朝井まかてのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレちゃんちゃら
著者:朝井まかて
発行:2012年12月14日
講談社文庫
単行本:2010年9月(講談社、書き下ろし)
一昨日読んだ「花競べ」に続く、朝井まかてのデビュー2作目長編。江戸期・文化時代の植木屋「植辰」の話。デビュー作は苗物屋、今回は植木屋であり、庭師。それにしても著者は植物に明るい。序章でシチュエーションの紹介、1章~5章で各プロットを展開しながら、全体で大きな話を描く。終章もあり。
序章
最もよいお得意である施主は、小川町の元与力でご隠居、是沢与右衛門。ちゃらは元浮浪児で、辰蔵が子供のように引き取って弟子にしている。娘の百合とはきょうだいのような仲だが、後にお百合はちゃらを好いていることがわかってくる。母親は早くになくしていて、お百合が身の回りの世話をしている。
辰蔵は以前に京都で修行をしていたが、その時に一緒だった福助が、今は居候のようにして庭師をしている。また、玄林は石の職人で、自分の小屋があるが、やはりよく辰蔵のところに泊まっている。5人で1チーム。
第1章
日本橋石町新道の薬種大店「瑞賢堂」主人、角兵衛から、作庭の依頼。北にあった蔵を取り壊して庭を広げる。誰かのアドバイスに従ってそうしている。そうすると娘の目の病が治ると信じている。どうやら、京都から出て来ている嵯峨流家元の影響らしい。角兵衛は嵯峨流の門人になりたかったが、高額な入門料がかかるためなっていない(結局はなる)。角兵衛は値切りをよくする。今回も予算千両と言われているが、半値に値切られる可能性があるのでそのつもりでと番頭に言われている。
角兵衛は、「三かく」の旦那と言われている。恥掻く、義理欠く、礼を欠く。
庭は目の不自由な娘のお留都にあわせて造ったが、角兵衛からダメだし。嵯峨流の考えに合わないため。しかし、お留都は目が見えるようになったといい、この庭のお陰だと主張。実は、それは福助のアドバイスに従った演技で、本当は治っていなかったけれど。
値切るなと娘に言われ、しぶしぶ千両払うつもりだった角兵衛だが、辰蔵が固辞して500両に。悔しがるお百合。
第2章
お千が女将を務める琉亭から作庭の依頼。とてもうるさく口を出す施主。これまで、何人もの庭師を切ってきた。道理に合わないことをいう。こちらも、嵯峨流の思想にあわせているようだった。しかし、辰蔵はなんとかうまく造り、引き渡し寸前までいった。その時、ちゃらが、現れた嵯峨流正法家元の白楊にとてもいい庭だが最上ではないと言われた。どういうことだと糺すうち、メインの木を龍にせよと言われる。それはおかしいと思ったが、魔力にかかったように木に上り、意識が遠のいて落ちると思ったが、知らない間に龍にしていた。
庭がぶち壊しになった。しかし、お千は気に入る。辰蔵とちゃらは納得できないので、もう引かせてもらうと言って手を引く。ちゃらは、白楊からうちへ来い、才能があると誘われるが、きっぱり断る。
この庭は、やがて白楊に乗っ取られ、嵯峨流の聖堂と化してしまう。
世間では、流行り病で倒れる人が続出していた。ちゃらは、以前に弟弟子だった五郎太、その友人で身上がり侍の佐伯伊織とともに、月光寺に彼らを運んでボランティア活動をし始めた。なお、身上がり侍とは金銭で侍の身分を手に入れたもの。伊織の父親は質商だった。また、偶然にも伊織は小川町ご隠居の与右衛門の義理の甥にあたる。
第3章
相変わらず3人は月光寺でボランティア。お百合も加わる。ちゃらは、白揚から執拗に誘いを受け続ける。最終的に断りを言うと、お前達はもう終わりだというような宣言を下される。
新しい施主は、藪下坂の隠居、長吉だった。女房はお咲で、2人は大和郡山出身、相当な貧乏や苦労をしてきた。そんな2人の庭づくりに、ちゃらは雑木を植えた。段々育て、増やしていくという庭造りの鉄則に反していたが、年を取ってもう時間がないという2人の心に一番いいのが、貧しい頃に炭にした雑木だと判断した。
