたばかりの新任である。
ちなみに、作者は『ル・モンド』紙の北欧特派員としてストックホルムに在住しているフランス人であるそうだ。ゆえに本書はフランス語圏で出された北欧舞台のミステリー。いわゆる北欧ミステリー特有のエンタメ性というよりは、サーミ人という知られざる北方民族の存在、また彼らに対する差別、金鉱・ウラン鉱の発掘のために自然を虐げようとする先進国の文化的暴力、悪徳企業による自然破壊への怒り等もろもろをモチーフとした社会小説的側面が強い善良な作品であるように思われる。ストーリーの面白さやリーダビリティは、北欧エンタメの快適さには遠く及ばない。
それでも、武骨ながら独自の題材に迫ってみせる作者の気概がストレートに伝わる意欲作として評価したい上、さらなるこの地を舞台にした続編にも個人的には期待したく思う。少なくともワイルドな地の果てが大好きなぼくにとっては、心惹かれる個性的な一作であった。 -
Posted by ブクログ
フランス人の書いた北欧ミステリー。そう言ってよいのかどうか? いずれにせよ、内容は、都会とは遠く離れた場所に展開する辺境エンターテインメントである。しかもそんじょそこらの中途半端な辺境ではなく、北極に一番近く、地の果てもいいところ。白夜とは真逆となる<黒昼?>。無論そんな言葉は作中にはない。しかし一年に四十日間も全く太陽が顔を見せない季節が地球上にあるなんて! 地軸の傾きが作った宇宙の奇跡としか言いようがない。そんな四十日間の長い夜が明ける瞬間に幕を開けるのがこの物語である。多くの人々が極寒の暗闇で日の出を待つシーンで! どうです、神秘的でしょう?
しかも初日は日照時間は4時間ほど。日が経つにつれ日照時間が伸びてゆく。日が変わる毎に日照時間が小題に記されるのも本作の特徴。太陽は地平近くを横に移動して四時間後にはまたすぐに沈んでしまうのだそうで日照時間は実に重要。むしろそんな場所でそんな時を経験してみたいくらいだ。
ともあれ、そんな季節に起こってしまうトナカイ牧場殺人事件。調べるはトナカイ警察。トナカイ業を営む多くはサーミ人という少数民族。日本ではアイヌ人、もしくはいわばイヌイットなどの海洋民族を想起させられる。いずれも人種差別や迫害を免れない先住民族共通の国家的課題を抱えている状況もしっかり描かれてゆく。差別を日常的に口にする警察官の存在が鼻につくが、それはきっとリアルなことでもあるのだろう。
長い夜。極寒。差別。そういった逆境を背景に、描かれた警察小説が、本書なのである。警察小説と言っても、本書の主人公クレメットとニーナが所属するのはトナカイ警察。トナカイ猟に関わる事件を専門とするので、一般の捜査陣よりはワンランク下に見られているようである。本作では、トナカイ業経営者の殺人事件を彼らは特別に担当する。また同時に村の博物館ではやはり先住民族の史的文化財とも言える太鼓の盗難事件が発生し、二つの事件の関連が疑われる。
ノルウェイ、フィンランド、スウェーデンが国境を接する北欧の最北端を舞台に、二人の若いトナカイ警察と、彼らを取り巻く一般警察、役場、さらには利権を企んで集まってくる有象無象の輩、性犯罪の常習犯である地質学者などが入り乱れる中、静かなはずの北辺の地が一気にざわめく。
穏やかならざる犯罪の気配に連続して巻き込まれゆく極光の雪原を舞台に、零下40度を軽く超える極寒の地で、二人の捜査が展開される。クレメットは先住民族の血が流れ、ニーナは南ノルウェイの出身でこの地へは配属され初めて足を踏み入れたばかりの新任である。
ちなみに、作者は『ル・モンド』紙の北欧特派員としてストックホルムに在住しているフランス人であるそうだ。ゆえに本書はフランス語圏で出された北欧舞台のミステリー。いわゆる北欧ミステリー特有のエンタメ性というよりは、サーミ人という知られざる北方民族の存在、また彼らに対する差別、金鉱・ウラン鉱の発掘のために自然を虐げようとする先進国の文化的暴力、悪徳企業による自然破壊への怒り等もろもろをモチーフとした社会小説的側面が強い善良な作品であるように思われる。ストーリーの面白さやリーダビリティは、北欧エンタメの快適さには遠く及ばない。
それでも、武骨ながら独自の題材に迫ってみせる作者の気概がストレートに伝わる意欲作として評価したい上、さらなるこの地を舞台にした続編にも個人的には期待したく思う。少なくともワイルドな地の果てが大好きなぼくにとっては、心惹かれる個性的な一作であった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレネットで見かけて。
何だか変な感じがした。
その「変」は読み終わった後、解説を見てわかった。
人気のシリーズの最終作だった。
なるほど。
それで、
登場人物が妙に完成されたキャラクターだったり、
途中で出て来た人との関係が重かったりのは、そのせいか。
北欧ものにしては暗くないし、
悲惨でもないこの作品において、
それは決してマイナスにはなっていなかったけれど、
この前の作品を翻訳してほしい。
話はそれだから。
「角の向こう側の見通せる」男、国家犯罪捜査局の元長官が、
脳梗塞で倒れる。
麻痺と闘いながら、担当医の頼みを聞いて過去の事件を調べ始める。
妻の諫めも聞かず脂っこいものを食べたり、
酒を飲んだりしながら。
病と闘いながら死に向かう話なのに、
ユーモアにあふれていて面白かった。
