朝井まかてのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ2021/7/3
史実に基づいた話はあんまり好きじゃないのに、まかてさんだからつい手を出した。
切なくて悔しくてつらい。やるせない。
富士山まで噴火しなくてもええやん。意地悪やなぁ。
犬公方とか言ってごめんやで。
本人だけが賢くてもアカンねやな。
教育か。教育なのか。肝は。
でも無理じゃない?全員は無理じゃない?
しんどいです。
嘘でも真実味がなくてもいいからスカッとしたのが読みたいです。
異世界に逃避します。
綱吉様も異世界に生まれ変わって無双すればいい。
そんなことを思うくらいの落ち込み。
どう頑張っても尽くしてもうまくいかないのは現実味がありすぎてしんどいよ。 -
Posted by ブクログ
時代・歴史小説の名手朝井まかてさんが挑むのは、物語の根源に迫る物語。ほのぼのした話かと思いきや、話の構造が露わになってくるとともに、物語の壮大さに驚かされました。
始まりは日本昔話と童話を掛け合わせたような、なんとも可愛らしい出だし。永い時間を生きたらしい草の元にやってくる子狐。その子狐は草のことを「草どん」と呼び、何か話を聞かせてくれるようせがむ。記憶もない様子の「草どん」だったが、なぜか徐々に物語が内側から湧き出てきて……
草どんが語る物語はどこか懐かしい。おむすびころりんや浦島太郎といった日本の昔話を思い起こさせるものがあるのもその理由かと思いますが、お経を読む猫、タニシを産んだ老夫婦など、奇想天外な話も、とぼけ具合や、優しさ、善人や正直者が報われる結末など、そうしたものもまた日本の昔話らしさがあるからかもしれない。
そして草どんの元には、子狐以外にも山姥や、小太郎という子どもが現れ、そして草どんの語る物語は変質し、草どんの世界に交差していく。
草どんたちはいったい何者なのか。そして草どんが語る物語たちは、どこからやってきたのか。そして明らかになるのは、今ここにある物語の危機。民話と伝説が一体となったような不思議なこの『雲上雲下』という小説は、最後の最後に読者のいる現実世界にまで舞い降りて、この世界の危機を明らかにしてしまう。読んでいる時は、超展開にポカーン、としてしまったのだけど、読み終えて時間が経つごとに、この物語の真意なるものが、じわじわと心に迫ってくる気がします。
世の中にあまたある情報は便利で効率がいい反面、空想も想像力も、物語にワクワクする心も、物語の登場人物たちに心を寄せる感動すら奪いつつあるのかもしれない。そうした余裕のない心で、どこまで他人を思いやることが、世界を思いやることができるのか。
物語が脈々と受け継がれた意味、それは人が人の心を伝えるためのものなのかもしれない、人は、そして自分はなぜ物語が好きなのか、それを改めて考えさせられる、作品でもありました。
第13回中央公論文芸賞 -
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向こう見ずな性格の一膳飯屋の娘・お以乃。自分のことより他人のことを思いやる癖があるものの時にはそれが度を越してしまう御家人の妻・お志花。着飾ることが好きで商才に恵まれ、しかし男のこととなるとだらしのない小間物屋の女主人・お蝶。
幼なじみの3人は若い自分は町内では猪鹿蝶トリオとしてちょっとは名の知れたものだったが、三十路を前にしてそれぞれが事情を抱え思い悩んでいた。
そんな中久方ぶりに顔を合わせた3人が思いついたのはお伊勢詣り、着の身着のままでも柄杓さえ持っていれば伊勢まで行けるという、通称抜け詣りだった。
仕事、恋愛、家庭、きっとどんな時代であっても悩みの種はそうは変わらないもので、江戸時代を描いているけれど現代と変わらない内情に苦笑しながら読み進めた。
女3人江戸から伊勢への道中はもちろん一筋縄でいくわけもなく、巻き起こされる騒動のひとつひとつがとても面白くて、旅がしたくなった。 -
購入済み
植物のお話しじゃなかった
著者の本は植物への造詣が深くて、それを楽しみに読んでいます。
この小説のタイトルは内容にも関係する落葉樹とのつながりを予感させるけれど、お話しの中心はもっとメディアとしての記者の立場に寄せていて、植物のお話しとはちょっと遠かったのが残念といえば残念だったかな。だけど最後まで一気に読める小説であることは間違いないです。 -