長吉郎:長男、深川の材木屋「大和屋」を営む長吉郎が訪ねて来た。日本橋の紅問屋に嫁入りしたその妹も。今や裕福な彼らに、雑木の庭は理解できなかった。
第4章
名だたる大名や大店の番頭などが、行方不明になる事件が相次いでいた。
一方、植辰が造ってきた庭の木が、あちこちで異常を来し始めた。常緑樹でも枯れ始めた。見に行くと、誰かによる木殺し(切り込みを入れる)だった。白楊の仕業かもしれない。木を植え替える作業に追われたが、かんかんに怒ってもういらない、金銭を払えと要求してくるところも。それは契約違反だったが、3軒については従うことにした。百両もの大金を工面しなくてはならない。
月光寺では、病が癒えた人々が出ていこうとせず、博打のまねごとをする者もいた。苛立つちゃら。「治ったんなら働け!」。行き倒れたのは、貧しく、身分の卑しい者ばかり。出て行くにも宛がないし、世捨て人のようなもの。辰蔵は月光寺の作庭を尼僧の妙青尼に申し出た。彼らに手伝わせると。
40人ほどは、最初は嫌々で言うことを聞かず、福助などを中傷したりしたが、やっていると段々と熱が入ってくる。そんな時、20人ほどが訪ねてきた。大店主人など、みんな立派な庭を持っている人々だった。美濃屋の主人が代表だった。どうやら、月光寺の庭にいちゃもんをつけにきたようだ。雑木ばかりの庭など深川の恥だ、という。そして、後ろにいた長吉郎に加勢を頼んだ。しかし、長吉郎は父親の家の庭にできた雑木を見て、実は心安まることを感じていた。そして、辰蔵の味方となった。
焦る美濃屋。そこに白楊が登場。妙青尼と対決したが、妙青尼は古事を持ち出して論破した。尻尾を巻いて退散する白楊。20人のうち、何人かはもうついていかない。嵯峨流を辞めることに。せいせいしたと言う。盗み聞きをしていた病み上がりの連中が上がってきて、やんやの歓声を上げた。
第5章
瑞賢堂が打ち壊しにあった。流行り病をいいことに、薬の値をつりあげた。人々が騙されたと思って暴徒と化した。主人はたまたま出かけていたが、娘のことが心配でちゃらは救いに行った。娘はやがて月光寺で髪を下ろすことになる。
侍が、精神が苛まれて保護されたが、嵯峨流の聖堂に戻りたいと叫ぶ。伊織や玄林が潜入調査のため聖堂へ。やがて伊織は阿芙蓉を水パイプで数タイプのアヘンではなく、丸薬にして飲む麻薬にしたものを聖堂で見つけ、持ち帰った。どうやら清国で売れない阿芙蓉を日本に持って来て、麻薬を作っているようだ。
辰蔵が京で修行していた植善の九代目が京から来た。白楊について問われたので、説明をしに来た。実は白楊は辰蔵と同じ時期に修行をしていた弟子だった。母親は公家の血を引いたが、僧侶と一夜を過ごして身ごもり、産んだ子を里子に出した。子は転々とさせられ、10歳の時に植善に引き取られるように弟子入りした。しかし、辰蔵の活躍に嫉妬して辞めてしまった。辰蔵は、そうだったのか、と思い出した。白楊は辰蔵への復讐をしたかったのだった。
玄林の姿が見えない。白楊に捉えられていると考えたちゃらは、聖堂へ向かう。琉亭の庭だったところだから、構造は分かっている。水脈をたどり、庭が洪水状態になるようにしてから、中へ飛び込んだ。捕まってしまったが、白楊が阿芙蓉を今夜、大量に江戸に輸入することになっていることを知る。本格的に麻薬をつくるのは今夜以降だ。瑞賢堂と組んだのも、丸薬をつくるためだった。ところが、主人が相手ではなく、番頭の彦太郎を取り込んだのだった。
ちゃらは命がけで阻止に。伊織たちも与力をつれてかけつけた。しかし、船が大川に入ってきた。そこに乗っていたのが玄林だった。彼は、穴太衆が徳川に謀られて全国にちりぢりにさせられたことを恨み、麻薬で大金を掴んで穴太衆だけのユートピアをつくりたかった。だから、白楊と組んだように見せかけた。
戦場で戦うちゃらと玄林。結局、2人とも死んでしまうが、麻薬地獄からは逃れた。 -
Posted by ブクログ
明治の終わり、森鷗外の末子として生まれた類。愛情豊かな父と美しい母、ふたりの姉と、何不自由なく華やかに暮らした少年期。父の死という喪失を抱えながら画家を志し、パリへ遊学した青年期。戦後の困窮から心機一転、書店を開業。やがて文筆家の道へ。文豪の子という宿命を背負い、何者かであろうと懸命に生きた彼の、切なくも愛すべき生涯を描いた大作。著者による講演「鷗外夫人の恋」も載録。
