樋口有介のレビュー一覧
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未解決の殺人事件を担当する一所懸命だけれど空回り気味で上昇志向が強くやや自己中な女性刑事と、その事件で両親と妹を亡くしひとり生き残った女子高生美亜、不注意で我が子を死なせてしまい離婚し退職して代々木公園で暮らす元敏腕刑事の椎葉という全くバラバラの3人が、事件を巡りある種の不思議な信頼関係を築くお話。事件の内容も登場人物の抱える背景もしんどく重いし、椎葉の視点を介して作品全体に諦念が漂っているのに意外にも読後感はスッキリ。途中少々つらくなりましたが最後の事件解決のくだりは謎解きにも無理がなく、しかもテンポ良くトントンと展開するせいかも。読み応えありました。
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“「木村くん……」と、ペンギンハウスを出て、細かい雨に傘をさしかけたぼくの腕に、軽く指を突き刺して、夏帆が言う。「レジにいた女の子、新しい子だったよねえ」
「気がつかなかった」
「信じられない」
「どうして」
「だって、奇麗な子だったじゃない」
「そうだったかな」
「そうだったよ。知ってたくせに」
「………」
「木村くん、彼女の顔、じっと見てたじゃないの」”
木村時郎くん視点の短編集。
女の子をひっかえとっかえな木村くんの性格がつかめない。
“「あなた、疲れるでしょう」
「はい」
「どこかに逃げる場所が、あるの?」
「いえ」
「やっぱり諦めて、我慢をして、最善をつくすの?」
「ほかに方法がありますか」
「どれかひとつに決めたら?」
「はい?」
「人生を諦めるか。ひたすら我慢をするか。それともただ無心に、最善をつくすか」
「考えてみます」
「疲れるわね。まだ高校生なのに、可哀そう」” -
Posted by ブクログ
<柚木草平シリーズ>の1冊。草平が繰り出す、女性への軽快なジョークはあいかわらず。楽しい。しかし、今回の柚木草平はまたまた、これまでと違った一面を見せた。本書は草平が刑事を辞めて8ヶ月後の事件。なんとロシアの某機関まで絡んでくる、スケールのでかい陰謀なのである。シリーズ中、最大の事件かも?今回は随分と大風呂敷を広げたなぁと思ったが、その割りにコミカルな草平の言動に気楽に読んでいたら、驚いたことにエイリアン? まで登場する始末。ちょっとひいたが、きっと納得できる、あっと驚く結末が用意されているんだろうと高をくくっていた。でも、明らかになった真相も厳しい内容だった。練りが足りないなぁというのが正直な感想。読み終わってあとがきを見たら、本書はデビュー前に書いた習作を、柚木草平ものに全面改稿した作品ということだった。それで未熟な感じの理由に合点がいった。そんなわけで事件自体には消化不良を起こしてしまったが、夢子という女性との関わり部分はとても楽しかった。夢子は、草平行きつけのスナックの経営者。草平の事務所の向かいにある寂れた店で、トランプの一人遊びや探偵小説を読んでいるちょっと謎めいた女性。美人のようなのだが、女好きの草平でも気にかけていなかった。ところが、彼女の素性を知ったあとの草平は妙にドギマギ。最後には・・・・・・ あーぁ、面白かった。
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義父の死の報せを受けて、故郷に帰ってきた主人公。20歳の大学生。幼い頃から好きだった女性が1週間前に死んだことも知る。死んだ女性の妹と同じように事件に疑問を抱き、真相を探る。
樋口有介さんの代表的作品。
文章のあちこちから瑞々しい感性が顔を覗かせていた。
微妙な感情の動き、故郷の閉塞感などの描き方がうまく、著者の表現力、ポテンシャルを感じさせる作品だった。
登場人物たちの会話。ぎこちないような、それでいてしっくりしているような、ちょっと浮ついた印象。その世代を感じさせた。
学生時代。挫折と希望。今現在しか見えない者と、漠然とでも将来に目を向けている主人公との対比。同じ場所にいても、生きているところは違うのか。
1歩、自分のエリアから出ることができれば違った風景に出会えるかもしれない。読みながらそんなことを考えていた。
ミステリとしては、現在読むとさっぱりしたものにしか感じられない。しかし、主人公と同世代の読者なら、どうだろう。