松岡圭祐のレビュー一覧
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ネタバレ・2008年出版の『ミッキーマウスの憂鬱』から13年後に出た続編
・今度の舞台はディズニーシー、主人公はカストーディアルキャスト(掃除係)の女性、永江環奈。ダンサーに憧れ、準社員という立場に不満を持ち、家族には「ただの掃除係」「将来を考えろ」と厳しい言葉を投げかけられ、ディズニー愛との葛藤の中で働いている。そんな中、ふとしたきっかけでアンバサダー(投票で選ばれるディズニーランドの対外PRの柱)を目指すことになり、その過程で起こる事件や人との出会いを通じて成長していく
・一作目と同じくらいか、それ以上に面白かった。中身を上手く組み替えて、気持ちの良い青春小説に纏め上げている
-変化点
ランド>>シー
男性主人公>>女性主人公
勘違い男性社員の成長>>葛藤女性社員の成長
美装部>>カストーディアルキャスト
登場人物少>>シニア社員・グッズ店員など拡大、など
-共通点
本部と現場の対立
正社員準社員の差
夢と現実の葛藤、など
・こういう人間模様や対立構造は現実ではどこでも起きているはずで、改めてそれらに向き合うことの大切さと面白さを認識させられた
・前作主人公だった後藤も登場して、嬉しいサプライズもあり、子供と一緒に盛り上がった -
Posted by ブクログ
・バイトを転々とする主人公後藤が、ふと見つけたディズニーランドの求人に応募しキャストとして働き始める。ゲストとして目にする華やかな表舞台とは異なる運営業務や、同僚のトラブル等を乗り越えながら成長していく痛快な物語
・文庫デビューした子供が、タイトルに惹かれて最初に買った本。子供が読み終えた後に読んでみたが大人もかなり楽しめた
・どこまでが本当でどこまでがフィクションか分からないが、ビジネス的には信ぴょう性があるし「こういうものなんだ!」と割り切って読むとより面白いと思う *ただし本部社員の超高圧的な態度はさすがに誇張があると思うので注意
・本部/現場のギャップ、雇用形態/職種のギャップ、現場で働く人の様々な想い、運営の余裕の無さ、日常的に起こるトラブル、などしみじみする場面が多い
・主人公の後藤、は自身の立場を気にせず、的外れな提案も含めてなんでも発言してしまういわゆる「イタい若者」で最初はイライラしたが、与えられた仕事はなんだかんだやるし、人が避けがちな面倒ごとも立ち向かうし、最後は一人の頼れるキャストに成長していて、自分の最初の思い込みを反省した
・個人的には、人を育てる、良いところを伸ばす、という点で学びが多かった
・ディズニー関連だと『Disney's Land』『ディズニーCEOが実践する10の原則』など読んでどれも良い本だったが、それと関連付けて、どうやったらこれだけディズニー哲学を現場に徹底させられるのか、、IPってすごいな、、と考えながら読んでいた
・あと、子供に読ませて大丈夫な本で良かった。笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレ水鏡推理 マイクロプラスチックは、環境問題という一見“正義”の装いをまとったテーマを通して、人間の不安と集団心理の脆さを鮮やかに抉り出す一作だった。
本作で描かれるマイクロプラスチック(MP)を巡る狂騒は、単なる環境リスクの告発にとどまらない。科学的事実と不確かな情報、善意と利権、正義感と自己顕示欲が複雑に絡み合い、社会が一方向へと傾いていくさまは、コロナ禍における買い占め騒動や過剰反応とも重なって見える。人は「見えない脅威」に直面したとき、理性よりも不安に突き動かされやすい。その危うさを、本作は冷徹な筆致で浮き彫りにする。
身近な例として思い浮かぶのが、かつて洗顔料に含まれていた“プチプチ”だろう。何気なく愛用していたものが、やがて環境や人体への影響を指摘され、社会的に忌避される存在へと転じる。この変化のスピードこそが、現代の情報社会の特質である。便利さや心地よさの裏側に潜むコストを、私たちはどこまで引き受けられるのか。本作はその問いを、読者一人ひとりの生活感覚にまで引き寄せてくる。
終盤に描かれる宗教団体の影も印象的だ。科学的言説が混乱する隙間に入り込み、救済や確実性を提示する存在の不気味さは、かつての恒星天球教事件を想起させる。思わず“前頭葉切除手術!?”と身構えてしまうほどの緊張感は、理性を標榜する社会がいかに容易く情動に支配され得るかを示唆する。環境問題とカルト的思考の接点を描くことで、作品は単なる社会派ミステリーを超え、現代の精神風土そのものに踏み込んでいる。
また、シリーズに通底してきたパワハラ描写が本作では影を潜めている点も興味深い。時代の変化とともに、組織の空気や権力の振る舞いが更新されていく様子がさりげなく反映され、現実社会との呼応を感じさせる。そして「講談社と付き合いがあった時」「KADOKAWAと付き合いだしてから」といったメタ的な言及には、作者ならではの遊び心と業界への距離感がにじみ、読者に小さな愉悦をもたらす。
環境問題、情報の氾濫、宗教的熱狂、組織の論理――それらを一つの物語の中で統合し、娯楽性を損なうことなく提示する筆力はさすがである。『水鏡推理 マイクロプラスチック』は、私たちが「正しい」と信じるものの背後に潜む曖昧さと、集団の中で揺れ動く個の在り方を、静かに、しかし確実に問いかけてくる重厚な一冊だった。