樋口有介のレビュー一覧
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冒頭───
掴みかかろうとする男の脛に爪先蹴りを入れる。プロの格闘家でも骨は鍛えられないし、まして相手は二十歳ぐらいの素人。グエッとかなんとか喚いて床に崩れる。その向こうから鍋を持った男が襲いかかり、身を避して相手のこめかみに右肘打ちを当てる。男はカウンターに倒れ込み、箸や調味料入れが床に散らばる。もう一人、カウンターから飛び出した男はさすがに躊躇して店主と私の顔を見くらべる。店主が「やってしまえ」というように顎をしゃくり、男が反応して、私につめ寄る。
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さてさて、次なるレビューは、高校時代からのファンでもある樋口有介さんの新刊「笑う少年」と。
法律事務所に勤務し、裏稼 -
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樋口作品、ノンシリーズ。
犯罪者の島流しと、生活保護者の強制集中居住という極端な方法で治安も経済も安定した近未来日本が舞台。
福祉施設の中にいる青年と、外から来た爺さんを中心にストーリーは展開していく。
筆者にしては大胆な舞台設定だが、中身はいつものごとく、シニカルでハードボイルドな社会派風味のミステリ。
元々雰囲気、作風は大いに好みであるが、今回はミステリ小説としてよく出来ていた。
ユーモアを織り交ぜた人物間の探りあい・小競り合い、人間臭いホワイダニットを軸とした謎解き、大いなる諦観と僅かな救済を織り交ぜた着地…あたりは樋口有介真骨頂であるが、これがよく活きていたと思う。
2014年上位作。 -
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生活困窮者の収容施設『希望の家』で老女が深夜に階段から落ちて死亡した件で、委託を受けた元刑事の『幸祐』が調査に向かう。
事故としてかたをつけようとした矢先、今度は施設の職員が刺殺体で発見され、さらには燃やされた人骨がででくる。
国家事業である『希望の家』の闇が顔をのぞかせる・・・。
一件の死亡事故をきっかけとして紆余曲折しながら数々の事件が暴かれていく様は、読み手だけに明かされる真実、事件の落とし所、各登場人物の思惑などが絡み合い読み応えがあった。
一番の驚きどころは、この造られた日本の社会制度。刑務所を閉鎖し犯罪者は島流し。生活保護を廃止し自活できないものは施設に収容する。それらの政策に -
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樋口氏らしい、いわゆる「青春ミステリ」の作品。
が、これがデビュー二作目だそうなので、
「らしい」も何も、ここから始まってるのか。
主人公の(樋口氏らしくひねくれた)大学生の男が、
里帰りするところからストーリーは始まる。
駅で偶然にも「元カノの妹」と出会うことで、
この帰省が大きく変わって行くこととなる。
件の元カノは、つい最近事故で死んだと知る男。
紆余曲折の末に、実は事故でも自殺でもなく
誰かに殺されたのでは、という疑いで調査を始める。
樋口氏の特徴として、「肝心なシーンを書かない」
ということが挙げられるのではないかと思う。
いざ「誰かと対決する」ことになったとすると、
相手の -
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一応はミステリにカテゴライズしたが、
この作品は色んな意味で特殊だ(^ ^;
まず主人公が軽度の知的障害者だというのが珍しい。
さらに、殺人事件は起きるが、その謎解きやら
犯人探しやらは途中であっけなく終わる。
つまり、それがメインテーマではない。
...という訳で、ミステリと言っていいのかどうか...(^ ^;
ストーリーについてちょっとでも紹介すると、
即ネタバレとなる恐れがある作品で...(^ ^;
とても詳しくは書けませんが(^ ^;
何とも言えない不思議な魅力を持った作品です。
つまらない日常会話こそが幸せとイコールである、
という主張には、強くうなずける。
特に主人公やその -
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ネタバレ例によって(^ ^;
韜晦した高校生男子が主人公(^ ^;
この作品は、一つ前に読んだ「雨の匂い」とは違い、
読み始めて「すぐ事件が起きる」(^ ^;
しかも、元カノから『渋谷にいるから出てこい』
と誘われて、面倒くさいのでそれを断ったら、
翌日その元カノが自殺したと知らされる、
というショッキングなスタート。
顔を出した通夜で、知らない女子から投げかけられる
思いがけない呪詛の言葉。
当人は全く身に覚えがない。
...という、なかなかに引き込まれるオープニング(^ ^
結局主人公は、この「謎の少女」と組んで
元カノの死の真相を探り始める。
その結果浮かび上がってくる、意外な「裏の顔」 -
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ネタバレ探偵役が「ホームレス」というミステリも
なかなか珍しいのでは(^ ^;
ま、ホームレスと言っても、主人公(?)の椎葉は
「元優秀な刑事」なわけですが。
で、このホームレス椎葉氏が、ひょんな偶然で
後輩の女刑事に「発見され」て、
日給二千円で助手として雇われるというお話(^ ^
確か警察官は基本的に二人一組で行動するはずが、
件の女刑事は常に一人で独断専行してたり、
長いことホームレスで「準寝たきり」の椎葉氏が
暴漢に襲われると鋭い柔道技で撃退したりと、
内容的にはかなりファンタジー入ってると思います(^ ^;
でも、刑事部屋の描写とか、細かいところが
変に(失礼!!)リアリティに満ちあふ -
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樋口作品はミステリばかり読んでいたので、
こういう酸っぱいテーマの作品は新鮮(^ ^
登場人物が、みな世を拗ねていたり、
何かから絶賛逃避中だったり、
はたまた問題を抱えていたりと、で
「普通の人」が出て来ない気が(^ ^;
でも、誰もが皆「リアルな生」を生きていて、
もしや世の中に普通の人などいないのでは、
と思ってしまう危険な作(^ ^;
恥ずかし気もなく断言してしまうと、
主人公二人の「純愛」がテーマの作品。
二人をはじめ、周りの人間みながひねくれてるので、
とてもじゃないが話は一筋縄で進まない。
でも、本当に男女が惹かれ合うということ、
好きになるということ、もっと単純に
相手 -
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何となくタイトルに惹かれて衝動買い。
不勉強でこの作者のことは知らなんだが、
いやこれは素晴らしく面白い(^o^
主人公は、元警察官のフリーライター...
の振りをして探偵で食いつないでいる男。
やたら女に惚れっぽいと言う弱点(?)があり、
また行く先々で美女にもてる(^ ^
当人はフィリップ・マーロウを気取っているのか、
小洒落た台詞回しが「大人の楽しみ」って感じで、
しかも根底のところで当人が「バカバカしさ」を
きっちり理解しているのが好感持てる(^ ^
事件の「依頼人」の謎めいた美女や、
二転三転していく謎解きの展開など、
主人公のキャラ以外もきっちり描き込まれていて、
「隙がない -
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かつて辣腕の刑事として
順風満帆の人生を送っていた椎葉。
ある不幸な事件をキッカケに
警察を辞めホームレスに身を落とす。
半年前の惨殺事件捜査が息詰まっていた頃、
新人刑事の夕子はかつて尊敬していた刑事の姿を
ホームレスの中に見つける。
新たな視点からの捜査を行うために、
夕子は椎葉に日当2000円で救いの手を求める。
セリフ回しやキャラクターの描写が
コミカルに描かれていて面白かったです。
小説的と言うより戯曲的なイメージ。
リアリティが有り過ぎず、無さ過ぎず。
全体的なバランスが良く、
とにかく読みやすかった。
小説は読みやすいのが、いちばん。