あらすじ
多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書。そこには、命を軽視し玉砕に向かうという野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が示されていた。1943年、北の最果て・キスカ島に残された軍人五千人の救出劇を知力・軍力を結集して決行した日本軍将兵と、日本人の英知を身で知った米軍諜報員。不可能と思われた大規模撤退作戦を圧倒的筆致で描く。
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Posted by ブクログ
「この小説は史実に基づく」
この文章から始まる八月十五日といえば終戦の日を思い浮かべるだろう
しかし、その2年前の8月15日のキスカ島でその後の日本を左右する出来事があった
史実を小説化することで教科書では学べない歴史を学んだ
Posted by ブクログ
戦後生まれで、親族や近所の人や知人等からも、戦争の話をほとんど聞いたことがなく、学校でも教わっていないので、知らないことばかりであることを改めて痛感しました
Posted by ブクログ
松岡圭祐『八月十五日に吹く風 改訂完全版』角川文庫。
史実に基づく戦争小説。2017年に講談社から刊行された文庫を加筆修正した完全改訂版。
今年は太平洋戦争の終戦から80年にあたり、様々な戦争関連小説やノンフィクション作品が続々と刊行、復刊されている。本作も恐らくその1つなのだろう。戦争の記憶が失われていく今こそ多くの日本人がこの作品を読み、戦争の悲惨さ、戦争を巡る多くの矛盾、日本人としての矜持を知って欲しい。
さて本作であるが、戦後のアメリカによる日本の占領政策を大きく変える切っ掛けとなった日本の作戦が描かれる。アメリカは日本人を生命を軽視し、軍の命令により玉砕に向かう野蛮な人種と考えていたのだが、アメリカ人と同様に生命の重さを知り、友軍を救出するために知恵を使う優れた人種であると日本人に対する見方を転換することになったのだ。
読後、清々しさを覚えるような結末は、1981年の映画『勝利への脱出』のラストにも似ている。『勝利への脱出』も第二次世界大戦中にドイツの捕虜となった連合軍の脱出劇を描いているのだが、これがまた面白く、爽快なのだ。
1943年、アリューシャン列島のアッツ島を占拠した日本軍はアメリカ軍の総攻撃を受け、孤立無援となり、最後は生命を捨てての玉砕作戦に転じ、全滅する。
同じくアリューシャン列島のキスカ島にも5,200人もの日本軍が島を占拠し、アメリカ軍の進行を1年もの間食い止めていた。しかし、日本軍の戦況が悪化し、キスカ島の日本軍にも玉砕の指令が下る。
友軍を救うべき立ち上がった日本軍将校は日本軍の英知を結集し、驚くべき方法で5,200人をキスカ島から脱出させる。そればかりか、キスカ島に殺到した1万人ものアメリカ軍を後方に留め置くことに成功したのだ。
本体価格920円
★★★★