感情タグBEST3
Posted by ブクログ
大学生の木村洋介は夏休みに父の住む小笠原の父島に帰ってくる。
そこには中学、高校をともに過ごした仲間と、その仲間のひとり、丸山翔子がいる。洋介から一年遅れて、この島に来た彼女は、誰もが一目おく美人だった。その彼女が病に侵されて、死に掛けている。
元村長の娘で、同級生の一宮和希が崖から落ちて死ぬという事件がおこり、その犯人とみられ、彼女を追って島に来たストーカーと見られている男が彼女の墓場で殺される。そして、そのあとに翔子も命を尽きる。
翔子は、和希の事件をベッドのなかから、丸山一族の財力と権力を使って追っていた。
地元民である島の同級生、漁師の浩司、旅館の娘、旬子との友情、東京で精神をきたし、丸山を救う「グリーンペペ」という新薬を作るという藤井、この島に住みついている画家である父親、そのモデルの雪子、飲み屋「トムズハウス」のマスター、バイトの可保里、和希の妹の夏希、など、それぞれが絡み合い、洋介の夏休みが過ぎていく。
実は洋介が島に戻ってきたのは、洋介の恋人が自殺未遂をしていることが、翔子の調査で明らかにされている。
和希は妊娠していたので、この胎児の死も合わせると、洋介は短時間に多くの死と向き合っている。
それでなのか、とにかく20歳にしてはとても老獪で不思議な感じがする。
が、その不思議な洋介と父島の風土と仲間の話は、もっと読みたいと思った。リズム感がいい。
Posted by ブクログ
小笠原 という 東京都でありながら 船で二十六時間も隔てられている いわば閉ざされた空間。
いつも通りののんびりとした亜熱帯の風景、代わり映えのしない日常、不自由さ。
その中に外から持ち込まれた厄介事。
言ってしまえばそんな話なのだが それだけではない。
閉ざされた世界には 閉ざされているが故に抱える 憂鬱さがあり 諦めがある。
島の風景描写が語る 長閑さと倦怠と退廃、そして たくましさは 魅力に富んでいる。
目新しくはない事件が この島ならではのスパイスで 一風変わった風味になっている。
樋口有介氏には 一作読むごとに 惹かれてきている。