樋口有介のレビュー一覧

  • 月への梯子(はしご)

    Posted by ブクログ

     死んだ母親が遺してくれた小さなアパートの管理人として、幸せに暮らしている主人公・福田幸男、40歳。通称、ボクさん。知能は小学生くらいなのだが、事件をきっかけにある変化が……。切なく哀しい物語。裏表紙には「長篇ミステリー」の文字はあるけれど、ミステリーを読みたいと思って本書を読むとちょっとズレを感じると思う。多くを望まず、小さな幸せ感の中を平和に暮らしているだけなのに、どうしても悪意が入り込んでくる。日常にあるささやかな幸福や、人のあたたかさにホッとできるし、思いやり、優しさを嬉しくも感じた。でも、そんな生活も裏を見ると、思いも寄らない苦しみが潜んでいたり、小さな悪意から大きな犯罪まで企まれていたりする。それが哀しく、悔しくさえ感じた。本書は「ネタばらし」厳禁の作品で、最後の落とし処はとても大切なところだ。結末をそう書いた著者の気持ちをいろいろと想像してしまうところだ。読み始めたときは、他の作品が脳裏を横切った。たとえば、ダニエル・キイス著の『アルジャーノンに花束を』がまず思い浮かんだ。それと、ロバート・デニーロが演じた映画「レナードの朝」。でも、展開はまったく違うし、なによりその大切な落とし処が異なる。ただ、どの物語のラストも、余韻の切なさは同じくらいに深い。思わず溜息が出てしまう。自分だけ知らないのは怖い。でも、すべてを知ることが幸せとは限らない。人生の矛盾を、深く考えさせられた。

    0
    2011年09月30日
  • 八月の舟

    Posted by ブクログ

     樋口有介の著書は琴線に合う(だから「あんた、変わっている」)なかで、この作品は気持ちのよさ、という点では順位が落ちる(人が死んだり怪我したりが多い)が、主人公研一の母が遺した「遺書」の一節が妙に心に残った。「発作が起きてから気を失うまでの間、どれくらいの時間があったのか知りませんが、多くて一秒から二秒か、そんな処だろうと思います。そしてそれが本当に一秒か二秒であったとすれば、自分が、自分の人生に於いて一番知りたいと思っていた事の回答を出すのに、人間とはほんの一秒か二秒の時間しか必要としない生き物だということです。自分が生きてきた人生は最善であったのか、自分という人間がこれ以上生きる必要が有るのか。ねえ、研一、そんな事はまったく馬鹿馬鹿しくなるくらい簡単に分ってしまう事なのです。人生に於いて最大の問題が、なんと一秒か二秒です。随分簡単な話だとは思いませんか?」

    0
    2009年11月07日
  • 刺青白書 柚木草平シリーズ4

    Posted by ブクログ

     登場人物の超然としたセリフ回しと諦めにも似た世界観がたまらない樋口有介の「柚木草平シリーズ」4作目・・・かな?
     主人公は、過去の同級生が相次いで殺された事件に首を突っ込む文系メガネ女子大生。青春小説+柚木という感じで、柚木草平は事件解決のためにちょこちょこ出てくるだけなので、草平ファンには物足りないかも。若い人達に囲まれると柚木さんもおじさんですねぇ。でも、作者もあとがきで触れていますが、カッコ良すぎないか?柚木さん。

    0
    2010年05月14日
  • 夢の終わりとそのつづき 柚木草平シリーズ5

    Posted by ブクログ

     くたびれた探偵、柚木草平35歳最初の事件。もともとは『ろくでなし』という題名で書かれていた作品ですが、今回文庫化に伴い大幅改稿されたもの。作風も少し変わっており、柚木草平シリーズ0作目といったところでしょうか。会話の妙と女性ばっかり出てくるところはいつもと変わりませんが、若さを感じさせる行動が見えるところがおかしいです。
     しかし、全く、東京にはいい女が多すぎる。

    0
    2010年05月14日
  • 不良少女 柚木草平シリーズ7

    Posted by ブクログ

     現代の作家の中で、最も哀愁漂う作家と言えば、私は樋口有介を真っ先にあげます。もうこの文体の虜で、実際文体がストーリーを食ってしまっているような、そんな作家。今作では、あとがきにその文体のことについても触れているので、ファンとしては要チェックです。あと解説には今までの作品に出てきた女の人リストとその名言集まで!これは、マニアの仕事だ・・・。というわけで、作品以外のところで楽しめてしまう作品でした。小説は、まあ、いつもの樋口さんと柚木さんでした。

