樋口有介のレビュー一覧
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小笠原 という 東京都でありながら 船で二十六時間も隔てられている いわば閉ざされた空間。
いつも通りののんびりとした亜熱帯の風景、代わり映えのしない日常、不自由さ。
その中に外から持ち込まれた厄介事。
言ってしまえばそんな話なのだが それだけではない。
閉ざされた世界には 閉ざされているが故に抱える 憂鬱さがあり 諦めがある。
島の風景描写が語る 長閑さと倦怠と退廃、そして たくましさは 魅力に富んでいる。
目新しくはない事件が この島ならではのスパイスで 一風変わった風味になっている。
樋口有介氏には 一作読むごとに 惹かれてきている。 -
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本書(創元推理文庫版)は2006年発売であるものの、元となった単行本は1990年と、その時代ならではのゆる~いトレンディドラマ風な(ファジーと書いた方が分かりやすいか)雰囲気の中、著者の樋口有介さん当時の年齢である38歳という設定で描いた、元刑事でフリーライターの「柚木草平」が私立探偵として活躍するシリーズの第一弾です。
読んでいくと、どうやら草平はハードボイルド風に気取りたいのかなと感じたものの、それもオープニングが娘の加奈子(小4)に遊園地に付き合わされる場面だったことによって、却って人の良さが滲み出てくる感覚は、特徴的な主人公を確立させる手段として上手さを感じられた上に、彼は妻の知子と別居中で(離婚はしていない)、娘の親権は妻にあることもまた切ないではないか・・・と書きつつも、実は仕事を回してくれる元上司の吉島冴子と愛人関係であることや、娘の頭の上に煙草の煙を吹く行為は、私的にアウトなんだけれども。
ただ、それでも悪い人では無いのかなというのは感じられて、例えば『恐ろしいのは女が、理屈ではものを考えない生き物だということだ』と言った後に、『さっきのは、あれは、冗談だ』なんて言うことには、一つの物事やマニュアル的なものに固執しない柔軟な考え方を持っていることが分かるし、更に元刑事の設定あるあるとも思えた彼の過去には、倫理的な問題こそあるのかもしれないが心に響くものを感じた人もきっといるだろう、といった賛否両論分かれそうな部分にこそ、もしかしたら人間を信頼できる要素はあるのかもしれない、なんてことを考えさせてくれる。
島村香絵から依頼された妹の交通事故死の真相に挑む草平は、元刑事の経験を活かし、地道に聞き込みを重ねていっては考察することで、着実に真相に迫っているように思われたものの、そこは彼の完璧でない人柄も見事に活かして二転三転することで、派手さは無いもののミステリとしての面白さもありつつ、事件の関係者の殆どが大学生ということで、社会へ踏み出そうとする前の最後の青春を謳歌する時期に垣間見えた、ちょっとした野心の無垢さや愚かさ、そして将来に対する不安から覗かれた哀愁は何とも切なく、それらは事件の後味にも繋がっている。
最後に気になった点として、本書のあらすじに「出会う女性は美女ばかり」と書かれていたものの、それぞれに際立った個性や魅力がいまいち伝わりきらなかったことに加えて、この素敵なタイトルの意味について、物語に登場した中の一体どの彼女が魔法を使っていたのか未だに分からないのだが、多分草平だったら、そういう表現をしたがるんだろうなという気持ちは分かるような気がする。 -
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樋口有介の長篇ミステリ作品『木野塚佐平の挑戦だ(英題:The Challenge of MR.Kinozuka)』を読みました。
樋口有介の作品を読むのは初めてですね。
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現職の総理大臣が急逝し、世間は大慌て。
しかし、ケニヤに桃世が旅立ってから、傷心(?)の木野塚氏は、テレビの中の美人ニュースキャスターとの不倫を夢見る日々。
それが、一本の電話で覆される。
オタク男からの奇妙な依頼から、いつの間にやら木野塚探偵事務所設立以来の大事件へと巻き込まれることに。
ケニヤ帰りの桃世とともに難事件に挑む、木野塚氏の活躍?
乾坤一擲、欣喜雀躍、元警視庁経理課の愛すべき老人探偵の大活躍を描いたシリーズ第2弾、だ。
著者あとがき=樋口有介/解説=香山二三郎
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2002年(平成14年)に刊行された『木野塚佐平の挑戦』を大幅に改稿、改題して2008年に刊行された作品……木野塚佐平シリーズの第2作です。
桃世はケニアに行ったきり……現職の総理大臣が急逝し、世間は大混乱だというのに、あこがれの美人ニュースキャスター香川優子の姿に煩悶する木野塚佐平氏、、、
ダブル不倫、ホモの失踪事件、おなじみ高村女史からの無理難題を解決しては、糊口をしのぐ毎日……そんなある日、電波系オタク男からの依頼、中年女からの盗聴の相談と、事務所に続々寄せられる妙な仕事。
さらには、あの香川優子をじかに訪ねる機会まで……抱腹絶倒、呵々大笑、ケニアから帰国した桃世とともに、木野塚氏は今日も行く! ユーモア・ハードボイルド長篇、シリーズ第2弾!
