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作家・伊集院静の原点が綴られた自伝的随想。
1978年冬、若者は東京駅構内にいた。足元のトランクには数枚の衣類、胸のポケットにはわずかな金しかなかった。入社した広告代理店も一年半足らずで馘首され、酒やギャンブルに身を置いた末に、東京での暮らしをあきらめていた。生家のある故郷に帰ることもできない。
そんな若者が、あてもなく立ち寄った逗子の海岸に建つそのホテルで温かく迎え入れらえる。
「いいんですよ。部屋代なんていつだって、ある時に支払ってくれれば」
見ず知らずの自分を、家族のように受け入れてくれる“逗子なぎさホテル”の支配人や副支配人、従業員たち。若者はそれからホテルで暮らした七年余りの日々の中で、小説を書きはじめ作家デビュー、大人の男への道を歩き出す――。
作家・伊集院静の誕生まで、若き日に向き合った彷徨と苦悩、それを近くで見守ってくれた人々との出逢いと別れ。名門ホテルは平成元年にその歴史に幕を閉じているが、目の前に海の広がるあの場所で過ごした時間は、今でも作家の夢の中に生き続けている。作家デビュー前夜からの大切な場所と時間を振り返り、作家としての原点を綴った貴重な自伝的随想。巻末には、文庫化にあたり書き下ろされた「あとがき」を追加収録。
Posted by ブクログ 2021年02月08日
伊集院静作品で、何度か目にした
「なぎさホテル」。
あちこちに書かれているように
人はあたたかく、眺める景色は
美しい。
本当に、奇跡のような場所。
数年前に、跡地を見に行ったけれど、
ここで奇跡のような物語があったのかと
思うと、映画のシーンのように思われた。
人の情け、海景の美しさ、
書くこ...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年04月19日
人には帰る場所と時間がある…
思い出を頭の片隅にしまい、チラチラと見え隠れしているのを横目でみながら新たな出会いを期待して生きているような…残りの人生をまんざらでもないようにするには帰る場所と時間をもち思い出にひたることもひとつかな〜
伊集院先生が旅立ち、先生の言葉や考えを帰る時間のひとつにさ...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年07月04日
友人の名前と同じホテル
ネットで検索すると、海岸の傍に建つ
趣のあるホテルの写真が出てきた。
このホテルでの滞在(寄宿?)がなかったら
彼は作家を生業とすることもなく
夏目雅子さんとであうことも会うこともなかった。
彼を陰ながら支援する人々のなかで
上京した彼に自分の連れ合いには内緒だよと
茶目...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年10月31日
序章の文章の美しさに惹かれて読み始める。
放埒な著者が、周りの人々に支えられながら作家としての礎になるようなものをつくる物語。
突然現れた若者が周りの人にこうも親切にしてもらえるものかと驚くが、著者にそうさせる魅力や危なっかしさがあったのかもしれないとも思う。
静かに淡々としていて、一見無愛想な印象...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年06月22日
桑田佳祐さんのファン、という理由で手にとった一冊。
伊集院静氏の本は初めてですが、読み進めやすい文章と描写でスッと読めた。
お酒と借金にまみれ苦悩する若かりしころ、「なぎさホテル」の支配人・スタッフに温かく迎えいれられた著者。
素性のわからない者を住まわせるなんて、不思議な物語のようではあるが、昭和...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年08月18日
放埒な生活を続けながらも小説を書くことに真剣に取り組んでいます。それが伝わってきたのが「.....選んだ職業、または世界なのだから、自分もどこまでやれるかはわからぬが、やってみたい。やってみよう、.....」
それにしても著者は若い頃から飲んだくれで、借金ばかりしていました。
個人的には実生活ではこ...続きを読む
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