    0
    2010年05月14日
  • 誰もわたしを愛さない 柚木草平シリーズ6

    Posted by ブクログ

    柚木草平シリーズ第6弾。

    1,2,6と3作連発で読みましたが、これがいちばんミステリ色が強いです。
    新キャラも良い感じだし、これはかなり好きな作品かも〜。
    やっぱり3〜5作目も買わなくちゃだめだな^^;

    0
    2009年10月04日
  • 初恋よ、さよならのキスをしよう 柚木草平シリーズ2

    Posted by ブクログ

    柚木草平シリーズ第2弾。

    やっぱりこのシリーズ好きだなー^^。
    今作は謎解き部分が結構大きいため、絶妙な会話のやりとりは少ないけど
    それでもやっぱり楽しい^^。

    このシリーズ全部欲しいのだけど、何故かこの次に持ってるのは第6弾・・・
    3,4,5弾も全部文庫で出てるから買わないとー。

    0
    2009年10月04日
  • 雨の匂い

    Posted by ブクログ

    ストーリーは全然おもしろくないけど私は好きだ。偏屈な主人公が大好きだ。ただその歳で何の躊躇いもなく人の死を傍観するのは…どうなのかな…人にはお薦めしないけど自分は読みたくなっちゃう、そんな樋口有介。(09.08.07)

    0
    2009年10月04日
  • 誰もわたしを愛さない 柚木草平シリーズ6

    Posted by ブクログ

    コミカルでハードボイルド調のライトなミステリ小説<柚木草平シリーズ>の第6弾。でも当初は4作目だったそうだ。その訳は解説に書かれているが、どうせ草平は永遠の38歳、前後しようと大勢に影響はない。春。桜の花びらとともに訪れた出版社の新人担当は、草平担当ということで肩に力の入りすぎたメガネ美女・小高直美。追う事件まで出版社に指定される始末。わずかな原稿料アップにつられ、重い体を引きずって調査に向かう。事件は、渋谷のラブホテルで起きた女子高生殺人事件。刑事時代のコネを使って、コツコツと調べていく。お馴染みの別居中の妻、娘の加奈子、警視庁の吉島冴子、法医学教室教授・田原今日子、人気エッセイスト・麻生美保子、女子高生らに翻弄されながらも、着々と真相に近づいていく草平の姿を丁寧に描いている。コミカルでユーモアたっぷりで楽しい。しかし、今回の事件は簡単にかたがつきそうで結構置くが深かった。焦り、それでも最終決戦を迎えた草平は、見ものだった。事件の真相がわかると、草平がペシミストになってしまうのも仕方ないと思えてきた。和製フィリップ・マーロウ「柚木草平」って言ったら言い過ぎかなぁ〜

    0
    2011年09月30日
  • 刺青白書 柚木草平シリーズ4

    Posted by ブクログ

     びっくり! 主人公が女子大生だ。本書は<柚木草平シリーズ>の1作。これまでに3作読んできたが、本書は趣がガラッと変わってかなり本格的。あらかじめ張っておいた伏線を、最後に落としてみせる展開の切れ味は、前3作を軽く凌ぐ。巻末の解説をみると、やはり「特別篇」と位置づけている。これまでの厳格なまでの1人称視点ではなく、3人称視点で語られている。その上、主人公がかわいい女子大生で、中学生時代の同級生が連続して死んだ謎を追う設定なのである。柚木はほとんど脇役に近い。それでも、決めるところは決めるのは、さすが。恰好いい。興味を惹かれたのは、今回は3人称視点なので柚木の姿が描写されているということ。「脂っけのない長髪を無造作にかきあげ、黒いTシャツに綿ジャケット。歳は40前らしいがヤクザっぽい雰囲気のなかにへんな色気が感じられて・・・・・・」とある。客観的に描かれた柚木には、イメージしていたのとは違い、かなり危ない雰囲気が漂っていた。視点をかえるだけで随分と印象が変わるものだと、あらためて驚かされた。そうだ、はじめに「びっくり!」と書いたのは、もちろんいい意味で。際どい社会問題も取り込み、そこにピントはずれなかわいい女子大生の恋の行方も絡め、かなり重めな安定感のある作品に仕上がっている。真相は人間心理をついた深刻なもので、考えさせられる。それでも、ほのぼのとしたラストシーンにほっとさせられ、希望を感じさせてもらえたのは救いだった。