元警視庁経理課という異色の経歴を持つ探偵・木野塚佐平の活躍を描くシリーズ第2作……ユーモアあふれるハードボイルド作品でしたね、、、
『週刊金魚新聞』の高村女史の色香に惑わされて金魚にまつわる無理難題を押し付けられ右往左往しますが、その後一転……自称・犯罪分析研究家や中年の未亡人からの相談、ホームレスとなった元刑事から紹介された全日本ホームレス協会連合会の会長の死、恋焦がれる美人ニュースキャスター・香川優子からの依頼等を通じて、現職の村本啓太郎首相の暗殺疑惑に近付くことになり、さらには3億円事件まで絡んできて と身近な小さな事件が、世間を揺るがす大きな事件に繋がっていく……。
ハードボイルドに憧れつつも、なかなか格好がつかない愛すべき老人探偵・木野塚佐平と、クールで有能な秘書・梅谷桃世のコンビが活躍して事件を解決する展開が愉しめました……第1作の『木野塚探偵事務所だ』も機会があれば読んでみたいですね。 -
Posted by ブクログ
警視庁刑事課に配属された夕子は、いきなり迷宮入り間近の家族3人が惨殺された羽田事件を任される。しかし、まったく手がかりもなく聞き込みをしている最中、かつて警察学校で指導を受けた椎葉が、代々木公園のホームレスの炊き出しにいるところを発見。椎葉に近づこうとした矢先、羽田事件の重要な関係者である女子高生が殺される…。
樋口有介らしい、事件よりも日常感の充実したミステリ+αなドラマ仕立ての1本。夕子と元刑事で、事件と見ると虫のできない椎葉を中心に、解決に向けているんだか向けていないんだかという、人間の動きを見ることが中心の作品。
まあとにかく、思っていたよりも長い。そして全然解決に向かっているんだかいないんだかわからない状況を眺めるようなところが醍醐味。
実際に、事件の真相はと言うと、良く言えば予想外だが、はっきり行ってどう着地しても文句のいえない程度のワタワタ感で、なんとかしようとしている部分はあまり要求されていないのだろう。
逆にヤキモキする部分が多いともいえ、なんでその描写をいちいち取り上げるかなあと思ってしまうのは、ミステリとして読みすぎているのではないか。
読むべきところは多分そこではない。椎葉のホームレスとしての生活であるとか、夕子のセクハラに対する対応であるとか、美亜の鬱屈して入るが、あっけらかんとした生き方なのだろう。
難点としては、自然と切り替わっているとはいえ、夕子と椎葉の両方の視点でみてしまっているので、見えない部分がわからずボケているような感覚は有った。
どこまで純粋なミステリとして楽しむか、読む側のスタンスで印象が異なってくる1冊だ。 -
Posted by ブクログ
読んだのは、たぶん7月の中旬くらい。
樋口有介にしてはイマイチかなぁー(^^ゞ
たぶん、主人公たる二人(礼司&季里子)の魅力が、樋口有介の小説(のファン)としてはイマイチなんだと思う。
普通すぎる?、…んだよね。
ただ、この小説に出てくる二人が“普通すぎる”っていうのは、『夏の口紅』がミステリー小説(「事件」がテーマではなく)ではなく、文芸作品(二人が出逢った夏の話)であるということで、そうなった面があるような気がするかな?
それは、たぶん、必然として。
ミステリー小説というのは「事件」という、主人公たちが特異な状況に置かれる話であるのに対して、これはあくまで「日常」の話だ。
「日常」というのは普通だから、目立つ「特異」はない。
もちろん、「初恋」という人生の大イベントwの話ではあるのだが、でも、「事件」がテーマのミステリー小説でない以上、小説としては、あくまで「日常」の話なのだ。
事件という「非日常」は、普通である登場人物たちから「特異」な面を引き出すが、これは「日常」の話だから、登場人物たちも「日常」のままでいる。
この二人が“普通すぎる”のは、そういう理由なんだろう。
(もっとも、その“普通すぎる”は、あくまで樋口有介の小説としては“普通すぎる”だw)
そんな『夏の口紅』だが、個人的な好みを言うなら、いかにも樋口有介の小説に出てくるキャラって感じの画家の友部さんとその娘をエピソードとして、ストーリーに絡ませられなかったんだろうか?って感じかな。
だって、友部さんの娘さんなんて、友部さんの口から「わたしに似ているから美人よ」って紹介されるだけなんだもん(^^ゞ
友部さんが魅力的なだけに、なぁ〜んか、ちょっともったいない。
あと、香織も、もっとストーリーに絡んできてもよかったんじゃないかなぁー。
ぶっちゃけ、ヒロインである季里子がイモっぽい(爆)だけに、もうちょっとその魅力をエピソードとして描いてほしかった気がするかな?
あとは、和可子も、別のストーリーとして描かれてもよかったように思う。
もっとも、樋口有介の作風としては、そういうのはないんだろうけどさ(^^)/
シラケたのは解説。
“樋口作品たちの語り手はひどく恰好をつけているけれど、ただ気障なのではない。彼らは照れているのだ”って、そんなこと、説明されてわかっちゃったらさ。照れている当人たちの立場、ねぇーじゃん!(爆)
今はなんでもそんな風に、解説してわかりやすくしちゃうから、小説でも、映画でも、ドラマでもつまらなくなっちゃうんだよ。
この解説している人って、作家らしいだけど、そんなこともわからないのかな?┐(´д`)┌