樋口有介のレビュー一覧
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柚木草平シリーズ。
2年前女子高校生が殺された事件を調べ始めた柚木は、彼女が通っていたボランティア団体に糸口を見出す。
派手というか、個性的な女性が次々出てくるので、ちょっと目くらましされるけど、根底にあるのは持てるものと持たざる者の差なのだと思う。
持てるものがいて、持たないものがいた、その格差が悲劇を連鎖させていく。
被害者には、同情する。が、純粋に同情できない。
が、そのチョイスをしてしまった、せざる得なかった背景を哀れに思う。
私はもう少女ではない。むしろ彼女の親の世代だ。だからこそ、いらだつ。子供を子供として守ってやらなかった周りに怒りを覚える。
きちんと子供やらないと、きちんと大人になれないんだよ。
て、ダメな大人として描かれているっぽい柚木だけど、<大人>としてはちゃんとしているのである。(夫、彼氏、とかでは多分だめなんだろう)
ただ生きてるだけじゃ、大人になれないんだよ、って多分そういう話ww -
Posted by ブクログ
発表から時間が経ってはいるけれども、樋口センセが描くローカル色っていうのは変わってないんだなぁ…と再確認。
そこに息づく人が醸し出す空気感がリアル。
で、今作も四十路の刑事が語り部ということで、もうそろそろ自分のなかでの「青春ミステリ」な樋口センセというポジションが消えかかって…w
ただ「強い正義感を厭う」ていう人物造形は、なるほどなー…と感じるものであります。
センセらしい。
自分もまたそういう側の性格だからかもしれないけど。
しかし作中でも述べているように「正義と正義感」は異なるものですし、そして「正義感を厭う」からといって真の意味での正義に敬意を払うのかといえば別…っていうことを物語のクライマックスでは語られるワケで。
正義に敬意を払わないとき、正義は不敬な者に牙を剥く。
それは因果応報というのいうものかもしれないけれど、しかし正義は残酷で人情味なんて解しないものなんだな、と。
エンターテインメント作品なんだから、事態がそんな単純なものではないと意識しつつも、今作は「どこかおかしいぞ」という臭いを序盤から放ってました。
それは正義では無いことが放つ不自然さだったのかも。
でもやっぱり、人間は純粋な正義とは仲が悪いのではないかと、読み終えて考えてしまうのです。
哀しいことかもしれませんが。 -
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法律事務所の調査員、風町サエの2作目。
自殺したアイドル候補生への賠償金の減額のために、調査をしていくうちに、そのプロデューサーの過去にいきあたる。
まるで、某アルファベット3文字のアイドルですか、って感じだけど、それよりえぐい。まぁ、いや全然別なんですよってなった時に、こっち方向に行かざる得ないんだろうけどね。物語の上とはいえ、架空のものとはいえ、そのやり方には辟易した。
で、その辟易するやり方を考えた男なので…。
タイトルがいいんだけど、よくない。
かといって、元のタイトル「笑う少年」は、もっとダメなんだけど。
樋口有介は、タイトルが斜めすぎて…。
まぁ、そこがいいんだけど。
サエさんは相変わらずしっかり地に足をつけて生きている感じがいい。
でもって、前作でのあの方も出てきて、満足。(こっそり贔屓にしているのだ)
…どんなに人間の暗黒面を見ても、最終的に息子の存在でリセットされるってすごいよね。 -
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ネタバレ樋口センセの作品を上梓順に読んでるわけでは無いし気にしても居なかったから今作に触れるのがたまたま2018年の終わりになったワケなんだけど。
しかし今作で描かれる作品背景がフィクションなんだけど妙に生々しく感じてしまう世界情勢との符号か。
創作だと絵空事だと捨てるのも簡単だけど、少しでも針が振れたら今作のような日本もあり得るのではないかなー…というあたりが巧みなのかそれとも自分の政治信条と近しいのか。
自分が触れてきた樋口センセの作品にしては、推理役が真面目に推理しているなぁ…という。
