梅原猛のレビュー一覧
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親鸞の告白
付・梅原猛の現代語訳『歎異抄』を読む
小学館文庫う 7 4
著:梅原 猛
出版社:小学館
本書は、親鸞を中心とした日本仏教の解説書である
■仏教の本質
仏教は、2つの大きな思想をもっている
1つは、悟りであり、もう1つは、平等である
人間は徳と能力で評価されるべきであり、仏教の平等精神に則って、日本国家を建設しようとしたのが聖徳太子である
煩悩の中に悟りが隠れており、煩悩を離れては悟りのないのが仏教である。仏教というのは、そういうパラドクスであって、そのパラドクスを信じることが信仰なのだ
宗教というものは、道徳の延長や知識の延長にあるものではない
そういうパラドクスの激 -
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ネタバレ本書では曇鸞、道綽、善導の思想だけでなく彼らの生涯や時代背景も知ることができます。
当時の中国の政治情勢あってこその仏教ということがよくわかります。度重なる戦乱や仏教弾圧の中で中国浄土教が発展し、善導の時代には繁栄極める国際都市長安の繁華街で善導浄土教が支持を受けていくという流れは非常に興味深かったです。
やはり歴史に名を残す偉人たちと時代背景のつながりというのは面白いです。浄土真宗僧侶としてはどうしても親鸞や法然と向き合う時間が長くなってしまいがちですが、その源流を辿るというのもやはり大きな意味を感じます。源流を辿るからこそ親鸞の特徴や独自性が見えてくるというものです。
そういう意味で -
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「やるべきこと」という偶像崇拝に自ら陥り「わたしは不幸だ」などと言っている人は、この本を読んでみるのもありかもしれない。
唯心によれば、「ただ神を信じる(仏教では念仏を唱えること)、そうした他力の力のみによって天国へ行くことができる。だから極楽浄土へ行ける奥義を教えてほしいといわれても念仏を唱えろというよりほかはない。」と親鸞は言う。また、親鸞は「(他力ではなく自力の力を第一において極楽浄土へ行くために云々やっている)善人でさえ天国へ行けるのだから馬鹿正直に念仏だけ唱えている悪人が天国へ行けるのは当然ではないか」と言う。
これは本書の最初数ページに書かれていることである。ここを読んだとき、 -
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羽生 善治
将棋棋士。1970年生まれ。1996年、史上初めて七大タイトルを独占。2017年、永世七冠の資格獲得。2018年、国民栄誉賞。
梅原 猛
哲学者。1925年生まれ。京都市立芸術大学、国際日本文化研究センター名誉教授。ものつくり大学総長、日本ペンクラブ会長などを歴任。1999年、文化勲章。
尾本 恵市
1933年生まれ。分子人類学者。東京大学、国際日本文化研究センター名誉教授。2015年、瑞宝中綬章。
将棋にはこのように、理系と文系といった学問領域の枠を超え、さらには芸術から文明論に至るまで、実に多彩な「見どころ」「考えどころ」がある。あらゆる人の知的好奇心に訴えかけ -
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梅原氏が書かれた天台宗の本覚思想についての本や、空海の思想に関する本は別々に読んでいたのですが、本書は、最澄と空海を対比している本、ということでとても興味深く拝読しました。最澄と空海は平安時代に生きた日本仏教の二大巨頭で、この二人の交流関係自体もドラマになりそうな波乱の展開を見せます。
私自身、それぞれの教え(天台宗、真言宗)についての基礎知識はあったのですが、梅原氏の明快な解説で理解がさらに深まった気がします。そして本書の最大の特徴は、題名にもあるように両者の対比です。本書を通じて感じたのは、当たり前かもしれませんが、両者には共通点もあれば相違点もあること。共通点は、例えば山岳への想い(梅 -
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これまでの科学技術文明が人類の生活水準を劇的に押し上げてきた反面、環境破壊を通じて地球への負荷も目に見えて大きくなっています。そのような中で本書では人類全体が指針とすべき新たな「哲学」として、天台思想の「草木国土悉皆成仏」を挙げておられます。これは生きとし生けるものすべてが仏の本性を持っている、という仏教の思想の1つで、神道にもそのルーツをたどることができます。この本の大きな特長は、梅原氏が世界の様々な「哲学」と「草木国土悉皆成仏」思想を比較しその優劣を論じているところで、仏教でいうところの教判論だと思いました(注:様々な教えの違いを分析しその優劣を述べるのを仏教では教判と呼びます。例えば空海
