樋口有介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
コミカルでハードボイルド調のライトなミステリ小説<柚木草平シリーズ>の第6弾。でも当初は4作目だったそうだ。その訳は解説に書かれているが、どうせ草平は永遠の38歳、前後しようと大勢に影響はない。春。桜の花びらとともに訪れた出版社の新人担当は、草平担当ということで肩に力の入りすぎたメガネ美女・小高直美。追う事件まで出版社に指定される始末。わずかな原稿料アップにつられ、重い体を引きずって調査に向かう。事件は、渋谷のラブホテルで起きた女子高生殺人事件。刑事時代のコネを使って、コツコツと調べていく。お馴染みの別居中の妻、娘の加奈子、警視庁の吉島冴子、法医学教室教授・田原今日子、人気エッセイスト・麻生
-
Posted by ブクログ
びっくり! 主人公が女子大生だ。本書は<柚木草平シリーズ>の1作。これまでに3作読んできたが、本書は趣がガラッと変わってかなり本格的。あらかじめ張っておいた伏線を、最後に落としてみせる展開の切れ味は、前3作を軽く凌ぐ。巻末の解説をみると、やはり「特別篇」と位置づけている。これまでの厳格なまでの1人称視点ではなく、3人称視点で語られている。その上、主人公がかわいい女子大生で、中学生時代の同級生が連続して死んだ謎を追う設定なのである。柚木はほとんど脇役に近い。それでも、決めるところは決めるのは、さすが。恰好いい。興味を惹かれたのは、今回は3人称視点なので柚木の姿が描写されているということ。「脂っ
-
Posted by ブクログ
中年オヤジが読むには勇気がいるタイトルである。でも、主人公の柚木草平は38歳の刑事事件専門のフリーライター兼探偵。ストーリーはハードボイルド・タッチに進行する。娘と訪れた草津のスキー場で、高校時代の初恋の女性・卯月実可子と出会う。しかし、1ヵ月後彼女は殺される。実可子は娘・梨早に「自分に何かあったら柚木さんに相談するように」と言い遺していた。この作品は柚木草平シリーズの第2弾。今回は柚木が高校の同級生に捜査のため接触する。柚木が背負っている重荷を振り返る。読者に過去の一部を覗かせる。ふだんは、減らず口や憎まれ口ばかりのシニカルな男であり、美女には歯の浮くような世辞を欠かさない軽い男を演じてい
-
Posted by ブクログ
好みど真ん中の作品だった。本書は1990年に出版された。なんと19年前。その頃、知らずに横を通り過ぎてしまっていたのは惜しかった。作者のあとがきを読むと、『ぼくと、ぼくらの夏』でデビュー後の、創作に苦しんでいた時期の作品らしい。息の長い作家を目指すにはシリーズものだ、ということで誕生したのがこの<柚木草平シリーズ>ということだ。本書を読むと、日米のハードボイルドやミステリ作品を研究した、作者の努力が窺える。探偵に美女たち。気障な台詞に洒落た言い回し。減らず口。ストイシズム。そこに樋口有介さん独自の人物造形、ユーモア、ひねり過ぎない事件、鋭すぎない推理などが加えられ、独特の軽やかさ、爽やかさを
-
Posted by ブクログ
刑事が単独行動はしないから、ホームレスに仕事を依頼ができるわけないとかいわないの。
前提が多少違っててもいいじゃん。
推理が組み違い前後賞的に外れてみたり、今までぜんぜん出てこなかった人がイキナリ犯人だったり、
多少無理はあるような気がしたけど、それをさっぴいても十分あたしは楽しめた。
考えるホームレス、と、名付けられた主人公はひねくれた言い回しながら、ときに鋭く、ときに醒めていて、なかなか面白いキャラ設定。
後半一気に加速するからね、途中で止めようってのはあきらめて。
開いたら最後まで行った方がいい、この加速度はなかなか、よいです。
最後がハッピーエンドじゃないという意見もあったけど -
Posted by ブクログ
ハチャメチャなナンセンス・ハードボイルド・ミステリ長編。経理一筋で警視庁を定年退職した木野塚佐平、60歳。海外ハードボイルド探偵を崇拝する氏は、裏新宿に探偵事務所を開設した。本書はその『木野塚探偵事務所だ』に続くシリーズ第2弾。前作でケニアに去った秘書兼助手の梅谷桃世が半年後に帰ってきた。またまた、木野塚・桃世コンビに出会え、嬉しくなった。さて、ストーリーはどうだろう。冒頭、現職の総理大臣の死亡から始まる。こんな大事件の依頼が来るのか? と訝しく思いながら読み始めた。きっと木野塚は相変わらずの妄想ばかりで、事件のあらかたは桃世が解決するパターンだろうと思いきや、実はちょっと手の込んだミステリ仕
-
Posted by ブクログ
小笠原 という 東京都でありながら 船で二十六時間も隔てられている いわば閉ざされた空間。
いつも通りののんびりとした亜熱帯の風景、代わり映えのしない日常、不自由さ。
その中に外から持ち込まれた厄介事。
言ってしまえばそんな話なのだが それだけではない。
閉ざされた世界には 閉ざされているが故に抱える 憂鬱さがあり 諦めがある。
島の風景描写が語る 長閑さと倦怠と退廃、そして たくましさは 魅力に富んでいる。
目新しくはない事件が この島ならではのスパイスで 一風変わった風味になっている。
樋口有介氏には 一作読むごとに 惹かれてきている。 -
Posted by ブクログ
本書(創元推理文庫版)は2006年発売であるものの、元となった単行本は1990年と、その時代ならではのゆる~いトレンディドラマ風な(ファジーと書いた方が分かりやすいか)雰囲気の中、著者の樋口有介さん当時の年齢である38歳という設定で描いた、元刑事でフリーライターの「柚木草平」が私立探偵として活躍するシリーズの第一弾です。
読んでいくと、どうやら草平はハードボイルド風に気取りたいのかなと感じたものの、それもオープニングが娘の加奈子(小4)に遊園地に付き合わされる場面だったことによって、却って人の良さが滲み出てくる感覚は、特徴的な主人公を確立させる手段として上手さを感じられた上に、彼は妻の知 -
Posted by ブクログ
樋口有介の長篇ミステリ作品『木野塚佐平の挑戦だ(英題:The Challenge of MR.Kinozuka)』を読みました。
樋口有介の作品を読むのは初めてですね。
-----story-------------
現職の総理大臣が急逝し、世間は大慌て。
しかし、ケニヤに桃世が旅立ってから、傷心(?)の木野塚氏は、テレビの中の美人ニュースキャスターとの不倫を夢見る日々。
それが、一本の電話で覆される。
オタク男からの奇妙な依頼から、いつの間にやら木野塚探偵事務所設立以来の大事件へと巻き込まれることに。
ケニヤ帰りの桃世とともに難事件に挑む、木野塚氏の活躍?
乾坤一擲、欣喜雀躍、元警視庁経