    0
    2011年09月30日
  • 初恋よ、さよならのキスをしよう 柚木草平シリーズ2

    Posted by ブクログ

     中年オヤジが読むには勇気がいるタイトルである。でも、主人公の柚木草平は38歳の刑事事件専門のフリーライター兼探偵。ストーリーはハードボイルド・タッチに進行する。娘と訪れた草津のスキー場で、高校時代の初恋の女性・卯月実可子と出会う。しかし、1ヵ月後彼女は殺される。実可子は娘・梨早に「自分に何かあったら柚木さんに相談するように」と言い遺していた。この作品は柚木草平シリーズの第2弾。今回は柚木が高校の同級生に捜査のため接触する。柚木が背負っている重荷を振り返る。読者に過去の一部を覗かせる。ふだんは、減らず口や憎まれ口ばかりのシニカルな男であり、美女には歯の浮くような世辞を欠かさない軽い男を演じている。柚木の現在と過去。辛い過去を隠し、道化を演じるように生きる強さが好きだ。そうできる男は理想だ。物語は淡々と語られる。派手なアクションも展開もあるわけではない。しかし、そこがいい。人間の多面性について、考えさせられる作品だった。もうひとつ、この作品は著者・樋口有介さんの真面目さも実感させた。あとがきを読んだら、このシリーズはすべて主人公・柚木草平の1人称視点で描かれているという。風景、状況、登場人物の姿かたちから表情や仕種まで、柚木草平が見た通りの構成ということだ。ぶれることない構成が、安心感をもたらしてくれていたことに気付いた。表紙の絵は、物語の6人のイメージ。柚木はどの子だろう?

    0
    2011年09月30日
  • 彼女はたぶん魔法を使う 柚木草平シリーズ1

    Posted by ブクログ

     好みど真ん中の作品だった。本書は1990年に出版された。なんと19年前。その頃、知らずに横を通り過ぎてしまっていたのは惜しかった。作者のあとがきを読むと、『ぼくと、ぼくらの夏』でデビュー後の、創作に苦しんでいた時期の作品らしい。息の長い作家を目指すにはシリーズものだ、ということで誕生したのがこの<柚木草平シリーズ>ということだ。本書を読むと、日米のハードボイルドやミステリ作品を研究した、作者の努力が窺える。探偵に美女たち。気障な台詞に洒落た言い回し。減らず口。ストイシズム。そこに樋口有介さん独自の人物造形、ユーモア、ひねり過ぎない事件、鋭すぎない推理などが加えられ、独特の軽やかさ、爽やかさを生んでいる。それにしても柚木草平はもてすぎる。文章からすると、ハンサムだからではないようだ。会話が面白いから?南の島への夏休み旅行を誘った美人女子大生とは、今後どうなるのだろう。その女子大生と、草平が不倫関係にある人妻とのかち合わせはどうなったんだろう?  続編が楽しみだ。

    0
    2011年09月30日
  • 枯葉色グッドバイ【新カバー版】

    Posted by ブクログ

    刑事が単独行動はしないから、ホームレスに仕事を依頼ができるわけないとかいわないの。
    前提が多少違っててもいいじゃん。

    推理が組み違い前後賞的に外れてみたり、今までぜんぜん出てこなかった人がイキナリ犯人だったり、
    多少無理はあるような気がしたけど、それをさっぴいても十分あたしは楽しめた。