森茉莉の大ファンとしては読まずにいられなかった。朝井まかてさんの作品は初めて読むけれど、すごい下調べしたんだろうなあと思う細やかな描写です。やや冗長な印象もあるけれどちょっとした植物や風景の描写があるから重厚な作品になるんだろうな。類はぽやっとした子で、鴎外とはイメージが違いますが、ある意味茉莉と似ていた部分があるんだろうな。でも当時は男女でかなり求められるものも違っただろうから大変さが伝わってくる。茉莉に助けを乞うところなんて泣けてくるよ・・・。書店をやっていたこととか全く知らなかったのでびっくりした。奥さんに支えられたわりにあっさり再婚に走るところは女性としては微妙な心持ちになった(苦笑) -
Posted by ブクログ
歴史に悪名を残す将軍綱吉を彼の目線から描いた物語。
本書を読んで思うことは、たとえ崇高な思想をもって文治政治を目指したとしても、その意図を正しく伝えようとせず言葉少なに、かつ結論や指示だけを出したのでは上手く浸透するはずがなく、やはり彼は将軍としての資質に欠くということ。
更に桂昌院のような権力があるのに無邪気に欲望のまま振る舞う人をそのままにしたこと、彼と並んで悪名高い柳沢吉保を自分に忠実という理由で本質を見抜けなかったこと(伝聞が正しいとすれば)も罪が重い。
朝井さんの意図とは違うかもしれませんが、本書を読んで最後まで現実が見えていない最悪の将軍というレッテルに更に確信を持ってしまった。 -
Posted by ブクログ
藤沢周平作品の次は、朝井まかて先生の作品にトライ。朝井さんなんて、今村翔吾先生の教養本触らなかったら一生知らなかったかも。時代小説って現代では使われていない独特の言い回しが沢山でてくる。勿論どれも知らない(なんなら初めて耳にする恥)なのでいちいち検索してはほーとかへーとかなってる。抜け参りとは、家族に黙ってふいっとお伊勢参りしちゃうこと。江戸時代に流行ってんですってよ。
主人公は幼なじみアラサー三人娘。10代で子供生んじゃう時代だから完全なるオバサン扱い(笑)その三人の抜け参りのハラハラドキドキの珍道中、恋あり、博打ありの痛快小説だ。
私時代小説いける口だわ、全然ハードル高くない!むしろ、AIだ、スマホだとめんどくさいデバイスなし、変なトリックなし、義理人情重視、きな臭くなると大立ち回り発生!!読んでると自然に江戸の生活ぶりがよくわかる、そんで結構チップ制じゃない?何かあるとすぐ一粒包んだりしてなんか粋。←すぐかぶれる -
Posted by ブクログ
偉大な父鴎外没後、森一家の半生を末っ子「類」の目線で描いた作品です。主人公の類は、日がな一日を思うままに過ごせればそれで良しの、いわゆるおぼっちゃま。苦しみは遠ざけ、すべき苦労は周りに任せ、ピンチになれば「鴎外」と書かれた印籠を掲げてその場を凌ぐ。生活が困窮すれど変わることのないこのスタイル。本人に一切の悪気無し。そんな穀潰しのダメ男を支え続ける妻と姉、そして子供たち。あぁ、なんという人生。なんと腹立たしい所業の数々。だが、正直羨ましい。
検査入院した妻美穂との会話。病室で放つ美穂の言葉一つ一つが類の本質を的確に捉えて心を抉る。聞かされる方は逃げ場なくコーナーに追い詰められる。ノックアウト寸前。そして最後の一言が・・・。そして類はマットに沈むのでした。
良妻賢母美穂さん亡き後、60歳半ばを過ぎての再婚。おいおい、お前さんというやつは一体なんなのか。と思いつつ、だが羨ましい。
本書は、苦労もなく育った子供たちが、支えをなくした後、社会の荒波に揉まれながら人生の海原を渡る様を描いたアドベンチャーストーリーとも言えます。
姉茉莉さんの家でトーストを馳走されるくだりを読み終えた後、わざわざ厚切りの食パンを買いに行きました。その後バターを塗りまくった厚切りトーストを美味しく頂いたことは言うまでもありません。
ごちそうさまでした。