樋口有介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
主人公が2人、三人称など、シリーズ異色作。その異色さが成功しているかどうかというと、なかなか難しい。軽さと同居している意外性のあるミステリー、普通ならば青春もので書かれそうなミステリーがハードボイルドと言う変わった味付けによって印象的な読後感を残すのがこのシリーズの特徴であり、魅力だと思う。ところがこの作品では眼鏡のおっとりした大学生が登場することによって、中途半端になってしまった印象が強い。愛すべきキャラクターなので、作品の魅力となっていることは間違いないが、逆にそちらの視点だけでもよかったのではと思えてしまった。いつのまにか携帯が普及しているのや、歌舞伎町がまだまだ元気なのは時代の流れで仕
-
Posted by ブクログ
ネタバレ妻に逃げられ、娘の成長に心痛めているのは、このテイストのミステリーの主人公に似合わない気がしないでもないが、日本人だからという理由で納得させる。気の聞いた科白、作品全体に漂う倦怠感と紫煙。ウイスキーとコーヒーの香りとくればまさしく男の子の憧れるハードボイルドな私立探偵である。さらに起こる事件はペットの失踪ではない。美しくも怪しい依頼人が持ち込む未発覚の殺人事件。きちんとドンデン返しもあり、ミステリーとしても楽しめた。怪しい人物が実はそんなに悪くなかったという程度のドンデン返しであるが、こちらもそんなにミステリーを求めていない。20年前でパソコン、携帯と言った現代では不可欠なツールが未登場なのが
-
Posted by ブクログ
死んだ元恋人の足跡を辿るうちにそれまで知らなかったもう一つの顔が見えてきて・・・よくあるストーリーと言ってしまえばそれまでだが、オカルトチックなスパイスと作者得意のライトな文体が飽きさせずに最後まで読みきらせる。犯人は確かに意外な人物だったが、ちょっとアンフェアかもと言う気がした。よく読み直せばわかるのかもしれないが。それよりも本当に黒魔術ってあったのかもと思わせる展開はお見事。オカルトに流れてしまいそうで不安にさせておいて、そのギリギリのところでミステリーに帰ってくる。決していい読後感ではないのだが、ほっと一息つかせるエピローグは印象的だった。アリバイも密室も何かトリックがあるわけではない。
-
Posted by ブクログ
未解決の殺人事件を担当する一所懸命だけれど空回り気味で上昇志向が強くやや自己中な女性刑事と、その事件で両親と妹を亡くしひとり生き残った女子高生美亜、不注意で我が子を死なせてしまい離婚し退職して代々木公園で暮らす元敏腕刑事の椎葉という全くバラバラの3人が、事件を巡りある種の不思議な信頼関係を築くお話。事件の内容も登場人物の抱える背景もしんどく重いし、椎葉の視点を介して作品全体に諦念が漂っているのに意外にも読後感はスッキリ。途中少々つらくなりましたが最後の事件解決のくだりは謎解きにも無理がなく、しかもテンポ良くトントンと展開するせいかも。読み応えありました。
-
Posted by ブクログ
“「木村くん……」と、ペンギンハウスを出て、細かい雨に傘をさしかけたぼくの腕に、軽く指を突き刺して、夏帆が言う。「レジにいた女の子、新しい子だったよねえ」
「気がつかなかった」
「信じられない」
「どうして」
「だって、奇麗な子だったじゃない」
「そうだったかな」
「そうだったよ。知ってたくせに」
「………」
「木村くん、彼女の顔、じっと見てたじゃないの」”
木村時郎くん視点の短編集。
女の子をひっかえとっかえな木村くんの性格がつかめない。
“「あなた、疲れるでしょう」
「はい」
「どこかに逃げる場所が、あるの?」
「いえ」
「やっぱり諦めて、我慢をして、最善をつくすの?」
「ほかに方法が