そりゃ「元刑事」なら当然でもありますか。
刑事ってのは元が付こうが、作品の中では勘が働いて不整合や不条理が気にくわないものなんですよね。
センセらしい「考えが多い」未熟な男子も登場するのですが、主に引っ張るのはその老いた元刑事ってのも自分には新鮮でしたなあ。
さらに幾つかの事実が交錯しながら積み上がって、結局のところ誰ひとりとして「全体」の姿には辿り着けてないというのも面白い。
真実を知っているのが読者だけという。
舞台劇なんかにしたら面白いんじゃないですかね。
それでも、小狡いことをしたヤツには罰が下っているし、主人公サイドはベストじゃ無くてもベターな幕引きを向かえているので、こういうのは自分には合ってますね。
少しだけ苦かったり酸っぱかったりするのが樋口有介センセの作品って感じがして。
…作品の感想とはズレるけど、所長の山本夜宵。
幾花にいろセンセの絵柄でキャラ像つかんでたわー。「演色」の大高さんあたりの。 -
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フリーの記者をしながら、未解決事件の調査を行う柚木のところに女性が訪れ、交通事故として処理された妹の死を調べてほしいとの依頼をされる。何ということもない事故のようだが、事故車が見つからないなど不自然な部分が多い。
ハードボイルドなんだか、ミステリなんだか、それらを茶化しているのかかなり混乱する作品である。メインの部分としては、事件解決を目的としたミステリなのだろうが、証拠を押えて次々解決するでもなく、小学生からOLまで、数々の女性に振り回されて、核心に向かえない柚木を楽しむという作品である。
樋口有介の以前に読んだ作品に比べると、相当読みやすく、犯人探しなんかどうでもいいと思いながら読むのが正解であろう。犯人探しを主に読んでしまうと、古いミステリにありがちな、煮え切らないアレが待っている。「動機が弱い」
全体に、ハードボイルドのパロディーのような雰囲気が漂うのだが、テーマの一つが女に振り回されるのであれば、最初に神社にでも行って「女難の相あり」なんていうおみくじのシーンでも入れて於けばよかったんじゃないかな、などという編集目線で締め。 -
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ネタバレ*地味な市議の死。外傷や嘔吐物は一切なし。医師の診断も心不全。なんとか殺人に〈格上げ〉できないものか。
本庁への栄転を目論む卯月枝衣子警部補29歳。彼女の出来心が、〈事件性なし〉の孕む闇を暴く!?軽妙に、見事に、人間の業の深さに迫る新感覚ミステリー!*
樋口氏らしい、まったりのんびりお気楽調なテンポと文体がファンとしては無条件に楽しい。捉えどころのない事件の真相が二転三転した挙句、これぞ樋口ワールド!的なオチに持ち込まれ、なんだか煙に巻かれたような読後感もさすがです。増岡と真由美の結婚に至る経緯や、殺人に至る動機がやや弱い気もするけど、まあそこは…ご愛嬌かな。 -
Posted by ブクログ
東京・国分寺市の閑静な住宅街で市議会議員の男が死んだ。遺体に不審な点もなく、病死として片付けられようとしたが、野心満々の女性刑事卯月枝衣子警部補は本庁への栄転の足掛かりにしたいと、昼行燈の刑事課長を言いくるめ殺人への格上げを目指して単独捜査に乗り出す。
調べるに従って、小さな違和感は大きな展開をみせ、事件は意外な方向へと動いていく。
地元が小説の舞台、それも殺人事件の!という高揚感、そして表紙の不穏な雰囲気も好みで手に取った作品。地元が東京の田舎のさえない所轄として描かれるのがちょっと残念(事実だけど)ではあるけど、ミステリーとしては事件の真相が明らかになっていく過程がなかなかいい。
殺人の動機自体は、「そんなことあるかな~」と感じるものの、現実感を損ねるほどではない。さらに、主人公の枝衣子と専門学校講師水沢との軽妙なやり取りも作者の持ち味らしく、作品にスピード感を与えている。
犯人逮捕で解決した事件に、実は違う側面もあるのでは・・・と思わせるシーンが怖い。そこは、警察には立証できないのだろうな~。
枝衣子が本庁の刑事に取り上げられる予感もあり、彼女のシリーズが楽しみ。