樋口有介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
うーん、何だろうなあ、これは。
私の最も好きな作家である樋口有介。
彼が第一回サントリーミステリー大賞で、故開高健氏より「コクがあるのにキレがある」といったような表現で絶賛されたデビュー作「ぼくと、ぼくらの夏」を初めて読んで以来、その独特のハードボイルド文体に魅了され、新作が出るたびに胸躍らせていた彼の最新作なのだが------。
探偵は、警察をとっくに定年退職した民間の老人。
しかも時代設定が不可解。
北朝鮮が日本に実際にミサイルを撃ち込み、そのお蔭で日本がバブル以来の好景気に沸いている時代という設定。
ラストなどは、某国軍が或る国の島に攻め入って上陸したという終わり方。
近未来小説なのか、これは?
貧しい人たちの福祉施設で起こった不可解な死亡事件。
目撃者の証言から謎は深まり、美しい施設長夜宵の存在もあり捜査にのめり込んでいく民間老人探偵一之瀬幸佑。
この施設には由希也と蛍子という幼馴染の少年少女もいた。
まず、キャラクターにそれほど魅力を感じない。
幸佑然り、由希也と蛍子また然りだ。
文章も、これだけの老人になるとハードボイルドタッチにするのも無理があるのか、作者独特のキレのいい文体ではない。
70の爺さんに色気を感じるアラサーの若くて美しい施設長というのも、
違和感ありありだ。
どことなく陰のある少年由希也と彼を慕う蛍子の心情の掘り下げも浅い。
うーむ。
最後のオチさえも、それまで張り巡らせえた伏線を、広げっぱなしにしたままで、全く回収する意図さえ見えない。
どうなんだろうね、これは。
ここ数年の作品は、どうにも今一つ楽しく読めなくなってきたのだが、ここまで来ると、もはやあきらめの境地だ。
樋口さん、沖縄に隠居したせいで年老いてしまったのかなあ。
もう一度、ヒット作の「柚木草平シリーズ」にでもチャレンジしてくれないだろうか。
さもなければ、苦しいかと思うが、高校生あたりを主人公にした青春ミステリーに。
このままでは私の最も好きな作家が消滅してしまうことになる。
時の流れとはいえ、それは悲しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『木野塚探偵事務所だ』に続く、木野塚佐平シリーズ第二弾。
前作は連作短編集、今回は長編。
そして、事件も何だか、でっかくなりました。
個人的には前作より、面白かったのだけれど(あとがきによると”文体”が前作から変わっているとのこと、そのため?)、前作の愛嬌のあるキャラクタたちと珍妙な事件の絡みが好きであった読者は、色々とギャップを感じてしまうだろうなと思った。
前作にもひとつはまりきれなかった私も、「あれ?こんな作品だっけ…」と思ったくらい。
総理大臣の死、それに関する妙な説。
木野塚氏の希望通り、大事件が迫ってくる。
木野塚氏が空回りしている面も今回はあるものの、けっこう彼の望みが叶っている方なのでは?
”警官生活三十七年、警視総監賞を受賞”、暗記してしまいそうな、木野塚氏の口癖というか、キャッチフレーズというか。
これをことあるごとに述べ、ハードボイルドを気取る(決まりきっていないことが多いけれど)木野塚氏と頭の回転が速く、木野塚氏の理想の女性像とかけ離れたボーイッシュな桃世のキャラクタは相変わらず。
桃世ファンの私としては、ケニアから戻ってきて、嬉しい。
著者曰く(こちらもあとがきより)、この作品は”大バカ大ナンセンス小説”。
本作については「ちょっと調子にのりすぎたかな」だそう。
その著者のくだけた感じがうまく作用しているのが、この作品には良い弾みを与えてくれたように、私には思えた。
第3弾があるならどういう方向へ持ってゆくのか?? -
Posted by ブクログ
この夏を忘れない。まばゆい夏の午後、なぜ少女は
姿を消したのか。あの名作「ぼくと、ぼくらの夏」を
原点に描く、青春ミステリーの新たなる傑作。
東京の下町を舞台にくり広げられる爽やかで可笑しく
て、ちょっと切ない青春ミステリー。
買ってはみたのものの長らく積読状態でした。樋口有介は好きな作家で、柚木草平シリーズであれば、間を置かずに読むのですが、イマイチ気が乗りませんでした。
最近、本を読む気力が湧かなかったので、手にとってみたのですが、なかなか面白かったです。樋口作品は、ミステリー色が弱く、私的にはキャラクターの掛け合いの方が楽しみですが、本書ではその辺りも頑張っています。
セルフパロディーの部分にはニヤリとさせられました。この親子の掛け合いもなかなか好きです。真夏さんはいささか消化不良でした。