たぶん、最終作にふさわしいオール・キャストなのだろうが、
それが楽しめないのが残念だ。
北欧ものはそこそこ読んでいるが、
ヘラジカ猟がそれほど重要なことだとは知らなかったし、
七十年代の終わりごろにモンチッチが流行っていたのも知らなかった。
衝撃的だったのは、
若い妻が遺言どおり半年もたたないうちに、
新しい恋人を作ったことかな。 -
Posted by ブクログ
渋い。渋すぎる。
まず、主役が
脳梗塞を患い
右半身に麻痺が残っている
元警察庁長官。
治療やリハビリを受ける中で
ある時効を迎えた
女児殺害事件に行き当たります。
主治医である女医から
牧師だった父親が
生前「事件の犯人を知っている」
という懺悔を耳にしたらしい
と 告白され
犯人探しが始まるのですが
いわゆる
『安楽椅子探偵モノ』に近く
自らは ベッドに横たわったまま
当時の捜査資料などを紐解きながら
想像力と経験値で
推理を進めていきます。
ピアスやタトゥーを施した
介護士の若い女性や
同じく年金生活者で
元警察官の親友
非常に細かい
元会計士の義弟
孤児で 並外れた
体格の持ち主である
ロシア人の若者など
脇を固める配役も
一癖あって 魅力的。
主人公が
酸いも甘いも噛み分けた
中年以降の男性警察官で
男同士の友情や
どうにもならない理不尽さ
などが入り混じる
決して 手放しで
ハッピーエンドとは
言えない
苦み走った
翻訳ミステリーが
大好きな私にとっては
たまらない作品でした。
CWA賞など5冠に輝く
警察小説。
好みは かなり偏ると
思われますが…
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購入済み
基本的に電子書籍での読書ばかりなので、電子書籍も脳にダメージがあるのか気になりましたが、寝る前に読書してもパソコンで動画を見ても眠くなってすぐ寝てしまうので、影響には個人差があるのかなと思いました。
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購入済み
スマホとの向き合い方を再考した
人類の進化の過程で形成された危機管理能力が、新しい更なる情報を欲していることを知った。
運動をして、睡眠を確保し、スマホとは距離をとる生活を徹底する。
SNSはスマホから消して、
スクリーンタイムは2時間に早速設定した。 -
Posted by ブクログ
三作目にしてようやくこの作家に慣れてきた。作家という職業の他に、犯罪学教授、国家警察委員会顧問、など三つの顔を併せ持つ、いわゆる専門家なのだが、そういう書き手による警察小説でありながら、内容はお固いものではない。というより、むしろブラックユーモアという今や廃れてしまった類いの言葉が最もよく似合うのが意外な本シリーズなのである。
ミステリーの謎解きの味は確実に残しつつも、捜査に携わる実に多様な男女を各所に配しながら、彼らを率いる最悪のボスであるエーベルト・ベックストレーム警部の実に滅茶苦茶な活躍(?)を描くシリーズ第二作が本書。第一作の『見習い警官殺し』では、とにかくDNA検査を限りなく指示し続け一切成果が上がらない同警部の方針にやきもきさせられ冗長なイメージが付きまとった感があるが、本書ではさらに本領を発揮するこのいい加減極まりない主人公に、読者としても慣れたのかな? 周りの警察官たちの個性豊かで楽しい感じも含めて。とにかく、ここに来てようやく、手放しでこの作風を楽しめるようになってきた気がする。
スウェーデンという国が見せる、文化や人間の多様性は、やはりこの国の小説の見どころなのだとは常々思う。この国に発生する移民の問題や人種差別について、本書では敢えて触れないようにするのではなく、むしろ露悪的までに見せてしまう滅茶苦茶で下品な主人公を描くことによって、読者に現実と向き合わざるを得ないように方向づける、作者のひねりへの意図が感じられてならない。
もちろん人種、肌、女性への差別心を常備し、モラルという言葉を全く意に介さない、というばかりではなく、直情的で短絡的な思考回路がもたらす彼のバカげた行動や、下心を表に出すというユーモラスで何とも憎めない一面が、ある意味孤高さをまとい、実に現実離れしているのだが、この極端さこそが、実は本シリーズを他と分ける個性と言うべきなのだろう。
ましてや、肝心のミステリー要素はしっかりとツボを抑えているので、謎解きと捜査の過程は警察小説としても大変面白い。しかしダイナマイトのような爆発力と猪突猛進な判断力を持つベックストレームという存在が、行き詰まる捜査の局面を変えてしまう、あのカタルシスと爆笑があるからこそ、本シリーズは、放送禁止用語でいっぱいのブラックな性格ながら、小気味の良い傑作に仕上がってしまうのだろう。
最初にヨハンソン・シリーズの最終作『許されざる者』という正当派ミステリーの傑作に接してしまったおかげで、本シリーズの方は、思わぬものを読まされている感は否めないが、そうした作風の幅を売り物にしているのがこのGW・ペーションという作家なのだと、ここに来て覚悟ができた。
正直、前作では、二作の違いを比べた時に当惑のほうが先に立ち面食らってしまったのだが、本シリーズも二作目にして軌道に乗ってくれた。こうなったらとことん翻訳を続けて頂き、ヨハンソンの過去の活躍も、ベックストレームの今後の悪徳の限りと予期せぬ活躍ぶりも、両者ともに、是非とも読ませて頂きたく思う。