    考えるホームレス、と、名付けられた主人公はひねくれた言い回しながら、ときに鋭く、ときに醒めていて、なかなか面白いキャラ設定。

    後半一気に加速するからね、途中で止めようってのはあきらめて。
    開いたら最後まで行った方がいい、この加速度はなかなか、よいです。

    最後がハッピーエンドじゃないという意見もあったけど、そうかなぁ。
    すごく現実的でやさしい、あたしは素敵なエンディングだと思ったけど。



    最後まで読んでタイトルを見返すと、ちょっとしんみり?
    バイバイしちゃうの?
    いやいや沖縄に、ブルーのまぶしい色にて展開希望。

    0
    2009年10月04日
  • 木野塚佐平の挑戦だ 木野塚佐平シリーズ2

    Posted by ブクログ

    ハチャメチャなナンセンス・ハードボイルド・ミステリ長編。経理一筋で警視庁を定年退職した木野塚佐平、60歳。海外ハードボイルド探偵を崇拝する氏は、裏新宿に探偵事務所を開設した。本書はその『木野塚探偵事務所だ』に続くシリーズ第2弾。前作でケニアに去った秘書兼助手の梅谷桃世が半年後に帰ってきた。またまた、木野塚・桃世コンビに出会え、嬉しくなった。さて、ストーリーはどうだろう。冒頭、現職の総理大臣の死亡から始まる。こんな大事件の依頼が来るのか? と訝しく思いながら読み始めた。きっと木野塚は相変わらずの妄想ばかりで、事件のあらかたは桃世が解決するパターンだろうと思いきや、実はちょっと手の込んだミステリ仕立てで凝ったエンディングが待っていた。嬉しい勘違いだった。そう、ラストには驚きの真相が明かされる。ただし注意あり! この作品、一歩間違えれば「おバカミステリ」と言われかねない。否、ナンセンス小説が嫌いな方だとそう捉えるかもしれない。面白いんだけど……第3弾もあるらしい。楽しみに待とう。

    0
    2011年09月30日
  • 枯葉色グッドバイ【新カバー版】

    Posted by ブクログ

    「誰もがなりたくないと思い、それでも誰もがなれてしまう。そこがホームレスの面倒なところだな。」


    元刑事のホームレスが現職刑事に日当で雇われ、一家惨殺事件の推理に乗り出す。

    そんなありえそうも無いお話ながら、人物描写が優れている為、いつの間にか作品世界に没頭。


    表紙の写真に惹かれて良かった!!

    0
    2009年10月04日
  • 雨の匂い

    Posted by ブクログ

    2007/11/09地味だけど、好きな作家。コンスタントに出版されるので安心して読める。に、してもこの作品は数ある樋口作品の中でも群を抜いて地味な気がするんですが…
    足を骨折して以来寝たきりの祖父と末期癌の父の介護に追われる主人公が引き連れる死の連鎖。淡々と進む物語に一切の救いが無い。それでも、読むのを止められない。地味なのにはっとさせられる比喩や美しい日本語が散りばめられたこの人の文章が好きだ。

    0
    2009年10月04日
  • 誰もわたしを愛さない 柚木草平シリーズ6

    Posted by ブクログ

    柚木草平シリーズ6弾
    樋口有介って、なんとなく買ってしまう
    買い集めるわけではなく。
    2007.09

    0
    2009年10月04日
  • 刺青白書 柚木草平シリーズ4

    Posted by ブクログ

    女子大生・三浦鈴女は、中学時代の同級生が相ついで殺害されたことに衝撃を受ける。彼女たちは二人とも、右肩に刺青痕があった。刺青同様に二人が消したかった過去とは何か。第一の、アイドル殺害事件のレポートを依頼された柚木草平は、鈴女たちの中学時代に事件の発端があるとみて関連性を調べ始めた―。鈴女の青春と、柚木のシニカルな優しさを描いた傑作、初文庫化で登場。

    0
    2010年05月24日
  • 枯葉色グッドバイ【新カバー版】

    Posted by ブクログ

    なかなか核心に迫らない会話も退屈しないで楽しめた
    家も家族も仕事も持たず考えることを拒む椎葉が不幸だとは思ってないけど、それでも社会へ戻って元の生活をと願ってしまうのは、椎葉が生きることを選んでいるからなのかな…

    0
    2009年10月07日
  • 探偵は今夜も憂鬱 柚木草平シリーズ3

    Posted by ブクログ

    元刑事でフリーライターの主人公。
    今回は「○○の憂鬱」と3つの短編集。エステクラブの美人オーナーから義妹の事で依頼を受けるが、翌日美人オーナーは自宅で殺害されてしまう(第1話)芸能プロダクションの社長からの依頼は、失踪した有名女優の捜索(第2話)雑貨店の美人オーナーから死んだずの夫から届いた手紙について調査の依頼がくる(第3話)・・・シリーズ第3弾

    どの短編も意外な展開で、ストーリー展開も早いのでとても読みやすい本だと思います。

    0
    2009年10月04日