樋口有介のレビュー一覧
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<柚木草平シリーズ>の1冊。草平が繰り出す、女性への軽快なジョークはあいかわらず。楽しい。しかし、今回の柚木草平はまたまた、これまでと違った一面を見せた。本書は草平が刑事を辞めて8ヶ月後の事件。なんとロシアの某機関まで絡んでくる、スケールのでかい陰謀なのである。シリーズ中、最大の事件かも?今回は随分と大風呂敷を広げたなぁと思ったが、その割りにコミカルな草平の言動に気楽に読んでいたら、驚いたことにエイリアン? まで登場する始末。ちょっとひいたが、きっと納得できる、あっと驚く結末が用意されているんだろうと高をくくっていた。でも、明らかになった真相も厳しい内容だった。練りが足りないなぁというのが正
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Posted by ブクログ
義父の死の報せを受けて、故郷に帰ってきた主人公。20歳の大学生。幼い頃から好きだった女性が1週間前に死んだことも知る。死んだ女性の妹と同じように事件に疑問を抱き、真相を探る。
樋口有介さんの代表的作品。
文章のあちこちから瑞々しい感性が顔を覗かせていた。
微妙な感情の動き、故郷の閉塞感などの描き方がうまく、著者の表現力、ポテンシャルを感じさせる作品だった。
登場人物たちの会話。ぎこちないような、それでいてしっくりしているような、ちょっと浮ついた印象。その世代を感じさせた。
学生時代。挫折と希望。今現在しか見えない者と、漠然とでも将来に目を向けている主人公との対比。同じ場所にいても、生きてい -
Posted by ブクログ
ボクさんは知能に少し障害がある。四十歳、アパート「幸福荘」の管理人。
住人や近隣の人々に支えられ、自然を愛し人を愛し、幸福な日々を送っていた。
ところがある日、アパートで殺人事件が起きてしまう。それを目撃したボクさんは驚いて梯子から落ち、次に目が覚めた時は病院のベッドだった。
そして彼は気づいた。自分の知能が正常に戻っていることに。
善良だと思っていた住人は全員失踪したという。ボクさんは一人、真実を追うため動き出す。
「僕がみんなに親切にして、僕がいい人になれば、まわりの人もみんないい人になるよ。」
人からは苦笑されてしまうような、この信条。
これは本当に、のちのボクさんが分析するような「逃