梶よう子のレビュー一覧
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梶さんの初期の頃の作品。
摺師が主人公で寡黙な職人。「いろあわせ」と言うタイトル通り、各章は摺りの技法がサブタイトルとなっている。かけあわせ、ぼかしずり、まききらら、、、。技法の説明は各章の冒頭に説明されているが、絵や写真が無いと分かりづらい。また、このサブタイトルに沿った人情物の内容だが、技法が分かりづらいので、なぜにそのような結末か、も考え込んでしまう。
出てくる登場人物は、みんなキャラがしっかりしていて生き生きしている。おっちょこちょいの弟弟子、うるさいが面倒を見てくれる長屋のお婆さん、凄腕だが人の良い長屋の浪人とか。とくに幼馴染の出戻り娘との続きを読みたいと思う。(書いた後に念のためと -
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古本屋の傍ら『噂』を必要な人間に売っている由蔵が、あのシーボルト事件に巻き込まれていく。
由蔵の父は養蚕家だったが詐欺にあって病の蚕卵を買い、自身だけでなく集落の蚕まで死なせるという大変な事態を招く。そのせいで父は自害、母は心労死、由蔵は周囲の子どもたちから『うそっこき由蔵』と非難される。
長じても父親のしたことは消えず、江戸に来れば『うそっこき』ではなくなると心機一転働くが、そこでもまた大奥の『嘘』で大切な人が追い込まれ死に至る経験をする。
『噂に惑わされ踊らされ、果ては大勢が信じ込み噂が嘘でなくなっていく』
『嘘で固められた「真実」など、あっちゃいけねえんだ』
力も後ろ楯もない由蔵が -
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ネタバレ202112/タイトルのお茶壺道中とは、幕府が将軍御用の宇治茶を茶壺に入れて江戸まで運ぶ行事とのこと。宇治茶を誇りに思いお茶壺道中が大好きで、お茶を淹れるのも上手な主人公・仁吉が、宇治から江戸の茶葉屋で奉公にあがり成長していく物語。梶よう子の史実(今回は生麦事件、和宮降嫁など)を物語に絡める手法が今回も効果的で、緊迫した空気と時勢の転換に戸惑う主人公の描写にいかされてる。主人公の人脈や商才で危機を乗りきっていく所、特に阿部様周りの出来事はラッキー要素多めな印象はあるけど面白かった。幕末の動乱や外国と交易している横浜の描写、お店のお内儀・本店の主人を始めとする商人達のしたたかさや、人間の多面性が
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ネタバレ202112/これがデビュー作とは!消極的でパッとしないタイプだけど、朝顔のことなら周囲がドン引きする程饒舌かつ一方的にマシンガントークしちゃう朝顔オタクな北町奉行同心・中根興三郎が主人公。尊王攘夷、安政の大獄など史実をベースに、政情に係わってしまう主人公、朝顔をうまいこと絡めつつ物語が進んでいく。個性豊かな登場人物達も魅力的で、特に主人公の下男で還暦間近の藤吉が良い。この物語での井伊直弼の描写も面白い。多数の人物や出来事が盛り込まれてるけど読みやすく、混乱することなくページを進められた。同作者の『いろあわせ』の主人公・摺師の安次郎がちらっと登場しててニヤリ。ラストの描写もグッときた。梶よう子
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ネタバレ202112/実際にあった松平外記による『千代田の刃傷事件』を素材にしたフィクション。序盤の仲睦まじく幸せそうな若夫婦の描写が、却ってこの先の辛い展開を感じさせた。作者の妥協することない筆力で、城内でのパワハラ・いじめ(と言うには余りにも酷すぎる…)が容赦なく綴られるので、読んでいてとてもとても苦しかった。でも結末知りたさと物語・人物描写の巧みさでページ捲る手は止められなかった。外記が我が子の為に作ったふくろうの根付に込められた想いが切ない。妻や他の息子娘らの悲しみ苦しみも思うと胸がいたむ。娯楽時代モノ好きにはおすすめしにくいけど良作だった。
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作者さん初の書き下ろし作品。
廻り髪結いの裏で番付屋をしている新次郎。
得意先の娘で近頃〈小町番付〉の小結に選ばれた娘が襲われ顔を傷つけられるという痛ましい事件が発生。
新次郎は番付屋の仲間たちと事件を探るのだが、別の事件との関わりが見えてきて…。
瓦版屋にスポットを当てる作品はあるが、番付屋とは新鮮。様々な番付屋が乱立する中、根拠も何もない、単なる持ち上げ番付や逆に貶める番付もある。だが新次郎たちがやっている番付は裏稼業ではあるものの、孝行番付や特産品番付など至って真っ当なものだ。通常は。
ただし、事件解決の際には番付を使ってその真相を明らかにする。ここがちょっと悪乗りしてるかとも思え -