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私が読んでるものの中では、ちょっと展開が渋かった。
江戸時代中期?太平の世の、がちがちの武家社会の中。
主人公は、頭でっかちで自分が優秀と自信満々、周りのやる気のなさに憤慨している、若い江戸詰尾張藩士。
借金に苦しむ藩のために、自分がなんとかするんだ、と意気込んでいるのに、ひょんなことから左遷されて、生まれて初めて江戸を離れ、頼れる育ての母からも子離れされ、尾張の山中で松茸のために四苦八苦することになる、という話。
世間知らずとはいえ、特に悪いことしてないのに、どんどん苦境に追いやられる主人公が不憫だけど、めげずに、なんとか松茸の生産量を増やしてやろうと、がんばるところがいいかな。でも、がんばってもそう簡単に大成功!とはならないし、最終的に与えられるご褒美(?)も、静かで、渋い、密かに噛みしめるような喜び。現実ってこんなもんだよね、人生って、こういう、たくさんがんばった後に、ちょっとだけご褒美もらって、またがんばるの繰り返しだよね、って言われてるような話。
私は、どちらかというと、小説にもう少しドラマチックな展開を求めてるので、読んだ後、ちょっと疲れました。 -
購入済み
老いと向き合う時代小説
必死で生と向き合う江戸の人々や介抱という仕事をとおして、色々な生き様と出会う主人公。
絶対に避けられない老いと死がテーマになっているけど、軽やかなタッチと個性的で前向きな登場人物たちで織りなされている物語は読むペースが落ちない。
読んだ後、哀切とともに胸がほっこりする作品。
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今まで読んだことがない種類の歴史小説だった。明治が終わり、大正の時代に生きる若者が明治という時代を考える作品。
一番の感想は作者はこの時代に生きてきたのではないかと感じさせるほどのリアル感があったこと。銀座や新橋あたりは近代化の中心で華やかに、そして人々は洋装に身を包み、麦酒を飲み、政治を語る。一方で本作の中心にある明治神宮(神宮林)のある原宿、代々木は未だ荒野であるし、木場など下町が残るところは未だに和装の庶民が住んでいる。このコントラストが急進する近代日本を色濃く映し出し、作品自体に色合いを与えていると思う。
そして、本題は明治神宮に祀る明治天皇とはどんな人物だったのか、ということ。瀬尾が言う通り、明治天皇は御一新以前の日本の伝統・心を引き継ぎながらも外面は西欧列強と比肩する近代国家としての立ち振る舞いをせざるを得ない、そんな苦悩の人生だったのだと思う。これまであまり語られず、考えたことのない明治天皇という存在への言及がとても新しく感じられた。
明治神宮は150年をかけて完成させていく一大事業、挑戦であるという。この令和という時代に想いを馳せるにはぴったしの小説であると思う。東京に住みながら明治神宮に参詣したことがない私はまずは一歩踏み入れたいと思う。 -
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ネタバレ大奥という特殊な“家兼職場”でそれぞれの仕事に打ち込み、己の役割への誇りを強く胸に秘めて生きてきた五人の女たち。出身の違いやプライドのぶつかり合いもあるけれど、同じ「残り者」としての立場と各々の矜恃は身分の壁を越え、徐々に五人の心を近づけ結びつけてゆく。
「人が集まれば、気の合う者も合わぬ者もいる。だが、互いの腕は認めていた。だからこそ甲斐があったのだ」の言葉に、年下から年上まで様々な年代の女性がひしめく職場でかつて働いていた頃が無性に懐かしくなり、互いを認め合う出会いの快感に胸が熱くなった。
読後感が良いので感想は甘口。
でも、読み進むのにかなり時間がかかってしまったことも事実。面白い!とグイグイ読ませる勢いはあまりなく、かと言って、つまらないわけでもなく…。何となく先にページが進まなくなって、「ぬけまいる」は途中で積ん読に戻してしまった過去もあり…。ゆっくりゆっくり味わいながら読むのが、自分とまかてさん本とのつきあい方だと思うことにしよう。