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Posted by ブクログ
樋口作品、ノンシリーズ。
犯罪者の島流しと、生活保護者の強制集中居住という極端な方法で治安も経済も安定した近未来日本が舞台。
福祉施設の中にいる青年と、外から来た爺さんを中心にストーリーは展開していく。
筆者にしては大胆な舞台設定だが、中身はいつものごとく、シニカルでハードボイルドな社会派風味のミステリ。
元々雰囲気、作風は大いに好みであるが、今回はミステリ小説としてよく出来ていた。
ユーモアを織り交ぜた人物間の探りあい・小競り合い、人間臭いホワイダニットを軸とした謎解き、大いなる諦観と僅かな救済を織り交ぜた着地…あたりは樋口有介真骨頂であるが、これがよく活きていたと思う。
2014年上位作。ゴリで推したいエンターテイメント作品。
5
Posted by ブクログ
生活困窮者の収容施設『希望の家』で老女が深夜に階段から落ちて死亡した件で、委託を受けた元刑事の『幸祐』が調査に向かう。
事故としてかたをつけようとした矢先、今度は施設の職員が刺殺体で発見され、さらには燃やされた人骨がででくる。
国家事業である『希望の家』の闇が顔をのぞかせる・・・。
一件の死亡事故をきっかけとして紆余曲折しながら数々の事件が暴かれていく様は、読み手だけに明かされる真実、事件の落とし所、各登場人物の思惑などが絡み合い読み応えがあった。
一番の驚きどころは、この造られた日本の社会制度。刑務所を閉鎖し犯罪者は島流し。生活保護を廃止し自活できないものは施設に収容する。それらの政策により多額の国家予算が削減され、消費税を廃止して好景気に沸く日本。これを推し進めるきっかけとなったのが北朝鮮がミサイル攻撃というのだから。こんな政策世論が許さないと言うはずだが、近隣諸国との軋轢や、現在日本が抱える諸問題に対する世論の風潮などを見ていると、あながち非現実と言えないのではないかと思えてくるので笑えない。何より怖いのが、極論ではあるがあんがい妙案なのではないかと思ってしまう自分がいること。もちろん自分は一般市民として暮らしていけるという自負があってのことなんだけど。
自由な社会と言うのは弱者に無理を強いる社会であり、逆を言えば格差は無理をしなくて済むという官僚の言葉にレトリックを感じながらも共感してしまったりして。勿論助け合える社会は理想だけれども・・・。
それでもやはり『希望の家』で暮らす少年に付きまとう閉そく感と言うか諦めに馴れた感じというのは悲哀を感じた。
Posted by ブクログ
生活保護法が廃止されるなど、社会福祉を大幅に路線変更した近未来の日本。生活保護の対象となっていた人々は「希望の家」なる福祉施設へ集められていた。そこで起こった老女の転落事件。ただの事故で片づけられるはずが、突き落とされると主張する職員が現れたことで、元刑事(とその孫娘)が呼び寄せられることになる。
という導入から始まる、ミステリ…というより、仮想のこの設定をもとに、「歪んでいる社会」を照らし出した物語、といいましょうか。
祖父と孫娘のミステリという売りのようでしたが、それを期待するとあらあらという方向へ物語が進みます。途中、施設の少年と孫娘のふれあいがあってしんみりするのですが、それも途中でぶつ切り感があって…あえてぷっつりと断つことで、置かれた立場の違いを表しているともいえるんでしょうが…。
話のコアは、極端な福祉政策を取り「みんなが幸せとなるような社会」となって経済大国となった日本の、同時に抱えているいびつな幸せの裏側を照らし出すことにあります。状況はあくまで仮想下ではありますが、格差社会といわれている現代社会のリアルにおいても、まったく起こりえないとはいえない真相がそこにはあり、ぞわりとした嫌な感覚を持たせます。
装丁から感じ取れる爽やかさ切なさをもとに読み始めると意外に重い終盤の展開に沈むかもしれませんし、謎が解決してすっきりという話でもないので、ぱっと見より重たいし人を選ぶ物語だと思いました。
個人的には老(元)刑事と所長の恋物語…的な要素はあまりどうかなあと…。よほど先に書いた、少年と孫娘の出会いと別れをもっと書いてほしいなと思いました。
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