現代で言う百円ショップ、何でも三十八文で売る〈みとや〉を営むお瑛の物語第四作。
他の方のレビューにもあるように、お瑛がいつの間にか結婚して息子もいることに驚く。また間違えて一作飛ばしたのかと確認したが、そうではなく前作から八年後という設定らしい。
息子は兄と同じ長太郎という名前で、彼と同じく大らか
...続きを読むでちょっと落ち着きがない。だが優しい子のようだ。
そして夫は成次郎、兄と同じく仕入れ担当。兄の友人・寛平の薦めで結婚したらしいが素性は明らかではない。何か訳ありらしい。だがこちらも優しい人であることは同じ。つまり息子・長太郎は父親似なのか。
前作から八年後ということでお瑛の周囲もいろいろ変化がある。まずお瑛兄妹を支えてくれた森山家のご隠居が三年前に亡くなっていた。菅谷直之進とお花夫妻の娘・花甫は七つになり、長太郎と仲が良いらしい。
直之進の息子・直孝は父親の手習い所を継いでいる。
そして商売の方では、たくさんあった三十八文屋の多くが姿を消し、お瑛はこの商売に行き詰まりを感じ始めている。
この第四作の主な内容としては、お瑛が思いついた〈みとや〉の新しい商売の行方と、お瑛兄妹を長らく助けてくれた料理茶屋〈柚木〉の女将・お加津の変化だ。
新しい商売とは何かを売りたい人と買いたい人との仲介業。古道具屋ではなく、売りたい人が大切にしてきたその品物の価値を分かってくれる人に売るという、なかなか難しいものだ。さて上手くいくのかどうか。
そしてもう一つお加津についてだが、こちらはかなりハラハラさせられた。女一人で長年料理茶屋を切り盛りし、お瑛が母のように頼りにしていたお加津が圭太という男の登場ですっかり変わっていく。実際にもありそうな話なのだがお瑛にとっては心配で堪らない。そしてお加津の心に真に寄り添ったのが自分ではなく圭太だったというのが更に堪らない。
この話の行方は気になって仕方なかった。結末はともかく結局圭太という男の不気味さだけが印象に残った後味の悪いものだった。
シリーズとしては前作のレビューでも書いたが、ある人物の退場にいまだ納得できていない自分がいる。
あれは必要だったのかどうか。第二シリーズともいえる今作も悪くはないが、やはり〈みとや〉シリーズはあの人あってお瑛のキャラも生かされてくるというところがあったのになぁと残念に思ってしまう。今更だけど。
みとや・お瑛仕入帖シリーズ一覧
※はレビュー登録あり
①「ご破算で願いましては」
②「ご弁の秋花」※
③「はしからはしまで」※
④「江戸の空、水面の風」※本作