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本書は大きく3部構成からなっています。1部は宮坂氏による空海および真言密教の解説。2部は宮坂氏と梅原氏の対談。そして第3部が梅原氏の論考です。対談が読みやすいというのもありますが、全体を通して、難しすぎず易しすぎずというレベルに書かれていて非常に好感が持てました。確かにいきなり本書から密教の勉強をはじめようとすると厳しいかもしれませんが、例えば『密教』松永有慶、などを読んだ後であれば、十分読み進めます。レベルが低すぎることもなく、かなり難しい用語も適宜解説を加えながら述べられています。梅原氏の論考がある分、他の密教関係の本よりも独特な解釈があったり、西洋哲学との比較があったりと、興味深く読みま
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若い頃は、浅ましくも、完全無欠で罪のない生き方をしていて、漠然とでも自分は正しいと信じて生きてきた。
しかし、歳をとり、自分は全く正しくなく、組織に入れば自分が正しいと思うこととは異なることもしなければならなくなった。
別段極楽浄土を信じているわけでもない。それでも、自分は正しくなく、悪にまみれて生きていることだけを感じていた。そしてそれは、他人においてもそうであり、だからこそ許し、許され会う必要があると思った。
歎異抄を、今こうした心境で読むと、涙が出そうになる。
阿弥陀への信心に対する親鸞や唯円の情熱を感じるが、それ以上に、自らを罪深い人間であるとする謙虚さというか、自分自身への内 -
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日蓮について最初に読む本であるとは思わないが、独自な視点がいくつかあり、必読文献である。
紀野一義は日蓮の人物像と信仰の本質を突く。
紀野に比べて、全体的にオーソドックスな梅原猛だが、日蓮の歴史哲学について触れる部分は独自性がある。日蓮は陰がないという指摘も意義深い。
昭和44年の著作なので、事実関係はいくつか修正が必要な本。
・中世の祖師の蒸発時代の存在
・日蓮の意識の中で神々の存在は大きい
・日蓮は生涯の大事のとき、いつもひとりになろうとした
・「死して候はば、必ず各々をもたすけたてまつるべし」
・千日尼という名前は日蓮の命名
・「日本一のえせもの」 -
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ネタバレヘレニズムやソクラテスなどの省察がまとめ終わっていないけれど、ひとまずまとめてみた。
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前提として、哲学は古代ギリシアで生まれ近代西欧で発達した。
インド哲学や中国哲学は思想について語ったもので、哲学は一部地域に偏っており、普遍的なものとは言えない。
そして近代の哲学に支えられた、現代の科学技術や資本主義は行き詰まりを見せている。
したがって、今の哲学(西洋近代哲学)を見直す必要がある。
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日本の『草木国土悉皆成仏』という思想が解決の糸口となる。
万物すべてに魂が宿っているという思想で、日本の思想であると同時に、世界の原始的文化の狩猟採集・漁労採集文化の共通思想でもある。
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「ひたすら一心に念仏を唱えていれば誰でも救われるよ」と言われてそのまま素直に受け取る人はいない。日本人は親鸞の時代からそうだったようで、親鸞の教えは誤解され濫用された。その状況を憂えた弟子の唯円が親鸞の死後に著したのが『歎異抄』(と言われている)。
親鸞は、不完全な人間の理性や道徳を捨て、すべてを超越した阿弥陀仏の誓願(生きとし生けるものを救おうとする意志)にただただすがれと説いた。
西洋哲学の合理論的潮流を否定しさったニーチェよりはるか昔、日本には親鸞がいた。そこで能動的ニヒリズムや超人を説くのではなく、他力本願という結論に至るのが日本的奥ゆかしさなのだろうか。
親鸞によれば、他力本願と