梶よう子のレビュー一覧
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ネタバレ202112/これがデビュー作とは!消極的でパッとしないタイプだけど、朝顔のことなら周囲がドン引きする程饒舌かつ一方的にマシンガントークしちゃう朝顔オタクな北町奉行同心・中根興三郎が主人公。尊王攘夷、安政の大獄など史実をベースに、政情に係わってしまう主人公、朝顔をうまいこと絡めつつ物語が進んでいく。個性豊かな登場人物達も魅力的で、特に主人公の下男で還暦間近の藤吉が良い。この物語での井伊直弼の描写も面白い。多数の人物や出来事が盛り込まれてるけど読みやすく、混乱することなくページを進められた。同作者の『いろあわせ』の主人公・摺師の安次郎がちらっと登場しててニヤリ。ラストの描写もグッときた。梶よう子
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ネタバレ202112/実際にあった松平外記による『千代田の刃傷事件』を素材にしたフィクション。序盤の仲睦まじく幸せそうな若夫婦の描写が、却ってこの先の辛い展開を感じさせた。作者の妥協することない筆力で、城内でのパワハラ・いじめ(と言うには余りにも酷すぎる…)が容赦なく綴られるので、読んでいてとてもとても苦しかった。でも結末知りたさと物語・人物描写の巧みさでページ捲る手は止められなかった。外記が我が子の為に作ったふくろうの根付に込められた想いが切ない。妻や他の息子娘らの悲しみ苦しみも思うと胸がいたむ。娯楽時代モノ好きにはおすすめしにくいけど良作だった。
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作者さん初の書き下ろし作品。
廻り髪結いの裏で番付屋をしている新次郎。
得意先の娘で近頃〈小町番付〉の小結に選ばれた娘が襲われ顔を傷つけられるという痛ましい事件が発生。
新次郎は番付屋の仲間たちと事件を探るのだが、別の事件との関わりが見えてきて…。
瓦版屋にスポットを当てる作品はあるが、番付屋とは新鮮。様々な番付屋が乱立する中、根拠も何もない、単なる持ち上げ番付や逆に貶める番付もある。だが新次郎たちがやっている番付は裏稼業ではあるものの、孝行番付や特産品番付など至って真っ当なものだ。通常は。
ただし、事件解決の際には番付を使ってその真相を明らかにする。ここがちょっと悪乗りしてるかとも思え -