伊集院静のレビュー一覧
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小学生のとき、両親に買ってもらった「世界名作文学50冊」の中に入っていた。あの名作文学は1冊に数作が収められており、やたらと重かったという印象がある。手に持って読むのは小さな小学生には結構な重労働で、いつも寝そべって読んでいた。あの当時は「小公女」や「秘密の花園」などのいかにも少女好みの作品に傾倒し、この手の冒険物はさほど心が惹かれなかったのを覚えている。それなのに、今になって読み返すと冒険物が断然おもしろい。伊集院静のリメイクだから、ことさらに面白いのかもしれない。それでもページを繰るたびに脳裏に浮かんでくるのはトム・ハンクス主演のCast Awayの映像だった。
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行くあてがなく、お金もない。そんな若者を、「支払いはいつでもいいですよ」と温かく迎えてくれる海沿いのホテル。
まるでフィクションのような人たちに囲まれて、本を読み、海辺を歩き、酒を飲み、やがて小説を書き始める。
若い頃にしてもらった親切を、こうして歳をとった後に「ありがたいなぁ」と振り返られるのが、幸せな人生だなと思う。
有名な作家さんなのは存じ上げていたけれど、ずっと順風満帆なわけではないんだな。
苦しい時ほど、何気ない一言や、優しい眼差し、手を差し伸べてくれたことは、些細なことでもよく覚えている。
そんな人を大事にしたいし、私も誰かにとっての優しい記憶に残る人でありたいと思う。 -
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ネタバレ3点代後半
・桑田佳祐の同名曲の由来になった本。(同氏はこの本から水のないプールを着想)
・伊集院静の自叙伝随想。なぎさホテルで過ごした28歳からの7年間が淡々としたタッチで描かれる。
・世を拗ねたような気難しい性格に、堕落した生活が重なり、後に作家として名を残す人物であっても、こうも紆余曲折や苦悩の中にあったのだと興味深く読めた。特に仕事が増えても、必ずしも生活が整っていかない様(借金返済や飲酒の悪癖)にリアリティを感じた。
・大半は回想録だが、時折小説に関する考えや思いが語られており、その部分も面白く読めた。
・多少の脚色はあるかもしれないが、ウケを狙ったネタ感はなく、等身大の回顧録として「こういう読み物もあるのか」と気づきになった。
(印象的な一節)
・正直な処、私は小説が何であるか、少しもわかってないし、読者に何を与えているか想像もつかない。何かを得たということも、私自身の読書から考えると、錯覚ではないかという気さえする。面白可笑しくておおいに笑った、と言われれば、それは納得できるが、私には、そういう類いのものが書けないし、度量もない。逆に何度も涙したと言われると、自分は詐欺行為をしているのではと思ってしまう。いろいろ考えさせられたと言われると、すみませんでした、となってしまう。では小説を、文学を言じていないのか、と言うと、これは信じるしかない。二千年以上、人間が捨てずに残して来たものには、それなりのものがあるはずだ。だがどう言じているのか、と考えると、肩じること自体が疑わしいものとなる。あれこれ言っても目に見えぬものを相手にしている尼介さだけがある。
・ほんの数分でも、あの海岸を歩く時刻がずれていれば、小説家になってもいなかったろうし、ひょっとしてもうこの世にいなかったかもしれない。人と人が出逢うということは奇妙との上ないと、この作品に関しては思ってしまう。人は人によってしか、その運命を授からないのだろう。 -
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ANAの機内誌「翼の王国」で2017年6月から2020年3月まで連載された旅のエッセイ集。題名の通り、各国に滞在中に拾ったり買ったりしたそれほど高価ではない土産と、それにまつわるエピソードに触れている。拾った石、マツカサ、競馬の投票券、お手拭き、マテ貝の貝殻なんていうのもある。
50歳代半ばに1年の半分近くを海外で過ごし、取材などで月の上旬をナポレオン街道(エルバ島からパリまでの道、中旬をゴルフコース、下旬を美術館巡りで過ごす、という何とも羨ましい生活を送っていたという。収録された全34篇のうち、フランスがアメリカと同じく一番多く6篇、スペイン5篇、中国・香港が4篇と続く。
ヤンキース所属中だった松井秀喜、ヨーロッパの競馬に単身で挑戦中だった武豊など、大分年下の若者に向ける眼差しが優しい。 -
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伊集院静は、「大人」の流儀を教えてくれる。
いまどき、こんな親切に大人の流儀を教えてくれる人はいない。
それも押し付けがましくない。
自慢話もしない。
佇まいに男の色気がある。
飲み屋のママさんが放っておくはずがない。
こんな人と飲みに行きたいと思う。
だが、ママやチーママは、伊集院さんにゾッコンであることは覚悟しなくてはならない。
それでも良い。
この人の立ち居振る舞いを見てみたいと思った。
本書を読んで、今度は一人で伊集院流「大人の流儀」を実践して見るのだ。
プチ「伊集院」でも良いではないか。
プチ「伊集院」が一人でも増えれば、飲み屋は居心地の良い空間になることだろう。