朝井まかてのレビュー一覧
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購入済み
植物のお話しじゃなかった
著者の本は植物への造詣が深くて、それを楽しみに読んでいます。
この小説のタイトルは内容にも関係する落葉樹とのつながりを予感させるけれど、お話しの中心はもっとメディアとしての記者の立場に寄せていて、植物のお話しとはちょっと遠かったのが残念といえば残念だったかな。だけど最後まで一気に読める小説であることは間違いないです。 -
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私が読んでるものの中では、ちょっと展開が渋かった。
江戸時代中期?太平の世の、がちがちの武家社会の中。
主人公は、頭でっかちで自分が優秀と自信満々、周りのやる気のなさに憤慨している、若い江戸詰尾張藩士。
借金に苦しむ藩のために、自分がなんとかするんだ、と意気込んでいるのに、ひょんなことから左遷されて、生まれて初めて江戸を離れ、頼れる育ての母からも子離れされ、尾張の山中で松茸のために四苦八苦することになる、という話。
世間知らずとはいえ、特に悪いことしてないのに、どんどん苦境に追いやられる主人公が不憫だけど、めげずに、なんとか松茸の生産量を増やしてやろうと、がんばるところがいいかな。でも、がんばってもそう簡単に大成功!とはならないし、最終的に与えられるご褒美(?)も、静かで、渋い、密かに噛みしめるような喜び。現実ってこんなもんだよね、人生って、こういう、たくさんがんばった後に、ちょっとだけご褒美もらって、またがんばるの繰り返しだよね、って言われてるような話。
私は、どちらかというと、小説にもう少しドラマチックな展開を求めてるので、読んだ後、ちょっと疲れました。 -
購入済み
老いと向き合う時代小説
必死で生と向き合う江戸の人々や介抱という仕事をとおして、色々な生き様と出会う主人公。
絶対に避けられない老いと死がテーマになっているけど、軽やかなタッチと個性的で前向きな登場人物たちで織りなされている物語は読むペースが落ちない。
読んだ後、哀切とともに胸がほっこりする作品。
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Posted by ブクログ
今まで読んだことがない種類の歴史小説だった。明治が終わり、大正の時代に生きる若者が明治という時代を考える作品。
一番の感想は作者はこの時代に生きてきたのではないかと感じさせるほどのリアル感があったこと。銀座や新橋あたりは近代化の中心で華やかに、そして人々は洋装に身を包み、麦酒を飲み、政治を語る。一方で本作の中心にある明治神宮(神宮林)のある原宿、代々木は未だ荒野であるし、木場など下町が残るところは未だに和装の庶民が住んでいる。このコントラストが急進する近代日本を色濃く映し出し、作品自体に色合いを与えていると思う。
そして、本題は明治神宮に祀る明治天皇とはどんな人物だったのか、ということ。瀬尾が言う通り、明治天皇は御一新以前の日本の伝統・心を引き継ぎながらも外面は西欧列強と比肩する近代国家としての立ち振る舞いをせざるを得ない、そんな苦悩の人生だったのだと思う。これまであまり語られず、考えたことのない明治天皇という存在への言及がとても新しく感じられた。
明治神宮は150年をかけて完成させていく一大事業、挑戦であるという。この令和という時代に想いを馳せるにはぴったしの小説であると思う。東京に住みながら明治神宮に参詣したことがない私はまずは一歩踏み入れたいと思う。 -
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ネタバレ大奥という特殊な“家兼職場”でそれぞれの仕事に打ち込み、己の役割への誇りを強く胸に秘めて生きてきた五人の女たち。出身の違いやプライドのぶつかり合いもあるけれど、同じ「残り者」としての立場と各々の矜恃は身分の壁を越え、徐々に五人の心を近づけ結びつけてゆく。
「人が集まれば、気の合う者も合わぬ者もいる。だが、互いの腕は認めていた。だからこそ甲斐があったのだ」の言葉に、年下から年上まで様々な年代の女性がひしめく職場でかつて働いていた頃が無性に懐かしくなり、互いを認め合う出会いの快感に胸が熱くなった。
読後感が良いので感想は甘口。
でも、読み進むのにかなり時間がかかってしまったことも事実。面白い!とグイグイ読ませる勢いはあまりなく、かと言って、つまらないわけでもなく…。何となく先にページが進まなくなって、「ぬけまいる」は途中で積ん読に戻してしまった過去もあり…。ゆっくりゆっくり味わいながら読むのが、自分とまかてさん本とのつきあい方だと思うことにしよう。 -
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平成最後の日に、なーんて。
明治神宮にどんな森を作りますか、杉だけじゃあ育ちません、目指すは藪です!という話(笑)
かなり大雑把にまとめました。
ただ、明治神宮を作る前提として、明治天皇とは何だったのか、という流れがある。ちょっと赤坂真理っぽい。
崩御の前に、大勢の人が連日ひれ伏し拝んだというのを、この作品ではない所でも読んだ記憶がある。
その一種、異様な感じを、この作品では「なんで、そこまで?」と主人公の目には奇異さとして映し、クライマックスで明治天皇の「人」としての部分を取り出しにかかるのだった。
ただ、良かったのか悪かったのか、主人公の三流新聞記者っぷりは割と品がないので、扱うテーマに対して、どうしても矮小な感じがする。
もちろん記者という立場をなくせば、また崩れてしまうものもあるのだけど。 -
Posted by ブクログ
尾張藩の若き藩士・榊原小四郎は利発で学問にも優れ、出世をめざし職務に励んできた。
しかし、才気をひけらかした態度が災いし上司に疎まれ、国もとの御松茸同心に左遷されてしまう。
悄然として国に移る小四郎だったが、慣れない山歩き仕事に右往左往するばかり。
果たして、小四郎の出世の夢はかなうのか。
面白かったです。
現代日本にも通じるお話なので、身近に感じられました。
小四郎は生まれてこの方ずっと不況しか知らないのですが、周囲のオッサン達はかつて尾張に訪れたバブルが忘れられず、その話ばかり。
私の周りにもこういうオッサンはまだいます笑。
松茸の不作続きの要因を調べ収穫量を上げるというお仕事を拝命したわけですが、小四郎は現実に叩きのめされます。
松茸献上のノルマが毎年課されているが、山の松茸では到底足りないので御用商人から買い上げて補填しているという矛盾。
財政赤字は増える一方なのに、何もできない自分。
融通の利かないカタブツの小四郎は、山廻同心には邪険にされ、立場の違う村の平民にも松茸についてうまく聞き出せず、誰の助力も得られない。
しかも都会育ちの彼は虫も大嫌いで山仕事なんかしたこともない。
可哀想になるほど八方ふさがりの状態ですが、小四郎はかすかな出世の道をあきらめず、増産を目指しこつこつと資料を読み試行錯誤していきます。
最初は鼻持ちならない青臭い青年だった小四郎は、苦労を重ね、やがて周囲の助けを得て視野を広げていくのです。
その様子は現代の青年の成長を描いたお仕事小説を読んでいるようで、すがすがしい気持ちになれました。
納得のいかない仕事に異動になっても、腐らずに目の前の仕事に励むことって大事ですよね。
骨身に沁みる教訓だと思います。
先代宗春公や父親に対しての気持ちが変化していくのもほっとさせられました。
結構堅い話ですが、ユーモアにまぶされて読みやすいので時代物が苦手な方でも楽しめると思います。